「はぁ…はぁ…つ、ぐみ―――つぐみ、つぐみ…ッ!」  
「アッ――ああぁぁぁんっ!ひぁっ!ああんッ!あんあんあぁあッ!  
 た、武、は、はげし―――――ん、んふっ  
 …ん、んむ!あ、ひゃぅ、んっ…!んんんんっ!」  
「――――ん…ふは…ん、んむ…ぅ」  
 
 腰で下からつぐみの秘裂を突き上げながら、赤い唇を唇で塞ぐ。  
しっかりと俺の肉体を咥え込んで離さない下の唇。  
 
 その動きに反応しているんだろうか。  
つぐみはすぐに、入りこんだ俺の舌に自分の舌を絡め合わせてきた。  
 
―――くちゅっ…ぬるっ、ちゅぷっ・・・クチュ、クチュっぴちゃ…  
―――グチュ、ヌプッ!ズッズブッ!ヌプ…グチュグチュ、ズブブブッ!  
 
 俺達の上の唇と下の唇が溶け合う音が、同時に室内を満たしていく。  
蒸せ返る様な男と女の匂い……。  
 
 唇を塞いでいるせいだろう、  
時折苦しそうな、くぐもった声がつぐみから漏れる。  
 
 ぬめぬめと絡み対来る甘い舌先。  
きゅうきゅうと絞めつけて来る熱い襞。  
その全てが俺の欲望を急かして、確実に入りこんだ分身を追い詰めていく。  
 
 固く猛った部分に体中の神経が集中してしまったかの様に…  
ただ、つぐみから与えられる圧倒的な快感だけが俺の五感を包みこんでいた。  
 
「んっ―――ハァ…つぐみッ…」  
「は…あ、はぁ…あっ!あっ…あぁっ…ああっあっあッ!  
 あっあン!あッ、あぁぁ!あぁ…!あぁああぁぁぁッ!!  
 ダメ―――イヤ、もう…もう、私…もう…ッ!!」  
「くっ…はぁ、俺も……ッ!」  
「あっ!あぁっあっ!あっあぁっ!  
 い、イッちゃ――あっ…あぁぁっあぁあぁぁっ!!!」  
 
 ビクビクと大きな痙攣を始めたつぐみの細い体。  
ただ胎内だけがキツクキツク、俺を締上げて絞めつけてくる。  
脳裏に弾ける白い光が、同時に俺の方にも限界が訪れた事を告げている。  
 
 このまま出したい。全てをつぐみと一つに溶け合わせてしまいたい。  
 
 下腹部から全身を揺さぶる、強烈で…そして甘美な誘惑。  
ぐいっと細い体を抱き寄せて、俺は自分の腰をこれ以上無い程深く埋めた。  
 
 其処で一旦動きを止めて…  
俺は、分身に込み上げてくるその衝動に、素直に身を委ねる。  
 
「―――ッ、出すぞ…ッ!」  
「あっ……あああぁああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」  
 
―――ドクンッ!ドクッ、ドク…ドクンッ、ドクン…ドプ…ッ、トクトク…  
 
 下腹部を取り巻く欲望のままに………  
俺は、溜まっていた欲望の雫を、つぐみの胎内へと注ぎ込んだ。  
 
 絶頂感と開放感が同時に全身を包みこんで、俺は想わず大きな息を吐き出してしまう。  
白濁した俺の精を、つぐみは華奢な体を弓なりに反らしながら受け止めてくれる。  
 
「ッ…ふぅ…ハァッ、つぐみ…」  
「あぁっ!あっ、あっ……あぁ…あん、あ、あ、あぁ……ッ」  
 
 俺の分身が震えて、其処から欲望が胎内に吐き出される。  
 その度に…つぐみは細い体をビクンビクンと跳ねあがらせて、  
大きく痙攣しながら甘い鳴き声を上げている…。  
 
