「ん……んふ、はうぅ……」
まるで自分のものでないように、指が自分の秘所をまさぐる。だがその指は確かに自分のもので、つまりその動きは、シスカ自身が望んでいるものなのだろう。
宿の一室、一人部屋。時刻はもうすぐ深夜になろうという頃。全裸で。
「うん……はぁっ……」
シスカはあえぐ。指が止まらない。
やめたい、とはシスカも思う。だがやめられない、やめたくない。
シスカは、指はそのままに、しかし目を閉じてある少年の姿を思い出していた。
「ぜん、ぶ……うぅ……クーさんのせいなんですからぁ……」
自分の心を惹きつけて止まないクー。
あの少年に犯されたい、と思う自分がいる。そして、自慰をしてしまう。
「ああっ……!」
指はとうとう、膣の中へと侵入していった。その動きは、どんどんと加速していき、激しさを増していく。そして――
「い、イくうううぅぅぅ!」
下腹部が、きゅん、となる。そして同時に指が締め付けられる。
絶頂はまだ収まらない。そのままきつい膣内を、指でかきまわす。
「クーさん、クーさん、クーさあああぁぁぁんんんん!」
「呼んだか?」
いきなり、扉が開いた。クーがいた。シスカは驚いたが、しかし生理的な現象ゆえに、止まらなかった。
「ああああぁぁぁぁっ!」
ぐぐぐ、弓なりに体をのけぞらせ――やっとなんとか戻る事ができた。
はあ、はあ、と息をする。そして、のろのろと扉に目をやった。
「し、シスカ……」
目をまん丸に見開いて、クーが呆然としていた。
「し、シスカ……」
自分の名を呼びながら痴態を晒していたシスカに、クーはさすがに驚いて硬直した。
そろそろ寝ようと、あてがわれた部屋に戻ろうとしていたところ、シスカの部屋から自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたので、扉を開けただけだ。すると、そこには自慰をしているシスカの姿があったのである。しかも、クーの名を呼んで。
「く、クーさん……」
「お、おう……」
うめいたシスカに、とりあえず返事をしたが、どうすれば良いのかわからなかった。
が、先に動いたのはシスカだった。いや、動いてくれた、のほうが、クーにとっては正解のような気がした。
「あ、あああ……」
シスカの顔が、まず赤くなった。そしてすぐに青くなったかと思うと、また赤に戻り、そして急にそこから表情が消えた。頬は赤いままだったが。
が、いきなり立ち上がったのだ。
「こ、こんなところを見られたからには、こ、殺させてもらいます!」
「え」
やばい、と思った。シスカがこう言うときは、本気だ。逃げなければいけない。
思わず踵を返そうとして、しかしクーは気付いた。
「おいシスカ!」
「殺ス!」
ベッドから起き上がりざま飛び上がり、そして床に着地しようとして――バランスを保ちきれずに、その体が揺らいだ。
「あ……」
「シスカ!」
クーは反射的に動いていた。
自慰をしてエクスタシーを感じた直後なのだから、足腰はガクガクのはずだ。いきなり激しい運動なんてできるはずがなかったのだ。
「とどけ!」
間一髪、シスカの体が倒れこむ直前、クーはなんとか体を支えることに成功した。
「ふう、大丈夫か、シスカ? ……シスカ、泣いてるのか?」
「ぐず……うう……」
ぐずぐずと、まるで子供のように泣くシスカに、クーは驚いた。しかも何か呟いている。クーは、その口元に耳を近づけた。
「うう……好きな人にこんなところを見られるなんて……死にたいです」
「バカ!」
思わず叫んだ声に、シスカがびくりと身を震わせた。が、クーは続けた。
「言葉のあやでも、死ぬなんて簡単に言うなよ! その……」
一瞬ためらったが、だが決意してその言葉の続きを口にした。
「お、俺だって、お前の事が……好き……なんだからさ」
「へ……? で、でも、レンさんは……」
「それは誤解だ。そりゃあ、レンだって可愛いけどさ、でも好きなのはお前なんだよ。悪いか?」
くそ、と包み隠さず話してしまったクーの表情は、自分では見えないが、真っ赤に染まっていた。愛の告白なんて、男所帯で育ってきたクーには、初めてのことだったからだ。
