「ヒ、ヒトシ、ちょ、ちょっと待って! ダメだって!」  
「何言ってんだよ、お前がいいって言ったんだろ」  
「言ってないから。あたしそんなこと一言も言ってないから!」  
 抵抗もむなしく、ひまわりはヒトシに引っ張られて部屋へと連れ込まれて  
しまった。ああ、どうしてあんなことを言ってしまったのか。好きだなんて、  
伝えるつもりなどなかったというのに。勢いって、怖い。  
 ひまわりはいまさらそんなことを思いながら、嬉しそうに服を脱ぎ始める  
ヒトシを見つめた。若い頃はそれなりに引き締まっていた彼の体も、今は中年体型に  
なりかけている。そんなに時が経ってしまったのか。自分も、その年月の分  
変わってしまっている。それでも、そんなことに構わず彼は自分を抱くだろう。  
きっと、以前と同じように。  
 どくどくと激しく脈打ち始めた自分の心臓に、ひまわりはそれを実感するしか  
なかった。  
 
「おい、ひまわり。お前も脱げよ。するんだろ?」  
 ズボンのベルトに手を掛けたところで、ヒトシはひまわりを振り向いた。  
ずっと突っ立っている自分に焦れたのだろう、こちらへと歩み寄ると、腕を掴ん  
でぐいと引っ張ってくる。自分の世界に入りかけていたひまわりは、バランス  
を崩してベッドへと倒れこんでしまった。  
「きゃあっ!? 何すんのよ……っ」  
 柔らかな衝撃を受けながらひまわりはヒトシをにらみつけたが、軽く興奮し  
始めている彼は何の反応も返さなかった。むしろ、目元が潤んでいて可愛い、  
などと思われているかもしれない。  
「聞かなくてもわかるだろ? 今から、セックスすんの」  
 ようやく言葉で返ってきた反応は、あまりにも露骨なものだった。その言葉に、  
一瞬でひまわりの顔が赤くなる。  
「ばかぁ! そんなこと言わないでよ……恥ずかしいじゃない」  
「今更何言ってんだよ……俺たち、何回もしてんじゃんか」  
 ヒトシはそんな様子にも構わずに、ひまわりに覆い被さってくる。顔同士が  
近づいて、すぐにヒトシの息が唇に掛かるほどの距離になった。そっと見つめ  
た彼の目は、今でもあの時と変わっていない。無邪気で子どものような目。  
しかし、その奥には言いようのない光が宿っていた。  
 
「ひまわり……」  
「何……?」  
「……やるか」  
 ヒトシのまっすぐな瞳に引き込まれかけていたひまわりだが、ストレートな  
言葉に思わず目を見開く。ダメだ、この男は何もわかってはいない。それでも、  
この男に惹かれ続ける自分はもっとダメなのだろう。そんなことを思いながら、  
近づいてきたヒトシの唇を受け入れた。  
 
 ヒトシとキスをしながら、ひまわりはそれすらも久しぶりだということを思い  
出した。荒々しいヒトシのキスは、やはり昔と変わってはいない。唇の間から  
入ってきた舌を、ひまわりはそっと受け入れた。  
「んっ、ふ、く……んんっ」  
 いつの間にかヒトシの手は服の裾から忍び込んで、ブラジャーの隙間さえ  
かいくぐって胸に触れている。やわりと揉まれて、ひまわりはくぐもった声を  
漏らした。ざらついた手のひらが先端に触れる。乳首は、いつの間にか固く  
尖っていた。  
 キスを続けながらも、ヒトシは器用にひまわりの胸を愛撫する。手のひら  
全体で包み込まれていたはずが、ふと気づけば指で先端をいじられていた。  
爪を立てられて、痛みとともにわきあがってくる快感に背をのけぞらせる。  
「――っ! あ、んん……っ、ふ」  
 その逃げ場を求めて、ひまわりはヒトシの背中に腕を回した。体が近づいた  
せいで動かし辛くなったのか、ヒトシの愛撫が少しだけ弱まる。……さらに  
弱まって、そして愛撫が止まった。  
「お前も服脱げよ。俺脱いだんだからな」  
 この男は、どうしてこうもタイミングを掴めないのか。ひまわりは心中で  
毒づきながら、ヒトシの背中に回していた腕を離した。ヒトシが自分の上から  
退いたのに合わせて、体を起こす。まとわりつくようなヒトシの視線を感じながら、  
セーターを脱いだ。  
 
