あの事件が解決して、二ヶ月が経った。
あれがきっかけで俺と契約をしたリリスは、俺のギターに住みついている。
通学時にいつもギターケースを背負っていくわけだから、ほとんど四六時中リリスと一緒にいるようなものだ。
まぁ……いろいろあってあいつと付き合うことになってしまったのだから問題はないのだが。
鈴科あたりには『学生時代から同棲ですかお二人さん?』などとからかわれている。別にリリスは俺の家に住んでいるわけではないから同棲というのは違うんじゃないだろうか。
ともあれ、あいつのおかげで俺の音楽の幅が広がったのは確かだ。
どちらかと言えば苦手だったスローバラードもこなせるようになった。あいつへの想いを詩に込め、メロディに乗せる。音楽の妖精であるリリスには、百の言葉よりもその曲の方が甘美なのだそうだ。
「ふぅ……すこし休憩にするか」
シャーペンを譜面の上に投げ出す。
日が傾き、西日が差す部室。今日はあいつらはいない。なんでも楽器屋に買出しにいくんだそうだ。ふん、余計な気を回しやがって。
「桐生ーーーーっ」
「おう」
相変わらず舌足らずな声で俺の名を呼びながら、リリスが飛び込んでくる。
「委員会、終わったのか?」
「うん。リリス、とっても疲れたの。だから、ね、桐生」
「……しょうがない奴だな」
音楽に込められたエナジーを糧としているリリスが欲しがる『おやつ』ってことだ。
俺はギターを構え、もう一度調律する。
「そう言えば、今日は何か買い物に行くとか言ってなかったか?」
「うん、リリス新しい水着が欲しいの!」
「……どっちのだ?」
「大っきい方!」
「はいはい」
これまで充分な音楽のエナジーを得られなかったリリスは、年齢からいけば発育不良なのだ。高校生にもなって小妖精の姿でいることがその証だ。
俺の奏でるメロディ、それを充分に浴びることで一時的に成長できる。あの時のように、魔水晶の力なんて必要とはしない。もっとも、せいぜい一晩どまりなのだが。
それでも、大人でいられる時間が以前より長くなっているのは確かだ。いずれ……高校卒業までには、常時大人の姿でいられるようになるのだろう。
メロディを奏でようとして、俺は以前から思っていた疑問をリリスに投げかけてみた。
「なぁ」
「何?」
「お前、大きくなるとき、何時の間に着替えてるんだ?」
俺の言葉に、きょとんとした顔を見せるリリス。そりゃそうだろう。魔力を持たない人間でしかない俺にしてみれば不思議なことでも、妖精族である彼女には当たり前のことなのだ。
「えっとね、今着ている服があるよね、身体が大きくなるときに、リリスの持っているイメージに合わせて、服も変化するんだよ」
そう言われてもピンとこないが、とりあえず、ポケットから取り出すようなものではないらしい。
「ふぅん……それじゃ、パンツとかもか?」
「やぁだ桐生、当たり前じゃない」
頬を赤く染めてけらけら笑うリリス。
「本当かどうか試してみたいな」
「え?」
「というわけで、脱げよ。パンツ」
「え、えええっ!?」
頬どころか顔全体を真っ赤にして、羽をピクピクと引きつらせて驚いているリリス。
「な、いいだろ? ……今夜サービスするから」
「……ばか」
ぷぅと膨れたまま、それでもいそいそと立ち上がってスカートの下に手を伸ばすリリス。
見ないで、と言っても無駄だと判っているのだろう、そのまま俺の目の前でパンツを引き下ろし、つま先から抜き取った。
「……ほら、脱いだよ」
「よしよし」
頭を撫でてやる。本当はこのままスカートをめくって中をあらためようと思ったけど、あまり調子に乗るとヘソを曲げてしまうかもしれないのでやめておく。
「じゃ、いくぞ」
「うん」
ちょこんと隣の椅子の隅に腰掛けるリリスをちらと見つめてから、目を閉じて弦を弾く。
俺の想い。音楽への想いと、リリスへの想いを込めて曲を奏でる。
曲を弾き終えて再び目を見開いた俺の隣には、成長した制服姿のリリスがいた。
ギターを置いてリリスを抱き寄せる。長い髪から、ふわりと甘い香りが漂う。
