春のような穏やかな日差しの下、今日も小さな魔女のお店には『OPEN』の札が下がっています。
通りを行き交う人々は、時々そのお店の前で足を止めては目玉商品を眺めたり、小さな魔女を見つめたり……そんなある日の午後のことでした。
お客が途絶え、無人になった店内で、小さな魔女――サララは大きな溜息を吐きました。
彼女のパートナーである猫のチョコは、「またか」とこちらも溜息を吐きたくなる思いでした。
そう。この所サララはずっとこの調子なのです。
お客様が居るときはいつも通りの可愛らしい笑顔なのですが、こうして無人になると一人ひっそり溜息を吐くのです。
「元気ないけど、どうしたのさ? サララ」
「ううん。なんでもないのよ」
サララは首を振りますが、その表情にはどこか憂いが漂っています。
悩みがあるのなら自分に言ってくれればいいのに――とチョコは思うのですが、それと同時に自分には言えない悩みなのかも、と
思うのでした。
というのも、どうやら彼女の悩みの種はあの爽やかな青年騎士、ライアットにあるようなのです。
ほんの数日前のことです。
この国の王女であるオーロラ姫が大事にしていた金色の小鳥がお城から逃げ出してしまいました。
鳥の言葉が分かるようになったり、盗賊ギルドの奴らをやっつけたり……
色々な事がありましたが、本物の小鳥を見つけたサララは直接オーロラ姫に届けに行きました。
――この後が問題なのです。
小鳥を見つけ出してくれたサララに、ライアットがお礼を言いにやってきました。
その時のライアットは少し元気がなかったので、彼が去ったあとチョコは言ってしまったのです。「本当はライアットが届けたかった」のではないかと。
ライアットの想い人がオーロラ姫だというのはもっぱらの噂ですし、チョコも軽い気持ちで言ったのです。
しかしその日からサララは元気がなくなっていったのです。
チョコは一体どうしたらサララを元気付けられるのか、まったく分かりませんでした。
結局この日はその後も客が来ず、やむなく店を閉めることにしました。
サララは相変わらず元気がなく、夕食のスキヤキも少ししか手をつけていませんでした。
いつもなら夕食の後、商品の在庫をチェックして仕入れに出たりするのですが、その気力すらないのか早々にベッドに潜り込んでしまいます。
「サララ……」
サララが悲しそうにしているから、チョコもなんだか悲しい気分になってきました。
しかし、いつまでもこんな状態では商売だって上手くいかないし、冒険のときが心配です。
散々頭を捻った後、チョコは机からカードを引っ張り出しました。こういう時は占いでもして気分転換するのが一番だと思ったのです。
「ねえ占いしようよ、サララ!」
「この前したばかりじゃない」
「いいじゃない、気分転換にさ」
チョコがそう言うと渋々といった様子でシーツの中から腕だけが伸びてきました。
サララが選んだカード。
それは――――『媚薬』でした。
「はあ……――と、いけない」
本日何回目か分からない溜息を吐きかけて、サララは慌てて口を塞ぎました。
近頃自分が落ち込んでいるのをチョコが気にかけている事を、サララ自身気付いていたのです。
だから溜息を吐かないよう気を付けていたのですが……
「はあ……」
どうしても溜息が零れてしまいます。
今サララはスカピンに頼まれた『ほれ薬』を作っている最中でした。
とは言っても、後はウィルが作り上げるのを待つばかりで、チョコがその様子を見に行っていてサララは一人店で待っているのでした。
空は夕焼けの茜から、紺色の夜空に変わりつつあります。
もし今日中に薬が完成しても届けに行くのは明日になるでしょう。
サララはぼんやりとほれ薬を求めていた二人のことを考えました。
少し前のサララなら「そんなものを使うなんてずるい」と考えたかもしれませんが、今は痛いほど二人の気持ちが分かりました。
ライアットとオーロラ姫が並ぶと、まるでおとぎ話のワンシーンのように絵になって、サララはとても惨めなキモチになるのです。
(わたしなんて子供っぽいし、前髪で顔隠れてるし、全然ライアットさんと似合わないよ)
だけど、
(だけどもし、わたしがライアットさんにほれ薬を使ったら、ライアットさんは私を見てくれるのかな?)
