眠れない夜、目を覚ます。  
 喉は渇き、体は重く、手足は枷をかけられたように。ああ、こんな夜には狭苦しい部屋を抜け出して、どこかに早くいかないと――――。  
 衝動に駆られてベッドを出る。よろよろと床を歩き、ドアノブに手を掛け部屋からでた。  
 廊下を歩き、突き当りの角で曲がり、階段を上る。階段には空を垣間見ることができる窓があったが、どうやら今夜は月が暗雲に隠れて見えないらしい。しかしそんなことなどどうでもいいコトだ。  
 階段を上りきってから右に曲がり、倒れるように目の前のドアにもたれかかった。どうやら本当に調子が悪いらしい。  
 どうにも体が思うように動かない。ノックもせず――――目の前の扉を開けて誰かの部屋に侵入した。  
 …………そこには小さな人影があった。暗くてよくわからないが、こんな夜遅く、訪れたオレを警戒するでもなく、ただそこに立っている、誰か。どこの誰だかわからないが、こっちをまじまじと見られている気がする。  
 まるで、ここにくる誰かを、待っていたかのように。  
「……クーさん?」  
 声がかけられた。この声には聞き覚えがある。聞き覚えがある声と共にぼやけていた象に焦点が合わさり、まるで『もや』でも晴らすようにその人影が暗闇から姿を現す。  
 その姿を視認するとしだいに体は軽くなっていき、枷は風に融けて飛んでいった。――――ただ喉だけは渇いている。  
「シス、カ?」  
「何がシス、カ? ですか。クーさんはここが私に当てられた部屋だということをお忘れですか?」  
 はぁ、と溜息を吐き、腰に手をあて呆れたような物言い。しかし目はぼう、と何か違うものを見ている。  
「いや、アレ……なんだっけな……。なんでオレおまえの部屋なんかに来たんだっけ」   
「…………そんなコトまで忘れてしまったんですか?」  
 
「う、あ……えーと……何かぼんやりしてて」  
 窓が開いているのか、カーテンが弾けるように舞う。  
「簡単なことですよ。――――私がお呼びしたんじゃないですか」  
 風が、笑った気がした。相変わらずカーテンはせわしく踊り続ける。  
 ――――喉だけが渇いている。  
 
「……クーさん、クーさぁん」  
 甘えるようにオレの胸に鼻をこすりつけるシスカ。それが無性に愛らしくなって猫のように細いウェストに手をあて思い切り抱き寄せた。  
 抱き合ったまま視線が絡む。身長に大きく差があるため、自然シスカは見上げる形となりオレに対して上目遣いになる。それが妙に……いや実際すごく可愛いくて、そのまま唇を強く重ねた。  
「んっ……ちゅ、ぁ……ん……」  
 突き入れた舌を動かし、歯列をなぞり、舌を吸い歯茎の裏を丹念に丁寧にしかし激しく舐めとり喉を潤す。  
「クーさんっ……ぁ……は、んっ……」  
 求め合う舌に酔いしれながら、ずっとこうしていたいなどど、あのシスカ相手に思ってしまう。  
 抱き寄せた右手を背中のラインに沿って徐々に下ろして臀部をさわさわとまさぐると、健康的なほどよい弾力とすべすべした肌の感触が心地いい。  
 左手もシスカのショートパンツの中に突っ込み円を描くように尻を鷲掴むと「ん、んっ!」わずかにビクと小さな体が揺れた後、口の中を蹂躙していたシスカの舌が官能的な糸を引いて離れた。  
 酸素を求めて大きく息を吸い込む。乱れた呼吸、漏れる吐息、そして近くにある見慣れたヤツの頬はほろ赤く染まっている。  
「……クーさん」  
 甘く囁かれた名前。その声を聞いているだけで理性が飛んでしまいそうでマズい。  
 加えてこの密着状態で控えめな胸がオレの腹の上に当たってて、その柔らかな感触で何だかおかしくなってしまいそうだ。そしてなによりも切なげに潤んだその瞳が――――  
 