無言で唇を重ねる。このまま乱暴に貪ってしまいたくなる。
「駄目」
「そうだな、買い物に行くんだっけ」
「もう……あ……」
「さっきのこと、確かめないとな」
白い太股を撫でていた手をスカートの奥に侵入させる。むっちりとした柔らかい内股を愛撫する。
「あン……だ、駄目……」
リリスが脚を閉じようとするよりも早く、そこに触れる。俺の指先を阻むものは、そこには存在しなかった。
「……本当だ。穿いてないんだ」
「わ、わかってでしょ、あン!」
「もうこんなに濡らしてるじゃないか。このままじゃおさまらないだろ?」
「だ、だめよ、ドアの、鍵が」
「閉めればいいだろ?」
「……もう……」
小さなぶつぶつと呪文を詠唱し、指先をぴんと弾くリリス。部室の扉の鍵がかちゃりとかかる。
「いい子だ」
唇を奪い、指先で本格的にそこを犯す。さっき弦を弾いた時のように。いや、さっきよりも淫らな想いを込めてリリスを爪弾く。
「ん、んっ、んんっ!」
勿体無いことだ。学校でなければ、リリスの美声を堪能できるのに。
だが不純異性交遊で停学を喰らうのも面白くない。それに、ショッピングセンターの開いているうちに下校しないといけないから、とりあえずこのまま1回イかせてやるに止めることにする。なに、家に帰ってアンコールすればいいだけのことだ。
「ん、んん……!」
たっぷりと淫蜜を滴らせる花園。
発育の遅れ気味なリリスは、大きくなってもまだここはツルツルのままだ。胸のほうはたっぷりとボリュームがあるくせに、なんだかそのギャップが卑猥に感じられる。
「ふふ、ここがいいんだろう?」
「あ! だ、駄目っ!」
薄皮を剥きあげるようにしてそこを摘み上げる。楽器をチューンするかのように、リリスの身体を淫らに淫らに調律する。
「あ、あ! ん、んっ」
大きな声を漏らされそうになったので、もう一度唇を奪い、舌を絡める。
リリスの方からも俺に抱きついてくる。左腕で抱き返しながら、右腕の演奏のボルテージを高めていく。
「ん! んっ! んんんっ!!」
背中に回された手が、制服の上から爪を立てようとする。
よしよし、いい子だ、このままイかせてやるっ!
二本の指でそこを貫き、クリトリスを裏と表から嬲るかのように弄りまわす。ただでさえノッていたリリスは、あっけなくクライマックスを迎えてしまう。
「ンッ、ん、んんんンーーーーーーッ!」
次の瞬間には、がっくりと俺の腕の中でくずおれる。俺は、もう一度リリスにキスしてやった。
部室の鍵をかけて、傍らにいるリリスに呼びかける。
「それじゃ、いこうか。駅前のショッピングセンターでいいんだろ?」
「ね、ねぇ、真さん……そ、その……」
「いいじゃないか、このままいこうぜ?」
机の上に乗っていたショーツは、俺のポケットの中につっこんである。
つまり、このままショッピングセンターまでノーパンのままでデートってわけだ。
「どうせ水着の試着の時に脱ぐだろ?」
「で、でも……」
小妖精の姿のときは、飛んでいるときに他人にスカートの中を覗かれても一向に気にしていないが、この姿だと羞恥心も増すらしい。
「何よ桐生、またリリスを虐めてるの?」
「ん? 鈴科……と舞波か。お前達も今帰りか?」
「はい」
いつも通り能天気そうな鈴科と、相変わらず大鎌を抱えた舞波がそこにいた。
「駄ぁ目よリリス、桐生をあんまり甘やかしちゃ。でも何、大っきい姿ってことは、これからデート?」
「え、は、はい……買い物に」
「うんうん、青春だねぇ。でもって買い物の後はディナーしてホテルへゴー!」
「す、鈴科先輩っ、ふ、不潔ですっ!」
おばさんモードまじりの鈴科にまくし立てたれ、舞波に睨まれて、嫌な汗が流れる。
「はは、は」
引きつった笑いを浮かべながら汗を拭く。しかし俺の手に握られていたものは、ポケットから取り出したハンカチなんかじゃなくて……。
「き、桐生先輩っ! ふ、不潔ですううううう!!!」
爆笑する鈴科と、錯乱して大鎌を振り回す舞波に追い立てられるようにして、俺達は部室の前から逃げ出した。
終