身体の奥から込み上げてくる感覚に、ねだる言葉が唇から漏れると、  
彼は生真面目な様子で小さく頷いてから、きゅうっと指先に力を篭める。  
 
「あんッ――…んっ、やぁっ…あ、あぁっ!あ…はぁ、はぁっ」  
「可愛いよ、優…。先っぽの方が、固くなってる」  
「んっ…ハァ…う、うん。其処が…あっ!?い、良いの…す、凄く…んぅ…!」  
「―――っ…こ、此処…?」  
「はぅっ、んッ!!――んっ、アァッ!…ん、んンッ…あぁ…ぁぁ…っ」  
 
 少しだけ戸惑いを含んだ動きの指先が、  
敏感になった両方の赤い蕾をクリクリと弄る。  
 
 きゅうっと強く、同時に摘み込まれる感触。  
欲しくて溜まらなかった快感を与えられた身体が、ビクビクッと大きく痙攣する。  
 
 高い声が溢れそうになった唇を慌てて噛み締めて、  
漏れ出る嬌声を噛み殺すけれど…切ない様な…  
溜まらない心地よさが私の脳を覆い包んで行ってしまう。  
 
「気持ち良い…?優…?」  
「んっ、ハァッ…ん、ぁぁッ!う、うん…ぁ…も、もっと…」  
「―――感じる…?」  
「あぁぁっ!ンッ、んぁっ!ひゃ…ぅ、ぅぅ  
 ―――ぁっ、あぁ…か、感じるの…胸の先が…ぁぁッ、  
 じ、ジンジンして…い、イイ…良いわ…あぁ…」  
 
 触れられた部分から産まれる快感を口にする事で、  
私は、自分自身の性感がますます高まって行くのを感じていた。  
 
 普段の冷静に努め様としている自分自身が、まるで嘘ででもあるかの様に。  
今の私の中には…貪欲に目の前の雄の温もりを欲している一人の雌が存在している……。  
 
 私の言葉に気をよくしたのだろうか。  
彼は少し照れた様な、でも嬉しそうな笑みを浮かべながら、  
執拗に私の二つの膨らみを愛撫して来る。  
 
 少し汗ばんだ掌がきゅうきゅうと柔かな乳房を絞めつけ、  
長い人差し指と親指がクリクリと固くなった乳首を玩んだ。  
 
「ぁ…んんぅ…はぁ、あぁ…ッ!あ、ぁぁ…せ、切ないの…ぁ…」  
「っ――胸の先が、弱いんだね…優は…」  
「う、うん…そうみたい…ンっ!凄く…あぁ…凄く身体が…あ、熱くなるの…」  
「ゆ、優……」  
 
 其処から伝わる甘い刺激に、私はすっかり全身を委ねてしまっていた。  
するりと先端の部分を弄っていた指先が肌の上を滑り、  
火照りを帯びた私の内腿を優しく撫でる。  
 
「ぁ………」  
 
 すべすべとした太腿の辺りを、まるで散策でもするかの様に蠢く掌の感触。  
その動きの意図を察して、我知らずの内に物欲しげな声が漏れてしまう。  
 
 タイトのスカートの裾を持ち上げながら…  
男の掌が、私の内腿を上へ上へと撫で上げる。  
じっとりと期待に汗ばんだ脚を撫でまわす。  
 
「あ…あぁ…そ、其処は…はぁ……ッ」  
「――優…触っても良い…?」  
「んっ…う、ぅ…うん。優しくね…」  
 
 そっと、耳元へと戸惑いを含んだ声が囁きかけて来る。  
同時に吹きかけられた熱い息遣いに、  
私の体の奥底からは……またじっとりとした熱い液体が溢れて、  
今まさに長い指先に触れられ様としている部分を濡らした。  
 
 触れられてしまえば、きっと彼にも伝わってしまうに違いない。  
私の体は、男の温もりと匂いに包まれて…自分でも恥かしいくらいに興奮していた。  
 口付ける度に、愛撫される度に、  
溢れ出した愛液が黒いシルクの下着へと染みこんで行ってしまう…。  
 
―――くちゅ…くちゅっ  
「優…ッ、凄く濡れてる…」  
「あ…ぁぁ、言わないでぇ…あぁ…」  
 
 半ば自分でも予想していた通りに。  
彼の指先に触れられると、私の女の部分は下着の上からでも、粘ついた水音を紡いだ。  
じわりと滲み出た液体は、薄布を隔てて触れられる事で、ますますその量を増していく…。  
 
