<優視点>
9月も半ばにさしかかり、ようやくきつい残暑ともおさらばかと思ったら、今度は台風、台風でとにかくうっとおしい天気が続いている。
そんな中、今日は久しぶりの秋晴れだった。
それなのに、こんな狭い部室でだらだらしている私達はちょっと不健全なのかもしれない。
私とマヨは他愛のない話をして、放課後の時間をのんびりとすごしていた。
その時、私の部活動が話題となった。
「先輩、確か部活、いくつもかけ持ちしてるって言ってましたよね。どんなことやってるんですか?」
「え?えっと…」
私は言葉につまった。思わず視線をそらしてしまう。
ほんの数秒の沈黙で、気まずい雰囲気を作り上げてしまった。
「?はは〜ん、さては…」
マヨはそこで一息おいた。一瞬の間が私の額に汗を生み出す。
「さては…」
「……」
「…やっぱり私に隠れて忍者部に入ってたんですね!」
「入るかんなとこ!」
マヨのいつも通りのボケ(最近この忍者ネタがボケなのかどうか疑わしくなってきた)に思わずツッコミを入れてしまう。
「私、帰るからね!」
さっと席を立ち、カバンをとって部室のドアノブを回そうとする。
「あっ待って下さい先輩、そんなにおこんないで下さいよう」
マヨもあわてて立ち上がって私の腕を掴もうとするが、私はそれを無視してパタンとドアを閉めてしまった。
そのままとたたた…と廊下をかけて、下駄箱を目指した。
別に怒っていたのではない。
何となく…気まずかったのだ。
これから向かうところがどんなところか、知られたくなかったのだ。
それだけ?
…違う。
あの子を、マヨを巻き込みたくなかったのだ。
<沙羅視点>
「あっ待って下さい先輩、そんなにおこんないで下さいよう」
私はあわてて立ち上がり、なっきゅ先輩をひきとめようとしたが、うまくかわされ、ドアを閉められてしまった。
まあ、だからといって本気で追いかける気は全くない。出会ってから数カ月しかたっていないものの、あの先輩がこの程度で怒るはずがないということは分かっている。それに…。
私はすでに立ち上げてあるパソコンからあるソフトを起動する。私オリジナルの偵察装置だ。
「ふっふっふ…。忍法『千里眼』!」
エンターキーを押すと、学校及びその周辺の詳細マップが表示される。その中に光る1点。これがなっきゅ先輩の現在位置である。正確に言えば、なっきゅ先輩にとりつけた発信機の、であるが。
(教えてくれない先輩が悪いんですよ)
心の中でそうつぶやく。私はPDAにデータをダウンロードし、部室を出た。
なっきゅ先輩が今日「部活」があるということは分かっている。それをこっそりと覗き見するのだ。
(別に、見るだけなら構わないわよね…)
一体、あの先輩はどんな部に入っているのだろうか?
運動系だったらバスケ、ソフトボール、卓球、体操、新体操なんてのもあるかも…。
文化系だったら新聞部、写真部、化学部、案外囲碁部なんかだったりして…。
とにかく、興味はつきない。
モニタ上の光点が動く。それを追う。
と、光点が止まった。場所は…。
(…倉庫、なのかな?)
学校の敷地の一番端、普段は誰も通らないような校舎の裏にポツンと建っている小さな建物。
近づいてみると、入口のうすっぺらい金属製の引き戸に『体育用具倉庫』と書いてある。
(……?なっきゅ先輩、こんなところで何やってんだろ?)
いやな予感がした。隣になっきゅ先輩でもいれば、「きっとこの中には秘密の地下があって、忍術を修行しているんですよ!」などと冗談を言えるのだが、あいにくその先輩自身がこの怪しい倉庫の中に入ってしまっている。
どうしようかとためらっている私の耳に、「それ」は聞こえた。
(…うめき声?)
