−Tina_Grey−  
 
ティナは真夜中の裏路地をパジャマ姿で歩いていた。どうしてこんなところにいるのか分からない。  
煉瓦塀で仕切られた道がどこまでも入り組んでいて、出口を求めてさまよい続ける内に霧が濃く立ち込めてきた。  
冷たいアスファルトのせいで足の裏が麻痺しそうになる。街灯はない。あたりは真っ暗だ。  
下請け工場らしきのっぺりした屋根が2mほどある高い壁からところどころ頭を出している。  
従業員から忘れさられてしまったかのように、錆びた鉄の臭いだけを残してひっそりと佇んでいる。  
空を見ると、鈍重な雲が敷き詰められ、完全に月を隠し、星すら見えない。  
どこからか歌声がする。複数の、甲高く細い少女の声が、冷風が吹きすさぶ彼方から響いている。  
歌は単純で同じメロディを繰り返している。童謡だろうか、こんな人っ子一人いないような寂れた場所に。  
(One Two fxxxxxxx coming for you……)  
真ん中の部分だけ、よく聴き取れなかった。  
何と言ったのだろう?いったい、何が来るのだろう?  
(Three Four bxxxer xxxx yoxx door……)  
気味が悪くなって来たので、ティナは駆け足気味に道を進む。  
ガラスの破片や錆びた釘などが落っこちていないか足元に注意しながら、角を左に曲がった。  
曲がった先は、パルプ工場の工用道路らしかった。  
塀を隔てた建物から伸びている三本の巨大な煙突と、辺りに散らばった板切れや縦に割られた丸太などが、ティナにそう思わせた。  
ちょうど大型トラック一台半分の広さだが、腐った木材の破片が塀のあちらこちらにたてかけられて、道の1/3を両脇から塞いでいる。  
すぐ傍の塀から錆びた配管がにゅっと突き出し、口の先から緑色の汚水が糸を引いて垂れている。ひどい臭いだ。  
ドブネズミが排水溝の縁をかけぬけ、何者かから逃げるように走り去った。  
嫌な予感がする。大事なことを忘れているような気がして、それが何だったか思い出そうとするが、何も浮かんでこない。  
 
少し進むと、カラースプレーで落書きされた横長のトラッシュボックスが左手に置かれていた。  
蝿がたかっている。どこかの馬鹿がハメを外したのだろう「PUSSY!(おまんこ!)」卑猥な言葉だ。  
投げ入れ口二つとも、ぱんぱんに膨らんだ黒のビニール袋がつめこまれていて、大きく歪んで落っこちそうなくらいはみ出している。  
生ゴミの腐臭がぷうんと鼻をつく。なるべく見ないようにして通り過ぎる。  
ティナの歩みと同調するように、幾重にも重なり合った雲がゆっくりと裂けた。  
モーゼが大海原を切り開いたように、天の始まりから天の果てまで空に道が創られた。  
その真ん中に、薄紅色に輝く満月が鎮座し、高みから気狂い染みた赤光を下々に与え、ティナの顔も照らした。  
視界が広がった。道は50mほど先で突き当たりになっていて、右と左に別れている。  
赤く塗られた木切れが、お前に他の選択肢はない、お前は道を進むしかないのだ、と急き立てる。  
ティナはふっと空を見上げ、赤光を正面から浴びながら愛する男と親友達の顔を思い浮かべた。  
ロッド、ナンシー、グレン、今彼らに逢えたらどんなにか心強いだろう。  
歩みを進めるたびに、足の親指の感覚がなくなってくる。  
いつまで歩けばいいのか、入った時より道は綺麗になったけれど、本当に出口があるのか疑わしくなってくる。  
帰りたい、早く皆のいる場所へ。パパとママが待つ家へ。ロッドの腕の中へ。ナンシーとグレンに会える自分の街へ。  
風が一陣吹いた。煽られ、首筋に寒気を感じて、ティナがくしゅんと顔を傾けた時、  
キィィイイイイイィィィ――金属と金属がこすれあうような嫌な音が、背後から響いた。さっき通り過ぎたトラッシュボックスの近くだ。  
振り返ると、あの女がいた。右頬が焼け爛れて、ケロイド状の皮膚をむき出しにして。  
ティナの記憶がよみがえる。  
160cmほど、薔薇の茎のようなか細い身体。  
ぴったりあった茶色の中折帽、金髪のおかっぱで、帽子の隙間から不規則に髪がはみ出している。  
ブルーの鋭い切れ長の目で、右手に皮をなめしたグローブをはめて、人差し指から小指まで三日月形に曲がった鋭い鉤爪を光らせて、  
キィイイイイイイ――今、それで、トラッシュボックスの角を引っかいている。  
黒のホットパンツから伸びた細く長い足は、厭らしいガーター・ストッキングに守られて、気が狂うくらい倒錯的だ。  
赤と緑の縞模様のぴっちりした古臭いセーターを着て、胸の部分だけがほんの少し膨らんで、細い腕が余計に長く見える。  
真っ赤な唇、大きな口を閉じたまま、含み笑いをして、こっちを見ている。  
記憶が完全に再生されたと同時に、ティナは向き直って、走り出した。  
あいつだ。また、あいつがやってきた。どうしていつも会うまで気づかないのだろう。  
自分は死にそうな目に何度もあってるってのに!ここは、いてはならない場所だったのだ。  
まただ。あの鉤爪の女に、犯される。アソコをむちゃくちゃにされる!そして、逃げ切れなければ、殺される!  
 
