「どうぞ〜」  
 やたらと露出度の高い、扇情的な服装のウェイトレスが飲み物を差し出してくる。  
「……どうも」  
 レンは仕方なくそれを受け取る。  
 周りを見れば、ほぼ全員の客が同じように飲み物を受け取っていた。もちろん、一緒にこの店に潜り込んだクーとシスカも同様である。  
 周りの客層は男女同数ほど。いや、若干男の方が多いようだが、それら全てに共通するのが、柄が悪い、ということだった。  
『――任務に、協力してほしいんです』  
 シスカがそう切り出したのは、今朝のことだった。  
 レンたち一行が通りがかった町で、シスカはアークエイルの上層部から連絡を受けたらしい。  
 この町には悪質なマフィアがはびこっているらしく、その調査、もしできるようならば殲滅をしてほしい、とのことだ。  
 本来、シスカは休暇中で、別の目的がある。なので、最初は断ろうとしたらしいのだが、もし任務を遂行できたならば、その休暇をもう1ヶ月追加しても良い、という報酬を突きつけられて、拒否するのを躊躇ったらしい。  
 そして考えた挙句、シスカはそれを承諾し、同じアークエイルの一員であるローウェンとキーアはもちろん、この休暇を取る理由であるクーとレンも、その任務に協力することになったのである。  
 そのマフィアの集会があるというので、それじゃあ調査がてらに潜入してみようということで、今ここに至るわけである。  
 建物の外見は酒場と大して変わらず、中も同じようなもので、奥には小さいながらも舞台があった。客は、現時点で100人ほど。それで丁度満席くらいだった。  
 ちなみに潜入組の3人は、顔を知られてはまずいと、フード付きのローブで顔を隠していた。ローウェンとキーアは建物の外から監視しており、サポート役となっている。  
「なんていうか、胡散臭さ爆発って感じだよなー……」  
「そういうクーさんがいた空賊だって、十分胡散臭かったと思いますけど」  
 む、と睨んでくるクーをあっさりと無視し、シスカは飲み物をくいっと口に入れた。敵わない、と思ったのか、クーはヤケだとばかりに一気に飲み込んだ。  
 レンもその飲み物に口をつけ――  
「うぇっ! 甘い……」  
 うう、とレンは口をひん曲げた。  
 
 レンは甘いものが苦手だった。女性は甘いものが好き、という見方は、レンには当てはまらない。  
 レンはグラスをテーブルに戻した。これ以上飲む気にはなれなかった。  
 ため息交じりに正面に目をやれば、テーブルの対面で、クーはすでにグラスを空にしていた。  
「よく飲めるのね……」  
「ん? ああ、レンは甘いもの苦手だったっけ。俺は別に大丈夫だし」  
 そう言ってクーはにっかりと笑った。任務中なのに気楽だな、とレンは苦笑する。と。  
「2人とも」  
 唐突に、シスカが静かな、真剣な声で口を開いた。  
 ただ事ではない、と感じて、レンはそちらに気をやった。クーも同様だ。  
 シスカはフードの下で目をきょろきょろさせている。  
「気付かれたかもしれません」  
「マジかよ!?」  
「しっ。まだ確証は持てませんが、どうも黒いスーツの男たちがこちらを見張っているような気がするんです」  
「黒いスーツ……」  
 レンは不審がられない程度に、きょろきょろと首を動かして確認した。なるほど、確かに柄の悪い派手な連中に混じって、数人の黒いスーツの男がいる。もっとも、こちらを気にしているようにはレンには見えなかったが。  
「杞憂ならば、それで良いに越したことはないんですけどね」  
 言いながら、くいっと飲み物を一口。  
 ふと、レンの口を、言葉がついて出た。  
「シスカも、甘いものは大丈夫なのね」  
「え?」  
 きょとん、とシスカはレンを見た。それをクーが苦笑する。  
「レンは甘いものが苦手なんだよ。だからほら」  
 レンのグラスを指差し。  
「ほとんど飲んでないだろ?」  
「ああ、そうだったんですか。知りませんでした」  
 へえ、とシスカがレンを見たとき、不意に、ただでさえ暗めだった照明がさらに暗く落とされた。  
 
