軽い口づけを交わしながら彼女の身体を抱きしめ、そのままベッドに横たえる。
栗色の髪の毛を手で弄びながら角度を変えて何度も口づける。
「ん…」
最初は唇に触れるだけから、次第に深くなりお互いの吐息が混じりあいそうになる頃
「…ちょっと、眼鏡が邪魔よ」
グレースはそう言うと私の眼鏡に手をかけて外そうとする。
が、不器用な彼女のことでなかなかうまく取れない。
無理に取ろうとしてまた壊されても困るので
「自分でやりますよ」
私は眼鏡を外すとサイドテーブルに置いた。
「ついでに、灯りも消してくれない?こう明るくちゃ恥ずかしくてしかたないわ」
上気した頬を、手で隠すようにして彼女が言う。
「気になりますか?私は別にこのままでも構わないんですが」
「もう、何言ってるのよ。こんなに丸見えじゃ恥ずかしいに決まってるじゃない。
…いくらあたしががさつで大胆なタイプでも時と場合によるわよ」
恥じらいを見せ顔を赤らめて言う彼女。
こういう彼女を見たことがないわけでもないが、ベッドの上で見るのはもちろん初めてだ。
「…グレース」
部屋の照明を落とし、枕元のわずかな灯りのなか彼女の頬に触れる。
屋敷に戻ってきたばかりのグレースの身体は冷えきっていたが、今は違う。
シャンパンを飲み、暖かい部屋にいた身体は触れると生きているぬくもりを感じさせる。
思えば、彼女はいつも無鉄砲で後先考えずに行動してばかりで、一緒に過ごした
三年半の間に生命の危険にさらされそうになったことだって何度あったか分からない。
そんな彼女と、主人と執事として、残された家族として共に生活していくうちに
いつしか家族としてだけではない感情が芽生えてしまった。
彼女を愛しいと思う。
告げることのない想いでもそれはかわらない。
書類上とはいえ、彼女と私との関係は親子であり家族だ。
たとえ、彼女が私と同じ想いを抱いていたとしても
それ以上の関係に進むことはないだろうと思っていた。
今日この日を迎えるまでは。
「…グラハム?」
頬に触れたまま動かなくなってしまったような彼にそっと声をかける。
眼鏡を外した彼はいつもとは少し違った表情を見せる。
これが男としての彼の姿なんだろう。
あたしが彼のこんな顔を見ることになるなんて思ってもみなかった。
屋敷に戻ったあたしを、彼は玄関先でいきなり抱きしめた。
普段の彼からは想像もつかない行動だったのでちょっと驚いてしまった。
じいさまが亡くなる前と比べて、ぐっと親しくなったとはいっても
彼があたしに特別な感情を抱いているのかというとあたしにはよくわからない。
思わせぶりな素振りをみせることもあるけど、ただの親愛の情としての表現な気もする。
どちらにしろ、あたし達は家族だしそれ以上の関係は彼も望んでいないはず。
仮に、お互いの気持ちが同じところにあったとしても、だ。
少しの間混乱していたら、すぐにいつもの表情で迎え入れられた。
まったく、相変わらずのポーカーフェイスで感情が読めやしない。
そのあとは、すったもんだのあげく今あたしは彼のベッドの上にいる。
まさか彼とこうなるなんてそれこそ夢にも思わない出来事だったけど
じいさまの手紙を読むかぎり、いずれこうなる運命だったのかもしれない。
彼女に名を呼ばれ、我に返る。
潤んだ瞳で見つめられ視線が絡み合う。
グレースの手が私の髪を撫で、頭を引き寄せる。
深い口づけは互いの想いを溶け合わせているかのようだ。
「…グレース、君を………」
交わす口づけにまぎれてつぶやくように囁く。
「んんっ…あたしも…よ」
漏れる吐息に重ねるように彼女が応える。
「……じいさまも、クリスマスに、粋なプレゼント…して、くれる、じゃない…んっ」
