「あ…ぁぁ…はぁ、あぁん…」
自分の内部を犯し尽くす、男の欲望の嵐が過ぎ去る時を待つ…。
ビクビクと、今も小さく脈打つ桑古木の肉体。
(あ…な、膣内が…ぁぁ…)
初めて男の欲望を受け入れた胎内が熱い…。
白くどろりとした濃厚な液体が、私の内側を一杯に満たしていく感覚。
今もまだ甘く疼いたままの身体は、
突然の事に少し呆然としている意識に反する様に、
逃がすまいと桑古木を絞めつけている。
けれど、一端溜まっていたモノを吐き出した彼の肉体は、
やがて力を失った様に、ちゅるんと音を立てて私の中から逃れてしまった。
「あぁ…ッ、桑古木…ハァ…」
「あっ…ご、ごめん、僕…」
先に自分だけ達してしまった事に気付いたからなのか。
それとも、たった今まで私と一つになっていたと云う行為自体に対してなのか。
優しく私の身体を抱きしめ支えたままで、
桑古木は泣き出しそうな表情を浮かべた。
17年前のLemuでも、何度も目にした事のある表情。
私の目の前には、自分がしてしまった事を咎められる前に後悔している様な…
そんな、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた彼がいた。
「ぷっ――ふふふ…あはははははっ」
「わ、笑わないでよ」
込み上げてくる可笑しさに私が笑い声を洩らすと、
ますます泣き出しそうな声色で恥かしそうに膨れて見せる。
その表情が、私には溜まらなく可笑しかった。
でも、それは桑古木に対してだけじゃない。
今の自分が…溜まらなく滑稽で可笑しかったのだ。
自分がどうして、あんなに自暴自棄になっていたのか…。
まるで自分の役目も、自分の人生も終わってしまったかの様に感じていた。
全てが終わってしまった気分になってしまっていた。
倉成が戻って来て、つぐみとの幸せそうな笑顔をこの目にして…。
素直に嬉しく思う反面で、「田中優美清春香菜」としての
自分が無くなってしまう様な気持ちになっていた。
本当はこれから…全てがこれから始まらなくちゃならない筈だったのに。
「――優…?」
笑い続ける私の様子を訝しんだんだろうか。
桑古木が心配そうに此方の様子を伺っている。
何処か頼りなさを残す表情…ああ、やっぱり少年だ。
倉成に憧れて、皆を救う為にも必死にその真似をして来たけれど
………彼は、やっぱりあの時のまま。
優しいけれど、何処か弱くて…守ってあげなくちゃいけない部分もある。
桑古木涼権と言う名の、あの時の少年のままなのだ。
そして…この時になってようやく気付いた。
桑古木の一人称が「俺」じゃなく「僕」に戻りつつある事に。
彼は「倉成武」から「桑古木涼権」に戻ろうとしている。
「だったら…私も、田中優美清春香菜に戻らなきゃね」
「―――え?」
ふっと呟いた言葉に、不思議そうな表情を浮かべた桑古木の頭を
そっと撫でると、柔かな髪の感触がした。
少し嬉しそうに、でも恥かしそうに笑みを浮かべる桑古木の抱擁から抜け出す。
そうして桑古木の腕の中から逃れると、
私は膝を付いて桑古木の前へとしゃがみこんだ。
「ゆ、優?」
「……良いの…じっとしてて…」
それから、そっと指先を伸ばして
力を失っていた桑古木の肉体にゆっくりと触れた。
どろりとした白濁液とヌルヌルとした愛液に濡れてしまった、
桑古木の男の部分を、掌で包みこむ様にして、出来るだけ優しく握ってみる。
きゅ…と少しだけ力を込めると、掌の中でぶるっと桑古木の肉棒が震えた。