女性にとって、最も忌むべき、二つの危険。  
それが動力源になって、ティナの足を回転させる。  
走れ。全てを捨てて走れ。逃げなきゃ、もっと速く!もっと遠く!ロッド、助けて!  
「テぃぃぃぃぃナぁぁぁぁぁあ」  
両脇を走るレンガ塀に映った火傷女の腕の影が、疾走するティナに届かんとする勢いで、にゅうと伸びてきた。  
幾倍にも拡大した鉤爪のモノトーンが目に入る。ティナは距離を測ろうと振り返った。  
火傷女は、左足を傾けて、茶色いブーツの踵を立てたまま、元いた場所から一歩も動いていない。  
それどころか、セーターに包まれた腕を組んだまま、指さえ動かしちゃいなかった。  
なのに、影だけが両脇から少女の身体を掴まんと、あと少しのところまで来ている。どうして、そんなことが起こりうる?  
火傷女が笑う。ゆっくりと大きく腕を広げて、にじり寄ってくる。  
今度は本当に、びっくり箱から飛び出したピエロのように、人間の身体に不釣合いな長さで、腕が伸びている。  
「キャッ――――――――――ハハハハハハァ!!!!!」  
火傷女のハスキーな笑い声だ。真っ赤な口をぱっくり開けて、なんて下品な声だろう。  
地獄の底から蘇った悪魔だ。人間があんな声を笑えるだろうか。火傷女は悪魔だ。  
もう見ている余裕はない。ティナは突き当たりに向かって一心不乱に飛ぶように走った。  
逃げ切ってやる。走れるところまで、路地の奥へ、真っ直ぐ行って、一番奥、その角を右に曲がって、まいてやる。  
命をかけて逃げ切ってやる。どうか、行き止まりじゃありませんように!  
時々木切れを踏みつける。足の裏の痛みなんか気にしていられない。ひたすら腿を持ち上げ降ろす。  
ゴールが見えてきた。突き当たり、ちょうど右と左へ、一本道が伸びている。  
右、右、あいつは左に曲がる。左に曲がる。  
祈りながら、突き当たりまでもう少しかというその時、  
「ヒャァア!」  
その右の角から、火傷女が現れた。  
踵を返し、全速力で元来た道を戻る。振り回される爪先がブロンドの後ろ髪をかすめ、切られた毛がぱらぱら落ちる。  
ティナは感じた。にゅっと伸びてきた、細く冷たい、五本指。女の手。  
捕まった。  
腕を回す。足を蹴り上げる。  
火傷女は、あっという間に後ろから羽交い絞めにして、四肢をばたつかせるティナを持ち上げている。  
暴れるティナをものともしない、細い身体にどうして、こんなに力が秘められているのだろう。  
「やあやあ、元気なお嬢さん、暴れるのはおよし!ヒャハッ!」  
火傷女の挑発はティナに届かない。全身の力でティナは腕で作られたリングをやぶろうと躍起になる。  
ビルから落下する自殺者のように、両手両足をばたばたともがかせて、抵抗する。  
火傷女がにやにや笑いながら、ティナの身体を解き放った。ティナの足は地面につかなかった。  
浮いたまま彼女は暴れまわる。何が起こっているのか分からず余計に手足をばたつかせる。  
しかしそれは、標本にされる昆虫がピンで固定されてもがくかのごとき、無駄な抵抗だった。  
 