この状況になるにあたって、旦那様の手紙が多大な効力を発揮したのは言うまでもないが
その直感もたいしたものだと素直に思う。自分達ですらここまで近しい関係になるとは
思ってもいなかったというのに、あの方は最初から見抜いていたのだろうか。
名残りを惜しむ唇を離すと、頬から耳そして首筋にかけてそっと辿っていく。
耳朶に軽く歯を立てると息を詰めるのがわかった。
「はっ…」
背中を撫でていた右手をゆっくりと下ろしていく。
もう片方の手をセーターの間にしのばせる。
掌で収まるほどの胸のふくらみを揉みしだくと、彼女の唇からたまらず甘い声が漏れた。
「ああ、はぁ…グラハム…っ」
「ピーターで構わない、今は」
そう言うと、少し驚いたように彼女が笑う。
「初めて、ね。…あなたが、ファーストネームでもいいって、言ったの」
……確かに仕事中は呼ばないでくれと言った覚えはある。
だが最近は彼女もグラハムとしか呼ばなくなっていたのですっかり忘れていた。
うれしそうに私を見つめる彼女に愛しさが増す。
胸の上にある手がその先端を軽く摘まむ。
「はぅっ、…ああ」
ふいに訪れた刺激に彼女が小さく身をすくめる。
片手で下着の留め具をはずすとセーターをたくしあげた。
へそのあたりから上に向けて徐々に唇を滑らせていく。
彼女の腰のあたりをさまよっていた右手をスカートの中に滑り込ませて、太腿に触れる。
「あっ、はっ…んん」
唇はすでに胸に到達していて、先程まで指で愛撫していた部分に吸いつくと
「あ、ああっ…や、あ…んっ」
彼女の声がさらに高くなる。
舌で転がしながら、もう片方の胸は先端のまわりをじりじりと撫で、また摘まむ。
その間も右手は焦らすように滑らかな太腿を撫でさするだけだ。
とうとう耐え切れなくなったのか
「ん、はぁ…あっ…ピーター、あたしっ、…もう」
顔を朱に染め、わずかにうわずった声で彼女が吐息を洩らす。
「もう、何?」
普段見せない彼女の女の部分が色っぽく、つい意地悪なことを言ってしまった。
軽くにらむようにこちらを見るが、その瞳はすでに濡れていて。
問いかけに答えはなくとも、言いたいことはよくわかる。
太腿を撫でていた手を静かに動かす。
さらに奥のほうに手を寄せると下着の上からでもわかるほど熱くなっていた。
軽く撫であげ下着をずらしてそっと指をさし入れると、彼女の身体がびくりと震えた。
「や、やだっ…ちょ、ちょっと…待っ」
気にせずにゆっくりとおし進める。
小刻みに指を動かすと、震える身体が小さく跳ねた。
一度抜き出すと湿った音がする。
そのまま指を這わせると小さな突起に触れる。
円を描くようにかすかに指を動かしてみる。
「や、あああっ……んん、くぅ」
彼女は手で顔を覆い、必死で自分を抑えようとしている。
「グレース…」
顔を覆う手首を掴むと、シーツに押し付けた。
口づけながらも指の動きは止めない。
混じり合う互いの吐息。
「……ああっ…もう…おかしく、なりそう…」
いつの間にか手首を押さえていた手は離れ、彼女の手を握っていた。
指と指を絡ませしっかりと握りしめる。
握り返す指の力が強くなってきた。そろそろかもしれない。
耳元で名を呼びながら、指先は彼女を煽る。
「あ、あ、ああっピーター…あああっ」
グレースが一際高い声をあげ、大きくのけぞった。
グレースの閉じた瞼にそっと唇を落とすと、ゆっくりと身を離す。
彼女をさんざん煽っていたのだから私だって普通ではいられない。
シャツの上に着ている服を脱ぐとベッドのそばの椅子に放り投げる。
「……はぁ」
落ち着いてきたのか、小さく荒い息をついていた彼女が薄く眼を開けた。