 周囲から歓声と拍手が巻き起こる。それに応えるかのように、舞台が明るくなり、そこに、白いスーツに身を包んだ男が現れた。そして手に持ったマイクに向かって叫ぶ。  
「レディース・アンド・ジェントルメン! お待たせしました! ただいまより、毎回恒例の大乱交パーティーを始めたいと思います!」  
 …………。  
『はあっ!?』  
 3人の声が思い切り重なった。瞬間。  
「おい」  
 シスカの肩に手が乗った。黒スーツの男だった。  
 シスカの判断――というよりも、男の大胆発言からの立ち直り――は、早かった。  
「逃げます!」  
 レンは立ち上がって、一目散に出入り口を目指して走り出した。先陣をクーが切り、大勢の客を掻き分けてくれる。  
「おら、どけよっ!」  
「きゃあっ!?」  
「なんだなんだ!?」  
「ひゃはははっ、殺せー!」  
 怒号が飛び交う中、構わずに逃げる。  
 やっとのことでなんとか扉を掻い潜るが、そこには別に男たちが立ちはだかっていた。  
 囲まれた。そうレンが思って次の瞬間。  
「目を閉じて!」  
 シスカの叫びに、レンは瞬時に反応した。  
 ボン、という音と、まぶたの上からでもわかるほどの光が襲い掛かってくる。  
 男たちの悲鳴と、そして。  
「もう大丈夫です、行きますよ!」  
 シスカの号令で、レンはクーとともに走り出した。  
 
「はあ、はあ……。なんとか、撒けましたね……」  
 宿屋に戻って、シスカが一番にため息を吐いた。  
 通りがかりの町だったので、地の利がないのが問題だったが、それでも煙球が有効だったようで、この宿屋に戻ってきた時点で、追っ手を確認することはできなくなっていた。  
 3人そろってマントを脱ぐ。そしてシスカが胸元をパタパタと扇いだ。  
「暑い……」  
「だなー……」  
 クーも首を縦に振った。  
「ところで、ローウェンとキーア置いてきちゃったけど、大丈夫なのか?」  
「大丈夫でしょう。2人ともヘマなんかしませんからね、誰かさんと違って」  
「誰かさんって誰だよ?」  
 さて、誰でしょう、とクーの睨みを軽くいなすシスカ。  
 そんな軽口の応酬で、レンはやっと息をつくことができた。やはり追われるのは気持ちの良いものではない。  
 と、その時クーがきょろきょろとあたりを見回し始めた。  
「クーさん、どうしたんですか?」  
「いや……なんかすごく暑くないか?」  
「暑い?」  
 レンは首をかしげた。先ほどからシスカとクーは暑い暑いと言っていたが、実はレンはそこまで暑いとは思っていなかった。  
 そりゃ走ってきたんだから当然でしょう、というシスカに、しかしクーの様子が段々とおかしくなってきた。なんだかぼんやりとしている。  
「クー?」  
「…………あ? ああ、レン……」  
 さすがにおかしいと思ったのか、シスカも真剣な調子に戻った。  
「大丈夫ですか? もし気分が悪かったり、いつもと違う感じがあるのならば、言ってくださいよ」  
「あ、ああ……なんか……」  
 うん、とシスカが顔を覗き込む。そして、クーは。  
「なんか、シスカとレンが、すごい色っぽく見える……」  
「なるほど、色っぽく見える……って、はあ?」  
 眉をひそめたシスカは、大きく息を吐いた。  
「そんな冗談を言っていられるくらいなら、大丈夫で――」  
「ごめん」  
「え?」  
「もう、我慢できない」  
 唐突に。  
 がばっと体を起こすと、クーは、顔を覗き込んでいたシスカを払い飛ばし、いきなりレンに体当たりしてきた。  
 
「きゃあっ!?」  
「レンさん! クーさん、一体何を!?」  
 押し倒されて見上げた先にあったクーの表情は、尋常ではなかった。息は荒々しく、目の焦点もぼやけ気味だ。  
 クーは、明らかに欲情していた。  
 クーは、レンの手首を押さえ、そして体を腰の上に乗せてきているので、レンは拘束から自力では抜け出せそうになかった。  
 レンは慌てて、シスカに援助の視線を送るが、しかし。  
「ぐっ……これは、まさか……?」  
「シスカ!?」  
 シスカは膝をつき、右手で顔の半分を覆っていた。残りの半分から見える表情は苦しげで、そして、その瞳の焦点が定まっていないことに、レンは気付いた。それはクーの異状に似ていた。思わずレンは呟く。  
「もしかして、シスカも……」  
「くっ……すいません……」  
 その体が、少しずつ押さえつけられたレンに近付いてくる。残った理性を総動員してその速度を抑えているようだが、それももう少しの猶予もないだろう。  
 それでもシスカは、なんとか言葉をつむぎだした。  
「どうやら先ほどのジュースに、媚薬が入れられていたようです……」  
「ジュースに……媚薬?」  
「ええ……。媚薬には、麻薬から作られたものが多数あると聞いた事があります。多分今のこれは、麻薬による幻覚症状と合併して、性欲が恐ろしく増しているのだと……」  
 そういえば、とレンは思い出した。レンはジュースが甘かったので一口しか飲んでいない。だから、2人のようにおかしくなっていないのだ。しかし一杯まるごと飲み干してしまった2人は――  
「すいません、レンさん……」  
 はっ、とシスカを見る。  
 口の端が、吊りあがっていた。  
 笑みの形だった。  
「限界、です」  
 レンとクーの顔の間に、シスカは無理やり顔をねじ込んできた。そしてそのまま、唇をレンのそれに押し付けた。  
「んむぅっ!?」  
 