オーロラ姫でなく、自分だけを……
そう考えたとき、サララの身体は店を飛び出し秘密の店へと向かっていました。
サララが秘密の店へつく頃、空はすっかりと濃紺の夜空へと変わっていました。
ほれ薬を買い求めたサララに、怪しい店主はいつもより一層怪しい笑みを浮かべたので、サララは逃げるように店を出ました。
(ああ、遂に買ってしまった)
ほれ薬を買うというそれだけの行為でしたが、サララはよほど緊張していたのでしょう。
店から離れ、辿りついた広場で崩れ落ちるようにへたりこんでしまいました。薬を握りしめる手が汗ばみ、震えます。
(わたしは、これで、これで――)
――これでライアットさんに振り向いてもらえるんだ!
それは天にも昇るほど、嬉しいことのはずでした。
だと言うのにサララの胸に湧き上がったのは、一人溜息を吐いていた時とは比べ物にならない切なさでした。
喉に何かがせり上がり、視界がぐにゃりと歪みます。頬を伝う熱いものを感じて、サララは自分が泣いているのだと気付きました。
「ライアットさん……」
どうしようもない切なさに耐え切れず、サララが彼の名前をつぶやいたその時でした。
「サララさん!!」
こんなことがあるのでしょうか? 今一番会いたいと思っていた人が、サララの元へ駆けてきたのです。
サララは自分の肩が掴まれるのを呆然と見つめていました。
「大丈夫ですか!? どこか具合が悪いんですか?」
「えっ?」
「それとも誰かに何かされたんですか?」
「ち、違います違います!」
どうやらライアットはサララが泣いていたので何かあったのではと勘違いしているようです。
サララは慌てて暴走しているライアットに制止をかけました。
「ちょっと嫌なことがあっただけですから、大丈夫です」
「コホン。そうでしたか。取り乱してすいません」
照れたように咳払いライアットはサララの肩から手をどけようとしました。
しかしサララは肩に置かれた温もりを離したくなくて、無意識に彼の片方の手を掴んでいました。
「!? サララさん?」
「……あ」
自分のとった行動が信じられず、サララは目を瞬かせました。
ライアットに触れている手から身体全体がかぁっと熱くなっていきます。
「ごめんなさい、つい」
謝りながらサララは手を離すことが出来ませんでした。今この手を離したら二度とライアットに触れられない気がしたのです。
困ったように自分を見つめている視線をまっすぐ見つめ返して、サララは思い切って尋ねました。
「ライアットさんは、オーロラ姫のことが好きなんですか?」
「…………」
握っているライアットの手がぴくりと震えました。彼は何も答えませんでしたが、サララはそれを肯定と受け止めました。
サララは握りしめていた薬のビンをライアットの眼前に突きつけ、
「じゃあ、これあげますね」
と無理やり作った笑顔で言いました。
何故こんなことをしたのか、サララ自身分かりませんでした。色んな感情が胸でぐちゃぐちゃに渦巻いて、ひどく痛みます。
「それは?」
「ほれ薬です。これでオーロラ姫もイチコロですよ♪」
ふふっ。といつものように笑おうとして、出来ませんでした。止まっていたはずの涙が再び溢れ出してきたからです。
「サララさん……」
ライアットは困り顔のまま、暫しほれ薬を見つめていましたが、意を決したようにビンを押し返しました。
「これは頂けません」
「どうして……ですか?」
「こんなものに頼らなくても、私は自分自身の力で振り向かせます」
力強く言い切るライアットに、サララは身体全体の力が抜けていきました。
『こんなもの』を跳ね返すほど、彼の思いはまっすぐで強いものなのだと感じたからです。
サララは悲しくて悔しくて……握りしめていた『ほれ薬』を口に流し込みました。
半ば自棄になっての行動でした。ライアットが止めようとサララの腕を掴みましたが、もう遅すぎました。
「何を考えてるんですか!? そんなものを飲んで、一体どうするつもりなんです!!」
