「ううっ…あぁ、あぁぁぁ…ぐすッ、あ、あぁ…うぅ…うあぁぁん」  
「優……」  
「…バカ…倉成の…ッ、ぐすっ…うぅ…」  
 
 倉成の事が好きだった。  
底抜けの明るさと、どんな時にも諦めない強さと、真っ直ぐな笑顔が大好きだった。  
 
 でも、彼が好きなのは私じゃない。  
倉成の心は別の人間のモノで…彼の瞳は、決して私を映してはくれなかった。  
 
 とっくの昔に終わっていた筈の…17年前の私の恋。  
そう。17年前のLemuで、私はつぐみに負けたんだ。  
 
 次から次へと溢れた涙が桑古木の胸の辺りを濡らす。  
 
「僕を武だと思っていいよ…」  
「う…うぅ…ヒック」  
「今だけ…優も僕を倉成武だと思って、好きなだけ泣いていいよ」  
 
 堪えきれずに泣き声をあげると、  
桑古木はまるで子供をあやすみたいに、その掌で何度も何度も私の頭を撫でてくれる。  
其処から伝わる…桑古木の真摯な優しい気持ち。  
 
 涙に濡れたまま顔を上げると、心配そうに此方を見ている顔がある。  
心の底から自分を思ってくれる優しい瞳。  
17年間ずっと…すぐ傍で私を見守ってくれていた瞳。  
その瞳に…今だけ甘えてしまいたいと思った。  
 
「桑古木…」  
「桑古木涼権じゃない。俺は…倉成武だよ」  
「倉成――?」  
 
 そっと、柔かな頬へと手を伸べる。  
指先が触れた部分からは…幻じゃない、確かな温もりが伝わってきた。  
 
 そのまま…まるで何か神聖な儀式ででもあるかの様に。  
私は、目の前の男の唇を奪ってしまっていた。  
 
「ッ!?――ん…ん、む…」  
「ぁ…んふ…んっ、んんっ…ふぁ…ん、んんぅ…」  
 
 驚きのせいだろうか?一瞬固くなった上唇と下唇の僅かな隙間に舌をこじ入れる。  
促す様に歯茎を舐めると、僅かに開いた口内へと舌先を侵入させた。  
 
 ねっとりと私を酔わせる、甘い唾液の味が広がる。  
戸惑いながらも…男の舌先が私の舌の動きに応えてくれるのが分かった。  
 
「ゆ、優――んむっ…ひゃ、んんっ」  
「ふぁ―――…ひゃ、ぅ、んんぅ…あ、はぁ…んっ…ひぁ…」  
 
 僅かに萎縮してしまった彼が逃れられない様に、触れていた掌で両方の頬を挟みこむ。  
何度も何度も…男の口内でぬるぬると唾液が溶け合うのが分かった。  
全身を包みこむ陶然とした感覚に…彼も、そして私も、すっかり包みこまれてしまっていた。  
彼はもう、私の口付けを拒もうとはしない…。  
 
「抱いて…お願い…」  
 
 睦み合った証の煌く唾液の橋を残しながら。  
ようやく男を解放した唇から、漏れたのはそんな言葉だった。  
私を見つめる彼の瞳に…今度は、はっきりとした戸惑いの色が浮かぶのが分かる。  
 
「優…?」  
「お願い、一度だけで良いの。それで全てを忘れるから。  
 何時も通りの私に戻るから。だから…今だけ、私を抱いて。滅茶苦茶にして…」  
「――――優…ッ!」  
 
 …ひょっとしたら私は、溜まらなく卑怯な事をしているのかもしれない。  
そんな想いが、甘い悦びに蕩けた脳裏の裏側を掠めた。  
涙を浮かべた悲痛な表情のままで…私は真っ直ぐに彼を見つめる。  
 
(桑古木は倉成武じゃない…)  
 