「あっ…ゆ、優…!だ、ダメだよ、そんな…」
「良いから…ね、私に任せて…」
「―――んっ!あっ…あぁっ」
柔らかく力を込めたままの掌を、ゆっくりと根元から先端の方まで上下させる。
ドロドロと混ざり合った液体が指先に絡みついて、私の掌を汚していく。
その度に、一端力を失ってしまっていた桑古木の分身は
ビクビクと小さく脈打ち、次第に固さを取り戻そうとして行った。
這わせている掌に…桑古木の性器の形が伝わって来る…。
「優…だ、ダメだよ。優の手が…」
「なぁに?…ふふ、気持ち良い……?」
「あ、う、うん…あ、そ、そうじゃなくて…、んぅ、よ、汚れちゃう…よ…」
「じゃあ、出血大サービス。…私が、綺麗にしてあげる」
ぴちゃり……。
そっと唇から伸ばした舌先で、私は桑古木の脈打つ肉棒に触れてみた。
苦い様な、不思議な味覚を伝えてくる液体を丁寧に舌で舐め取って行く。
―――ぴちゃ…ぴちゃっ…ぺろ、ぴちゃ…
「んっ…ん、んん…はぁ…んむ…」
「――あ…あ、うぁ…っ」
私の舌が蠢く度に、桑古木の口から声が漏れる。
その声が何だか可愛く感じられてしまう。
不意に込み上げてくる笑みを何とか噛み殺しながら、
私は何度も何度も舌で男の肉体をなぞった。
先端の部分から、根元の袋になっている辺りまで。
固さを取り戻していく肉体に浮かび上がる血管の筋を
辿る様にして、私の舌が桑古木の肉棒を往復する。
白い、凝固しようとしていた液体を、舐めてはごくんと音を立てて嚥下する。すると、今度は力を取り戻した桑古木の身体の先の方から、
ぬるぬるとした透明な液体が新しく溢れてきた。
桑古木の肉体は…もうすっかり固さを取り戻してしまっている…。
「んっ、はぁ…ふふ…また、固くなっちゃったね」
「ゆ、優――んっ、ふぁっ!」
「良いの…もっと…もっと、させて…んぅっ」
ビクビクと大きく脈打ち始めた男の体を…
私は、今度は根元まで一気に口に含んだ。
喉の奥の方を、肉体の先端が軽く叩く。
その衝撃にむせ返りそうになって、慌てて少しだけ唇を引いた。
―――くちゅッ…ぴちゃ、ぴちゃっ…ちゅく、ちゅるっ
「ん――…ん、んぅ…んっ、んはッ…ぁ…ん、んっんっ!」
「ぁ……あ、くは…ッ」
そのまま、含んだ肉棒をもごもごと口内で愛撫する。
キスをしている時みたいに…
舌を這わせたり、口腔でゆっくりと刺激を与えてみたり。
大きく痙攣して私の唇を荒らそうとする肉棒を、
なんとか宥める様にして愛撫を繰り返す。
すっかり力を取り戻した桑古木の肉体。
その固さに、身体の奥がきゅうっと
熱くなってしまう自分を、私ははっきりと自覚した。
鈍い痛みを残していた筈の「女」の部分が、
疼きを満たしてくれる相手を求めて…
今も口内でその存在を主張する桑古木の存在を求めて、
トロトロと甘い雫を溢れさせて行くのが分かってしまう。
「ん―――っ、あ…はぁ、はぁぁ……」
「……ふぅ」
ちゅるん、と音を立てながら、肉体を含んでいた唇を離す。
解放感に私が思わず大きな息を漏らすと、
それに応じて桑古木の口からも大きな溜息が漏れた。
お互いのそんな仕草に気付いた私達は、自然と顔を見合わせてしまう。
それが可笑しくて私が笑みを浮かべると、桑古木も笑顔で応じてくれた。
優しくて温かな、17年間ずっと私の胸を満たしてくれていた笑顔。
「桑古木……来て…」
「ゆ、優…」
「今度は私も…ね?」
「―――うん」
その笑顔に促される様にして囁くと、
桑古木は生真面目な表情を浮かべて、大きく一つ頷いた。