あるいは、この安普請もいいとこのこのオンボロ倉庫のすきま風が起こした音なのかもしれない。とにかく、ああとかううとかいう音がこの中から聞こえたことは確かである。
私は、一旦息を吐いて、大きく吸った後、一気にこの倉庫の戸を開けた。結局、気味悪さよりも好奇心の方が勝ったのである。
中を見渡す。電気はついておらず、真っ暗である。
まあ、正確に言えば「一般的に言う真っ暗な状態であろうと思われる」ではあるけれど。
…しかし。
(…いない?)
おかしい。PDAの光点は確かにここを示している。
奥に入り、先輩を探す。しかし、先輩はもちろん、人の姿を探すことはできなかった。
しかし、やはりおかしい。
今私が立っているこの場所に、なっきゅ先輩は確かにいるのだ。
いるのに、いない。
考えられる理由は1つ。
なっきゅ先輩は「3次元的に」別の場所にいるのだ。つまり…。
突然、口元に布のようなものがあてられた。
私は驚いて、息を思いっきり吸ってしまった。
一瞬で視界がブラックアウトする。
薄れゆく意識の中、私はなっきゅ先輩の声を聞いたような気がした。
「バカ…なんでくるのよ…」
泣き出しそうな声だった。
<優視点>
私は、薬で眠らせたマヨを、他の女の子と一緒に地下の部屋の中に運びこんだ。
9月とはいえ、日の当たることのないコンクリートの地下室は、このような一糸まとわぬ姿で歩くには少々寒い。
しかし、部屋の扉をあけると、むっとした熱気と、女の匂いがあふれだしてきた。
そして聞こえてくる女の嬌声。
中は暗い。たった一つしかない裸電球に暗い紫のセロファンをはりつけていて、なんとか人の形を認識することができる程度にしか視覚が得られない。もちろん顔を判別するなど到底無理な話である。
「お疲れ様ですわ……お姉様……」
後ろから一人の女がねっとりと体をからめてきた。汗でぬめった体を擦りつけながら、その右手を私の股間にのばす。
「悪いけど、後でにしてくれない?」
その体を片手でぱっと払いのけると、私は服置き場にマヨを横たえた。
ソバージュの大柄な女が、それこそキスでもしてしまうんじゃないかというぐらいの距離まで自分の顔をマヨの顔に近づけて、まじまじと見つめた。
「あらあら、かわいい子猫ちゃんね。なんでこんなところに迷いこんだのかしら?」
「この子に構わないで」
「知り合いなの?」
別の黒髪の女がマヨの上にまたがろうとしてきた。
「部活の後輩なの。悪いけど、触らないでくれる?」
私がとんと押すと、黒髪の女はよろけてしりもちをついた。
一瞬きょとんとした顔をしていたが、すぐにきつい視線を私に向けた。
「…あなたまさか、逃がす、とかいうんじゃないでしょうね」
し…ん。
逃がす。
この一言で、静寂がその空間を支配した。
身体にからみついてくるような女の淫らな喘ぎ声は一瞬にして闇に消えた。
「お姉様……」
小柄な女が、腕を絡めてくる。
暗くてよく見えないけど、確かこの声は……。
「私をこんな風にしちゃったのに?無理矢理ひどいことしたのに?