「んめっ……!」  
 やめて、という言葉は、しかし発する事ができなかった。  
「ぐちゅっ」  
「!?」  
 なんとシスカは唇ごと、レンの口の中にねじ込んできたのである。  
 あまりの驚きに歯を食いしばることを忘れていたレンに、シスカはなおも口を深く入れ込んでくる。  
 レンの口腔内に侵入してきたシスカの唇は熱かった。そして、それ以上に熱い舌が、ついに動き出した。  
 舌が、それが1個の生命体のように、レンの口の中を蠢く。そしてレンの舌を見つけ出すと、逃げるレンをあっさりと追い詰め、そしてからめてきた。  
「じゅるぅ……!」  
 瑞々しい音が自分の口の中から聞こえてくることに、レンは身震いした。  
 すでに、歯を閉じてしまえばシスカの唇を噛み切ってしまうところまで潜り込まれている。なので、この状況から逃げたくとももうできなかった。腕も押さえつけられている。「レンふぁん、かふぁぃいれすよ……ぴちゅっ」  
「んぁっ!」  
 シスカがレンの舌を解放した。と思った次の瞬間、シスカは次に、レンの歯を蹂躙し始めた。  
「ひゅじゅっ……!?」  
 まずは上あごの歯を表裏、前歯からゆっくりと、しかしすべてを舐めていく。  
「っ!」  
 レンは思わず肩を震わせた。歯を舐められるのはまだ良いが、それよりもたまらないのは、同時にその舌先が、歯茎の表面を、少しだけなぞられることだった。  
「ふふっ」  
 シスカが笑みを浮かべる。彼女はわかってやっていると、レンは確信した。  
 レンはもう、目を閉じてその蹂躙に耐えるしかなかった。まさしく、口の中を犯されている気分だった。  
 そして、シスカが止まった。  
 終わった……?  
 そう思い、目を開いた時、レンは再び失望を感じた。  
 シスカはまだ、笑っていた。  
 彼女の唇はまだ抜かれていない。嫌な予感がする。  
「飲んれくらふぁいね」  
 口の中で呟かれた次の瞬間、レンは熱い液体がのどを打った。  
 
「……んっ!?」  
 レンは、やめて、と目で訴えた。だがその視線をシスカは受け止めず、さらなる量の唾液を流し込んでくる。  
 もはやレンののどはシスカの唾液で満ちており、飲み込まないことには、咳き込んでしまいそうだった。  
「う……ん……こくっ……」  
 もう、仕方ない、とレンは一気にその唾液を飲み込み――その味に、目を見開いた。  
 甘い。  
 それは、先ほど飲んだ飲み物の味。  
 麻薬にして媚薬。  
 すでに体液に混じっていたために、反応が早くなっているのかだろうか。少しずつ、体が熱くなっていくのを、レンは自覚していた。段々とまぶたが重くなっていく。  
 その反応を見たからなのか、シスカはまたもや舌の動きを再開した。レンはその動きが少しだけ心地よいと、感じ始めていた。  
「んじゅっ……うむぅ……」  
「あんっ……ふう……」  
 その動きに応えるように、レンは恐る恐る、舌を動かした。シスカの目が細くなる。  
 シスカの舌は熱いと思っていた。だが、自分で動かし始めるとそれだけではなく、ざらついていぬめっていた。彼女の舌のすべてを感じ取れたことに、レンは嬉しさを感じる。  
 段々動きが激しくなってくる。舌での応酬が、快感だった。  
「大分気持ち良いみたいだな、レン」  
 シスカの頭のうしろから、クーの声が聞こえてきた。シスカとの交わりで忘れかけていたが、クーがレンの手を押さえていたのだ。  
 が、その手の拘束は、気付けばすでに解かれていた。  
 クーの声に、楽しそうな音が混じっていた。  
「唇だけでそれだけ気持ち良いなら、これはどうだ?」  
 刹那、レンは胸をぎゅっとされるのを感じた。そして同時に。  
「ひゃぅっ!」  
 肩が上がる。刺激が強すぎる。  
 でも、気持ち良かった。  
 と、シスカが唐突に、その唇を引き抜いた。びちゃあ、と唾液の糸が、幾本も伸びる。ふふ、と彼女は笑った。  
「レンさんの可愛い顔を見たいんですよ……。ね、クーさん」  
 その視線で彼女の意図が伝わったのか、クーは首を縦にふると、レンのワンピースの胸元を、いきなり引き裂いた。  
「乱暴ですねぇ」  
「別にいいだろ? 普通に脱がそうとすると面倒そうだし」  
 レンの胸が外気にさらされる。  
 それはひんやりとしているようで、熱いようで、レンにはもうわからなかった。  
 そして2人は同時に、そのさらされた胸にかぶりついた。  
『びちゅっ』  
「はうっ……!」  
 
