彼女、鵜野杜椎奈が見るところ、彼、上岡進というのは一時気になっていた。今ではよくわからない男になっている。
彼女の「友達」である天羽碧と付き合っているように見せかけつつ、深いところまでは達していないようだ。
また、いささか不思議な雰囲気を持つよく図書館に来る彼女、星原百合とも似たような感じだ。
さらに、弓倉亜希子、東由利鼓、果ては中等部の弓倉さやかという生徒とも大変親しい付き合いをしているようだ。
ただ、ここまでなら単に顔が広い、ということですんだかもしれない。
が、彼女は見てしまったのだ。
それは、文化祭が終わって2週間ばかりしたある日の放課後だった。
それも八時半を過ぎ校舎内に誰も残っていないと思われる時刻のことだった。
図書室で、新刊の整理と古くなって廃品回収に出す雑誌の整理をしていたらすっかり遅くなったのだった。
校内には人気がないうえに、冬が近づいていることで寒さとで、幾分かの薄気味悪さを感じていたためか、
感覚が敏感になっていたののであろう。普段なら気づかなかったであろう、人の声が聞こえた。
最初は感覚的に幽霊か何かかと思った。が、それはありえないと自分自身で否定した。
ではなんだろうか?と思い、7割の興味と3割の恐怖とが混じったものに後押しされ、
その声が聞こえた先に向かったところ、見てしまったのだった。
天羽碧と上岡進が、その、なんというか、制服を半ば脱ぎ、その色々なことをしている姿を。
声が出なかった。
雑誌やその他諸々でそういう行為をするのは知っていたし、既にしているというクラスメイトがいるのも知っていた。
しかし、自分の知っている、それもかなり「親しい」人が、男の子とそういう行為をしているのは少なからずショックだった。
とりあえず彼女は音を立てず、上岡や天羽にばれないように、後ずさり家に帰った。
そしてその夜は色々なことを考えてもやもやして眠れなかった。
翌日、学校に行って上岡や天羽にどのように顔を合わせていいかわからないので、できれば休みたかった。
しかし、休めば両親に無駄に心配をかけることになるし、自分自身が真面目な性格のためか学校を休むのは憚られた。
そのため結局、いつも道理の時間に家をで、学校に来ることになった。
できれば、上岡や天羽とは会いたくなかったが、なんだかんだで会ってしまった。
色々あったが、昨夜のぞき見をしたことはばれてることもなかったし、知られることもなかった。
そうこうするうちに放課後となり、いつも道理図書室に行き、本の貸し出しや整理をした。
気がつくと、真っ暗だった。いささか混乱をしたが、ちょっと冷静に考えれば状況は理解できた。
昨夜眠れなかったため、図書室にいるうちに寝てしまったのだった。また、帰るのが遅くなってしまう。
昨日も帰るのが遅かったので、両親に心配をかけてしまうかもしれない。
そう思ったので、さっさと鍵を閉めて帰ることにし、昇降口に向かうことにした。
そこで、また、彼女は聞こえてしまった。
昨日同様の人の声が・・・。