 その事を誰よりも分かっているのは私の筈だった。  
そして…彼もまた、私こそが一番それを知っていると思っている筈だ。  
 
 そう、彼は倉成じゃない。  
彼が倉成なら、きっとどんな状況になっても…女としての私を受け入れてはくれない。  
つぐみを悲しませる様なことは、しない…。  
 
 でも、桑古木は倉成じゃない。だからこそ、今の桑古木には私を拒む事が出来ない。  
それを分かった上で、私は桑古木に一時の関係を迫ろうとしている…。  
 
「抱いて…私を……」  
「―――優、それは…」  
「抱いて、今だけ…今だけ、全てを忘れさせて…」  
「優……優ッ、優、優―!」  
 
 濡れた瞳で彼を捉えたまま、私は熱くなった体を彼へと押しつけた。  
其処から伝わるお互いの温もり…。  
 
 きゅうっと、火照った体が強く男の二の腕に引き寄せられ、抱き締められる。  
抗う事無くその動きに身を任せると、今度は彼の方から唇を重ねて来た。  
まだ少し不慣れなたどたどしい動きで、舌が口内へと入りこんでくる。  
 
―――くちゅっ…ちゅぷっ、クチュ、クチュっ  
 
「ん…はぁ…あぁ、あ…んぅ…あぁ――…!」  
 
 荒荒しい動きで口腔をなぞる舌先を自分の舌で絡め取る。  
どうすれば良いのかが分からないのだろうか。  
がむしゃらに蠢こうとする舌を導く様にして…私は、舌に舌を絡め合わせて行った。  
私の口の中でぬめった水音が反響する。   
 
(あぁ――あ、ぁ…あぁ…アツイ…っ)  
 
 その音に火を点けられてしまったかの様に、私の身体がきゅうっと淫らしい熱を帯びた。女としての部分を満たして欲しくて、自分を包みこむ男の熱に敏感に反応してしまう。  
この時の自分が、どちらに抱かれる事を望んでいたのかは分からない。  
でも、今は…全身を包みこむこの温もりに縋ってしまいたかった。  
 
「ンッ…はぁ…ぁ…あぁ…ハァ…」  
「―――優…良い…?」  
 
 耐えず絡みあう動きに痺れてしまった舌先が離れると、  
熱情に潤んだ彼の瞳が私を見つめていた。  
 
 許しを乞う様な、様子を伺う様な表情。  
そんな表情が何だか可愛くて、私は両の腕を男の首筋に回す。  
それは、小さな了承の合図だ。  
 
「優の身体…凄くあったかい…」  
「――――――ぁ…」  
 
 その意図を察して、彼は私の体を研究室の壁へと押しつけた。  
そのまま、更に強く男の体が押しつけられてくる。  
 
 男性としてはやや細い彼の繊細な指先が。指先の割には大きくて無骨な掌が。  
明確な意思を持って衣服の上から私の全身を這い回り、  
敏感になってしまった体の奥を刺激した。  
 
「あっ――ンッ、あぁ…あ、あン…」   
「優…」  
「あっ!?あ…あ、あぁん…」  
   
 さっきまで私の舌と一つに溶けていた筈の舌先が、ぬめぬめとうなじをなぞる。  
羽織っていた白衣のボタンを外し大きく前を開けると、  
肩の方まで露出させられた肌の上に、今度は唇を這わせてくる。  
 
―――ちゅっ、ぴちゃっ…ちゅ、くちゅっ  
「んっ――…あぁぁあぁッ!!」  
 
 びくびくと体内で跳ね回る様な甘い感覚に、思わず高い悲鳴が漏れてしまう。  
露になった肌の部分を舐め回す舌先。細い指先が探る様にして膨らみの辺りに触れてくる。  
 二つの掌にきゅうっと力をこめ、黒いノースリーブの上から乳房を揉まれてしまうと  
…もう、自分でもどうする事も出来なかった。  
 