そのまま私の手を取って立ち上がらせると…すいっと私を抱き合えて、
まだ少し資料を積み上げたままの机の上に横たえてくれる。
(……あ…)
そのまま…半ば脱げ掛けた衣服をまとわりつかせたままの姿で。
横たえられた自分の裸身を、桑古木の視線が舐める様に這って行くのが分かった。
ツンを上を向いたままの膨らみの先端を…なだらかなラインを描く下腹部を…そして、そうやって眺められている事で、ますます甘く疼いている場所を。
「綺麗だよ優――すごく、綺麗だ」
「や…あんまり、見ないで…」
ねっとりと絡みついて来る桑古木の視線に耐えられなくなって、
私は両腕で半裸の体を隠そうとした。でも…
「見たいんだ…その、優の事全部…全部見せて欲しいって、ダメかな」
「桑古木……」
一言一言、言葉を捜す様にして口にされた台詞が聴覚を刺激する。
まだ少し躊躇いを残したままの瞳が、
許しを乞う様な色を浮かべて私の事を見つめていた。
……本当に、仕方ないんだから。
込み上げてくる想いに苦笑しながら、素直に両腕を机へと戻す。
熱っぽい瞳で私を見つめている桑古木の視線を感じる…。
その熱さにに耐えかねてそっと瞼を閉じると、
尖った乳首に桑古木の指先が触れてきた。
「―――あっ…ん、あぁッ!」
「あっ、ご、ゴメンっ」
一度男を受け入れた事で一層敏感になった身体が、
与えられた刺激にビクリと大きく反応する。
私の反応に驚いたのだろうか。
慌てて引っ込め様としていた桑古木の腕を、私は両手でそっと押し留めた。
―――とく…とく…とく…とくん…
普段よりも少しだけ早く、けれど規則正しい律動を刻む私の心臓。
その上にある小ぶりな膨らみを、桑古木の掌が優しく包みこむ。
温かくて…そして、気持良い。
「ねぇ、分かる?私の、心臓――ちょっとだけ…ふふ、ドキドキ言ってる」
「…うん」
「余り負担を掛けない様に…優しく、してね…」
「優……」
彼を促す様にして重ねた掌にきゅっと力を込めると、
その力が伝わったのか、桑古木の掌が優しく膨らみを揉んで来てくれた。
「あ…あ、あぁ…ンッ、ふぁ、あぁ…あ、あぁ…ッ!!」
「大丈夫――苦しかった?」
「ううん…平気よ…ぁ…あぁ…ッ」
ふにふにと柔らかさを確かめ、私の様子を伺いながら
繰り返される桑古木の愛撫が気持ち良い。
まるで、触れられた部分から、彼の優しさが伝わって来る様な感覚。
それが…私には溜まらなく嬉しかった。
「あ、あぁ…んっ、ぁぁ…其処…っ」
「――こ、此処…?」
「うん…あっ…あぁ…気持ち良い…ふぁっ…あんッ、桑古木ぃ…ひゃっ!?」
ちゅっ。
そんな、軽やかな音を立てて、桑古木の唇が私の膨らみの先端に触れた。
そのまま…右の掌では、もう片方の膨らみを優しく揉みほぐしながら、
桑古木の舌先が恐る恐る私の乳首に触れて来る…。
「あ――っ、あ、あぁっ…んっ、ひゃ…んっ!」
敏感になってしまった果実に絡みついて来るぬめぬめとした舌の感触。
温かな唇が私の乳首を挟み込み、一番先端の部分を舌でツンツンと突つく。
そっと一旦唇を離し、唾液を塗りつける様に赤い円をなぞる。
―――ぴちゃっ…ぺろ、ぴちゃ…ぬりゅ…ぺろっ
「んっ、あぁ…っ、や、其処…か、感じちゃう…!あっ…んあぁっ!」
甘い感覚に込み上げてくる感覚に、自然と声が唇から漏れ出てしまう。
きゅっと指先を噛み締めて、何とか声を殺そうとするけれど
…僅かな逡巡の後に、私は胎内を駆ける衝動に、素直に身を任せる事にした。