―――くちゅ…じゅぷ…くちゅっくちゅっ…  
「んっ――あ、あぁっ、はぁっ!ぅ…っく、あぁ…」  
「ハァ…優…気持ち良い…?」  
「う、うん…うんっ。き、気持ち…良い…んぅっ!?」  
 
 左の掌がきゅうきゅうと乳房を絞めつける。  
右の指先が探る様にして下着の上から秘裂をなぞる。  
其処から生まれる熱情が体内を巡って、私の体をどんどん熱く火照らせていく。  
込み上げる快感に唇が甘い鳴き声を洩らすと、彼は自分の唇で其処を塞いで来た。  
 
―――ぴちゅっぴちゃっ、ちゅっ、ちゅく、くちゅッ  
 
 唾液が絡まり合う音が、溢れた愛液の水音に重なる。  
 
「んっ、ふはっ…ん、んぅ…ハァ…あん、あぁ…んん…」  
「くっ――んは…んっんん…はぁ…優…優…」  
 
 唇を解け合わせながら…体に体を押し重ねながら。  
興奮の色を含んだ彼の声が、  
何度も何度も息遣いに混ざる様にして、私の名前を紡ぎ出す。  
 
 長い間耳にして来た彼の声…  
その中でも、初めて耳にする「一人の雄」としての男の声。  
明確な欲望を内包した声に、身体の奥が一層強くきゅうっと締め付けられてくる。  
 
「あぁ…はぁ、あぁっ!…ぁ、あぁ…んっ、ふぁっ…」  
「優…ぅ…ハァ…っ!」  
「んっ……あ、あはぁッ!!」  
 
―――びくびくんっ!  
 
 荒荒しい動きで湿り気を帯びた薄布をずり下ろして、  
汗ばんだ指先が私の秘められた部分へと直接触れて来る。  
 
 不意に与えられた強い刺激に、  
敏感になった女の身体がビクビクと大きく打ち震えた。  
長い指先が…黒い下着のレースの隙間から侵入して、性急な動きで私の秘裂を撫で上げる。  
 
―――ぐちゅっ…クチュックチュッ、ちゅぷ…ぴちゃっピチャ…  
「ンッ―――――あっ、ハァッ!?あっあぁん…んぅ…ふはっ…!」  
   
 節くれだった長い中指と人差し指が、粘ついた水音を立てながら上下して、  
僅かに開き始めていた私の身体のスリットを押し開く。  
 
 ちゅくっ、と卑らしい音を響かせながら…  
2本の指先が、私の内側へと強引に押し入ってくるのが分かった。  
 
「はァッ…ひゃ、ひゃうぅ…ンッ、はぁッ…!あっ…あぁぁあ…」  
「優…凄く濡れてる…ぅ、はぁ…す、凄く熱いよ、優の中…!」  
「あぁ…ッ、あっ良い…ッ!か、感じるの…指先が私の中…あぁ…ッ」  
「ゆ、優…く…ぅッ」  
「あぁっ!かき回されて…私…私、ああぁぁッ…!  
 す、凄く…ハァッ、あ、あぁ…全身が熱くなってる…ああっ!!」  
 
 きっと…彼も初めてなのだろう。  
不慣れな動きで、けれど懸命に私の体内をぬるぬると指先がかき回す。  
 
 全身が敏感になっているからなのか…それとも、充分に潤っていたせいなのか。  
例え入り口の方だけとは云え、彼と同じ様に、初めての  
異物の進入を許した私の身体は、痛みよりもむしろ圧倒的な快感を伝えて来た。  
 
長い指先に潤んだ女の部分を掻きまわされて、  
私の身体は溜まらない熱さと心地良さに翻弄されている…。   
 
「あっ、あぁ…あぁ、はぁ…ッ!んっ、ふ…あぁっ、あぁぁあん」  
「ゆ、優…優の中、凄く…はぁ…はぁ…トロトロに濡れてる…」  
「――ッ!んっ、ふぁっ!あぁ…あぁん…くぅ…あぁ…」  
 
