「倉成さん…私、幸せです」
「空…」
頬を紅く染め、潤んだ瞳を向けてくる空に、心からの愛情を感じる。
既につぐみという超が付く程の美人、しかも永遠の17歳妻が居ると言うのに、
信じられない奴だと言う奴も居るかもしれない。
だが俺は、俺に…俺だけに身を焦す程の想いを抱いてくれる相手のその気持ちを、
否定するなんて事は出来そうになかった。
それ程の想いを向けてくるのであれば、俺は例えそれが自称太陽星人だろうと、
いつのまにか白衣が似合うような美人になっていたかつての仲間であろうと、
実の娘だろうと受け止めるだろう(ぉ
ましてや空は人と機械の壁を超えて俺に想いを抱き、その思いの強さで実態を得た
程の強くまっすぐな思いを向けてきてくれる…断るなんて、それこそ外道のする
事だろう。
俺の寝坊の所為でビートル顔のおばちゃんの定食屋に行く約束も、反故にしちまった
(もっとも、後10数年待てばおばちゃんの娘さんがいい感じに育ってくれそうだが)
せめて俺は、空を…いや空“も”幸せにしてやりたい。
つぐみにはもちろん、俺のこの気持ちをキチンと説明した………結果、殺された。
比喩ではなく、俺が曲がりなりにもキュレイ種でなければ7回くらいは死んでいただろう。
だがつぐみも、一度は俺が死んだと思い、自分の想いが叶わないことの苦しみを誰よりも
理解している女だった。
散々ゴネられたが、最後には分かってくれた。
…これも、惚れた弱みに付け込んだことになっちまうんだろうか?
あぁ…空との行為が済んだら、明日は一日きっと嫉妬に燃えているであろうつぐみを
精神的にも肉体的にもフォローしてやらなくちゃならん、そんな日々がこれから毎日
続いていくのだと思うと、眩暈がしてくる、モテる男と言うのは辛いものだ…。
「倉成さん…」
当然だが、今は空と二人きりで向き合っている。
慣れてくれば三人一緒に…なんて事も期待してしまうが、何より今回は、空との初めての
行為だ、大事にしたい。
「倉成さん…」
三度俺の名を呼ぶ空の体を…暖かく、甘い匂いのする、鼓動を感じる体を強く抱きしめた。
(終)