「そんなに慌てなくても、大丈夫ですってば」
慌てたライアットがサララの肩を揺さ振りますが、彼女は落ち着き払っています。
泣き笑いのような表情を浮かべて、長い前髪の下からまっすぐとライアットの瞳を射抜きました。
「私は元からライアットさんのことが好きですから、何も変わりませんよ」
ライアットはぴたりと動きを止めて、面白いくらいに目を丸くしました。
「えっ……?」
「……大好き……です」
サララはライアットの胸に倒れこみました。
本当はそんなことをするつもりはなかったのですが、急激な眠気に襲われて、立っていることも出来なくなったのです。
耳元で早鐘を打っているライアットの鼓動を聞きながら、サララの意識は闇に落ちていきました。
「――熱い」
目覚めたサララの第一声はそれでした。
自分が今横たわっているこの見知らぬ部屋はどこなのか、なぜこんな所にいるのか、
そんな疑問よりも尋常でない身体の熱さに声を上げてしまったのでした。
その声が聞こえたのでしょう。ずっと傍で控えていたライアットがサララの顔を覗き込みました。
「サララさん大丈夫ですか?」
「多分、大丈夫です」
そう答えて起き上がろうとしたのですが、どうも身体に力が入りません。
(どうしたんだろ? 風邪をひいた覚えはないけど……熱かな?)
「無理しないでください。そのままで構いませんから」
見透かした様にライアットにそう言われ、サララは仕方なくその言葉に甘えることにしました。
「ここは私の部屋です。広場で倒れたことは、覚えてますか?」
「はい……一応」
おぼろげながら自棄になってほれ薬を飲んだことは覚えていました。その後告白めいたことを口走ったことも。
恥ずかしくなったサララは思わずライアットから顔を背けました。
「迷惑かけてごめんなさい。わたし、すぐに帰りますから」
再び起き上がろうとするのですが、やっぱり思うようにいきません。
一体どうしてだろうとサララが首を捻っていると、ギシッとベッドが軋みました。
ライアットがサララのすぐ傍に腰掛けたのです。
「起き上がれませんか?」
溜息交じりにライアットが尋ねてきました。こくりとサララが頷くと、ますます溜息を深くして、
「こういうことは順序を守ってしたかったんですけど……」
と、サララの頭の両脇に手を置きました。
見下ろされる形になったサララはライアットがとても真剣な顔をしているのに気が付きました。
どうしてこんなことをするのかサララはよく分かりませんでしたが、何故か鼓動が激しくなってきました。
「サララさん……その、まことに申し上げにくいことなんですが」
「はい?」
「あなたの飲んだ薬はですね、誰かを好きになる効果だけでなくて……」
サララはじわりと背中に嫌な汗をかきました。なんだか非常に悪い予感がします。
ライアットはコホンと咳払いすると、本当に言いにくそうに続けました。
「せ……性欲を呼び起こすもののようです」
「………………………」
サララはぽかんとライアットを見上げ事しか出来ませんでした。
あまりにも自分と無縁な言葉だったので、上手く情報処理が出来なかったのでした。
(せーよく!? 制欲??)
思い切りクエスチョンマークを浮かべているサララにライアットは囁きます。
「今言っても、信じてもらえないかもしれませんが――」
ライアットの顔が近付いて、サララにそっと口付けます。
混乱しているサララを安心させるかのように、彼は優しく微笑みました。
「私もあなたのことが好きです」
いつもより少し低めの声で囁かれて、サララは背筋がぞくりとしました。
いつの間にかシーツが取り払われていましたが、寒気を感じるどころか一層サララの身体は熱くなりました。
「こんな事がきっかけになってしまいましたけど……あなたが欲しいです」
再びライアットはサララの唇を塞ぎました。今度は深く、サララの息を奪うように。
(これって……夢だよね?)