 ヌチャヌチャと響く水音と吐き出される熱い息遣いに、  
私の身体からは次々に新しい雫が溢れては彼の指を濡らして行った。  
 
 温もりを求めて疼いていた身体に与えられる快楽の波に…  
私の理性はどんどん私の手の届かない遠い場所へと流されて行ってしまう…。  
 
(あぁ…ッ!も、もっと…もっとして…私を滅茶苦茶にして…私を壊して…)  
「んあっ、あはぁッ!――あぁ、あぁぁ…ひゃうっ、あぁん…あ、あぁっ!」  
 
 噛み締めていた唇から甘い泣き声を洩らすと、  
その事への羞恥が肉体に一層激しい火を点ける。  
 
 ひょっとしたらそんなふうに、壊れてしまう程の快感に満たされて…  
今だけは、全てを忘れてしまいたかったのかもしれない。    
 
「ぁ…あぁ…はぁ、ん…あっ、私…」  
「優――?」  
「す、凄く…熱いの…身体の奥がジンジンして…気持ち良いの…」  
「ゆ、優…っ、優、優ッ!」  
   
 込み上げてくる感覚に閉じていた瞳を開くと、  
熱っぽい光を宿した彼の瞳と目が合った。  
 
 戸惑いと興奮を同時に浮かべた濡れた瞳…。  
 
「桑古木…」  
「―――優…?」  
 
 私はもう一度彼の名前を呼ぶと、  
お互いを支える様にして相手に絡めていた腕で、今度は男の体をそっと押し返した。  
 
 濡れた秘裂がしっかりと咥え込んでしまっていた桑古木の指先。  
溢れた愛液で濡れそぼったそれを一旦抜いてから、  
両手を壁について彼に背中を向ける。  
 
 半裸の身体を包んでいた白衣の裾を持ち上げて  
…私は桑古木の方へとお尻を突き出した。  
 
「ゆ、優…!?」  
「来て…お願い…」  
 
 とろり、と。  
新しい蜜が溢れるのをしっかりと自覚しながら、そんな言葉を口にする。  
 
 お尻を突き出すと、自然にめくれあがったタイトのスカートからは、  
シルクの布地をじっとりと張りつかせた女の部分が見え隠れしている…。  
 
 逃げ出したい様な恥かしさに、  
ますます火照る身体を感じながら、私は彼の行動を待った。  
 
「優…挿れるよ…」  
「―――…ッ!」  
 
 じっとりと汗ばんだ掌の感触を感じる。  
滑らかな絹の薄布と素肌の間に指先が滑りこんで、  
半分その役目を果たさなくなっていた下着をずり下ろした。  
 
 濡れそぼった其処に…熱を帯びた桑古木の視線を感じる。  
視線を感じた私の其処は、その事でますます熱い雫を垂らしてしまう…。  
 
「お、お願い、早く…じ、焦らさないで…」  
「う、うん。優…じっとしてて…」  
「ぁ――はぁ…んッ…」  
 
 露になった私の腰を、逃れられない様に彼がぎゅっと引き寄せた。  
怖くないと言えば…きっと嘘になってしまうのだろう。  
 
(でも、今は…)  
 
 今は、この身体に灯ってしまった炎を彼に鎮めて欲しい。  
私の体を滅茶苦茶にして、壊れるくらいに激しく抱いて…  
今も胸に燻り続ける、未練がましい私の心を破壊し尽くして欲しかった。  
 
―――ヌルッ…ぬぷ…っ  
 
 生暖かい液体を先走らせた男の固い先端部分が、  
躊躇いがちに私の谷間に触れて来るのが分かる…。  
 
―――ヌプッ…ズブッズププッ…  
「はぁ…ッ、あ、あぁ…あ…ぁぁ、あ…ッ!あぁ…ん、あぁあっ!」  
 
 トロトロと溢れた愛液で濡れた私の入り口が、その時を待っていたかの様に…  
男の体にゆっくりと襞を押し開かれて、淫らな鳴き声を上げるのが…分かる……。  
 
「く…はぁっ、優…優っ」  
「あぁっ、あん、あぁッ!!あぅ…んっ、ぅぅ…く…ぅんっ」  
 
 ヌプヌプと肉の谷間を掻き分ける様にして入り込んでくる男の体。  
固くなったその部分が、まだ馴染み切らない私の入り口を  
強引に押し開いて、奥へ奥へと侵入して来ようとしている。  
 