シスカがまた、涙を流した。
「う、うう……クーさぁぁぁん……」
抱きついてきたシスカを、紅潮したままのクーは、よしよし、と撫でてあげた。
シスカを抱き上げ、ベッドに横たえると、クーは自らも服を脱ぎ、彼女に覆いかぶさった。
「実は私、その……淫乱なんです」
「……は?」
思わず出た間の抜けた声に、しかしシスカは真剣に、悲しそうにクーを見た。
「前、ひとりだけお付き合いした事があるんですけど、私と夜を共にしていたら体がもたないからって別れられてしまったんです。だから、クーさんも私なんかに構わず……クーさん?」
「なんて野郎だよ……」
クーは怒りで体が震えていた。シスカが驚きの表情で見上げてきていた。
「そんな奴、別れて正解だ。どうせ体が目当てだったんだよそいつは。だけど、俺はそうじゃない。お前の全部が好きなんだ」
ぼん、とシスカの顔が赤くなる。でも、クーは止まらない。
「搾り取られてもいいさ。シスカになら、殺されたってかまわない。それぐらい、俺はお前が好きだ。っってゆーか、そいつにお前の初めてを持ってかれたのがムカつく」
「クーさん……」
「シスカ……」
二人は自然と口付けを交わした。
最初は触れ合うだけ。そしてついばみ、舌をからませていく。
「んむぅ……ちゅぅっ……あむ……」
「じゅるっ……ぴちゃっ……ふぅむ……」
舌をからませながら、クーはその手をシスカの胸に持っていった。
触れると、ぴくり、とシスカが体を縮こまらせた。だが、クーは手を動かした。
シスカの胸は、見た目どおり小振りではあったが、それでもやはり女らしさを感じさせる柔らかさで、そして何より、あたたかく、いとおしかった。
クーは夢中で胸をまさぐる。
「はうぅっ……クーさん、気持ちいいです……」
唇を離し、うっとりと呟いてくるシスカ。涎が、つう、と口の端から零れ落ちる。その姿があまりにも可愛らしくて、クーは、左手はそのまま胸を揉みしだいたまま、右手を彼女の女性器へと移動させた。
「あ、そこは……」
シスカが顔をうつむけた。
そこはすでに、かなりの潤いを見せていた。自慰していた分もあるのだろうが、それでも自分の愛撫で感じてくれた事が、クーは嬉しかった。
「挿入れるぞ?」
「はい……お願いします」
シスカが幸せそうに微笑んだ。
「ぐ……」
挿入は、予想通りスムーズだった。しかし、その締め付けは予想以上だった。
シスカの膣壁が、うねうねと動き、クーの肉棒を刺激する。その動きは、クーから精を搾り取ろうとするようなものだった。すぐにでも射精させられそうだ。
しかし、クーは我慢した。シスカを気持ちよくさせたかったからだ。
一度奥まで貫いたそれを、抜きに掛かる。
「あああぁぁぁっ!」
びくびくとシスカは体を震わせた。締め付けはさらに強くなる。しかしそれでも耐える。
もう少しで抜ける、というところで、クーは再び肉棒を押し進めた。
「ふわああぁぁぁっ!」
シスカがあえぎ、また分身が刺激される。
クーは一旦動きを止めた。
「シスカ、気持ち良いか?」
シスカは嬉しそうに首を縦に振った。
「ええ、とっても……クーさんの気持ちが、伝わってくるようです」
「シスカ……シスカっ!」
快感の中で、必死に笑顔を向けてくれたシスカが愛しすぎて、クーの理性は吹っ飛んだ。腰を一気に動かし、そのスピードもなりふり構わないものだった。
「シスカ、シスカ、シスカぁっ!」
「ああぁっ! クーさん、クーさんっ、はあっ、あうぅっ、ひゃあああぁぁぁっ!」
シスカは口から泡を飛ばしながら悶えている。
クーは、彼女にもっと気持ちよくなってもらいたい、という一心で、さらに出し入れを加速させ、と、そのとき、コリ、という感触が、クーの肉棒から伝わってきて、そして。
「ふ、ふわあああぁぁぁっ!」
「ぐっ……」
今までとは違う、強烈な締め付けに、クーは動きを止めて、なんとか堪えた。
だが、クーは気付いた。今、クーの肉棒が擦りつけた部分が、彼女の弱点なのだと。
シスカは軽くイったのか、はあはあ、と肩を上下させている。
「シスカ」
「は、はい……」
「いくぞ」
「え……? あああぁぁぁっ!」
