窓を打つ雨の音で目が覚めた。  
カーテン越しに入る光で部屋の中は薄明るくなっていたが、いつもより幾分明るさが足りない。  
ゆっくり目を開けると、ファトラの黒い瞳がこちらを見つめていた。  
「おはよう、アレーレ」ファトラは目を細めてほほえんだ。  
「・・・・・・」雨の日はどうも調子がでない・・・。  
アレーレは返事もせずにファトラの胸に顔をうずめた。  
ファトラの身体の甘い匂いが鼻先をくすぐる。  
いつもの香り。ずっと慣れ親しんできた、安らぎを覚えるこの香り。  
このままいつまでもこうしていたい・・・。  
もう一度眠ってしまおうか・・・できることなら明日の朝までこのまま・・・。  
でも・・・起きなきゃ・・・。  
そんなことを漠然と考えていると、再びファトラが口を開いた。  
「もう起きる・・・?」長いまつげが瞳に影を落とし、うるんで見えた。  
「ん・・・」からめた腕をほどき、アレーレはベッドから這いだした。  
ファトラがカーテンを開けた。灰色の空から雨粒がひっきりなしに降りそそいでいた。  
 
「何か食べる?」食堂への階段を下りながらファトラが聞いた。  
「・・・いい」結局アレーレはコップ一杯の水だけ飲んで部屋に戻った。  
起きているのに眠っているような、不思議な気分。  
体はここにあるのに、心はどこか遠いところへ行ってしまったような・・・。  
窓を少し開けてみた。雨はまだ降りつづいている。  
そのまま壁にもたれ、床に座りこむとアレーレは目を閉じた。  
「何をしているの?」ファトラがのぞきこんだ。  
「雨の音を聞いているんです」アレーレは目をつぶったまま答えた。  
霧雨がしとしとと静かにこだまし、永遠の旋律を奏でていた。  
「今日のアレーレはどこかおかしいわ」ファトラはアレーレの隣に腰を下ろした。  
「だけど、そんなアレーレも好きよ」  
「好き?」  
「好きよ」  
「私のこと好き?」  
「好きよ」  
 
「・・・もっと言って・・・」アレーレは少し照れながら言った。  
「うん。アレーレのやわらかい髪が好きよ」ファトラはアレーレの髪に指をからめた。  
「アレーレのおいしそうなくちびるが好きよ」ファトラはアレーレのくちびるを人さし指でなぞった。  
「アレーレのかわいい耳たぶが好きよ」ファトラはアレーレの耳に息を吹きかけた。  
「んっ」アレーレはくすぐったそうに声を漏らした。  
「アレーレの白い肌が好きよ」ファトラはアレーレの首すじにキスをした。  
「ああっ」アレーレは身をよじらせた。  
「アレーレの困ったような目が好きよ」ファトラはアレーレとくちびるを重ねた。  
「んんん」そのまま下半身へと手を伸ばす。  
「感じているときが一番好きよ」  
「おねえさま・・・あっ、あっ」  
「私の指で気持ちよくなっているのを見るのがとても好きよ」  
「でも・・・こんな昼間からなんて・・・はずかしい」  
「よおく顔を見せてちょうだい」  
「いやぁ、ダメ・・・」  
 
「ほら、もっと足を開いて・・・」  
「・・・・・・」アレーレは言われるままに従った。  
「いい子ね」ファトラのしなやかな指先がアレーレをせめたてる。  
「アレーレはここが好きなのよね・・・?」急所を知りつくした動きでアレーレを翻弄する。  
「ああ〜っ、おねえさまぁ・・・あぁぁ・・・もうダメぇぇ・・・  
 あっあっあああああ!!」必死にファトラにしがみつきながらアレーレは絶頂に達した。  
 
「疲れたでしょう、少し休むといいわ。一緒にお昼寝しましょう」  
フラフラしているアレーレを支えながら、ふたりはベッドに入った。  
「おやすみ、私のかわいいアレーレ」  
「おやすみなさい、おねえさま・・・」  
アレーレが安らかな寝息をたててからも、ファトラはずっとアレーレの髪をなでていた。  
明日は晴れるといいわね・・・。  
 
                    ☆★☆おわり☆★☆  
 

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