 セーターの下は、ブラジャーしか付けていない。脱いだとたんぞっと寒気が  
して、ひまわりは体を震わせた。  
「何だよ、寒いのか?」  
「寒気がしただけよ……これも、外さないとダメ?」  
 これ、と言いながらブラジャーの肩紐をつまむ。ヒトシが何言ってんだよ、  
などと言いたげな表情でこくりと頷いた。  
「何なら、俺が脱がしてやってもいいけど?」  
「――っ、いい、自分で脱ぐから!」  
 ヒトシの言葉に、ひまわりは慌てて背中の留め具に腕を回す。変に緊張して  
いるせいか普段通りには外せなかったが、少し時間をかけて留め具を外し、  
肩紐を腕から抜いた。そうして脱いだのはいいが、恥ずかしくてその布地を  
胸から離すことができない。  
「なーに隠してんだよ。俺とお前の仲だろ?」  
 ヒトシが不満そうににじり寄ってきた。  
「そういう問題じゃないわよ……恥ずかしいじゃない」  
 胸を隠す、隠さないは仲の問題ではない。羞恥心の問題なのだが、この男は  
それを理解していないようだった。何度体を重ねていたとしても、恥ずかしさ  
だけは一向に消えないのだ。逆にいえば、羞恥心をなくせば、ただの淫乱な女に  
なってしまうということであり、さすがにそれは避けたかった。  
 どう転んでも、ひまわりから羞恥心が消えることはないのだが、そんなこと  
を考えてしまうのだった。  
 
「これからもっと恥ずかしいことするのに、これで恥ずかしいって言ってちゃ  
ダメだろ。ほら」  
「ちょ、やだって……!」  
 ろくに力の入らない腕で、ブラジャーを掴んでくるヒトシの手を退けようと  
したが、それすら無駄だった。ひまわりの手はヒトシの手に掴まれ、ベッドに  
押さえつけられてしまう。  
「あ……! やだって言ってるのに……っ」  
 とうとう、胸を覆っていたブラジャーは取り払われてしまった。かろうじて  
掴まれなかった方の腕で胸を覆う。やはり、小さいながらもブラジャーで隠し  
ていたときの方が安心感は大きかった。ひまわりの胸はそこまで大きいわけで  
はないが、片腕で隠しきれるはずはない。空気にさらされた肌がぞわりと粟立  
つのがわかった。  
 
「素直に見せてくれたっていいじゃねえか。俺とお前の仲なんだし」  
 ヒトシの手が、胸を覆っている腕を掴む。ひまわりは最後の抵抗をこころみ  
たが、男の力には勝てなかった。ヒトシの視線が自分の胸にそそがれる。  
「やっぱ、お前かわってねぇなあ」  
 ヒトシがしみじみとつぶやいた。それがどういう意味なのかは、言葉が少な  
すぎるせいで推測のしようがない。安直に考えると、バストサイズが変わって  
いないということなのだろうが、ひまわりにはそうは聞こえなかった。  
どういったものかわからず、ひまわりは目を閉じた。  
「そんなに見ないでよ……」  
 肌を舐めるような視線に対して懇願の声を漏らすのと同時に、体中の体温が  
一気に上昇するのがわかる。ひまわりが体の反応に余計に顔を赤くしながら、  
ヒトシを弱々しくにらみつけていると、その手が前触れもなく胸に触れた。  
「あ……っ」  
 先端の周囲を爪で引っかくようになぞられ、ひまわりは小さく声を漏らす。  
むずがゆいような、それでいて甘ったるい感覚に更に零れそうになった声を、  
ひまわりは唇を噛みしめることで押し殺した。  
 
「なあ、気持ちいいか?」  
「……っんなこと、聞かなくてもわかるでしょ……っ」  
 ヒトシがへらへらと笑いながら聞いてくる。ひまわりは意地を張って文句を  
言うことしかできなかった。実際、ヒトシの愛撫は言いようのないほどに気持ち  
いいのだ。こうしてヒトシに抱かれるのは数年ぶりだというのに、ひまわりは  
数年前よりも、敏感に感じていた。  
「こここんなに固くなってるけど、もしかしてもう濡れてたりする?」  
 ヒトシは乳首を愛撫しながら、ジーンズの上から秘部を撫でてくる。ひまわりは  
ヒトシから目を逸らした。行動をとった後でしまったと思ったが、後悔しても遅い。  
ヒトシの手がベルトに掛かるのを感じて、ひまわりは情けなさでいっぱいに  
なるのだった。  
 
「お前ってほんと、変なところで素直だよなー。だから嬉しいんだけど」  
 ヒトシの口調からは喜びがにじみ出ていたが、どうしてかひまわりにはそれが  
最終宣告のようにしか聞こえない。  
 ベルトとボタンを外されて、ジッパーも下ろされてしまった。ヒトシがウエストに  
手をかけてジーンズを脱がせようとしてくる。もう逆らっても意味が  
ないのだろうと悟り、ひまわりは少しだけ腰を浮かせた。腰の位置にあった布地が  
太股から抜かれていく。あっという間にジーンズも脱がされてしまった。  
「相変わらず細ぇな……ちゃんと食ってんのか?」  
 ひまわりが身につけているものは、とうとう下着だけになってしまった。  
まじまじと体を見られて、恥ずかしさで頭が焼き切れてしまいそうになる。  
愛撫の止んだ胸を、今更だとは思いながらも腕で隠した。  
 
