夜。
誰もがその男を形容する際に思い描くのは、たった一言。
夜のように暗く、夜のように静かで、夜のように寂しい男。
ザイバッハの軍師としてひっそりと、そこにある男。
魔道士たちは同士であるはずの男を見て眉をひそめ、敬遠する。
男が彼らより優れた頭脳を持っているということと、何より不気味だからだろう。
下等生物である獣人、まやかし人まで手なずけて、絶対の忠誠を自ら誓わせている。
ドルンカークの右腕でありながら、その心はどこか遠い場所にあるような雰囲気を漂わせる
その男を、皆が遠巻きにしてみている。
だから男は夜。
誰の前にも現れるが、闇ゆえに先まで見通すことを許さない。
彼は密かに、そんなように言われていた。
その男、軍師フォルケンは今や夜そのものとなり、
どこか恍惚とした表情で、虚ろな目を虚空に投げかけていた。
長椅子に深く腰掛け、両手は金と銀の髪をした艶かしい四肢をくねらせる獣人の上にある。
「んん……ちゅ、んく、あ、ふ……」
金の髪をした獣人は、長い舌を伸ばし、
熱い吐息を混じらせながら、フォルケンの肉棒の先をなぞっている。
すぐ隣には銀の髪をした獣人が、同じように舌を滑らせていた。
「ああ…エリヤ、もう、いいよ…ナリアも……、疲れたろう…」
フォルケンがふたりの頭を撫でると、ふたりは揃って首を横に振り、
エリヤは肉棒の先端を丸呑みするかのように喉の奥に含ませ、顔を大きく上下に振り出した。
ナリアは立ち上がり、フォルケンの膝に腰掛け、甘えるように首に腕を回す。
「疲れなどしましょうか…愛しい愛しいフォルケン様…
お会いできなかった間、我らがどれだけ寂しかったか…」
「すまなかったな…」
フォルケンはナリアを引き寄せ、口付けた。ナリアは背に回ったフォルケンの手を取り、
乳房へといざなう。むきだしのそれは信じられないほど柔らかく、暖かく、
血の通った左手で充分にそれを堪能した後、優しく指を曲げてやった。
「あ…ああ、フォルケン様…っ」
つかまれた乳房の先端を、人差し指と中指で刺激され、ナリアは嬌声をあげる。
フォルケンは乳房から手を離し、ナリアの尻からするりと指を滑らせて、充血した花びらの奥へ忍ばせた。
腰を浮かしたナリアの乳房がふるりと揺れる。引き寄せられるように、フォルケンはふたつの塊の間に顔を埋めた。
すると肉棒を含んでいたエリヤが立ち上がり、フォルケンの右手、右腕から義手になっている冷たいそれを取り、
おもむろに自分の中へ突き立てるようにして入れる。
「ひあああっ、あんっ、冷たい…!」
電気ショックのような痺れと体の真ん中から引き裂かれてしまいそうな冷たさが一気に駆け抜け、エリヤは絶叫した。
「エリヤ…大丈夫か?」
ナリアの胸から顔を離し、フォルケンはエリヤを気遣うようにして振り返った。
エリヤは涙を流しながらはいと答え、フォルケンに顔を寄せる。
「フォルケン様…フォルケン様…っ、ちゅ…む、ん…」
舌を絡めながら、何度も何度も名を呼ぶエリヤがいじらしく愛しく思えた。
フォルケンはエリヤの中に収まっている義手をわずかに進める。感触など得られないが、
エリヤの身もだえする様子だけ眺められれば充分だった。
「ああ…フォルケン様、もう我慢が……っお願いです、フォルケン様を、我らの中…に…っ!」
フォルケンの左手を自由に動かし、準備を整えたエリヤが震えながら懇願した。
「フォルケン様…遠慮などなさらず…我らを…あなた様の自由にして…!」
エリヤはぐちゅぐちゅと淫らな水音をさせ、フォルケンの義手を汚し、耳元で囁く。
フォルケンの答えを聞かぬまま、双子は立ち上がり、互いの体をまさぐり、
舌を交わらせ、そのまま床に倒れた。姉が妹の上に乗り、妹は姉を支え、
フォルケンにふたりの秘部がよく見えるよう、腰を浮かす。
ふたつの花の間からは蜜が滴り、フォルケンを待ちわびていた。
フォルケンはゆらりと立ち上がり、双子にしごかれてそそりたつものを手に、誘われるまま花に近づく。
双子は豊満な胸をこすりあい、期待に声をあげながら、その時が来るのを今か今かと待っていた。
「あああああああっ! ああ――っ!」
先に声をあげたのは、上になっているナリアだった。
尻を左右でつかまれ、わずかに広げられたかと思うと、一気に奥まで突き立てられる。
妹は姉の表情に興奮し、夢中で両足を姉にからめ、少しでも快感を共有しようと腰をくねらせた。
「嬉しゅうございます、フォルケン様、もっと、もっとぉおおっ!