彼女の頬に手を添えて顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「…頼むからそんなこと聞かないで。大体、ずるいわよ…。
あたしだけ振り回されてるみたいじゃない」
薄明かりの部屋の中、潤んだ瞳を伏せつつぼそっとつぶやく彼女の表情を見て。
たまらない。
歯止めがきかなくなりそうだ。
私の腕の中にいるときは、いつもの彼女とは別人のように見える。
もっともっと乱れさせてみたい。誰も知らない彼女を知りたい。
───彼女のすべてを自分のものにしたい。
ずっと家族でいるつもりだったこれまでとはまるで違う想いに自分でも戸惑う。
乱されているのは彼女じゃなくて私かもしれない。
「ん…身体が熱い…脱がせてくれる?」
甘えるように言う彼女の口調も初めて聞くものだ。
彼女の身体に残っているすべての衣類をはぎとる。
そして、再び彼女に覆い被さると
「あなたも脱がせてあげるわ」
そう言って、シャツのボタンに手をかけてひとつひとつはずしていく。
彼女の髪の毛を撫でながら、耳朶に口づけそっと舌を這わす。耳の中に舌をねじこむと
「ひゃっ…だ、だめよ…くすぐっ…たいじゃない」
首をすくめて身悶えるその様子が可愛くて、ますます愛おしい。
伝い降りていく唇が首筋を舐めあげる。いっそ跡でもつけてしまいたい。
「…いいわよ、つけても。冬は厚着してるからバレやしないって」
私の考えを読んだかのように彼女がいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「どうなっても知りませんよ」
そう言いつつ、なるべく肩口に近いあたりに唇を寄せ、きつく吸いあげた。
白い肌に小さくついた赤い跡。
おそらく誰の目にも触れることがないであろうその印をそっと指で撫でる。
この屋敷の使用人の中には私達の仲を誤解している者もいるようで
──今となっては誤解も何もないが──クリスマスにこの広い屋敷に
ふたりきりともなれば、何かあったのではないかと勘繰られてもおかしくない。
それにしても、よくパブからの帰りを奥様ひとりで帰らせたものだ。
「しかし、よく帰ってこられましたね。誰かに止められたりしなかったんですか」
「ん?ああ、メイド達は夜も遅いからやめた方がいいって言ってたんだけど
コック長がね、グラハムさんもひとりで寂しがってるかもしれないから
奥様が帰れば喜びますよって送りだしてくれたのよ。
ついでに、ふたりでこれをどうぞってシャンパン持たせてくれたの」
……なるほど、そういうことか。結果的にはその目論見どおりになったというわけだ。
「ねえ、…あたしもつけていい?」
は?
「だーいじょうぶよ!噛んだりしないから安心して」
そういう問題ではないが、彼女はすっかりその気でどこにしようかなんて考えてるようだ。
止めたところで聞き入れはしないだろう。
「見えないところならいいですよ」
仕方ないなと苦笑しながら言うと、グレースはにっこり笑って抱きついてきた。
まだ羽織っているシャツの内側の肌に唇を寄せる。
彼女の唇が私の鎖骨に跡を残そうとした瞬間、そのまま頭を抱えてベッドに押し倒す。
「…興奮した?」
すっかり彼女のペースに巻き込まれている。
何も言わずに彼女の唇を塞ぐ。
舌を絡ませ、深い口づけに酔わせる。
「んんっ、はぁ…」
瞳が潤んできた。
私は一度身を離すと、身につけている衣服を脱いで椅子にかけた。
ついでに旦那様のお心遣いがその辺に落ちていたはずだ。
拾ってひとつ取り出すと、残りの箱をサイドテーブルに置いておく。
ベッドに横たわる彼女を振り向くと、私に向かって腕を伸ばしてきた。
細い腰に腕をまわして、ゆっくり抱きしめる。
お互い一糸まとわぬ姿で抱き合うと、彼女の身体のぬくもりがよりはっきりと感じられる。
