「………っ」
白い喉を逸らし、トアの唇から引き攣った息が零れた。
何処と無く虚ろげな瞳は情欲に潤み、白い肌は薄い桃色に染まっている。
高貴な風格すらある漆黒のドレスはところどころが乱され、
晒された、汗の滲む柔肌は、漆黒との対比を素直に表していた。
「……っん…ぅ」
するりとドレスの肩が思い切り引き下ろされ、豊かな双丘が零れた。
恥じらいに身を捩じらせて、背後に居る、ドレスと同色の漆黒の影に
甘えるように。
膨らみを揉み解す手は実に手馴れたもので、あっさりと体に火がついてしまう。
先ほどから、捲り上げられたドレスの裾から下着へと入り込み、濡れそぼった場所を
嬲る手もそうだ。
「…ぁ……あッ!」
十分に濡れた証拠である音とともに、滑らせられていた指がトアの秘豆をかすり、
ひときわ大きい声を上げて、軽い絶頂を向かえた。
「……ぁ」
布の感触と、粘液で濡れたじっとりとした感触が膝まで下がる。
熱はそこに持ったまま、自分のすぐ後ろにある顔を見ようとしたが、
「………ッ!」
大きい圧迫が、それを許さぬと言いたげに秘裂に入り込んできた。
最初にこの行為を受けた時、段々と慣らされていく今。
唯一受け入れたことのある肉棒の熱と硬さが、焼け付く槍のように突き入れられ、
細い体が大きく仰け反った。
「…あ……ぁ…はっ」
か細い小鳥を思わせる喘ぎと、熱っぽい溜息が、規則的に突き入れられる刺激にあわせて零れる。
美しい貌に涙が流れ、快楽にとろけた表情は非常に扇情的なものだった。
「………今。」
「っ…ん…?」
刺激を続けたまま、背後から声がかけられた。
彼女の同契者であり、今交わっている存在であるレグジスは、
激しい快楽の波に飲まれているトアとは反対に、酷く冷静で淡々としたものだった。
「……興奮させる姿をしているのか?」
素っ頓狂な問いに、トアの吐息が一瞬止まった。
だが、直ぐに快楽に押しやられ、唇が何も発さぬ時間はコンマ数秒にも及ばぬもの。
レグジスの冷たい仮面のような声も表情も、何の罪悪感を持たない。
「……っ…ぁ…」
揺さぶられながら、トアは遅れて答えた。
幾度か首をこくこくと縦に振り、彼の言葉を肯定した。否、そうであったら嬉しい、という
かわいらしい感情ではあったが。
幾度目かの行為。はじめて最中にかけれた言葉。その事実がとても嬉しかったのだ。
だが、それが命取りになるとはまさか思うまい。
「……そうか。」
「………!?」
頷く声とともに、唐突に、乱暴に肉棒が引き抜かれた。
地面に乱暴に組み伏せられた痛みと衝撃に、驚愕に引き攣らせた表情で
トアはレグジスを見上げる。
美男美女。そう称されて然るべき美しいふたりは、恐らく互いに見たことがない表情で
向かいあった筈だ。無表情を驚愕へ変えたトアと。
「扇情的なトアの姿を見つめている」ことを自覚してしまったせいで、
媚薬でも受けたかのように、線の細い風貌に、切ない情欲と、堪えきれない欲望をたたえ、
女であるトアですら、どくりと胸を跳ねさせるような表情を浮かべているレグジス。
一瞬の視線の交錯の後、
「……ぁあっ!」
先ほどの侵入とは比べ物にならない強さで、再びレグジスの肉棒が突き入れられた。
衝撃できつく目を閉じ、体をそらすと、その体を貪ろうとするかのように、
レグジスはきつく、壊れそうなほど細いトアを抱きしめる。
それを喜ぶとか、恥らうとかいう感情を蹴落とすかのように、
「ひ…ぁうっ、や…あ…ぁあっ!」
強力な麻薬を一度に吸い込んだような、でたらめな快楽がトアを襲う。
まだ慣れぬ秘部は、強すぎる快楽にとめどなく愛液を分泌し、
ぐちゅり、とかきまわされるたびに、淫猥な水音を立てる。
獣が喰らいあうかのような口付けを交わし、
吐息と唾液を交換し合い、舌を絡ませる二人は、
夜闇の装束に似合わぬ熱に犯され、淫らに乱れていた。
「ふっ…あ、はっ…あ、あ…!」
喘ぎが上ずり、出せる音から外れていく。
掠れたようなハイトーンが、切ない熱を帯びて、それと同時に、
突き込むたびに甘く吐息を零し、荒い呼吸に追い詰められるレグジスも、動きを早め。
「……ぅ、あ…あああぁっ…!」
「…く、ぅっ…」
白く弾けるような感覚を同時に味わい、絶頂に達した。
「…そうだったね。レグジスには「自覚」させちゃ…
…って、何これでもかってくらい赤くなってるの、トア。熱射病?大丈夫?」
「………。」
トアの耳打ちを受けたウィルトは、やれやれと言いたげに記憶の中の情報を拾い上げ、
溜息を吐いた。が、その記憶を覚ますきっかけとなったトアが、
白い肌を、このカシー=アイル周辺の暑さを原因にしたとしても過剰と思うくらい、
紅潮させているのを見て、怪訝半分、心配半分で問うた。
こくこく、と小さく、焦り誤魔化すような様子で頷いているトアを、ウィルトは首を傾げながら見つめていた。
「…では、今は…暑い、のか?」
おわり