 ようやく溜まっていたモノ全てを吐き出した俺の肉棒に、  
つぐみの肉襞がきゅうきゅうと優しく絡みついて来た。  
 
「―――はぁ…はぁ、あぁ…たけ、し…」  
「平気か?」  
「……ん…うん…大丈夫よ……はぁ…」  
 
 やがて、力が抜けてしまった様に  
ぐったりとして倒れこんで来た体を、俺はぎゅっと抱き締めてやった。  
 
 それが嬉しかったのか、  
まだ俺を咥えこんだままのつぐみの秘裂が、ひくひくと小さく蠢く。  
 
 俺は苦笑しながら、つぐみの顔を上げさせてそっとその唇を奪うと、  
吐き出した欲望を彼女の蜜に混ぜ合わせる様に、ゆっくりと胎内をかき回した……。  
 
 ………柔かく温かな気配を感じる。  
光。遠く、長い道程を潜り抜けて来た様な気がする。  
――闇の終わり。柔らかい、白い光の中に俺はいた。  
 
 以前にも一度、感じた事のある感覚。  
心地よい満足感に抱かれる様にして、俺は其処に存在していた。  
 
(…そうだ、思い出した)  
 
 それは、きっとあの時と同じ。  
IBFで生まれ変わった、17年前のあの時と同じ光の中に俺はいた。  
 
 そして今も…同じ様に、つぐみの温もりが傍には在った。  
つぐみの鼓動に包みこまれていた。  
 
 丁度生まれ出でる前の胎児の様に…安らかな気持ちで満たされていた。  
 
 いや、確かに俺はもう一度生まれ変わったのかもしれない。  
深い深い海の底で垣間見た「死」と云う名前の闇の中を抜けて、  
俺はもう一度……この世界に戻って来たのだから。  
 
(そして多分、俺を其処から呼び戻してくれたのは――)  
 
 俺が其処まで思い至った途端に、  
腕の中で小さく震えていたつぐみが、ふぅ、と小さな溜息をついた。  
 
 ようやく落ちついたらしい彼女の顔を覗き込む。  
すると、其処には呆れた様な表情を浮かんでいた。  
 
「もう…信じられない」  
「ん?」  
「本当に、こんな所で…こんなに一杯、するなんて」  
「ははは、俺は有言実行する男だからな。」  
「―――バカ」  
 
 拗ねた表情のままで此方を見上げてくるつぐみに、自慢げに胸を張ってやる。  
 
 するとつぐみは、今度こそ心底呆れたと言ったふうに此方を見つめてきた。眉を潜めて小首を傾げた仕草が可愛らしい。  
 
「そんなにバカバカ言うなよ」  
「仕方が無いじゃない、武がバカなんだから」  
「むぅ」  
 
 真顔で返されてしまうと、何だか妙に悔しくなってくる。  
まぁ、つぐみにバカ扱いされるのにもすっかり慣れてしまった訳ではあるし、俺自身それがそんなにイヤだと言う訳でも無いのだが…。  
 
 いや待て。  
ひょっとしたら慣れてしまったって言うのがそもそもの間違いなんだろうか?  
 
 考えこんでしまった俺の姿が可笑しかったのだろうか。  
ふふふっ、と声をあげて、つぐみが小さな笑みを浮かべる。  
 
 その表情にどうしようも無くなった俺は、笑みを返しながら、  
取りあえずささやかな抵抗を試みて見る事にした。  
 
 そっと耳元に顔を近づけて口を開く。  
 
「そのバカにイカされまくって、散々よがり声をあげてたのはお前だろうが」  
「なっ…!は、恥かしいこと言わないでよっ」  
「あははは、そいつはスマンかった。でもさ、本当に可愛かったぜ、つぐみ」  
「―――知らないわよ…バカ」  
 
 どうやら、その台詞は予想よりも大きな効果を導き出してくれたらしい。  
つぐみは頬を真っ赤にしながら、その顔を伏せてしまった。  
 
 小さく呟くつぐみへの愛しさが胸の奥から込み上げて来て、  
俺は抱き締める腕にきゅっと力を込める。  
 
 すると、つぐみも首筋に回した腕で優しく俺を引き寄せてくれた。  
重なる鼓動の音が、安堵感で俺を包んでくれる…  
 
「もう、大丈夫なんか?」  
「――え?」  
 
 今も小さく震えながら俺にしがみついて来るつぐみに、  
不意に思い出した事を尋ねてみる。  
 
 つぐみの身体は、その…また初めてだった訳で。  
にも関わらず、随分激しい事をしてしまった気がしないでも無い訳で。  
 
 つぐみ自身は決してイヤがってはなかったと思うのだが、  
こうして終わってみると、急に彼女の身体の事が心配になったのだ。  
 
「う…その、なんだ。もう痛くないんか」  
「ふふふ…平気よ。武が優しくしてくれたから…言わなかったかしら?」  
「―――そうだったかな」  
 
 している最中に、そんな言葉を聞いたような気もしないでもない。  
 
 まぁ、つぐみの様子を見ている限りでは、  
今はもう心配が無いみたいで良かったか。  
 
 くすくすと笑いながら俺を見上げてくる表情からは、  
もうさっきの痛々しい様子は感じられない。  
 
 そっちの面でも安心した俺は、改めてつぐみに笑いかけながら口を開いた。  
 
「そりゃ、キュレイが凄いのは知らなかった訳ではないんだが…  
 何せTBの抗体を作っちまうくらいだし。  
 だけど、まさかなぁ…処女膜まで再生するもんだとはなぁ」  
 