「ヒヒッ、ティナあ、今日はどんなことして、楽しませてくれんのかしら?」  
「ひっ」  
気丈なティナの眼から希望の光が失われかけている。恐怖でいっぱいだ。  
身体の震えを止められない。顔がくしゃくしゃになるのを押しとどめられない。  
「ハァッ!」  
火傷女が空を抉り取るように鉤爪をなぎ払うと、ティナの腕が横水平にぴんと伸びた。  
パジャマのボタンが独りでにプツンプツンと外れていき、雪のように白く、ささやかにふくらんだ乳房の半分が露になった。  
返す刀でもう一払いすると、ズボンがパンティごと下にずりおちる。  
金色の陰毛は薄く、恥丘がほとんど見えている。きゅっと締まった小さなお尻がむきだしになる。  
鉤爪をカチャカチャ鳴らせながら、厭らしい笑みを浮かべて、火傷女が向かってきた。  
「いや……いやあっ!」  
「さんざろくでなしにブチ込まれてんのに、いまさら恥ずかしがってんじゃないよッ!」  
火傷女が一喝する。音が周囲を攻撃する。煉瓦に当たって反響する。  
ティナはもう何もできないでいる。怯えて身体を震わせるだけの、赤ん坊だ。  
空中に30cmほど浮いたまま、十字架にかけられたキリストのような格好で、  
うつむいて、心の中で必死にロッドに助けを求めていた。  
お願いよ。助けに来てよ。いつも私を守ってくれるって、言ったじゃない。お願い……。  
火傷女が、くん、と中指の爪を立てる。ティナの股が何かにひっぱられて開いていく。  
「や……やめてよ……」  
まるで屈強な大男にレイプされているようだ。それほど大きな力がかかっている。  
下っ腹に力を入れて、膝をすり合わせるように抵抗するが、股は徐々に開いていく。  
「やめてよ、ねえ、やめてったら、バカッ!」  
中指の爪がさらに上へ突き上げられた。  
「いや……やぁああッッ!」  
浮いた姿勢でティナの股はきっかりM字に開かれた。  
Mの字の中心にはヴァギナとアナルが存在を主張している。  
成長した肉体が、おむつを交換してもらう赤子のような格好になっているのは卑猥であり滑稽だった。  
火傷女は舌なめずりして、ティナの秘所を覗き込む。ティナのヴァギナはお世辞にも美しいとは言えなかった。  
頂上にはピンクの肉芽が厚い皮から少し顔を出していて、  
色素が沈殿した小陰唇は盛り上がったぶよぶよの大陰唇の内側に沿って、尾びれのように2cmほども突き出ている。  
秘肉はその存在を隠そうともせず、ピンクとグレイを混ぜたような色で、  
下部の膣口が呼吸をするように、開いたり閉じたりを繰り返している。  
 
