「あんっ!武!もっと突いて!」
「くぅ!つぐみ!すげえ締まりだっ!」
毎度のように隣の部屋から聞こえてきた嬌声に僕は目を覚ました。
(はぁ・・・またか・・・)
心の中でため息をつく。晴れて家族4人で暮らせるようになったのはいいけれど
お父さんとお母さんの「夫婦生活」が、こうして隣の部屋にいてもはっきり
聞こえてしまうのは勘弁してほしい。
「今日もすごいね、二人とも」
横の布団から沙羅が声をかけてきた。どうやら僕と同じく目が覚めてしまったらしい。
ちなみに今僕らが住んでいる家は、4LDKの大きなものだったが、沙羅はどうしても
僕と一緒に寝たがった。僕もその願いを無下に断れず、こうして同じ部屋で
布団を並べている。
「そっち行くね・・・」
そう言うと、沙羅がもぞもぞと僕の布団にもぐりこんできた。鼻をくすぐる
甘い香りに思わずドキッとしてしまう。けれど沙羅は僕の心中を知ってか知らずか
ぴったりと体を摺り寄せてきた。
「お、おい、沙羅・・・」
僕はどぎまぎして体を離そうとするが、沙羅の腕が意外なほど強い力でがっちりと
押さえつけてきた。どことなくうるんだ瞳で沙羅が僕を見つめる。
「ねぇ・・・やっぱり気持ちいいのかな?」
「な、何が?」
「だから・・・セックス」
「なっ何いってるんだよ?」
僕の頭の中で危険信号がともった。これはマズイ。非常にマズイ。連日連夜
お父さんとお母さんのあえぎ声を聞かされて、沙羅はすっかり「目覚めて」
しまっているようだ。
「試してみたいな・・・」
「そ、そう。それじゃ、沙羅にいつか好きな人ができたらそうするといいよ」
「好きな人はいるよ」
「だ、誰かな?」
既にその答えはわかっているはずなのに、僕は聞かずにはいられなかった。
「お兄ちゃん・・・」
沙羅の顔がぐっと迫ったかと思うと、次の瞬間僕の唇に柔らかいものが当たった。
「んっ!?」
僕が目を白黒させている間に沙羅がそっと体を離す。その目は既に兄を見る
それではなかった。
「私の胸、触って・・・」
沙羅が僕の手を掴むと、ゆっくりと胸元に引き寄せる。僕はなぜかそれに抗う
ことができなかった。