 キュレイの持つ回復能力がどれだけのモノなのかと云う事を、  
身を持って体験していたとは言っても、  
流石に其処までは考えが及ばなかったって言うのが正直な所だ。  
 
 うんうんと頷きながら、言葉を続ける。  
 
「まぁ、お陰で2回もつぐみの処女を美味しく戴けた訳でもあるのだが。  
 あ、別に俺は処女がどうのに拘るほど小さな男じゃないぞ?  
 でもまぁ、素直につぐみが、俺を待っててくれたことが  
 嬉しかった訳であり。つぐみの処女をもう一回貰えたのも  
 …やっぱり、嬉しかった訳であってさ」  
「そ、そ、そんなに何度も処女処女言わないでよ…」  
 
 ひょっとしたらこの状況に多少うかれていたのかもしれない。  
 
 つい、言わなくても良い事まで言ってしまった俺が、  
慌てて弁解の言葉を口にすると、つぐみはますます真っ赤になって、  
再び俯きながら体を小さくしてしまった。  
 
 そんなつぐみに、俺の顔にも自然と笑みが浮かぶ。  
 
「でも、毎回つぐみに痛い想いをさせるのも可哀想だもんな。  
 今度は…その、アレだ。きちんと膜が再生する前に、  
 また美味しく食べさせてもらう事にするからさ」  
「なっ―――バ、バカっ!」  
 
 俺の言葉に、真っ赤になったままのつぐみが弾かれた様に顔を上げた。  
 
 何時もの様に腹部に強烈な一撃が来る事を察知して、  
俺はそれを制そうと身構える。  
 
 身構えたのだが……つぐみの拳が、その力を発する事は無かった。  
 
 すぐにまた顔を伏せてしまったつぐみは、  
俺の腕の中でその小さな肩を震わせている。  
 
「本当にバカ…大バカ…」  
「つぐみ?」  
「私をこんなに長い間待たせて…私をこんなに長い間不安にさせて…」  
「―――つぐみ…」  
 
 …つぐみが泣いているのだろうと言う事。  
それが分からない程は、流石の俺もバカじゃあない。  
 
 ふるふると震える華奢な身体。  
 
 俺はつぐみの頭を撫でるようにして、  
出来るだけ優しく、その艶やかな髪を梳ってやる。  
 
 すると、つぐみは嬉しそうに俺の肩の辺りに頬を摺り寄せてきた。  
汗で濡れていた俺のシャツにつぐみの涙が染みこんでいく。  
 
「なのに、どうして…どうして、こんなに、好きになっちゃったんだろう…」  
「そりゃあ、きっと…お前も、バカだったからだろ」  
「―――武ほどじゃあないけど、ね」  
「うむ、敢えて否定はするまい」  
 
 そんな言葉を口にすると、  
つぐみは顔を上げて可笑しそうに俺を見つめてきた。  
 
 そのまま顔を合わせた二人から同時に、堪え切れなくなって笑い声が漏れる。  
 
 俺は指先でつぐみの涙を拭ってやった。  
だが…綺麗なつぐみの瞳からは、次から次へと新しい涙が溢れて来る。  
 
 何とか笑みの形を保とうとしている頬が、  
嗚咽を堪える様に小さく震えていた。  
 
 もう一度唇を重ね様と、俺が顔を近づけた瞬間  
…ふとその瞳に悲しげな光が宿り、つぐみの表情が少しだけ翳る。  
 
「武ほどバカじゃないと出来ないわよ…私なんかの為に、あんな事……」  
「なんか、って言うなよ…」  
「だって―――あんな…っ、あのまま死んでたのかもしれないのよ!?」  
「まぁ、正しく言えば一度死んでいた訳ではあるのだが」  
「やっぱり本当のバカよ、貴方」  
「でも、ちゃんと戻って来てやったろ?」  
 