「ずいぶん使い込んでるねえ。なに、このビラビラ?真っ黒!」  
「……!」  
自分のヴァギナは確かにコンプレックスだった。  
豊満とは言わずとも形の良い胸は密かな自慢だったし、身体のラインはチェシャ猫のようにしなやかで、  
ハイスクールに入ってすぐの時期に、チアリーダー・クラブにスカウトされたこともある。  
顔立ちは、柔らかい眉のラインに、少年のような瞳、少し下がった目尻、  
すっと通った小鼻、アヒルのように婉曲した唇がおそらく最大のチャームポイントだった。  
それらがブロンドのショートカットとマッチして、キュートかつボーイッシュな魅力を讃えている。  
中性的な美形だが、決して近寄り難い感じはせず、どこか人懐こい印象を与える。  
ティナは「私のアソコはセックスで悪くなったのではなく、元々こうなのだ」と言いたかった。  
メンスが始まる年頃になって、一度、自分のアソコを鏡で視た。想像していたよりもグロテスクで目を背けてしまった。  
自分の他のパーツより明らかに劣っていた。醜かった。自分のモノではないと思いたかった。  
知ってからは、必ず、セックスの時は相手に明かりを消すことを守らせたし、クンニリングスは許さなかったのだ。  
今それを、最も知られたくなかった部分を視姦されている。まざまざと矚(み)られている。  
火傷女は左手の人差し指と親指を伸ばし、飛び出した小陰部をつまみ、横にひっぱりあげた。  
ティナのヴァギナが非対称に歪む。  
「くうっ!」  
限界まで小陰部を伸ばされた痛みに、ティナは思わず声を漏らした。  
「すっぱり切っちまうか。汚らしい肉」  
「!」  
火傷女が爪を振りかざした。ブンと空を切る音が耳に届く前に、ティナは全身の筋肉を硬直させ、目を閉じていた。  
痛みはなかった。案外、切断される瞬間はそんなものかもしれない。 しかし――血が流れている感触もない。  
目を開ける。自分の大事な部分に傷がついていないのを確認すると、安堵で腰の力が一気に力が緩んだ。  
「はっ、はっ、はああああああ」  
弛緩し、負荷を失った下半身は、同時にヴァギナとアナルをも脱力させる。  
小さな尿道口からぴっと音が立ち、黄色い液体が孤を描いて勢いよく流れ出した。  
火傷女はすっと横を向いて、肉の水鉄砲をかわす。  
そのまま鉤爪でおいでおいでの動きをすると、ティナの身体が上下に回転を始めた。  
「牝豚のまんぐりがえしでござあい!マングラー!」  
回転はちょうど尿が顔面にかかる高さでぴたり止まった。ティナの人間としてのプライドは、もはやめちゃくちゃに損なわれていた。  
自分の尿を顔面に浴びたティナは計り知れない恥辱に眉を八の字にして耐えている。  
ぐっと閉じた唇が、はからずも美しさを際立たせる。鼻筋をつたって、尿が鼻腔に流れ込む。  
アンモニアの香りがいっぱいに広がって、温かい感触が喉まで伝わると、我慢できなくなりたまらず口を開いた。  
 
「ヒャハッ!きったないねえ……小便女!」  
「ぶぶッ!ばっ!」  
一刻も早く尿を止めたいのだが、既に腰が抜けていて、力が入らない。  
呼吸が苦しく、息をするたびに、ティナは自分のおしっこの味を堪能することになった。  
喉まで通さないように顎を動かそうとしたが、頭が下になっているので、上手くできない。  
いくらかは飲んでしまう。無理に吐き出そうとして、激しく咳き込んだ。  
「特製カクテル、しっかり味わいな!」  
「あぶうっ!べっ!ゲェッ!」  
「キャッ――――ハハハハッ!!!」  
「ゲホッ!ゲッ!ブハッ!」  
涙と鼻水と涎と尿が一緒くたになってティナのボーイッシュな顔を陵辱する。  
アヒルのような唇が咳き込むたびにぱくぱく動く。息をするのも苦しいのに、身体の芯がじんと熱くなり始めていた。  
ティナ自身も不思議に感じた。尿と違ったもう一つの液体がアソコから垂れてきていることを。  
排尿が終わった。こめかみを伝って、アスファルトに排泄物の雫が落ちる。  
繰り返される滴音が、陵辱の記憶を消させない。肩を震わせ息をするティナへ火傷女が追い討ちをかける。  
恐るべき女強姦魔は、その天才的な嗅覚で、ティナが恥辱の悦びに目覚め始めていることを見逃さなかったのだ。  
「ヒヒヒッ!とびっきりの牝豚だね!こんな格好で濡らしてやがる!」  
ティナの頬が紅潮する。羞恥心がさらにヴァギナを熱くする。  
 
