ボクはベルを鳴らしてドアを開けた。  
ここは大親友と言っても過言では無い程の魔女、サララさんのお店。この町で一番の店じゃないかなぁと思う。  
 
「こんにちはサララさん!魔王を倒すための何か良い武器は入りましたか?」  
「アスカさん、いらっしゃいませ。…武器?ちょっと待ってください」  
 
この店の品揃えは驚くほど豊富。武器や鎧に薬草だけでなく、甘いお菓子に香水から呪いのアイテムまで売っているのだ。  
呪いのアイテムに関しては、いつか取り揃えを止める様に言わなくちゃ…って思ってるけど。  
ともかく何でもある。だから、何か欲しい物がある時は必ずここに来ることにしてる。  
 
「こんなのはどうですか?『神の鉄槌』って言うのですけれど」  
「んー…」  
 
名前の響きは好きだけれど、こういう大振りの武器はボクの得意なタイプじゃないなぁ。  
 
「他に何か無いですか?」  
「…一つだけ。それも、アスカさんにぴったりなのが」  
「え?」  
 
そう言ったサララさんが一振りの剣を棚から取り出した。  
ボクは目を見開く。それはボクがずっと前から探して止まなかったモノ。  
 
「伝説の…剣!?何でまたこんなものが…えええええ!?」  
 
剣とサララさんとを見比べて、ボクは柄にもなく取り乱してしまった。それに比べ彼女はニコリと笑っているだけ。  
 
「ふふふ、極秘ルートで…です。どうしますか?これにしますか?」  
「はい!…あ」  
 
思わず返事をしたけれど、僕は慌てて尋ねた。  
 
「…おいくらですか?」  
 
伝説の部具なんだ。本来なら幾等積んだって買えない代物のはず。  
不安を胸におずおず見上げるけれど、サララさんはにっこり笑うだけ。  
 
「3500Gで。」  
 
サララさんは優しい。こんな値段で良いだなんて。だから大好きだ。  
躊躇う事もなく財布からなけなしのゴールドを出す。これは伝説の部具を買うための必要経費なのだから、ジュドからのお説教は無い筈だ。  
『ありがとうございましたー』というサララさんの声を背中に聞きながら、僕はやたら軽い足取りで飛び出した。  
 
外は既に夕暮れ時で、町が赤く染まっている。今日が終ろうとしているんだ。  
そんな事をぼんやり考えながら宿に向かっていたのだけれど、途中で足を止めた。  
 
あ。剣を手に入れた喜びで、呪いの道具なんて置かない方が良い、ってサララさんに言うのを忘れてた。  
 
いつもなら明日にしようって思うのだろうけれど、今日は何故だか違っていた。  
僕は来た道をUターンして、赤い屋根のお店を目指した。  
 
 
 
昼の目玉商品は聖水に白銀のつるぎ、それに聖なる衣にドラゴンアーマー。ついでに目印の大きな看板。  
でも今は変わっていた。聖水は魔物の血に。白銀のつるぎは吸血剣、聖なる衣は返り血のローブ。ドラゴンアーマーは魔界のよろいへ。  
これが彼女の店の夜の姿。本当の意味で魔女のお店へ変貌する。ボクはそれが許せなかった。  
 
今日こそ直談判するんだ、と足を踏み出した時だった。  
ボクは思わず隠れてしまった。目に飛び込んで来たその光景から。  
 
 
彼女の店から魔族が出てくる。片方だけの羽が夜に溶ける。  
それからサララさんも出てきた。商品を探しに行く時以外、カウンターから離れる事は滅多に無いのに。そんな彼女がお見送りまで?  
二人は微笑みを交してから、別段不思議な事は何もしないで別れた。  
だけどサララさんの表情は切なそうで、ボクの知らないそれこそ『女の子』みたいな顔をして魔族の背中をずっと見守り続けて……あああああ、こんな分析をしたくはないのに!  
 