 また泣き顔になってしまったつぐみに、俺は少し笑って見せる。  
そうして少し思案してから、彼女の瞳から溢れた涙を唇でそっと拭ってやった。  
 
 その行為に感じたのだろうか。  
俺のモノを包みこんだままのつぐみの襞がひくひくと蠢いて俺を締め付ける。  
 
「――――あの時…さ」  
 
 つぐみから与えられる温もりを全身で感じながら、  
俺は言葉を探る様にしてゆっくりとその口を開いた。  
 
 ぽつり、と呟きに似た声が唇から漏れる。  
 
「あの時、お前との約束を思い出したんだ」  
「約束?」  
「―――お前、俺に云っただろうが。  
 『傍にいて』って。『お願い、私を一人にしないで』ってさ」  
 
 訝しそうに俺を見上げてきたつぐみの瞳を、俺はまっすぐに覗き込んだ。  
覗き込みながら…ゆっくりと、一度息を吸いこむ。  
一旦吸いこんだ空気と共に、俺は言葉を吐き出していく…。  
 
「『俺達は死なない、必ず生きて帰る。  
 今こんな所でくたばる訳にはいかないんだ』  
 ……お前にあんなに偉そうな事を云った手前、  
 最後まで生きようって努力はしたんだぜ、俺も。  
 でも海の底は青くて冷たくてさ。  
 だったら、せめて最後まで生きてやるって。  
 それが俺に出来る精一杯なんだって…そう思いながらも、  
 俺はあの時、自分が生きる可能性ってヤツを見失ってたんだと思う。  
 ゆらゆら昇っていく、真っ白い潜水艇を見上げながら…  
 妙な満足感に満たされてさ。……もう良いんだって思ってた」  
「――――武…」  
 
 あの時、身体中を包みこんでいた冷たい水の感覚。  
視界一杯に広がった深い深い闇の色。  
そう…あの時、俺は確かに一度死んだんだろう。  
 
 死ぬっていうのは何も肉体的なものばっかりじゃない。  
 
 生きる事を、その可能性を諦めた瞬間に、  
人間の死は訪れるんじゃないだろうか。  
 
 そして、もしもそうなのだとしたら―――  
あの時に、俺は確かに一度、死んでしまったんだろうと思う。  
 
 最後の瞬間の事を思い出したのか、それとも俺の不安を察してくれたのか。つぐみは俺の名前を呼びながら、ぎゅっと俺にしがみついて来た。  
   
 彼女の細い身体は、ふるふると小刻みに震えている。  
ひょっとしたら、俺の体も彼女と同じ様に小さく震えていたのかもしれない。  
   
(―――つぐみ)  
 
 そんなつぐみの身体を抱き締めたままの腕に、  
俺はまたそっと力を込めてみた。  
 
 触れ合った部分からは、確かな彼女の温もりが伝わって来る。  
 
 其処から生まれる安堵感が、  
俺の心と体の両方を包みこんで、温めてくれるのが分かる。  
 
 その温かさに促される様にして、俺はもう一度口を開いた。  
 
「でも、その時…おまえの事を思い出したんだ。」  
「――――私?」  
「最後に見たお前は…私を一人にしないでって泣いてた。  
 俺がいなくなったら、またお前は、つぐみは一人になっちまう。  
 まぁ、あの時は沙羅やホクトが出来てたなんて  
 全く知らなかった訳ではあるしさ」  
「あ…も、もう。武が一杯するからじゃない…」  
 
 そう言って苦笑すると、  
俺を見つめていたままだったつぐみも、かぁっと頬を赤く染めてしまった。  
拗ねた様に呟きながら、俺をジロリと睨んでくる。  
 
「…そいつはスマンかった。  
 でも、ほら。まさか本当に出来ちまうとは思ってなかったしなぁ」  
「ふふふ。責任とってくれるんじゃ無かった?」  
「うむ。男に二言はない」  
 
 少しおどけてつぐみの言葉に応じると、  
彼女は笑いながらも幸福そうな表情を浮かべてくれた。  
――その笑顔が…その笑顔を見られると言う事が、俺にはとても嬉しかった。  
 
(そう…なんだよな…)  
 