苦しくも心地よい口付けを受けながら、サララはライアットの背に腕を回しました。
ライアットの唇は熱く、柔らかく、サララの思考を奪います。
僅かに開いた唇の隙間から舌を割り入れられ、サララは成す術もなく舌を絡めとられてしまいました。
サララの舌を先端から根元まで余すことなくなぞって、息苦しくなったら一度離れ、また侵入しては幾度もそれを繰り返します。
「んんっ……はぁ……」
(頭がくらくらする……熱いよぉ……)
酸欠のせいでしょうか、それとも薬のせいでしょうか。サララは頭がぼんやりしていくのを感じました。
ようやく満足なほど味わったのでしょうか、ライアットはサララの唇を解放しました。
「…はあ…ふう……」
やっと吸うことのできた空気を肺に送り込むと、その反動でサララの口端から収まりきらなかった唾液が零れ落ちました。
ライアットはそれを舌ですくい、そのまま首筋へと滑らせていきます。
「ふぁっ! …ゃだっ…」
首筋を舌が伝い降りていく感覚と、ワンピースの裾からの手の侵入にサララの意識は一気に引き戻されました。
ライアットの左手はサララの輪郭をなぞるように身体中を撫で回し、右手は淡いふくらみを揉みしだきます。
時折手の平がふくらみの頂にかすり、サララは声を上げてしまいます。
お気に入りの緑のワンピースは既に肩からずり落ちて、サララの上半身を覆うものはもう殆どありませんでした。
「ああっ!」
不意に鎖骨に口付けていた唇がサララのもう片方のふくらみを包み込み、サララは身を捩りました。
「あん…あっ……だめだよぉ…」
ライアットは頂に実った桃色の果実を丹念に舐めて味わいました。
時々吸い付いたり、指先でつまんだりするとサララの身体は面白いように跳ね上がりました。
「かわいいです。サララさん……」
薬のせいで敏感になっているサララは、少し触れられただけで大きく反応してしまいます。
腹や背を撫でていた手を太ももに移動させて内側を撫でると、
「やぁっ――!」
喉を仰け反らせてかわいらしく鳴きました。
無防備になった喉元に優しく噛み付くと、びくんと大きく震えます。
ライアットがワンピースを一気に捲り上げると、一目で分かるくらいサララの下着の“その部分”は濡れていました。
「すごくびしょびしょですよサララさん。そんなに気持ちよかったですか?」
「ふぁ……言わない…で」
いやいやと首を振るサララがかわいくて、ライアットはもっと彼女をいじめたくなりました。
下着の上から小さな突起を見つけ出し、そこをきゅっとつまみます。
「ひゃあんっ!!」
サララは先程太ももを撫でたときより大きく身体を仰け反らせました。
浮き上がった腰を抱えて下着を引きずり下ろすと、桜貝のようなサララのそこは濡れててらてらと光っていました。
「み、見ちゃダメです……」
「どうしてですか? こんなにかわいいのに」
恥じるサララに構わず、ライアットはサララの中に指を差し入れます。
あまりの驚きに一瞬息が詰まり、サララの目から涙がこぼれました。
「くぅっ…うン…はぁ…」
サララは苦しそうでしたが、薬のせいか痛みは感じていないようでした。
それを確認するとライアットは何かを探るかのように指を微かに曲げて出し入れをはじめました。
「うぅ…あっ…ンンッ!?」
大きな電流がサララの脳天を突き抜け、背が弓なりに反りました。
ライアットの指先がその反応を確かめるようにまたそこを擦ると、身体を大きく震わせて甘い声を発します。
「ここですか?」
「やっ! ひぅっ・・・・・・ああぁっ!!」
ライアットがそこを重点的に責め、サララの幼い身体には強烈すぎる刺激が休む間もなく襲います。
サララは喘ぎながらライアットの首筋に腕を回してすがりつきました。
乱れきったサララの姿を見ていて、そろそろライアットも限界です。