離れた魔族はボクの方へ歩いてくる。  
ボクはそいつの前に飛び出した。少し驚いたふうだった彼の目に、ボクはどう映ったのだろう。少なくとも怒りと憤りだけは伝わっていると思う。  
 
「キサマは、確か」  
 
ぽつりと呟く魔族。  
こんな奴に名を呼ばれる筋合いは無い。ボクはたった今手に入れたばかりの剣をコイツに向けた。  
 
「我が名は勇者アスカ。魔王候補生アイオン、ボクと勝負しろ!」  
 
*  
 
「此処ならば邪魔する者も居ないだろう」  
 
奴とボクは広場に移動した。此処は今から戦場に変わる。  
夜の闇では魔王候補に分が有るだろうが、かと言って昼間に弱ったコイツを叩きのめすなんて卑怯なマネはしたくない。何より、例え不利だとしても勇者が負ける筈は無いし。  
 
「…よく勝負を受けたな」  
 
ボクは奴を見据えながら言う。  
正直、相手にされる事もなく横を通り過ぎて行くのでは、とも思ったのだ。だけど彼は勝負を受けた。  
 
「下らない質問だな。お前がオレを憎く思った様に、オレにとってもお前が邪魔だっただけだ」  
 
それは勇者と魔王としてなのだろうか?  
それとも、……  
 
「お前には渡さない!」  
 
ボクは剣を震った。奴はそれをひらりとかわした。剣が生んだ風だけがその場に吹く。  
そのまま振り下ろされる魔王候補の剣を受け流し、互いに距離をとる。  
交した剣はほんの1撃。しかしボクは瞬時に悟る。ボクらに実力差は殆んど生じていないことを。  
 
「…渡さない?何をだ?」  
「決まってるだろう。この平和な世界と、ボクの大切な友達をだ!」  
 
サララさんの店に呪いの道具が並ぶようになったのは、丁度コイツが現れた時期だ。  
つまりはこういう事だろう。魔王候補が現れてから、魔族や吸血鬼に至るまでが彼女の店を利用する様になった。  
当然彼女はニーズに応えて商品を取り揃える。奴らはますますサララさんの店を利用する。  
そうして客として親好を深めていくうちに、ボクの大親友は。サララさんはたぶらかされ、魔王候補を……  
 
「お前なんかに渡すものか…お前みたいな、魔族なんかに!」  
 
太刀が見切られ易くなるから、怒りを見せて戦ってはいけない。そうヤッコフに教わった事も忘れ、ボクはがむしゃらに剣を振る。  
当然奴はその全てを避ける。しかし、ボクもまた魔王候補の剣を全て避けていた。悔しいが、本当に互角なのだ。  
 
「友達…か」  
 
魔王候補に笑みが浮かんだ。ボクは奴を睨み付ける。  
 
「…何がおかしい?」  
「いや。お前がアイツに抱いているものは、本当に友情なのか?」  
 
 
「何が言いたい」  
 
ボクは剣を強く握り締めた。  
奴はただ笑うだけ。だけどサララさんとは違う、侮蔑を含んだ笑み。  
 
「お前は、サララを──」  
「気安く彼女の名を呼ぶな!」  
 
とっさのボクの素早い動きに奴は反応しきれなかった。構えた剣を弾き飛ばし、そのまま押し倒す。  
 
奴の表情は変わらなかった。ボクに剣を突き付けられたその瞬間も。  
 
「お前が抱いている感情は友情などでは無いさ」  
「黙れ」  
「お前はアイツを」  
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れええええ!!」  
 
ボクは剣を振り上げる。しかし、それが下ろされることは無かった。  
 
「ダークスピア」  
 
至近距離で突然打たれた闇の魔法。ボクは剣を落とし、逆に倒れてしまった。  
闇の魔法はボクの精神力を著しく削りとり、体の力を一気に抜きさってしまった。そして絶望にも似た虚脱感をボクの胸に植えつける。  
外傷こそ目立ったものは無いが、ボクはこの一撃で殆んどボロボロだった。  
 
「な…ッ」  
 
有り得ない。詠晶も無しにいきなり魔法を打つなんて。しかもこんな強力な……!  
腐っても、弱小でも、魔王は魔王なのか…?  
 
立ち上がったアイツは笑っていた。最初から最後までボクを見下して笑っていた。  
 
負けるなんて嫌だ、負けるものか、こんなところで負けたりなんて…!  
ボクは落とした剣にがくがく震える手を伸ばす。しかし、その手はアイツの足に強く踏みつけられた。  
 
「ぐううう…ッ」  
「愚かだな」  
 
奴は剣を蹴り飛ばすと、バサリとマントを脱ぎ捨てた。  
それからボクの腹目がけて強烈な蹴りを一撃。  
 
「がはっ」  
「…せっかくだ、教えてやろう」  
 
 
「お前がサララに何をしたいのか、をな」  
 
魔王候補は、本当に魔王の様な顔でボクを見下ろした。  
 
奴の手に握られていた剣がボクの服を裂き、役に立たないボロ布に姿を変えていく。  
 
「貴様、何を…ッ!」  
 
ボクは必死で逃げようと体をよじらせる。しかしそれが叶うことはなく、あっと言うまに下着だけの姿にされてしまった。元・衣服はもう引っ掛かっているだけ。  
魔族の前に素肌を晒してしまうだなんて……舌を噛み切って死んでしまおうか。  
唇を噛み締めるボクの足に魔王候補の手が触れた。  
 