 今ならはっきりと分かる。  
 
 あの時の俺を目覚めさせてくれたのは、つぐみの顔だった。  
あの時の俺を呼び戻してくれたのは、つぐみの声だった。  
 
『だったら生きろ。生きている限り生きろ。  
 大丈夫、俺は―――俺は、死なない』  
『俺は死なない!それが、あいつとの約束だから!』  
   
 ―――あの冷たく深い死の淵から、再び俺を引き戻してくれたのは、  
きっと…彼女と交わした約束だったんだろうと思う。  
 
 そんな事を今更確認しながらも、  
俺は更に口を開き云うべき言葉を続けて行った。  
 
「…俺が此処で諦めたら、  
 またお前は一人ぼっちで…最後に見た泣き顔のままで…。  
 上手く説明出来ないんだけどさ。それじゃあ、ダメだって思ったんだ」  
 
 ゆっくりと…一言一言を自分自身で噛み締める様にして言葉を紡ぐ。  
一方のつぐみは、無言のままで何も言わない。  
 
「お前に生きろって言った俺がこんな所で死んでどうする?  
 諦めてつぐみを一人にしたら、  
 お前はずっと泣き顔のままなんじゃないかって。  
 つぐみを泣きながら一人ぼっちで生きさせる事にしちゃいけないって…。  
 そうして、どんな事をしても生きてやるって思ったら、  
 其処にホクトの声が聞こえて来たんだ。  
 ――――ま、まぁ、いきなりお父さん呼ばわりには  
 多少戸惑わなかった訳でもないが」  
 
 こほん、と苦笑しながら小さく咳払いをしてから、言葉を繋げる。  
なんだか妙に照れくさい気持ちが先に立ってしまうのだが…。  
男には、それを押し殺しても、言うべき事を言うべき時があるんだろうと思う。  
 
「ま、なんだ。だから…これ以上泣くなよ。  
 お前に泣かれると、何の為に俺が戻って来たのか  
 分からなくなっちまう訳だからな。  
 出来ればずっと…つぐみには、笑っていて欲しい」  
「――そんな気障な台詞、武には似合わないわよ」  
「うむ。だがまぁ、本心だから仕方あるまい」  
「ふふふふ、仕方ないわね。じゃあ、武の為にも…  
 これからはずっと、隣で笑っていてあげるわ」  
 
 そう云ってつぐみはまた、本当に嬉しそうに  
…心の底から嬉しそうに俺に笑って見せてくれた。  
 
 そのままぎゅっと、俺の体にしがみ付いて来ると、  
もう一度噛み締める様に俺の名前を呼ぶ。  
 
 あの時、17年前のあの時に…これからも、ずっと聞いていたいと思った声で。  
 
「ねぇ武…」  
「ん?なんじゃい?」  
 
 不意に耳元に囁かれた声に、ざわつく胸の鼓動を自覚しながら返事を返す。  
 少しだけからかう様な光を宿したつぐみの綺麗な瞳。  
まだ僅かに涙の後の残る瞳に俺の姿を映し出したまま、つぐみは再び口を開いた。  
 
「―――もう二度と…死んでも離してやらないから」  
「そいつは、今度は俺の台詞だ」  
 
 …そんな言葉を紡いだつぐみの赤い唇を。  
 
 俺は苦笑を浮かべながらも、  
意識しないままに自分のそれで塞いでしまっていた。  
 
 胸を突き上げる様なつぐみへの愛しさ。  
冷え切っていた全身を満たしてくれるつぐみの温もりが…  
溜まらなく…溜まらなく、嬉しかった。  
 
「ぁ…ん、んふ…ひゃ―――ん、んんっ…ふは、あ…あぁ…んむ…」  
「――――ん…」  
 
 重なり合った赤い唇をこじ開けて、  
俺はもう一度舌先を彼女の口内に差し入れる。  
 
 甘い唾液の味と共に、ぬめぬめとした温かな感触が伝わって来る。  
 
 つぐみは一瞬驚いた様に全身を固くしたが、  
やがてすぐに小さな舌先で俺に応じてくれた。  
 
 ぴちゃぴちゃと唾液の絡まり合う音が響き、  
つぐみのくぐもった声が耳を打つ。  
 
 唇を解け合わせると、それに反応した様に  
ヒクヒクと蠢く襞が、温かく俺のモノを絞めつけてきた。  
 
(くぁ…)  
 