あ、あんっ、あうっ、いい、フォルケン様が、わたしの、中に、んああああっ! いい――…っ!」
正気を失ったナリアの叫びに、フォルケンも、エリヤも理性を捨てる。
フォルケンはぐっと腰をそらすと、肉と肉が打ち合わされる音も聞こえないくらいの速さでナリアの中に押し入った。
ナリアが悦びに更に嬌声をあげると、エリヤは早く代わって欲しいと、ナリアの下半身に手を伸ばし、
茂みをかきわけ、フォルケンの肉棒がおさまる上を指でなぞり、
ナリアの花弁の中に隠れている芽を見つけ、少々きつくつまみあげた。
「ひあああああ―――っ! イ、イく……っ!」
狼の遠吠えのような姿でナリアは喉をそらし、絶叫した。フォルケンも最後の一突きとばかりに大きく腰を引き、
容赦のない一撃をくらわせる。
ナリアは口を大きく開けたまま、そのままくたりと妹の上に倒れこんだ。エリヤは姉を横にどけ、
両足を大きく横に広げると、真っ赤に充血し、ひくひくと痙攣している花の奥をフォルケンに見せ、微笑んだ。
「ナリアより激しくして…!」
雄となったフォルケンは、言われるがままエリヤの上に覆いかぶさる。
エリヤの両腕を押さえつけ、むさぼるように唇を奪い合う。
舌をいれ、絡ませ、唾液を流し込み、熱い吐息を何度も何度も味わいつくし、歓喜に震える乳房に噛み付いた。
「あは、ああんっ、もっと、もっとして、フォルケン様ぁああっ!」
手の中に収まりきらない程豊満な乳房を痛いくらいにこねくり回し、交互に乳房にしゃぶりつく。
エリヤはもっとと叫びながら自由になった両手でぐいぐいとフォルケンの頭を押さえつける。
やがてエリヤがフォルケンを解放し、更に両足を開いてみせた。
フォルケンはびちゃびちゃと愛液の流れるそこへ難なく押し入り、一心不乱に腰を打ちつけた。
「あんっ、あ、ああ、これえ、これなの、これなのぉ…!」
左右に首を振り、金髪を顔にまとわりつかせながらエリヤは快感に何もかもをゆだねる。
フォルケン様はわたしたちだけのもの。
だけどこうしてフォルケン様が私の中にいるときは、この人はわたしだけのもの…!
「フォルケン様ぁ…」
ただひたすら同じ動きを繰り返していたフォルケンの背に、復活したナリアがにじりより、抱きついた。
硬くなった胸の先端を、フォルケンの裸の胸に押し付けて、上下に動く。
胸に回した両手は、フォルケンの乳首にたどり着き、下から押し上げるようにして何度も指を行き来した。
フォルケンが吐息を漏らすと、ナリアは立ち上がり、こちらを向いたフォルケンの唇に強引に舌をねじこむ。
がっちりと耳の後ろを押さえつけ、呼吸すら許さない勢いでフォルケンの口内で舌を暴れさせる。
フォルケンが苦しげな息を吐くと、ナリアの目が残酷に細くなった。
そうよ、今は私だけを見て。あなたをこのまま殺せば、最期にあなたが見た女は、私だけになる…!