「あはっ、レンさん、気持ち良かったみたいですね……もっといきますよ」  
「ひゃああぁっ!」  
 シスカは手で胸を全体的にもみしだきながら、乳首を重点的にはみ、クーはまるで母親の乳をせがむように、胸のふくらみ全体にむさぼりついていた。  
 だが、それが良かった。  
 2つの違いすぎる刺激が、レンをさらなる快感へと押しやっていく。  
「い、ひゅうっ」  
 もうワケがわからなかった。  
 すでに、ただただ、快楽を享受するのみだった。  
 じゅる、という水音が、やんだ。同時に片方の胸から快感が失せる。  
「クーさん?」  
「あ、シスカはそのまま続けてくれよ。俺はさ」  
 その目が、レンの下半身へ。  
「こっちをやるから」  
「ああ、なるほど」  
「あ、クー……」  
「安心しろよ、レン。もっと気持ち良くしてやるからな」  
 気持ち良く、という言葉で、レンはなぜだか安心してしまった。思わず微笑んでしまう。  
「うん、お願い……」  
「じゃあ、私は続けますからね、レンさん」  
 それまでクーが舐めていた右胸に、シスカは頭を移した。そちらをなめ始めながら、今まで自分がなめていたところを、今度は乳首を思い切りひねった。  
「ひゃんっ!」  
 ぴり、と電撃が奔る。だがシスカは攻めの手を休めない。どんどんレンの気持ちは昂ぶっていき、そして。  
「じゃあ、いくぞ」  
「あ、駄目……今やられ……ふうっ!」  
 レンの抗議の声が、シスカの刺激で止められた。その瞬間。  
「もうびちゃびちゃだよ、レン。これなら、一発でイきそうだな」  
 言葉が聞こえてきたのと同時に、下半身の割れ目に、クーの指がいきなり侵入してきた。  
「ひゃあああぁぁぁっ!」  
 手に、足に、胸に、頭に。  
 体全体が伸びた。それくらい、びりびりとしたものが体に走った。  
 頭がぼんやりとして、くたあ、と体が弛緩してしまう。  
「あらあら、本当にイってしまいましたね」  
 シスカの声も、どこか遠い。  
「見ろよシスカ、もうびちゃびちゃ」  
「本当ですね、おもらししたみたいじゃないですか。っていうか、これならもう挿入れちゃっても大丈夫じゃないですか?」  
「だよな。俺ももう我慢の限界だし」  
 ごそごそという音。嫌な予感がレンを襲う。  
「じゃあ、やりますか」  
「ああ。お前も好きにやっていいぜ」  
「クーさんに指図される覚えはありませんけど、まあ好きにやりますから。ふふ」  
 少しずつ意識が覚醒していく。  
 が、次の瞬間。  
「いくぞ、レン。一発で失神したりするなよ」  
「え……あ」  
 硬く、太く、長く、熱いものが、レンの初めてを、あっさりと散らした。  
「ああああぁぁぁぁっ!」  
 
「う……あ……?」  
 熱い鉄の棒を入れられたかのような、肉棒が膣内に入り込む初めての感覚に、レンは口をパクパクとさせた。  
 シスカに口移しで飲まされた媚薬の影響か、痛みはまったくと言って良いほどなかったが、しかし、腹を貫かれた圧迫感は、かなりのものがあった。  
 だというのに。  
「あう……ふぁ……」  
 この、下腹部から全身へと広がっていく、ぴりぴりとした感覚はなんだろうか。  
「おや、レンさん、気持ち良さそうにしてますね」  
 気持ち良い?  
 シスカの声に、レンは初めてその感覚が快感だと知覚した。  
 そう、気持ち良い、だ。  
 体の中を掻き分けているこの熱い棒をじんわりと感じ、レンはやっと、体を震わせた。  
 クーがそれを見て苦笑する。  
「おいおい、また動いてもいないんだぜ、レン。そんなに気持ち良さそうにしてたら、この先本当に駄目になるんじゃないか?」  
「え……動く……?」  
 意外な言葉に、レンはぼんやりとした瞳をクーに向けた。  
 クーの苦笑は、しかし次の瞬間、意地の悪そうなもに変わった。  
「ああ、こうやって……な!」  
「きゃあああぁぁぁっ!?」  
 ずん、とひと突き。  
 子宮の壁を打たれた。  
 未経験の快楽に、しかし浸る暇もなく、クーは律動を止めず、さらに腰の動きを加速させていく。  
「気持ちいいだろ、レン!」  
「ああっ、うんっ、きもち……気持ちいいよ、クー! あ、くうううぅぅぅっ!」  
 腰のぶつかる音と、性器から漏れ出る粘液の水音が、いやらしく部屋に響き渡る。  
 これが、性交渉か、とレンは悲鳴をあげながら、ぼんやりと思った。  
 娼婦という存在がいるのは知っているが、なぜそんなものが必要なのか、今までのレンには到底理解出来なかった。だが、今はもう違う。  
 今まで経験してきた中で、最大の快楽。  
 これならば、性行為にふける人がいるのも当然だった。  
 
