ここは港町ラズフェ=アンクルにある教会、見てくれは古いが地下には金と名声、そして欲望が蠢く違法賭博場、賭闘場(ミリアルド=トレイ)がある。  
そこにいるのは文字通り金目当ての観客や名声目当ての賭闘士ばかり、  
ただ一人を除いて・・・・  
 
「おやすみ!」 ドカッ!!  
「ぐぁ!!!」  
それが今華麗な身のこなしと攻撃で相手をマットに沈めた『無敗の若虎』ことラサティ=ティグレスである。  
妹のリィリアと自由を勝ち取るためにひたすら闘う猛虎だ。  
 
その猛虎を烏の様な黒髪の男が観客席からほくそ笑みながら見ていた。  
「ほ〜、あれが噂の若虎って奴か。  
ソッコーで潰すより遊びながら潰してぇタイプだな・・・・」  
誰に言ったか分からない独り言を言ったあと受付に向かっていった・・・・  
 
 
『お待たせいたしました!  
今宵注目の賭闘がいよいよ始まります!』  
天井に吊るされたブランコに乗る解説者兼アナウンサーが、艶っぽい声で言ったと同時に観客席から待ってましたと歓声が沸きあがった。  
『我ら賭闘場が誇る『無敗の若虎』ラサティ=ティグレス賭闘士の登場です!!』  
その時黒いフード付きマントを着た者がリングの上に上がってきてマントを脱いで投げ捨てた。  
そこには「武」の一字を入れた額当てがトレードマークのラサティがいた。  
『この若虎に果敢に立ち向かう挑戦者はクロネオ=ディン=サディンスです!!  
今宵はホワイト オア ブラックか!』  
アナウンサーの紹介と共にリングにあの烏の様な黒髪の男、クロネオが上がってきた。  
ラサティと同じように拳で勝負するようだ。  
そしてほくそ笑ん出こう言った、  
「くくく、・・・近くで見れば見るほど凛々しい女だな。  
こりゃ遊び潰したあとでも楽しめそうだな・・・」  
「・・・・・どう言う意味だ?」  
「そう言う意味さ。」  
「・・・・まぁいい。  
僕はお前に負ける気はないし、構っている暇もない!  
速攻で倒す!!」  
そう言ってクロネオに向かって行った。  
「くくく、速攻なんて冷てぇこと言うなよ。  
俺が満足するまで付き合いな!!!」  
クロネオもラサティに向かって行った。  
 
ガッ!! シュッ!  
 
腕で防いだクロネオは接近して強烈なアッパーを仕掛けた。  
 
ガッ! シュッ!  
 
手を重ねてガードしたラサティに蹴撃が襲ってきたがアッパーの勢いを利用して後ろに引いてかわした。  
「さぁ選びな。  
腕から潰されたいか足から  
「ふところががらあきだ。」  
「え?」  
クロネオが声に気づいて下を見た時すでに声の主は無防備な要塞のすぐ近くで攻撃態勢に入っていた。  
「嘴突!!」  
 
バババババババババ!!  
ガガガガガガガガガ!!  
 
ラサティの蹴撃が流星群の如く襲い掛かってきた。  
「ぐふ!! がは!! ぐあぁ!!!」  
防御が間に合わずもろにくらいまくったクロネオはトドメの蹴撃で場外ギリギリの所まで吹き飛ばされた。  
ラサティは勝利を確信したのか挑発のつもりか余裕の笑みを浮かべていた。  
『速く激しく華麗なラサティの攻撃に挑戦者最早打つ手なしか!?』  
「・・・打つ手か・・・使っちまおっかな。  
遊び潰せねぇのは面白くねーが・・・しゃーねぇよな・・・」  
大の字になって仰向けになったクロネオは天井を見つめてそう呟いた。  
 
「如何した?  
遊び潰すとか言ったわりには随分あっさりと蹴り飛ばされているぞ。」  
ラサティは腕を組み余裕綽々の口調で挑発をしたが  
「・・・・・・口の利き方には気を付けな、猫目野郎。」  
「!ね、ねこ・・・な、何だと!?」  
クロネオは寝転んだまま逆に冷静にきり返した。  
そして起き上がってさらに続けた。  
「てめぇは運の悪りぃ奴だ。  
この俺様をキレさせちまったんだからな。」  
その顔は先程の軽い感じと違ってかなりヤル気に満ちていた。  
「・・・・今までのは油断したと言いたいのか?  
今まで負けた連中は決まってそんな陳腐な言い訳をしていたな。」  
「言い訳かどうかはこれから・・・・おい、てめぇの後ろにあるのは何だ?」  
「え?」  
振り返ってみたが何もなかった。  
「何だ? 何も  
 
ガシッ!!  
 
「!!?な、何!?」  
首に何かが巻きついた感触がして慌てて振り払おうとしたが・・・・  
時すでに遅しだった・・・・  
 
 
 
「う、う・・ううん・・・」  
目を覚ましたラサティは朦朧とした気分で生の感触を受け止めた。  
閉めきった部屋の様な湿ったカビ臭さが鼻腔をくすぐった。  
(ここは・・・?)  
「お目覚めかい?」  
「!!・・・・体が・・・動かない・・・」  
彼女ははっとして体を動かそうとしたが、まるで手足が石にでも化したかの如く感覚が感じられなかった。  
おまけに視界がはっきりしていくにつれて、仰向けの姿勢で部屋の明かりを見ているのに気づいた。  
湿ったカビ臭さもその為だった様だ。  
「足掻いても無駄だぜ。  
そろそろ麻酔が効き始めてっからな。」  
「!お、お前はさっきの挑戦者・・・!?」  
さっき戦った烏の様な黒髪が特徴の男、クロネオが怪しげな笑みを浮かべながら  
立っていた。  
この状況、明らかに自分にとって不利だと感じた。  
「僕をどうする気だ!!」  
ラサティは声を張り上げて威嚇したが、逆にクロネオの征服欲に火を点けた。  
「くくく、い〜ねぇ。  
やっぱ犯るなら気の強えぇ女に限るぜ!!」  
クロネオは獣の様に飛び掛りラサティの上に覆い被さった。  
「!や、やめ・・・・ムグゥッ!」  
クロネオはラサティとの距離を一気に詰めると、ぐいっと顎を引き寄せ唇を奪った。  
 
つづく  
 

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