 例え、過去に一度の出産経験をしているとは言っても、  
私の体はまだ本当の男を知らない。  
 
 初めて受け入れる自分以外の侵入者の存在に、  
男の欲望を受け入れようとしている其処が、ピリピリとした鈍い痛みを訴えて来た。  
 
(んっ――い、イタ…ッ、痛い…っ)  
「あ…ふ、ふぁっ、はぁ…くぅ…あぁっ、はぅ…んっ、んんっ…!」  
 
 悲鳴を上げそうになる唇を噛み締めて、何とか声を押し殺す。  
私の体があげる悲鳴に気付いているのかいないのか…  
次第に性急な動きで、男の固くなった部分が奥へと入りこんできた。  
 
―――ズブッ…ズブブッ、ズプッ、ヌプププッ!  
「あ――――あぁっ!!!あぁぁぁあぁぁあッ!!?」  
 
 ズプッと強引に腰を引き寄せられて、  
私の体は一層深い部分へと男の侵入を許してしまう。  
 
 全身をガクガクと貫く様な衝撃に、とうとう悲鳴が漏れてしまうと、  
その時になって初めて、彼も心配そうに私の方を伺ってきた。  
 
「ハァ…ゆ、優…ごめん…」  
「桑古木……」  
「ごめん…痛いのかな…良く分からなくて…んっ、はぁ…ッ」  
「あっ、あぁっ!ふぁっ!?」  
 
 彼が荒荒しい呼吸を繰り返すたびに、  
内側に入りこんだままの状態の肉棒がビクビクと大きく震える。  
 
 小刻みに秘裂を掻き回すその動きに、  
またトロリとした液体が身体の奥底から溢れて、  
肉体と肉体の結合した部分の動きを促そうとしていた。  
 
「あ…あ、あぁ…あ…はぁ………」  
 
 かぁっと、鈍い痛みを感じていた筈の雌の部分に疼く様な感覚が広がる。  
それは貪欲な…初めての痛みさえ中和させる様な、快感を求める感覚だ。  
 
「あ…ッ、はぁ…お願い、来て…」  
「ゆ、優――…」  
「来て、早く…ね、お願い…あぁ…お願い、挿れてぇ…!」  
 
 挿れて。掻き回して。滅茶苦茶にして。  
唇から、まるで堰を切ったかの様に淫らな言葉が溢れ出してしまう。  
 
 それに応じる様にして…奥から溢れてしまう愛液と、  
きゅうきゅうと蠢いてしまう肉襞が、女としての本能の命じるままに、  
早く早くと彼の行為を促していく…。  
 
「来て…お願い…お願い…」  
「優…ッ!く…い、行くよっ」  
 
 はぁっ…と、大きな息を一つ吐き出して。  
ゴクリ、と溜まっていた唾液を飲み込んで。  
彼はぎゅうっと私の体を抱き寄せた。  
 
 そのまま、壁に押しつける様にして背後から私を抱き締める。  
壁についていた掌に、男の大きな掌が重ねられる。  
その温もりを感じた――その瞬間に。  
 
 私の身体は、背後から一気に猛ったモノに奥まで貫かれてしまっていた。  
 
―――ズブブッ、ズブブブブブゥッ!  
「あっ、あぁ…ああぁぁぁああぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」  
 
 ヌプッヌプッっと入りこんだ肉棒が私の内側をゆっくりと掻き回す。  
根元まで男の体を咥え込んで。一番奥の方まで押し開かれて貫かれてしまって。  
 
 私の身体はビクビクと痙攣しながらも、  
全身で入りこんできた男の感覚を貪ろうとしていた。  
 
「アッ…あぁっ、あぁ…はぁっ!はぁぁ…はぁ、あぁあっ…あ、ああん…」  
「優…はぁ…優…気持ちいい…」  
「んっ!あぁっ!!あ、あぁぁぁっ!」  
 
 露になった私のお尻に、彼の腰がパンパンと音を立てて打ちつけられる。  
奥の方まですっかり入りこんでしまっている癖に、  
更に深い結合を求めて、彼は私の体を背後から何度も貫いた。  
 
―――パンッ!パンッ!ズブっ…ズブブブッ!パンッ!   
 