「レンさん」  
 ふっ、と目の前が暗くなる。  
 一瞬、何が起きたのか理解できず、しかし目をこらして、それが、シスカがレンの頭の上にまたがり、その股間をレンの目の前に下ろしてきたのだと気付いた。  
「私のを、舐めてください」  
 そう、気持ち良いのだ。  
 だから、彼女も気持ち良くしてあげたい。  
 レンは舌を伸ばし、シスカは腰を完全に下ろした。  
 舌が、すでに十分すぎるほどに潤ったすじに入り込んだ。  
 びちゃ、という音がした。  
「ふあああぁぁぁっ! イイですよ、レンさんっ……!」  
 クーの腰に、下半身を何度も打たれながら、レンは必死で舌を動かし続けた。  
 ともすれば、クーの刺激だけで意識が飛んでしまいそうだが、それでもシスカを気持ち良くさせたかったので、必死でクーの前後運動に耐える。しかし。  
「くそっ、舌を伸ばせないくらい駄目にしてやるよ、レンっ!」  
 クーの動きがさらに加速する。レンはついに、舌の動きを止めてしまった。  
「あああぁぁぁっ! だめ、だめえええぇぇぇっ!」  
「何が駄目なんだよっ、ほらっ!」  
「ひあっ、ひあああぁぁぁっ!」  
 もう意識が飛んでしまう。そう思った瞬間、レンは頭を掴まれた。  
「仕方がありませんね、なら、私は私で勝手にレンさんを使わせてもらいますよ」  
 シスカの声に、楽しそうなものをレンは感じとった。  
 ぐっと頭の手に力が入り、そしてシスカは、レンの顔に、思い切り自分の股間を擦りけ始めた。  
「むじゅっ! んじゅうううるるぅっ!」  
「あはっ、いいですよう、レンさん、気持ち良いです!」  
 レンは苦しくて咳き込みそうだったが、しかし、シスカが自分の顔を使って自慰をしているのかと思うと、逆に興奮してきてしまった。  
「ぐっ、やばっ……!」  
「んんんっ……むぅうううぅぅぅっ」  
 クーの声に切羽詰ったものが混じった瞬間、その腰の動きが、一気に乱暴になった。そう、それこそ、犯されるかのように。  
「むまあああぁぁぁっ! ひゃめえええぇぇぇ、ひゃめてえええぇぇぇっ!」  
「くそ、射精る……!」  
 ただでさえ大きかった肉棒が、シスカの膣内で、さらに大きく膨張した。  
 刹那。  
「く、イくぞおおおぉぉぉ!」  
 肉棒の先端を子宮口に思い切り叩きつけられ、そこから熱いナニカがクーの子宮へと入り込んでいく。  
 もう、駄目だった。  
「イく、イっちゃううううううぅぅぅぅぅっ!」  
 口が思わず開いた。  
 シスカの股間に押し付けられていたのを、無理やり押しのける。  
 上唇が、なにか、ぽっちりとしたものに当たった。  
「ひゃあっ、そ、そこは……!」  
 シスカの焦ったような声。しかし、絶頂にあったレンは、思わずそれを噛んでしまった。  
 それを、シスカのクリトリスだと気付かずに。  
「だ、ダメですうううあああイくうううううぅぅぅぅっ!」  
 ぷしゃあっ、とシスカの股間から液体が噴き出す。  
 暖かいそれを顔にかけながら、レンはただ、息を吐き出すことしかできなかった。  
 