 絡みついて来る肉襞の心地良さに、  
一旦力を失っていた筈の其処が、俄かに活気付き始めるのが分かった。  
 
 全てを吐き出していた筈の先端にも、  
もう一度熱い塊が込み上げてくるのを自覚する。  
   
「んっ―――ふぁっ。ぁ…た、武…」  
「あ、あははは…ま、まぁその…気にするな」  
「…で、でも…」  
「――――う、うむ」  
 
 流石につぐみも気付いたのだろう。  
 
 俺の理性の儚い抵抗も空しく、完全に屹立した肉体が、  
つぐみの柔かな肉の谷間を割る様にしてびくびくと大きく脈を打った。  
 
 その度につぐみも感じてしまうのだろうか。  
時折小さな声を洩らしながら、小刻みに体を震わせている。  
 
 ……何ともいえない気まずい沈黙の中で、空調の音だけが白々しく響く。  
 
 どうしたもんか、と俺が頭を抱えそうになった時に  
…ふっと、つぐみの方が俺の名前を呼んだ。  
 
「ねぇ…武」  
「ん?なんじゃい」  
 
 妙に艶やかな声で名前を呼ばれた俺は、  
突然の事に、自分でもみっともなく思える程上ずった返事を返す。  
 
 見ると、何かを探るような表情のつぐみが、真っ直ぐに俺を覗きこんでいた。  
 
「まだ、時間は大丈夫よね」  
「まぁ、もう少し掛かるんじゃないか?」  
 
 そんなつぐみの言葉に、壁にかけられた時計の針を確認しながら答える。  
つぐみは、微笑を浮かべたまま俺の瞳を見つめ続けている…。  
何処か、からかう様な光を浮かべたその瞳。  
 
「大丈夫よ…安心してて」  
 
 戸惑う俺を見透かす様に、つぐみはゆっくりと耳元へ囁いて来た。  
甘いつぐみの匂いがふわりと俺の鼻腔を擽る。  
 
 俺のものを咥えこんだままの部分は、  
今も悩ましい収縮を繰り返しながら固くなった俺を締め上げ絞めつけてくる…  
 
「大丈夫…か」  
 
 そうして俺を覗き込んで来るつぐみの意図を  
ようやく察して、俺も小さく呟いた。  
 
 本当に大丈夫なのかどうかは、微妙な所なのかもしれない。  
優が立ち去ってから、随分と長い間つぐみを求めていた様な気もする。  
 
 だが、今は…  
また込み上げてきたこの衝動を、留める術を持てそうになかった。  
 
「まだ、大丈夫だと…思う。ううん、きっと大丈夫よ」  
「―――そうだな。なぁ、つぐみ」  
「…なぁに?」  
 
 小首をかしげて此方を見つめてくるつぐみの瞳をまっすぐに見つめ返す。  
 
 俺には、確かに存在していた。  
つぐみに伝えたい言葉が。つぐみに、伝えなければならない言葉が。  
 
「好きだぜ、つぐみ――――愛してる」  
「あ…んっ・・・」  
 
 ―――ようやく口に出来た言葉。  
ついさっき、一度は口にしようとして  
そのまま飲みこんでしまった言葉を、今度は素直に口にする。  
 
 口にしたまま…その唇で、もう一度つぐみの唇を塞いだ。  
 
「んっ―――あ、んんっ、ぁ…あ、はぁ…」  
 
 再会してから交わされた何度目かの深い口付け。  
つぐみは抗わずに俺の全てを受け入れてくれる。  
俺もまた、つぐみの全身から伝わる全てをそのまま受け入れる。  
 
 すっと体重を移動させて、  
お互いを強く抱き締めあったまま、俺達は寝台へと倒れこんだ。  
 
 唇と唇が激しく溶け合い、つぐみの細い手足が俺へとしがみついて来る。  
 
 僅かに尖り始めた先端ごと、柔らかな乳房を胸板で押し潰すと、  
つぐみの下の唇は俺を促す様にきゅうきゅうと絡み付いて来た。  
 
 全てを…つぐみから伝えられる全てを、溜まらなく愛しいと思う。  
もっともっと、彼女の全てを感じたいと思う。  
 
 そして、そんな想いのままに…俺はゆっくりとつぐみの中で蠢き始めた。  
次第に大きく…そして、激しく。  
 
 視界に映るつぐみの姿。  
鼻腔を擽るつぐみの香。  
耳を震わせるつぐみの声。  
 
 その全てに、ようやく帰るべき場所へ帰ってきたのだと  
…そう、全身で実感しながら。  
 

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