ふたりの雌は、容赦なく雄を喰らいつくす。永遠に刻みつけ、二度と離れぬように。
下にいたエリヤは後ろ手をついて起き上がり、
動きが緩慢になっていたフォルケンに、つながったまま抱きついた。
首を絡ませ、自ら腰を浮かせ、フォルケンを更なる高みにいざなう準備をする。
ナリアはフォルケンの唇から舌を引き抜くと、立ち上がり、太ももをフォルケンの顔に押し当て、
上下に動くエリヤの肩に手を置き、片方の手で足を持ち上げた。
フォルケンの眼前に、グロテスクな花が淫乱な臭いを放ち、押し付けられる。
フォルケンはそこに惜しげもなく顔を埋め、存分に蜜をすすりあげた。
「ああんっ! あ、ああ、フォルケン様、すごい、ああ、舌が、私の…んっ、なか…にっ、はあんっ!」
ナリアは感極まって涙を流しながら叫んだ。
「ん、ん、あ、ふあっ、フォルケン様、イキます、一緒、一緒に、あ、あ、あ…!」
激しく動いていたエリヤが涎を流しながら喘いだ。
フォルケンは右腕でエリヤを抱き、左腕でナリアの腰をつかむと、両方の腕に力をこめる。
「ああああああ―――っ!」
三匹の獣は、同時に果てた。
浮遊要塞ヴィワンの一室。
滅多に人が立ち寄らぬその部屋で存分に交わった3人は、フォルケンを真ん中に、眠りこけていた。
衣服は散乱し、引き裂かれ、暗幕は柔らかく床に落ちている。その上で寝返りを打ったエリヤは、闇の中で起き上がる姉の姿を見た。
「ナリア…?」
髪はほつれ、美しい肢体は情事の痕がくっきりとところどころに残っている。夜なのに、どうしてここまで見えるのかと思っていると、姉はぽつんと言った。
「朝だよ…」
少し枯れた声で、寂しそうに言う声色に、エリヤは朝日が差し込んだから、姉の姿が見えるのだとようやくわかった。
「フォルケン様は、眠っている?」
静かなトーンでそう言われ、エリヤは慌ててフォルケンを見た。大丈夫。よく眠っている。
それを告げると、姉はほっと息を吐いた。
「よかった。…朝が来ると、何もかも夢だったんじゃないかって思っちまうねえ…体にこれだけ残ってるのに…不思議だ…」
そう言って愛しげにフォルケンにつけられた赤い痕を指でなぞる。エリヤはその姿を純粋に美しいと思った。
双子だけど、あたしたちはどこか違う。それを感じるのは、こんなときだ。
「おまえもわかってるんだろう。フォルケン様があたしたちのこんな淫らなお願いを聞いてくださるのは、優しさだけってこと…」
「…知ってるさ」
エリヤはうつむく。どれだけ愛を注ごうが、フォルケンの心はどこか遠くにあって、どれだけ望もうが、届かない。
「愛なんて大それたものは望んじゃいないさ。ただ傍にいてくれるだけでいい。
あたしたちの幸運の始まりは、フォルケン様に命を助けてもらったこと。この名前を頂いたときからさ」
ナリアはそう言うと、力なく首を振った。
「でも、なんでだろうねえ。朝が来ると、どうして悲しくなるんだろう…」
「姉貴」
エリヤは床に落ちていたコインを手に取った。
「かりそめの愛なら、もうすぐ受けられる。…どちらかがね」
「幻の月の娘と、竜の子を引き離すための、例の作戦かい?」
「そうだよ! あたしたちのどちらかが幻の月の娘として、フォルケン様に愛を与えられるんだ」
コインを指ではじき、落ちてきた所をぱっと手で押さえたエリヤは、にやっと笑った。
「まずは、練習!」
ナリアもくすりと笑い、眠るフォルケンの両脇で、双子はコインを覗き込む。
「あっちゃぁ、あたしの負けだ」
「ふふっ、どうやら幸運は、あたしにあるようだね」
「待った! これは練習だっつったろ? 本番は、後で!」
「わかってるよ、エリヤ」
「あたしたちは幸運さ。この幸運に、賭けてみようよ。フォルケン様が、あたしたちを愛してくれることを」
エリヤは悲しげに微笑んだ。姉が、同じ顔をしているから。
「あたしたちの全ては、フォルケン様のために」
その後の双子の行く末は、とても辛く悲しいものだったが、ふたりは幸せだっただろう。
愛しい人に、全てを捧げたのだから。
終わり