「あぁ…ッ!ん、あぁぁッ、熱い…っ!  
 あぁ、お、奥まで…奥まで来てる…!あっ、ああぁぁっ!」  
「優…あぁ…ッ」  
「こんな…あぁ…!私、わ、私…良いの…アッ!?  
 あんっ、あぁぁあぁっ!はぁ…あぁ、ああぁぁぁんっ!  
 す、凄く…あぁ…感じちゃう…」  
   
 引き裂かれた瞬間の痛みに耐えると、  
次に私を包みこんだのは云い様の無いアツイ感覚だった。  
 
 入りこんで来た異物の圧迫感が、  
私の肉体の奥へとクラクラする様な激しい刺激を与えてくる。  
 
 …息が苦しい。呼吸が上手く出来ない。  
 
「あぁ…ッ!あぁっ、ハァッ!あ…あん…あぁぁあぁっ!あ…あぁぁ…ッ」  
 
 甘い鳴き声と共に息を吐き出し、その分だけの酸素を補給しようとする。  
パクパクと口を開けた酸欠の金魚の様に…  
何とか、込み上げる感覚を押し殺せるだけの、新鮮な空気を吸いこもうとするけれど…。  
 
―――ズンッ!ズブッ、ズブブッ!ヌチュッ、ズ、ズブッ!  
「ふぁっ!ハァッハァッ…んぁっ!あぁっ、あんあん…あ、あぁぁぁぁッ」  
 
 背後から全身と深く激しく貫かれる度に、溜まらない甘い感覚と  
胸を締め付ける様な切ない気持ちが体内を掛けて、上手く呼吸をする事が出来ない。酸素を補給するべき口からは、次々に溢れた甘い嬌声が漏れていく……。  
 
「あぁ…ッ、桑古木…桑古木…っ!」  
「違うよ――俺は、桑古木涼権じゃない…」  
「あ…はぁ、あぁ…か、かぶら…ぎ…?」  
 
 私の体の内側へとへと激しい抽挿を繰り返しながら、彼が耳元へ優しく囁く…。  
次々に与えられる快感の波に霧が掛かってしまった脳裏に、  
それはこの上無い甘美な睦言の様に響いた。  
 
「俺は武だよ、今は…」  
「くらなり…?」  
「そうだ、優。今は――倉成武だよ」  
「あ―――倉成、倉成ッ!!」  
 
 ずぶずぶと胎内を掻き回す肉体の感覚。  
優しく抱き締めてくれる男の体。  
 
 掌を包みこんでいた掌が、震動の度にたぷたぷと  
揺れていた膨らみをきゅっと揉みしだく。  
 
「あっ!?あぁあっ、ハァッ…あ、あぁん…」  
「優の胸…柔らかいな…」  
「ふぁっ!あ…うん、あぁっ…凄く、私…」  
「また、先っぽの方、固くなってる…」  
「あ――あぁぁぁあああぁっ!!」   
 
 倉成…倉成、倉成。  
背後から回された掌が膨らみを包みこんで、固くなった乳首をくりくりと弄る。  
その間もヌルヌルと愛液に溢れた秘裂を  
突き上げる動きは、ますます激しさを増していった。  
 
―――ズンッ!ズンッ!ズブ…ズン、ズンッ!  
「ああぁぁぁ…ッ!んっ、んんっ…!あぁぁ…あぁ、ああぁぁぁッ!」  
 
 背後から途切れる事無く繰り返される男の行為に、  
身も心も翻弄されて、全てを委ねてしまいそうになりながら。  
 
 私はもう…自分がどちらに抱かれているのか。  
抱かれたがっているのかが、分からなくなってしまっていた。  
 
「アッあぁ…あんっああッ!あぁぁっ!あ、そ、其処…あぁぁあっ!!」  
「優…此処…?」  
「んっ――あ、あぁッ!もっと…あぁ、掻き回して…ッ」  
 
 ただ、全身を激しく貫く感覚だけを感じている。  
熱くなった身体を掻き回す熱くなった肉体。  
其処から伝わる快感に甘く痺れた脳裏へと、甦るのは何度も目にした彼の面影だった。  
 
 17年前に、何度も何度も目にした倉成の明るい笑顔。  
どんな時にも諦めない、どんな時にも悲観しない、その眩しい笑顔が好きだった。  
 
 其処にある彼の強さと真っ直ぐさに、どれだけ私が惹き付けられたか  
…今はもう分からなくなってしまったけれど。  
 
 でも、あの海底で過ごした短い時間の間。  
私が最後まで諦めずに頑張れたのは、  
やっぱり其処に倉成の笑顔があったからなんだと思う。  
 
 そして…17年の間誰よりも傍にいて、  
何時だって私を見つめてくれていた桑古木の笑顔。  
 
 長い長い17年の年月の中で…。  
彼の笑顔が傍にあったから、私は此処までやって来ることが出来た。  
ユウにさえ打ち明けられない本当の私を・・・「田中優美清春香菜」を、  
受け止めてくれる桑古木の笑顔があったから。  
 