クーは今までとは違い、明確な目標を見つけて、そこをこすり付けていた。そこは、シスカのクリトリスの丁度真下に当たる部分だった。
「ひゃあああぁぁぁっ、ふあああぁぁぁっ!」
シスカは何度も体を痙攣させ、そして膣が、クーの肉棒を締め付けた。
「ダメ、だめですうううぅぅぅっ! そ、そんなんじゃ、すぐにイっちゃいますうううぅぅぅっ!」
しかしクーは止めなかった。シスカに気持ちよくなってもらうのが、一番嬉しかったからだ。
「ほらっ、ほらっ! もっと気持ちよくなってくれっ、シスカ!」
「あああぁぁぁ、ひゃあああぁぁぁっ!」
ぱんぱん、と腰を打ち合わせる音が部屋に響き渡る。
もしかしたら、他の部屋や廊下にも聞こえてるのかもしれない。が、どうでも良いことだった。ただ、シスカと体を重ねる事ができるのならば。
ぐちゅぐちゅ、と性器を混じり合わせる音が、どんどん大きくなっていく。
「クーさあんっ、クーさぁんっ! 好き、好きですううぅあああぁぁぁっ!」
「シスカっ、シスカっ!」
ただただ、本能のままに、付き合わせる。
「イく、イっちゃいます、クーさぁんっ!」
「ああ、俺もだ……!」
「好きっ、大好きっ、クーさんっ!」
「シスカっ」
そして、二人は同時に叫んだ。
「射精すぞ、シスカ……っ!」
「あああああぁぁぁぁぁっ、イくううううううぅぅぅぅぅっ!」
ぎゅううう、と締め付けてくる膣の中で、クーは果てた。どくどく、と肉棒が脈打ちながら、精を放つ。
「うあああぁぁぁ……あ、熱いです……」
最後の一滴まで出しつくし、クーはようやく男性器を抜いた。
ごぽ、とその穴からら白濁液がこぼれだしてくる。
「あ……」
シスカは流れ出る精液に手を伸ばすと、それを指ですくった。そしてそれを顔の前へともっていき、うっとりと目を細めた。
「これが、クーさんの精液……」
シスカはその指を、口にくわえた。
それはとても妖艶な光景で、クーは自分の肉棒が再びそそり立つのを感じていた。
「今までで、一番気持ちよかったです、クーさん」
「そ、そうか?」
「はい」
まぶしい笑顔でそう言われると、男としての理性がまた崩壊しそうになる。というか崩壊した。
クーは再び勃起した分身を、またシスカの膣口に構えた。
驚いた表情のシスカに、クーはたずねた。
「さっき、自分は淫乱だって言ってたけどさ、それはまだいけるってことだよな?」
「え? ええ、まあ……。というか、もっとやっていたいっていうのは本心ですけど、でも、今イったばかりですし……」
クーはその言葉に、にやりと笑った。
「なら、もっと気持ちよくさせてやるよ」
え、という表情をシスカが浮かべたその瞬間、クーは腰を突き出した。
「くぅあああぁぁぁっ!」
シスカは弓なりにのけぞった。どうやら入れただけで軽く達してしまったらしい。
さすがに動くのはためらわれて、クーは奥まで挿入させてから、止めた。
「だ、大丈夫か、シスカ?」
「ひ、ひどい、です……イったばかりだって、言ったのにぃ……」
しかしそう言いながらも、シスカの瞳が期待に輝いていることに、クーは気付いた。ならば、手加減してやる道理はない。
「いくぞ、シスカ!」
「だ、だめですってばあああぁぁぁっ!」
クーはすぐに腰を打ちつけた。今度は弱点にこすりつける動きではなく、単純に、奥へ奥へと目指していく動きだった。
「あああぁぁぁっ、深いぃ、深いですうううぅぅぅっ!」
シスカはうっとりと叫ぶ。クーはそれに満足し、さらに奥へと突き始めた。コツンコツンと、最奥を何度も打つ。
「子宮にぃ、子宮に当たってるっ……!」
顔を振り乱すシスカ。
ふと、クーは良いことを思いつき、そっとその耳元に、口を近づけた。
「なあ、今ナニがどんなふうになっているのか、説明してくれないか?」
シスカはその質問の意味にすぐに気付いたらしく、興奮で赤くなっていた顔を、さらに紅潮させた。
「そ、そんなこと……ひゃあうぅっ!」
囁きながらも、クーは腰の動きを止めていない。そうやって少しずつ、追い込んでいく。
「言ってくれよ、な、シスカ……」
「でも……でもぉっ……」
「言ってくれないと……こうだ」