ティナにとって新しい発見だった。恋人のロッドに対してもベッドの上ではいつであれ主導権を渡さなかった。  
ロッドに限らずこれまで経験した三人の男とのセックスもティナが常にリードしていた。  
初めての時でさえ、腰の据わったティナは相手の大きなペニスにも怯えなかった。  
こっそり手に入れたポルノ雑誌で知識は得ていたし、ただ破瓜の痛みを心配していて、どうスムーズに終えようか、と考えていた。  
ティナは好奇心旺盛でリアリストという矛盾を兼ねあわせた性格だった。  
未知の世界に冒険心を膨らませつつ、リアリスト特有のペシミスティックな諦観も有していた。  
だから時々、とても寂しくなる。自分の未来には何もないような気がしてくる。  
ティナの隠された矛盾が、少々無鉄砲でも困難に立ち向かっていく男を捜した。  
たとえそれが悪ぶりであったしても、ティナには必要なのだ。  
また、ティナは自分の性格を多少は自覚していた。努めて隠していたのだが、ナンシーだけが見破った。  
ナンシーだけは、ティナの性格を理解し、そして認めてくれたのだ。「羨ましいわ」そうナンシーは言ってくれた。  
「あなたのような勇気と判断力がもてたらと思う。本当よ」  
ティナは少し救われた気がした。  
 
「お前は、一見、気取っちゃいるけどね。一皮むけば、虐められるのがだぁい好きな、マゾ女さ!」  
「ち……がう……」  
ティナは抵抗する。理性が残っている内は悪魔に屈してなるものか。  
決意を込めた眼差しが語る。私はナンシーを信じる。ロッドを信じる。ナンシーに愛されているグレンを信じる。  
しかし、ヴァギナは大口を開け、真逆の言葉を発している。嬉しい。もっと言って。汚い言葉で罵って。もっと私を熱くさせて。  
「豚のおまんこがまたヒクヒク言ってるよ。そんなに欲しいのかい?」  
「ち……が……」  
言葉とは裏腹に、ティナのオシッコと牝の臭いが、辺りに漂う汚臭に対してささやかなアクセントを加えている。  
「お前のきったない、醜い、クサレマンコ!」  
「…………」  
「そのグロテスクなビラビラを、ナンシーが見たら驚くだろうね」  
火傷女は両手を胸の前で握って、小さなお尻をふりふりさせて、ぶりっ子のポーズをとって、ナンシーの声色で呼びかける。  
「まあ、ティナったら。会うたびロッドとハメてるからそうなるのよ」  
「……うっ」  
似せているのではなく、ナンシーの声と瓜二つ、いや、同一人物の声としか思えない。  
ナンシーだ、ナンシーに見られている――ティナのヴァギナがひくついて止まらない。  
「どれだけやったら、そんな風になれるの?」  
「う、うう、ううう」  
「私、見損なったわ。虐められて、自分のオマンコ、びしょびしょにしてるなんて!」  
「うあああああああああああああああああ!」  
余りの言葉責めに堪えきれなくなって、ティナは世界の果てまで届くような大声で泣き出した。  
冷たいアスファルトに、ティナの大粒の涙と洪水のように溢れ出した愛液がぼたぼた落ちた。  
火傷女は、長い舌で爪先を舐めながら、目を裏返して艶笑する。  
焼け爛れた顔の皮膚が、ぴくっぴくっと痙攣している。恍惚の瞬間だ。  
ティナの号泣はまだ収まらない。恐怖だろうか、哀しさだろうか。  
恥辱、屈辱、被虐だろうか、おそらく全てがいっしょくたになって、ティナは泣き続ける。  
火傷女は、何を思うか、自分の人差し指と中指をすぱん、すぱん、と切り落とした。  
根元から血が噴水のように飛びだす。赤い光を受けて輝くアスファルトをさらに濃く染める。  
落ちた指は、ティナのヴァギナに向かって一直線に飛んでいき、ぱくり開いた膣口にねじこまれた。  
突然の刺激に括約筋が硬直する。味わったことのない、自分以外の女の指の感触を、ティナは自ら受け入れる。  
きゅぅううとアナルが引っ込んだ。  
 