「きゃっ――!」  
 体を抱きかかえてベットまで運び押し倒す。俗にいう『お姫様だっこ』とかいうやつだが 過程なんて関係ない。重要なのはオレがシスカを押し倒す、なんていう、そんなふざけた結果だけ――――。  
 横になったシスカの首筋に舌を這わせていく。  
 シスカの肌は綺麗だと思う。決してお世辞にも白いだとかはいえないし、きめ細かいだとかそういうんじゃないけれど、理屈じゃなくすごく綺麗だと思った。――――それを次々とオレの唾液で汚していく。唇を、首を、汚していく。  
「おまえってさ……」  
「な、なんですか」  
「……夜はおとなしいんだな」  
「な――クーさんはいつも私が暴れているとでもッ……ぁ……っ」  
 唇を落としていき、時折強めに吸ったりするとさらにおとなしくなった。  
「……く――後で覚えて……く、ぁ……」   
 そうしてゆっくりと下に移動していき、僅かながらも主張された丘の頂点に着いた。服の上からでもわかるくらい立っているソレを舌で潰して舐め回すと、俯き気味なシスカから嬌声が漏れる。  
 それがとても淫靡なものにみえて、自分でも焦っているのがわかるくらい手荒く服を上に脱がして双丘にむしゃぶりついた。右手で胸を揉みしだき。乳首を貪るように吸い、舐め回し、転がす。  
「シスカの肌……甘い……」  
「……ぁん……ぃゃ…そんな……」  
 甘噛みするとより一層甲高い声がシスカからあがる。いつもとは全然違うそんな艶がかった声をもっと聞きたくて左手は滑っていきショートパンツのジッパーを下ろし、布越しに秘所を触っていく。  
 そうして愛撫を続けていくと、布の上からでもわかるくらいそこが潤みを帯びていった。  
 愛撫を続けながらシスカの腰を浮かせショートパンツを脱がしていく。  
「シスカ……気持ちいい、のか?」  
「…っ…………変なことを聞かないでくだ……さい……」  
 布をずらし濡れた膣口を左手でゆっくりと撫でた。しだいにオレの左手はぬらぬらと粘質の愛液にまみれ、それがまた潤滑液となり左手の指の動きを早めていく。  
「あぁっ……ゃ……」  
 もはや最後の一枚となった、薄いパンツをするすると脱がしていく。片足を抜けさせ、ソレをベットの下に落とすと、そこにはもう一糸纏わぬシスカの姿があった。  
 
 膣内に指を進入させる。充分に濡れていたソコは容易くオレの指を受け入れた。それでもシスカの中は狭くキュウキュウと異物である指をきつく締め付けて、なんだかその感触だけでもオレは果ててしまいそうな、そんな甘い錯覚に陥りかける。  
 それを振り払って、第二間接まで入った指をなるべくゆっくりと出し入れした。  
「……シスカのがオレの指を咥えてるよ」  
「………ぁあ……ゃんっ……」  
 出し入れする一本だった指は二本になった。ストロークの速度も徐々にペースを上げていく。  
「……あっ……んあっ……クーさんちょっ……」  
 ただ目の前のあどけなさの残る少女の堕ちていく淫らな姿が、登り詰めていく姿がみたくて、一心不乱に指を動かした。  
「待っ……あっあぁ――――ッ」  
 一瞬の硬直の後、白がかった半透明な液をシーツにこぼして、糸が切れるようにシスカの体はその場にへたれこんだ。  
 …………だが止まる気は、まだない。  
「え――?」  
 まだ肩で息する小柄な体を無理やりうつぶせにさせ、愛液にまみれたソコに後ろからいきりたったオレのモノを強引に「ちょっ――――私まだ――――ッ」あてがう。  
 言葉とは裏腹にだらしなくヌメった秘所は容易くオレを受け入れていき  
「いやっ……後ろからだなんて…………ああぁっ――!」そして根元まで一気に貫き挿入れた。  
 膣内の締め付けはキツく、挿入れているだけで搾り取られてしまいそうなほどに。  
「うぅ……そんな……」  
 涙ぐんだような制止の声を振り切り、ゆっくりとストロークを開始する。  
「あっ……あっ……」  
 シスカをベットに這い蹲らせるような恰好にして、徐々に速度を上げていく。この体勢だと自然シスカが全部丸見えになって、そんな淫らな光景のせいで気を入れていないとせり上がってきたものをすぐにでもぶちまけてしまいそうだ。  
「少し休まないと―――私……おかしくっ………」  
 …………乾いた音が響く。臀部に腰を打ちつけ突き上げると、シスカの肩口で切り揃えられた髪が揺れる。その度に規則的に漏れる甘い嬌声、そしてこうやって後ろから荒く、獣みたいに犯すことがどうしようもなくオレを興奮させる。  
 