お気に入りの子にはしないんだ……」
そうだ。
確か2学期の最初に私が『いただいた』子だ。
名前は……何だっけ?忘れた。
「お姉様がなさらないのなら……私がもらいますよ?」
そう言うと、マヨのそばにしゃがみこみ、服を脱がし始めた。
いや、彼女だけではない。
闇から現れた女達も、マヨに群がった。
彼女達はいやらしく笑いながら、瞬く間にマヨの汚れのない身体をあらわにした。
「やめて!」
私は止めようとしたが、無駄だった。
一度ついた火は消えない。
「……ここの『掟』は絶対でしょ? その『掟』を忠実に守ってきたのはあなたでしょ? 田中『部長』」
先程の黒髪の女が、後ろからからみついてきた。
私の顔を自分の方に向け、私の唇を奪った。
「……ぐむっ……んんっ……」
彼女の舌が口内を犯す。ざらざらとした感触が私の舌を支配する。
彼女の唾液は甘く、私の神経を狂わせる。
「んんっ!」
私は理性を呼び戻し、突き放そうとしたが無駄だった。彼女の左手が私の乳房に被いかぶさっていた。粘つくように私の胸をこね回す。
そして、私の乳首をつまんだ。
つまんで、くりくりとねじ回した。
既に私に力はなかった。無力だった。言うなりだった。
「んああっ!」
私はへなへなとその場に崩れ落ちてしまった。
彼女はそのままわたしを押し倒す。
一旦離れた唇を再び塞ぎつつ、私の胸を両手でかき混ぜた。
頭がぼぉっとする。
私の股の中がじわり、じわりと湿ってくる。
「……ぷはぁっ!」
私はなんとか顔を逸らし、その口撃を止めさせた。
しかし、彼女のその口は私の首筋に向かった。
タコのように吸いつく口。キスの雨。女の心を狂わせる、狂気の雨。
それは首筋から胸元へと移り、そして私の胸の突起へと移っていった。
「……はむ……んむ……」
「ああんっ!……や、やめてぇ……」
彼女は私の胸を柔らかく噛み、私の乳首を柔らかく舐めた。
私の中は、ぬるぬるになっていた。
子供を作る、女の身体。
私の身体は、その目的のための準備が、すっかり整っていた。
「い、いやああああああ!」
突然聞こえる、女の子の悲鳴。
マヨだ。
「や、やめて……マヨだけは」
残されたわずかな理性を振り絞って、私は彼女を振り払おうとする。
しかし、私の口はまたもキスで閉じられ、舌で犯された。
しばらく私の口を蹂躙した後、ぷはっと口を解放した。
「あなたらしくないわね……いつものあなたなら仲のいい子であればあるほど、『この喜びをわかちあわなきゃ』とか言って、率先して食べちゃうのにね。私にしたみたいに」
「違う……マヨは違うの……」
「何が? 何が違うの?」
「はむぅ!」
さわっ。私の股間の毛に何かが触れた。それだけで私のそこは湿り気を増す。
さわさわと彼女の手が私の股間をこする。私の毛1本1本に与えられる刺激が、私の残された理性を1つ1つ壊していく。
「やっぱり本当はこうしたいんでしょ?」
ぬるり、と私の中に1本の異物が侵入してきた。
その刺激に私の膣は収縮し、その異物――彼女の中指を締めつける。
そしてそれがまたさらなる刺激を生む――。
「彼女をおいしく食べたいんでしょ?」
指を根元まで私の中に入れる。出す。入れる。出す。
「あん……はん……」
白い光が私の知性を食べていく。
「一人占め、したいんでしょ?」
指を曲げる。膣の壁に指の腹を擦りつける。
刺激は快感となって私の脳みそを犯す。私の脳みそはさらなる快感を求めて、体内に侵入した指を食べようとする。
私の膣はきゅうきゅうと異物を締めつけ、私は彼女の身体に手を回し、恥ずかしげもなく嬌声を上げ続けた。
「あん!あん!あん!い、イクう……」
唐突に、彼女が指を抜いた。
「いやっ!」
思わず、「嫌」と声が出た。もう、身も心も性欲の虜になっていた。
彼女は淫魔の笑みを浮かべると、私の乳首にくちづけてから、再度私の中にもぐりこんできた。
ただし、今度は2本で。
「ひゃん!うむぅ……」
2本になると、中指の時に比べて奥まで入ってこない。その代わり、ばらばらに動くことで1本の時とは全く違う快感が襲ってくるのだ。
「あむ!はむ!あああん!」
人間じゃなかった。知性はもはや死んでいた。
私も彼女も汗でべたべたになっていた。
「いや!いや!イクうううっ!」
私の締めつけはよりいっそう激しくなり、ぎりぎりと彼女の指をしめつける。
締めつけて、締めつけて、締めつけて……。
そして視界は、白い光に、つつまれた……。
(続く)