サララの中から指を引き抜くと、ライアットも服を脱ぎました。顔を上げると、サララが恥ずかしそうにその光景から目を逸らしています。
ライアットはサララを肩でシーツに押しつけ、サララの膝をこじ開けました。
「ライアットさん」
いよいよその時が近付いているのだと知ったサララは、彼の名前を呼びました。不安で声が震えています。
「大丈夫ですよ」
ライアットは微笑んで、サララの髪を撫でながら震える足の間に身体を滑り込ませました。
既に熱く潤っているサララのそこにライアットは自らを宛がいます。
「サララさん、力を抜いてくださいね」
低い声で囁いて、ライアットは身体を進めました。
「……いっ!!」
やはり媚薬でも痛みは消せないようで、サララは苦痛の声を上げかけましたが、ぎゅっと唇を噛み締めて耐えました。
紅潮していた頬は青白く血の気を失くしていましたが、決して「痛い」とは言いませんでした。
サララの気遣いを感じて、ライアットはつながった後もしばらくの間動かずにそのままサララの 身体を抱きしめていました。
「サララさん辛かったら、言っていいんですよ?」
「…だ…大丈夫です……」
掠れた声で答えると、サララはライアットの首に回していた腕を背に回しました。
「確かに辛いですけど……なんだか……」
言いよどむ彼女の頬には徐々に赤みが戻ってきています。
薬の影響でしょうか、サララの身体には早くも痛みとは別の感覚が広がり始めていました。
「ライアットさんが……もっと欲しいです」
花弁のような小さな唇がライアットに近付いたかと思うと、彼の唇を塞ぎました。
熱に浮かされたようなサララの瞳が目の前で揺れています。
ライアットはサララの腰をしっかりと抱くと、ゆっくり動き始めました。
「ふ…ぁ…!」
ゆっくりと一番奥にライアットが押し付けられ、そこから蕩けるような熱が広がっていきました。
サララの細い足がライアットの腰に巻かれます。
ライアットは少し腰を退くと、小柄な柔らかい躯に乗りかかるようにしてできるだけ奥まで押し込みました。
「ン…は……」
サララは目を閉じ、短い吐息をつきながら頬をライアットの胸に押し当てて震えています。
ただ抉るだけでは耐えられなくなり、ライアットは腰を叩き付けはじめました。
その度にサララから声があがります。悲鳴ではなく、あどけない少女からは想像できないほど艶かしく甘い声。
「あっ…あっ…ふぁああっ!?」
いきなりライアットの片手がサララの下腹部に差し込まれ、敏感な芽を摘み上げました。
一気にのぼりつめたサララはライアットをぎゅっと締め付け、高みへと追いやります。
「っ……サララさんっ」
ライアットは呻き、サララの腹の上に全てを解き放ちました。
春のような穏やかな日差しの下、今日も小さな魔女のお店には『OPEN』の札が下がっています。
通りを行き交う人々は、時々そのお店の前で足を止めては目玉商品を眺めたり、小さな魔女を見つめたり……そんなある日の午後のことでした。
「ふふふっ」
お客が途絶え、無人になった店内で、小さな魔女――サララは急に笑い出しました。
彼女のパートナーである猫のチョコは、「またか」とこちらは溜息を吐きたくなる思いでした。
そう。あのほれ薬の一件以来サララはずっとこの調子なのです。
「何がそんなに可笑しいのさ? サララ」
「ううん。可笑しいんじゃないのよ」
サララは首を振り、お客を待ちますが、その口元にはやはり笑みが浮かんでいます。
チョコはなんだか非常に面白くないキモチでした。
というのも、どうやら彼女の思い出し笑いの原因はあの爽やかな青年騎士、ライアットにあるようなのです。
(……まあ、サララが元気になって良かったけどね)
ふと窓の外を見ると、通りの向こうから彼が歩いてくるのが見えました。
そうしたらサララは、さっきまでの笑顔とは比べ物にならない位素敵な笑顔になるのでした。
おしまい