「あぁ……あぁっ……あぁんッ」  
 手荒く、勢いに任せてシスカを汚していく。  
「……ゃ……、……ゃ………です………」  
 ピストンを速めていく、その途中――――  
「……やです……。クーさんの顔が見えないといやです……!」  
 ――――その淫靡な水音に紛れて苦しげな声が聞こえてきた。その言葉に心臓が反応して、ドクンと跳ね上がった。  
「やだぁ……」  
 ズル、と自身を抜く。………いつのまに雲は散っていたのか――――吹きしきる風の向こうから漏れる月が、シスカの愛液で濡れて糸引く肉棒をテラテラと光らせていた。  
「シスカ……こっちを向いてくれ……」返事は静かな頷きで返された。  
 休むことなくカーテンは踊り続ける。それが一際高く飛び散り、月明かりが上気した裸体を照らしあげた。  
「………なんていうか……その………すごく綺麗だ」  
 ほとほと馬鹿で恥ずかしいことを言ったなと、少し後悔して顔が熱くなるのを自覚した。シスカは掌で顔を隠していてその表情は伺い知れない。  
「そんなコトを言うのは……ルール違反です……」  
 しかし小さく――――あんなに荒くされても嫌いになれないじゃないですか、と、そんな風に唇が動きシスカがにっこりと微笑んだ、気がした。  
 
 抱きしめるように向き合って、挿入する。もう頭の中はぐちゃぐちゃで、うまく働いてくれない。  
「あぁぁ……っ……」  
 抱きつくようにシスカはオレの首に手を回し、鼻もくっつくような近い位置でずっとオレの名前を繰り返す。その耳元で囁かれる涙ぐんだ声ごと、唇を塞いだ。  
「んっ……ちゅ……はっ……」  
 お互いの舌がお互いを溶かそうと求め合う。  
「……ちゅ……ぁ……んっ……」  
 ただ切ない喘ぎ声にもっと酔いたくて、腰を打ち付ける。   
「……ぁっ……はっ……いいっ、いいのっ――」  
 腰を打ち付ける度に快楽の波が押し寄せ頭が漂白されるよう。  
「クーさん……クーさんっ………クーさぁんっ――――!」  
 腰を引き戻して再び打ち付けるまでが、果てしなく遠い。気を抜くと、今すぐにでも出してしてしまいそうだ。  
「………離さないでっ、離さないでくださいっクーさん――」  
 強く抱き合いながらお互いの名前を呼び合い、何度も唇を求めた。風の音は既になく、淫靡な水音とスワッピングの乾いた音だけが響く。  
「……ああっ……もうッ――んぁっ、ぁあッ!」  
 一際強く、思い切り腰を打ち付けると、肌に弾けた水滴が飛び散るように跳ね、シスカの体は弓なりに仰けり「ぁああ――――――ッ!」そのまま二人で昏闇に落ちていった――――……  
 
 ………………。  
 ……………………………………。  
 ……………………………………………………………………………。  
 
 朝の日差しがカーテンの隙間から差し込んでくる。それが眩しくて、瞼の上を手で覆った。  
「…………ん」  
 まったくもって朝というのはオレに起きてほしいらしい。無遠慮に陽光を降り注いでくる。なんだよ、昨日は疲れたんだ……今日ぐらいゆっく、り…………  
「ん……ん〜〜〜!!??」  
 ガバッと起き上がる。そして先程までとてつもなく後ろめたい夢を見ていたことを思い出した。  
 ありえない。シスカと■■■なんてありえない。いやありえなくもないこともないが………待て待て問題はそこじゃねぇ。  
「昨日はレンで……その前がキーア……」  
 そう、コト某チビ女に限らず。自分の無節操ぶりにはたはた頭を抱える。  
 そしてやっぱりというか、当然というか。こればっかりはしょうがないのだが、ひどく情けない、そんな状態が待っているし。  
「夢に……人と書いて……儚い………か……」  
   
 オレはクード=ヴァン=ジルエット  
 オレは朝起きて、重大な事態に気づき  
 そして……  
 洗ったんだ  
 オレはパンツを……  
 

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