「はあ、はあ、はあ……」  
 レンは必死で息を整える。だが、そんなことはお構いなしと、クーは膣から自身の性器を抜き出した。  
「んっ……うぁ……」  
 ごぽ、という音。同時に膣内から精液が逆流していく感覚に、レンはまた体を震わせた。  
 と、そのクーが、未だにレンの上で息を吐き続けるシスカに話しかけた。  
「シスカ、場所変わってくれ」  
「……? もう、こっちはイったばかりで、立つのも辛いんですよ、まったく」  
 ぶつぶつ言いながらも、シスカはやっと、レンの顔の上から腰をあげた。  
 ひさしぶりに、部屋のランプの明かりが目に入り、それが少しまぶしかった。  
 しかし、それはすぐに再び闇へと変わった。  
「なあ、レン……綺麗にしてくれるよな?」  
 クーがレンの頭の上にまたがり、まだまだ硬い男性器を、レンの口の前でちらつかせてきた。  
「あ……」  
 思わずため息が漏れる。こんなものが、自分の股間を裂いていたのかと思うと、変な気分だった。しかも、その肉棒は2人の粘液と、そして少しばかり、自分の血液で濡れていた。  
 クーの希望は、くわえてほしい、ということだろう。だが、それに迷ってしまう。  
 そんなふうに躊躇していると、口を開けていた事が肯定ととられたのか、クーが腰を前へと押し出してきた。  
 思わず口を閉じかけ、しかし。  
「きっと気持ち良いぜ、口の中を犯されるのって」  
 レンははっと思い出した。  
 先ほど、シスカに口をかき回された時、とても気持ちの良かったことを。  
 そしてクーの肉棒の硬さや形は、当然のことながら、シスカの唇や舌とはまったく異なるのだ。それを口に突っ込まれた時、自分は一体どうなるのか。  
「……ぁ……あーん……」  
 ついにレンは口を開いた。  
 クーがにやりと笑みを浮かべた。瞬間、一気にその腰をレンののど元まで突き込んだ。  
「んぶぅっ! ……えほっ、げほっ!」  
「うあっ……いいぜ、レンの口……!」  
 すると、射精したばかりで、少しは柔らかくなっていたクーの肉棒が、急にまた硬さを増していった。そして、腰をまた振り出す。  
「んぐぅっ、はあうぅ……んぶぅっ!」  
 熱くて硬い棒に犯され、しかし少しずつレンは、恍惚にうっとりし始めた。  
 やはり、シスカの攻撃とは違う。シスカの舌は、すべてを蹂躙する、という動きだったが、クーのそれは乱暴で、そしてどうしようもなく愛しかった。  
 クーは、レンの頭を手で挟みこむと、そのまま固定し、さらに激しく腰を振ってきた。  
「はぐっ、えづぅっ、もごぉぅっ……!」  
 上あごを擦られ、舌を叩かれ、のどを打たれる。  
 あまりに暴力的な律動は、しかし今のレンには快楽にしかつながらなかった。  
 さらに。  
「さて、ではこちらの具合はどうでしょうねえ?」  
 シスカの声が、レンの足のほうから聞こえた瞬間、レンは思わず飛び上がりそうになった。  
「えいっ!」  
 シスカの指が、レンのアナルへと侵入してきた。  
 