 少しの間、ひまわりの様子を黙って見ていたヒトシが、不意に指を秘部へと  
伸ばしてくる。  
「っ、あ……やっ」  
 一番敏感な箇所に指が触れて、ひまわりは思わず声を漏らした。固く勃ちあがった  
それをゆっくりと擦られて、腰から力が抜けていく。逃げ出したくなるほどの快感に、  
ひまわりは体をよじって悶えた。  
「や、だめ、ヒトシ……っ! あ、んんっ!」  
 だめ、と言いながらも、体は男の指を求めている。――更には、性器までもを。  
素直に欲しいと言えたらどれほど楽なことか。だが、ひまわりはまだ羞恥心を  
振り払うことができなかった。  
「腰揺れてるぞ、ひまわり。ホント、お前やらしーよな」  
 ヒトシの言葉に、かっと体中が熱くなる。ヒトシに触れられている部分から、  
液体が湧き出るのが感じられた。自分でも意識しないうちに、体は勝手に動いて  
いる。本能には、逆らえないのだろうか。  
 ひまわりがそうあきらめかけていたとき、ヒトシの指がクロッチの部分を  
かいくぐって、直接秘部に触れてきた。  
 
「――っ! っだ、触らないで、よ……っ!! ホントに、だめ……っ」  
 くちゅくちゅと、くすぐるように触れられ、意識が遠のきかけるのをこらえる。  
ひまわりはもう限界だった。久しぶりの性行為なのに加え、何度も何度も  
じらされてはたまらない。内股がガクガクと震えて、ヒトシから与えられる快楽を  
増加させていく。  
「あ、あ、や……っ、い、っ、ん――っ!」  
 ぬるぬると滑る指が再び陰核に触れた途端、ひまわりはとうとう達してしまった。  
絶頂まで行けたことを体が悦んでいるように思えるほど、心地いい。  
荒く息を吐いているひまわりをヒトシは少し驚いたように見つめていたが、すぐに  
楽しそうな表情に戻ると、ひまわりに問いかけた。  
 
「お前、もうイったの? 早えーよなぁ……じゃ、俺も気持ちよくしてくれよ」  
 ひまわりは少しの間その言葉を頭の中で繰り返していたが、しばらくして  
目を見開くと、体を丸めてうずくまった。ヒトシが言っている言葉の意味を考えて、  
その恥ずかしさにどうしようもなくなったのだ。  
 
「おい、何してんだよ……別に、俺フェラしてくれなんて言ってないじゃん」  
 さらに追い討ちをかけるように、ヒトシの言葉が降ってくる。聞きたくない  
単語が耳に飛び込んできて、ひまわりは曲げていた腕を伸ばして耳をふさいだ。  
「ひまわり、聞けって!」  
 が、その腕を掴まれ、無理やりに上を向かされた。ヒトシの真剣そうな顔が  
目に飛び込んでくる。  
 
「……違う、の?」  
「……お前って、ホントーに早とちり女だよなー……俺も限界だから、早く  
お前ん中に入れたいんだって。俺が言ったのはそういうこと」  
「……わかった……」  
 ひまわりは、ヒトシの真面目な言葉に自分の情けなさを余計に感じた。  
情けなくて恥ずかしくて、泣きそうになるのをこらえながら頷くと、ヒトシが頬を  
撫でてくる。その温かさにうっとりとしていると、ヒトシの顔がゆっくりと  
近づいてきて、唇をふさがれた。  
 
「んっ……あ、っ……」  
 何度も何度も慈しむように唇を吸われる。皮膚を吸い上げる音と、ヒトシと  
自分の息遣い、シーツの擦れる音だけが空間を埋め尽くしていた。恥ずかしさの  
上に、ヒトシに抱かれているという安心感が上塗りされていく。今している  
この行為が不貞行為だということさえ気にならないほど、ひまわりは満たされていた。  
 ちゅ、と小さな音を残して、ヒトシの唇が離れていく。閉じていた目を開くと、  
ヒトシが耳元に唇を寄せてきた。  
「ひまわり……もうすぐ、入れるぞ」  
 低くかすれた声でそう囁く。間もなくかちゃかちゃと聞こえてきた音の方向に  
目をやると、ヒトシが片手で器用にベルトを外して、ジーンズを脱いでいた。  
ばさっと大きく音が立って、ヒトシの腰からジーンズが落ちる。ヒトシは  
もどかしそうにそれを蹴り飛ばし、あっという間に脱ぎさってしまった。  
 

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