 私はBWとの約束を果たす事が出来たのだ。  
   
―――パンッ!ズッ!ズブッズブブッ!  
―――ズンッズンッ…ヌププッ!パンッパンッ!  
「あ…んっああぁ…あぁ…ふぁッ…あ――あ、あぁぁぁッ!」  
「優……優、優…ッ」  
 
 淫らな水音を響かせながら。高い肉と肉がぶつかる音を立てながら。  
まるでうわ言の様に、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。  
その声に背後を振り返ると、其処にあるのは切な気に眉根を寄せた桑古木の顔だった。  
 
(かぶらぎ…)  
 
 唇から荒い息遣いを繰り返しながら瞳を閉じて、  
私の体を貫き続ける桑古木の姿が視界に広がる……。  
 
 きゅうぅっと、胸を絞めつける様な  
切ない感覚が込み上げてきて、私の中を満たしていく。  
それは…快感とはまた違った感覚。  
 
 嬉しい様な、悲しい様な、  
不思議な感情が込み上げてきて、私の中を一杯にしてしまう。  
 
「あ…あぁぁぁっ!!あぁっ、んぁああぁッ!」  
 
 ……桑古木…。  
 
「ハァッ、あぁっ、あぁぁああぁぁッ!!ぁ、あぁっ!」  
 
 桑古木…桑古木、桑古木…!  
 
―――ずぶッ!ズブブブッ!ズ…ズズ…ッ!パンッ!ヌププッ!  
「あ――あ、アァッ!もっと突いて…もっと…あぁっ!!  
 もっと抱いて、奥まで…私を貫いて…ッ!アァァっ!んッんあぁぁっ!」  
「優…ッ!はぁっ、優…あぁ、優、優…っ」  
 
 私を包みこむ温もり。私を貫く肉体。私の名前を呼ぶ声…。  
私は…桑古木に抱かれている。  
桑古木と一つになって、結ばれて…全身で彼の全てを受け止めている…。  
 
そう思うと、ますます全身が痺れる様な甘い快楽の波に包みこまれていった。桑古木と繋がっていられる事が嬉しい。  
素直な喜びに満たされて、私の性感は急速に高まっていこうとしていた。  
 
「アァッ、あんあんあぁッ!ハァッ、桑古木…桑古木、桑古木ぃッ!」  
「ゆ、優…?く、ハァッ…ん、うぁっ!」  
「あぁ…良いの…桑古木…凄く、あぁん…ハァ…あ、あぁぁぁあッ!  
 あんっ…あぁぁ…凄く、熱い……っ」  
「―――ッ!!」  
 
 彼の肉体を求めて、自分の身体の内側がビクビクと脈打つのが分かった。  
きゅうきゅうと自分でも恥かしいくらいに、  
潜りこんできた熱い肉の棒を、私の襞が締め付けていく。  
 
ヌルヌルとした体の奥底から、  
一層粘ついた蜜を零しながら、私の女の部分が桑古木に絡み着いて行く……。  
 
―――ヌブッ!ズブズブっ…ヌチュッ、ヌチャ  
―――ヌル…ズブブッ、ズブズブッ!  
「あ…桑古木…あぁ…桑古木…ッ!あ、アァッ!あ…んああぁぁぁぁっ!!」  
「ゆ、優…ッ!そ、そんなに絞めたら…ッ!」  
 
(―――…え…っ)  
 
 込み上げる甘い悦びに胎内がきゅうっと収縮した、その瞬間に。  
私の中に潜りこんだ桑古木の体がビクンッ!と大きく跳ねあがるのが分かった。  
 
そのまま、奥を突き上げていた肉棒の先端から  
熱い液体が飛び散って、私の深奥を叩きつける…!  
 
―――ビュクッ!どくッどくッ!ビク…ビク、ビクンッ!  
「う、あぁっ!?ンッ…あ――あぁああぁあぁぁあぁぁあ〜〜〜〜ッ!!!」  
「うぁっ…ゆ、優…ゆう…ぁぁ…」  
 
 敏感になって熱くうねっていた膣の中一杯に、  
桑古木の白い精が注ぎこまれて行く。  
 
伝わって来るその感覚に切ない泣き声を洩らしながらも、  
私の中はきゅうっと桑古木を絞めつけて、  
最後まで彼の欲望を絞り取ろうと貪欲な収縮を繰り返した。  
 

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