すでに肥大していたシスカのクリトリスを、クーはつねった。
「ひゃあああぁぁぁっ!」
シスカがまたイく。シスカの膣はクー自身を締め付けるが、しかしすでに一度射精しているので、まだ余裕がある。クーは腰の動きを止めず、またもや囁いた。
「な、言ってみろよ」
「そんな、恥ずかしくて言えな……あああうううぅぅぅっ!」
またつねる。
「ほら、な」
シスカは観念したのか、恥ずかしそうに口を開いた。
「うう……ク、クーさんの、……ん……が……」
「聞こえないな」
つねる。
「きゃうううぅぅぅっ! く、クーさんのオチ○チンが、私のオマ○コの中をかき回してますうううぅぅぅっ!」
「よく出来ましたってな!」
クーは思いっきりクリトリスをつねった。
「う、嘘つきいいいいぃぃぃっ!」
シスカは体をまたもや痙攣させた。そして、ぷし、と結合部から液体が漏れ出てきた。
クーはさらに腰の動きを加速させた。
腰を何度も打ちつけ、そして次第に、シスカの声は切羽詰ったものに変化していった。
「いやああぁぁっ……な、なにか、なにかキちゃいますうううぅぅぅっ!」
シスカが叫ぶ。が、クーはこれを待っていたのだ。
動きを止めずに、耳元でたずねる。
「何がきそうなんだ?」
「わからないいいぃぃぃっ、わからないんですうううぅぅぅっ」
首を激しく振り、ただただ感じるなにかに怯えていた。
「怖い、怖いよぉ、クーさあああぁぁぁっん……!」
「大丈夫だ、シスカ」
シスカの両手を、クーが握る。
「俺はここにいる。だから、安心してくれ、シスカ」
「く、クーさん……ひゃあああぁぁぁっ!」
「うおっ……」
壁の動きが今までとは一変した。精を搾り取ろうとするなんてものではない。肉棒を食い千切らんばかりの勢いだ。
「シスカ、イくぞ……っ!」
「んあああぁぁぁ、だめ、だめえええぇぇぇっ!」
シスカはもう、クーの声が聞こえていないようだった。ただ、握った手からその温かみを感じているだけのようだ。
だが、それでクーは十分に満たされていた。シスカが自分を必要としてくれる、その意味が、クーには嬉しかったのだ。
「シスカ……大好きだっ!」
「クーさん……っ」
ぐ、と肉棒が締め付けられた。今までにない、大きな波。
クーは思い切り、男性器を子宮口へとたたきつけた。
「う、うおおおおおぉぉぉぉぉっ!」
「あひゃあああああぁぁぁぁぁっ、くうううううぅぅぅぅぅんっ!」
またもや大量の精液が、クーの先端から吐き出されていった。
「あうぅ……ひゃうぅ……」
「ふう……」
全部吐き出し終えて、息を吐くクー。が、そのめに映ったのは、目の焦点がぼやけ、首を変な方向へと向けているシスカだった。
「シスカ!?」
慌ててその頬を叩く。
心配したほどではなく、というか失神しただけらしく、シスカはすぐに、はっと起きた。
「クー、さん……」
「よかった……」
クーはシスカを抱きしめていた。
「もう、やめてくださいって言ったのに……」
「わ、悪かったよ、シスカ」
布団をかぶり、その中で抱き合いながら、シスカは頬を膨らませていた。しかし、クーがしょんぼりとしていると、ぷっ、と噴出す声が聞こえてきた。
「でも、気持ちよかったのは確かですからね。今日は許してあげます」
「あ、ありがとう、シスカ」
心を込めて抱きしめる。
「それにしても……」
「ん?」
「いえ、いっぱい、膣内に出されちゃったなって」
「あ……」
まったく考えていなかった。愛しい人の膣内で果てたかっただけなのだ。未来に起こりうる可能性など、まったく考慮の範疇外だった。
だが。
「なあ、シスカ」
「はい?」
「もし、妊娠したら、レンには悪いけど、旅をやめようぜ」
「……え?」
シスカの目をしっかりと見つめる。それは、確かな意思を伝えるために。
「俺にとって一番大事なのは、シスカだ。だから、な」
「クーさん……」
しばらく呆然としたシスカは、いきなり瞳に涙を浮かべた。
「し、シスカ?」
「あ、ごめんなさい、その、嬉しくて……」
「シスカ……」
クーはぎゅっと抱きしめる手に力を込めた。
愛しい人を、この手から決して離さないように。
おわり