首筋に顔を埋め、鎖骨をたどってその下へと唇をすべらせていく。
腰にあてた手はなめらかな臀を撫で、胸にたどりついた唇は先端を舌で刺激する。
「んっ…あっ」
彼女の身体がほんのり薄紅色に染まりはじめた。
…そろそろこちらの理性がもたなくなりそうだ。
太腿を抱えあげ少しずつ身体を重ねる。
「は…っ」
すべて埋めてしまってから様子を窺う。
「……っ…あ、ああ…うっ…く」
先程まで力の入っていなかったはずの彼女の身体が急に固くなった。
瞳を閉じ、眉根を寄せて何かに堪えているかのようだが様子がおかしい。
その身をすくめ、私の首に絡む手がかすかに震えている。
まずい。
受け入れた衝撃のためかわからないが、身体に力が入りすぎている。
このまま抱いても彼女を傷つけるだけだろう。
彼女の背中に腕をまわし、強く抱き締めて言い聞かせるように囁く。
「グレース…力を抜くんだ……グレース…」
何度も囁き、髪の毛を撫でながら震える彼女に口づけを落とす。
「…っ……はぁ」
強張っていたグレースの身体から徐々に力が抜けていく。
「そう…それでいい…」
意外な反応に少し驚いた。
もしや初めてなのかと思ったがそんなこと聞くだけ野暮だし、彼女も答えないだろう。
とにかくあまり無理はさせないほうがよさそうだ。
グレースの力が抜けて身体の重みが腕にかかってくる。
前髪をかきわけて額に軽く口づける。
「…堪えられなかったら、噛んでもいいから」
「んっ…噛まない…って…言った…でしょ」
クスリと笑いながら発せられた声はうわずっていて、紅潮した頬はそのままに
今にも零れそうなその瞳はまっすぐにこちらを見つめている。
彼女の掌が私の頬に触れ、途切れ途切れにつぶやく。
「…っ…あなたが…好き、よ…たとえ…一夜限り、でも……………うれしい」
──ああ、もう、君という人は。
「誰が一夜限りなんて言ったんです。もう離しませんよ。…覚悟はできてる」
グレースがわずかに眼を見開いた。
「………あなたって……本当に…意外なこと…言うわ」
「ギャンブル人生お好きでしょう?一緒に賭けてみませんか」
返事を待たずに唇を塞ぐ。軽く触れ、再び口づけようとしたその時
彼女の青い瞳から一粒の滴が零れ落ちた。
「グレース…」
だめだ、抑えられない。
緊張がほぐれるまで待っていたがもはや彼女の様子を見ているだけで煽られる。
抑えきれずにゆっくりと揺らし始めると
いきなりの律動に驚いたグレースが私にしがみついてきた。
「や、あっ、ああ…ピーター…っ」
まるでか弱い少女のように必死で堪えようとしている。
いつも勝ち気で自由奔放な彼女にこんな一面があるなんて誰が知っているだろう。
無理はさせたくないがこうなるともう自分を止めることができない。
最大限の注意を払って、なるべく負担にならないように腰を動かす。
最初はただ戸惑っているだけだったグレースの声が次第に艶を帯びてきた。
身体が慣れてきたのだろうか。
甘く鼻に抜けるようなその声から彼女の感じている様子が伝わってくる。
「…はぁっ、あっ、…あ、あ、ああっ…んんっ」
頭に響くその声が私の理性を溶かしていく。
──ずっと書類上の立場に縛られてきた。
たかが紙切れ一枚が邪魔をして、秘かな想いにブレーキをかける。
想いを告げられなくても、共に未来を過ごすことができるならそれでいいと思っていた。
だが、今、彼女を抱いている。
一線を越えてしまったことに対して後悔はしていない。
むしろ何故今まで何事もなくいられたのかという疑問のほうがずっと強い。
お互い相手を必要としていて、これほどまでに愛しているのに。
「…ああっ…ピーター…はっ…んっ、あ、あっ…ああっ」
切なげな甘い声。