「ぐ……あ……んぶぅっ!」  
 痙攣する暇もなく、クーの腰は止まらない。シスカの指も、さらにえぐってくる。  
「あらら、ここももう準備万端じゃないですか、レンさん。というか、こっちに入れたほうが気持ち良いんじゃないですか?」  
 え、とレンは、改めてそちらの感覚に意識を持っていった。  
 本来排泄するための器官に侵入してきたシスカの指は、うねうねと動いており、絶えずレンを刺激していた。そしてその刺激に、確かにレンは反応していた。  
 ああ、そうか、とレンは思った。  
 自分は、淫乱なんだ、と。  
「そらレン、2発目だ!」  
「んむうううぅぅぅっ!」  
 肉棒が脈打ち、その先端から精液が飛び出してくる。飛び出してきた液体はレンののどを打ち、しかしクーがレンの口を無理やり閉じているので、吐き出すことは叶わない。  
「う……あー……」  
 長かった射精が終わる。しかし、クーはその分身を抜き出そうとはしない。  
 上目遣いでクーを見ると、彼は期待の眼差しをこちらに向けていた。  
「わかってるよな、レン」  
 当然だった。だからレンは頷いた。  
 熱く、ねばねばしている精液を、レンはのどを鳴らしながら嚥下し始めた。  
 食堂にからみついてくる、飲むのに苦しい液体。  
 だと、いうのに。  
「んくっ……あんっ……」  
 どうして飲むごとに、こんなに体が熱くなっていくのだろうか?  
 すべてを飲み干して、やっとクーは肉棒を抜いてくれた。しかし、その硬さはまだまだ力強く、レンはもう一度クーと交わることになると確信していた。  
 クーが一息つく間に、レンは口元に感じた液体を指ですくった。  
 粘っこく、糸を引く白い液体。  
「せい、えき……」  
 クーがシスカに何か話しかけている。だが、それよりも目の前の液体が重要だった。  
 飲んだだけで体が火照る液体。ただでさえ、また快楽で我慢が出来そうにないのに、少しだけでもそれを残している事が、もったいないと思えてしまう。  
 レンは迷わず、指をくわえた。  
 くちゅくちゅ、と飲み残しのないように舐めまわす。  
 と、その瞬間、急に体が持ち上がった。  
「え……?」  
「本当にいけそうなんだな?」  
「ええ、大丈夫でしょう。というか、かなりの名器かと」  
「よし、なら期待するぜ」  
 どうぞ、と頷くシスカは、レンの前にいた。  
 レンは、後ろから脇に手を入れられて、腰が少しだけ浮くくらいに持ち上げられていた。  
 持ち上げているのはクーだ。そのクーは胡坐を掻いており、下を向けば、その男性器がそそり立ち、レンに腰を落とさせるだけでそれを貫こうとしている。  
 ゆっくりと、レンが下ろされていく。  
 シスカが笑顔でレンに呟いてきた。  
「気持ち良いですよ、きっと」  
 え、と問おうとした瞬間、クーの肉棒の先端が、当たった。  
 ――レンのアナルに。  
「だ、そこはちが……!」  
「いや、正解だ!」  
 ずぶり、という音がした気がした。  
「ぐ、ああああぁぁぁっ!」  
 
「く、くる……しいよ、クー……」  
 息も絶え絶えに、レンはなんとかそれだけの言葉を紡ぎだした。  
 シスカに指を入れられた際は確かに快感ではあったが、さすがにクーの太い肉棒をいきなり入れられては、圧迫感がひどかった。痛みが大きすぎる。  
 シスカがそんなレンの表情を覗き込み、ため息をつく。  
「まったく、一気に入れるなんて、やりすぎですよクーさん。女の子はデリケートなんですから、もっと優しく扱ってもらわないと」  
「なんだよ、シスカが大丈夫だって言ったんじゃないか。だからアナルセックスをやってみようと思ったのに」  
「まあ、大丈夫だと言ったのは確かですしね、それに……」  
 そこでシスカが不気味にも、ふふ、と口の端を持ち上げた。  
「レンさんの苦悶の表情も見られましたし」  
 レンは背筋を震わせた。  
 シスカはサディスティックな笑みを浮かべ、舌でチロリと自らの唇を舐めた。そこには確かに、レンを犯してやる、という意思が見えていたのだ。  
「安心してください、レンさん。すぐに気持ちよくさせてあげますから」  
「ぁっく……ふぇ……?」  
 未だ息もうまくできないレンに、シスカは微笑みかけると、おもむろにその手をレンの下腹部へと持っていった。  
 そして指を、レンの割れ目に這わせる。  
「ひゃうあぁっ!」  
 びりっとレンの体に電気が奔る。クーに犯されたばかりのその場所は敏感で、ちょっとした刺激でもかなりの衝撃となってレンの体を快楽へと導こうとする。  
 シスカはレンの反応に満足したのか、笑みを浮かべた。  
「クーさん、動いても良いですよ。ただし、最初はゆっくりと、ね」  
「ん、わかった」  
「ひぁっ……!? だ、ダメ……」  
 レンの懇願は、しかし届かなかった。  
 奥まで入れられたクーの肉棒が、ゆっくりと排出されていく。  
「う、うあああああぁぁぁぁぁ……」  
 まるで排泄物を出す時のような感覚に、レンは思わず苦悶の声をあげた。入れられるときよりかはまだ苦しくないが、それでも妙な感覚に、まだ慣れない。  
 そして、クーの分身が、もう少しで全部出されようか、というところで止まった。そしてまた腰に力を入れられた事が、レンにはわかった。  
「お願い、やめて……」  
「大丈夫ですよ、レンさん」  
 涙ながらの懇願に、しかしシスカは底知れぬ笑みで答えてきた。  
「今度はきっと、苦しいとは思いませんから」  
「え?」  
 聞き返そうとして、しかし、クーの男性器が再びゆっくりと、レンのアナルへと侵入を再開し始めた。  
 やはり苦しくて、声をあげかけ、しかし。  
「こっちも入れますから」  
 え、と思った瞬間。  
 シスカはその指を、今度はレンの女性器へと突っ込んだ。  
「うああぁぁっ!」  
 思わぬ行動に、レンはついに悲鳴をあげた。  
 