「あ、あぁ…あん…はぁ、あぁ…お、お願い…」  
「優……気持ち良い…?」  
「う、うん。ね…じ、直に…触って…」  
「―――うん…」  
 
 恥かしさと焦れた感覚の狭間で揺れたのはほんの一瞬。  
頬に朱が昇るのを自覚しながらも…唾液に塗れた唇から、  
私は懇願の言葉を洩らしてしまっていた。  
 
 不慣れな仕草できゅうきゅうと膨らみを  
揉み解そうとする掌に、身体の奥底がジンジンと痺れてしまう。  
 
 自分の体が火照って…甘い疼きを持て余している現状が、  
私の理性と羞恥心を、手の届かない遠い場所へと持ち去ってしまう…。  
 
「あっ…はぁ、あっ!―――あぁ…ぁぁあぁ…」  
「ゆ、優…」  
   
 たどたどしい動きの右の掌が衣服の裾を持ち上げた。  
そのままスルリ、と布地を掻き分けて私の肌へと指を這わせて来る。  
 
 緊張している為だろうか。  
彼の指先は冷たくて、その感覚にますますゾクゾクする様な愉悦が全身を駆けた。  
 
「あ…あん…あぁ…はぁっ、はぁ、ハァ…そ、其処…」  
「うん―――固くなって来てる」  
「あっ!?…ぁ、あぁッ…!」  
 
 ノースリーブと同じ、黒いブラの上から。  
彼はまるで壊れ物でも扱うかの様に、  
優しく…感触を慎重に確かめながら、私の左の膨らみを揉んだ。  
 
 とくんとくんと普段よりも大きな鼓動を刻んでいる、私の心臓。  
その音を確かめる様に、探る様に、何度も何度も私の胸を揉み解す。  
 
 そんな掌の温もりに包まれて…  
敏感になった先端の部分が、むずむずと次第に尖り始めるのが分かった。  
 
 掌からそれを悟ったのだろう。  
同じ様に、そんな私の身体の変化に気付いた男の指先が、  
下着のレースの上からきゅっと其処を摘む。  
 
「ひゃ、んっ…んぅ、ぁぁッ!あ…はぁ…っ」  
 
 突然与えられた刺激に、身体がビクンと大きく跳ねあがった。  
ますます其処を尖らせる様にして、  
きゅっきゅっと指先が私の膨らみの先端…固くなった乳首の部分を摘む。  
レースごしに強く弄られると少しピリピリとした痛みが其処に伝わって来た。  
 
「あぁっ…ね、ねぇ…少し、痛いの…」  
「あ…ゴ、ゴメン。力、入れ過ぎちまったかな」  
「そうじゃないわ…少し苦しいのよ。だから…」  
 
 ――ブラを外して。  
首筋にキスを繰り返していた顔を上げさせて耳元に小さく囁くと、  
彼は一瞬頬に朱を上らせて…少しだけ緊張した面持ちで頷いてくれた。  
 
 胸元へ侵入していた右手を一旦抜くと、今度は両方の掌で私の衣服の裾を持ち上げていく。  
 
「―――ぁっ…あぁ…んぁっ…」  
「綺麗だよ、優」  
「バ、馬鹿…そんな台詞…ぁ…十年、早いわよ…はぁ」  
 
 まだ少し肌寒い5月の空気に露にされた素肌。  
胸元を覆う黒い下着だけを残して、上半身が男の熱っぽい視線に晒される。  
 
 そっと自分の体に視線を移すと、  
思っていたよりもずっと固く尖った先端がブラのレースをツンと持ち上げていた。  
 
 自分で思っていたよりもずっとはしたないその姿に、  
ますます身体が熱く火照ってしまうのが分かる。  
    
「ね、早く……外して…」  
「――う、うん」  
 
 ごくり、と彼が唾液を飲みこむ音が聴覚を刺激した。  
その音に、さっきまで解け合っていた男の唇の感触が、不意に蘇えって来る。  
温かくて柔らかいその感触。  
 
 彼が外し易い様に、僅かに背中を壁から浮かせると、  
滑りこんで来た指先が下着のホックを外した。  
ストラップレスの下着は、ホックを外すと、するりと肌を伝い落ちる。  
 
 つぐみや空と比べると…悔しいけど、  
少し小振りの二つの膨らみが、外気に触れて小さく震えた。  
そんな乳房を庇う様にして、彼の両の掌が乳房を包みこむ。  
 
「柔らかいな…優の胸…」  
「んっ!――はぁ…あ、あぁ…ンッ…」  
「柔らかくて、すごく温かい…」  
「あっ!あぁっ……あ、ぁぁ――んぅ…じ、焦らさないで…」  
「うん…また少し、力入れるよ…」  
 
 温かな掌が、ゆっくりと感触を確かめる様にして私の胸に触れてくる。  
けれど、ジンジンと刺激を求めて尖り始めた先端は…  
優しい愛撫よりも、もっと強い男の行為を求めていた。  
 
 

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