火照った身体が互いの熱を伝えあう。
激しさを増す振動に年代物のベッドが軋みをあげる。
「…グレース……っ」
彼女の腕が私の首に絡みつき、たまらないとばかりに縋りついてくる。
「…ね、ねえっ…あっ、ん……あぁっ」
揺らめく瞳が訴えてくることを察して、噛みつきそうな勢いで唇を重ねた。
「んんんっ、…はぁ…っ」
舌を絡め互いを貪る。
とろけるような口づけに反応してか彼女がきつく締め付ける。
「……くっ」
あやうく果ててしまいそうになる。
「あ、ああっ…あ、あたしっ…も、だ…めっ」
グレースが息も絶え絶えといった風に言葉を絞り出す。
小刻みに震える身体が彼女もまた限界が近いらしいことを表していた。
彼女を抱く腕に力をこめ、さらに激しく突き上げる。
もう何も考えられない。
「あ…んっ…くぅっ、あっ、あっ……あああああっ」
限界はほぼ同時だった。
「……んっ」
「気がついた?」
あたしが目を覚ますのと同時に声が降ってきた。
気がつけば毛布が掛けられていて、すぐ隣にはピーターが横になっている。
「やっぱり疲れてたんですね、無理もないですよ」
どうやらあたしは彼と寝たあとそのまま気を失ってしまったらしい。
そんなに長い時間じゃないみたいだけど、気を失うって…。
さっきまでの行為の内容を思い出して顔が赤くなる。
とんでもないこと言っちゃったような気もするし
とてもじゃないけど、彼の顔なんて見れやしない。
慌てて顔を隠そうと反対側を向く。
「どうしてそっち向くんです。寂しいじゃないですか」
ああもう以前の彼なら絶対こんなこと言わなかったのに。
「…言っとくけど、あたし酔っ払ってたのよ。だからこんなことになっちゃったんだわ。
俗に言う一夜の過ちってやつよ。あなたも忘れてくれていいわよ」
興奮して思わず早口になってしまった。
「……本気で言ってるんですか」
少し低い声で彼が問いかける。
…やばい、怒らせてしまったかも。
彼が小さくため息をつく。
背中越しに抱きすくめられる。
「どれだけ一緒にいると思ってるんです。…君の本心はすぐにわかるよ。
恥ずかしいならそっち向いたままでもいいですから、頼むからそんなこと言わないでくれ」
「………」
「それに言ったでしょう?もう覚悟は決めてますから」
まっすぐで頑固で、一度こうと決めたら意志をまげない強さを持ってて
真面目なだけかと思ったら時に意外なほどに大胆で。
ああ、本当にあなたには敵わないわ。
くるりと身体を返すとピーターの顔がすぐ目の前にあった。
「…ごめん。あたしが悪かったわ」
目が合うと、彼が唇を寄せてきた。
そっと触れて離れて、そしてまた唇をついばむような軽いキス。
彼があたしの髪の毛をゆっくりと撫でてくれる。
全てを受け入れてくれているようで、なんだかとても安心する。
…愛されてるってこういうことなのかしら。
とにもかくにも、じいさまに感謝しなくちゃいけないな。
今度お墓参り行く時バラの花持ってってあげよう。
あー、このまま寝ちゃうのも悪くないかも。
いい夢が見られそう…
今度こそ完全に眠ってしまったようだ。
腕の中のグレースはすうすうと寝息をたてている。
軽い失神から眼を覚ました彼女は、急に真っ赤になったかと思うと
心にもないことを言ってみたりして相当混乱しているようだった。
今までの彼女の様子を見るかぎり、本人が言うほどのこともなく恋愛に関しては
あまり経験がないのかと思われるからこの手のことは苦手なのかもしれない。
まあ、そこが彼女の可愛いところでもあるのだが。
グレースの髪を撫でる。
愛しい彼女。
今日から私達の新しい関係が始まる。これからもよろしく。
──そんな想いをこめて、眠る彼女の頬にそっと唇を落とした。