 苦しみよりも、すでにどういうものかとも理解できない刺激がレンを襲う。  
 クーが腰を入れればシスカも指を深くに突っ込み、逆にクーが腰を引けば、シスカも指を引く。  
 膣内の刺激はもちろん快楽につながり、それが、肛門への刺激が快楽であるかのように見せかける。  
 違うはずなのに、でも、気持ちよく思えてしまう。  
 パン、とクーが腰を打ち付ける。  
「ひゃあううううぅぅぅっ!」  
 クーが肉棒を戻していく。  
「う、ああああぁぁぁぁ……」  
 最早レンは、クーとシスカの為すがままだった。  
 シスカがクーに目配せをする。  
 次の瞬間、クーはついに、腰の速度を上げた。  
「ひああっ、だめぇ、だめなのおぉぉっ!」  
「何を言ってるんですレンさん、こんなに漏らして」  
 ぐちゅぐちゅという音。  
 それはレンが快楽を感じている証。  
「ははっ、本当に気持ち良いんだな、レン。……ほらっ」  
「きゃああああぁぁぁぁっ!」  
 もう何がなんだかわからない。  
 聞こえるのはパンパン、ぐちゅぐちゅ、はあはあ、という音だけ。  
 体は揺さぶられ、下腹部には、違和感にして快楽という刺激。  
 脳天までぶちぬかれてしまうのではないかというほどのクーの突き上げに、これ以上ないというほどピンポイントを突いてくるシスカの指の蠢き。  
「うあああぁぁぁっ、きゃうっ、んはうううぅぅああぁぁっ!」  
 だんだん頭が真っ白になってくる。  
 意識もおかしく……。  
「うあっ、すげぇ締め付けてくる……!」  
「こっちもですよ。レンさん、イきそうなんですか?」  
 2人の声もぼんやりとしていた。だからレンはただ呟くだけ。  
「うん……もう、っあああぁぁぁっ、イきそう、かもおおぉぉっ!」  
「ならイけ、レン! たくさん射精してやるから!」  
 あの熱い液体に体の中を満たされるのだ。  
 レンは恍惚に顔を緩ませた。  
 その瞬間、クーが放ったその強烈なひと突きが、トドメだった。  
「いぃ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」  
 手足が思わず伸び、背中が反り返るほどの快楽。  
 排泄器官の中では、クーがうめきながら精液を放出し、その熱さがさらなる高みへとレンを押しやる。しかし。  
「もっとイかせてあげますから」  
 シスカの声に、え、と思った瞬間。  
 陰核が、ひねり潰された。  
「――――――――――っ!」  
 声にならない悲鳴をあげ、レンは至高の快楽へと辿り着いていた。  
 
 クーが肉棒をぬくと、アナルからごぽりと精液が漏れ出した。それを感じながら、解放されたレンは、ついにばたりと倒れた。  
「はあ、はあ、っくうぅ……ふあぁ……」  
 もう体に力が入らない。意識も混濁し始めている。  
「可愛いなあレンさん。あんなにイっちゃって」  
「だな」  
「ねえクーさん、私ももう我慢できそうにないんですけど、いけそうですか?」  
「ん? ああ、大丈夫だ。ほら、そこに手をついて……」  
「んはあああぁぁぁっ、クーさんのチ○ポおおおぉぉぉっ!」  
 2人の悲鳴を聞きながら、レンはゆっくりと意識を沈ませていった。  
 
「こ、これは……」  
 ローウェンは、その部屋の惨状に言葉を失った。  
 もう何なのかわからないくらい、全身を液体だらけにしてぐったりと3人が倒れていたのだ。これでは驚かないほうがおかしい。  
 ローウェンのうしろから、キーアがひょいと頭をだし、彼女もまた顔をしかめた。  
「ああ、媚薬にやられたみたいね、これは」  
「だろうね。しかし……」  
 こちらはやっとこさ逃げ帰ってきたというのに、他の3人は快楽をむさぼっていたと考えると、ローウェンはなんだかいたたまれない気持ちになってきた。  
「はあ……」  
 思わずため息をつくローウェンに、キーアがにやりと笑みを浮かべた。  
「私たちもヤる?」  
「は? ええええぇぇぇぇ!?」  
「いいじゃん、ほら、あたしの虜にしてあげるからさ、ロー!」  
 キーアに取り押さえられ、ローウェンは服を脱がされていく。  
「ちょ、だめだってキーア!」  
「いいじゃない、ちょっとだけよ〜」  
「うわああああぁぁぁぁぁっ!」  
 ローウェンの悲鳴が上がった次の瞬間、その部屋の扉は閉ざされたのだった。  
 
 おしまい。  
 
 

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