「あはッ!」  
「ありがたく思いな。牝豚に指をくれてやる」  
二本の指は、血を流しながら、レバーが上げ下げされるように交互に動き、  
ずりゅ!ずりゅ!と膣壁を押し広げている。既に穴はいっぱいに開いていた。  
今、ティナの心がぽっきりと折れた。  
ティナは、ぐしゃぐしゃの顔で、自分のヴァギナに二本の切り取られた指が動いている様を目に焼けつけた。  
怖くなんかない。自分のアソコがぐちゃぐちゃになってもいい。もっとしてほしい、虐めてほしい。  
苛めて、苛めて、苛め抜いてほしい!  
「……うっ……ひぇぐっ……あっ……」  
涙の入り混じった喘ぎ声が漏れる。  
「どうだい?自分がマゾで、ビッチで、どうしようもない牝豚だって、認めたかい?」  
ティナは力いっぱい頷く。そうだ、私は牝豚だ。虐められたい。もっと。  
「ご褒美だ」  
弓なりにしなった金属の鉤爪。人差し指の長い兇器の先端が、充血した肉芽にちょこんと触れる。  
「かッ!?」  
冷たく尖った感触、ティナは一気に絶頂に導かれた。  
「かッ、かぁはぁっ」  
最後の声は、かすれて搾り出された。ティナは口を金魚のようにぱくぱくさせて、酸素を取り入れるのに必死だった。  
今まで経験した中で最も強いオーガズムだった。すぐさま全身の痙攣運動が始まった。  
 
騒音。赤い目覚まし時計が速く正確に小刻みに振動し、けたたましく喚いて主人に起床を促している。  
ティナが目を覚ました時、まだ身体は多少の痙攣と絶頂の余韻を残していた。  
ベッドの中は尿の匂いでいっぱいだった。火照りが収まった時、自分の受けた恥辱全てが夢であることをティナは悟った。  
動きたくなかった。まだそんな気力はわいてこない。夢で犯されたって、犯されたことには変わりないのだから。  
自分の最も隠しておきたかった部分を見られてしまったことは事実なのだ。助けてほしい。だけど、誰が信じてくれるだろう?  
ナンシー?ロッド?グレン?パパ?ママ?  
笑われるに決まってる。それに、こんなこと誰にも言えない。  
問題は、これで終わりそうにないという予感だった。今やっと気づいた。  
これはただの夢じゃない。  
あいつはきっと、またやってくる。そして今度こそ――ティナは眼をぎゅっと瞑った、私を殺すだろう。  
逃げ場はない。対抗する方法もない。どうしようもないのだ。  
絶望が身体全体を襲い、ティナは大声で泣き出した。  
いつまでも鳴り続ける目覚まし時計。娘を起こすため、母親が階段を登ってくる。  
ティナの部屋のドアを二回ノックしたあと、ノブを回してそっと中へ入り、  
毛布をはぎとった時、一階で食事をしている父親まで、ヒステリックな悲鳴が響き渡った。  
 
 

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