「気安く触るな!離せ!」  
「威勢だけは良い様だな。負け犬程…と言う奴か」  
「黙れ!」  
 
ボクは必死に暴れ、幾度か蹴りを入れた。大したダメージにはなっていないようだったが。  
 
「第一、ボクを馬鹿にしているのか!?ボクがこんな事を、サララさんにだなんて」  
 
魔王候補は言った。『ボクがサララさんにしたい事を教える』と。  
こんな事、ボクはしたくなんて…  
 
サララさんを押し倒して?  
サララさんの服を剥いで?  
サララさんに、……  
 
ぞくり、と背中が震えた。  
何で?どうしてこんな事を考えただけでボクはドキドキしてるの?  
ボクとサララさんはお友達なのに。何より女の子同士なのに。こんなのおかしい、こんな淫らな想像。  
 
ボクは……  
 
「は、あ」  
 
魔王候補はサラシ越しにボクの胸に触れる。止めろ触るな離せ。ボクに触って良いのはお前なんかじゃない。  
 
「一応は女か」  
「煩い黙れ、離せ!」  
 
ギリリと噛んだ唇から血が流れた。奴はそれを指ですくいとり、僕になすりつける。  
 
「離すものか。お前の様な奴を今離そうもならオレの命が危ない」  
 
サラシが破かれて胸が外気に触れる。羞恥と恐怖でボクの体が固まった。  
そのままアイツの手は胸に伸びる。優しさの欠片も無く、力を込めてそれをわしづかみにした。  
 
「くっ……」  
 
痛みに顔をしかめる。幸いにも体が火照ったりなんて事は無い。  
手袋の感触が胸を霞めた。すべすべしたきめ細やかな布に包まれた指は、頂点から下りていく様に膨らみをなぞる。  
 
嫌だ、嫌だ、嫌だ!  
ああくそ、何で体がうまく動かないんだ。彼処で魔法を避けてさえいれば……  
 
「ひうっ」  
 
頼り無い声が喉を通った。こんな情けない声は勇者の出す物じゃ無い。  
 
 
でも  
 
サララさんなら、きっとすごく…可愛いと思う。  
 
 
胸がきゅんとなった。  
 
「幼い体の割に感度は十分らしいな。…この膨らみさえ無ければ、少年の様にも見えるのに」  
「離…せぇ、もう喋るな!」  
「全く。もう少し可愛らしい声で鳴けないのか」  
「うるさ…、やァ」  
 
くりくりと先端を弄ばれ、ますます声が高くなっていく。嗚呼、本当に男だったらどれ程良かった事か。  
望んでもいない愛撫に屈しそうな自分が腹立たしい。  
 
これも闇の魔法の効力なんだろうか。抵抗しようと勇気を震い立たせる事が出来ない。  
どんなに心が拒んでも、体が動かない。  
 
「嫌だっ、離せ…離せ!ひゃっ、く…っうううう」  
「他人にこうされるのは初めてか?勇者が魔族に初めてを……ハハハ、滑稽な物だな」  
「いっ…いううう!ふぁ、あ」  
 
ぷるぷると震えながら、ボクは自分の手で目を隠した。流れる涙は見られたく無いし、魔王候補を眺める気も毛頭無かったから。  
しかしこの判断はマズかった。視覚を失った事により、本来最も目を背けたかった性感が倍増されてしまったのだ。  
 
「はぅ、う…あああああ…っ」  
 
きゅうきゅうと揉みしだかれる痛気持ち良い感覚と、こねくり回される乳首の痺れる様な感覚が背筋を走る。びくびくと身体中が震えて、ボクからは情けない声が次々に溢れる。  
すっかり抜けきってしまった体の力では今更抵抗も出来ない。かと言って魔法を使うにしてもこの状況で詠晶するのは無理だ。  
 
「もう…離してくれ……嫌だっ、嫌…」  
 
しゃくり上げて泣き出したボクを、魔王候補は黙って見ていた。  
 
 
頭がおかしくなりそうだ。割れてしまいそう。  
 
この行為を汚らわしいと、嫌だと拒みたい気持ち。  
キモチイイ、と…体がうずくこの感覚に呑まれたいという気持ち。  
そしてもう1つ…何故かサララさんを思う気持ち。  
それらが深く深く混ざりあって、「ボク」を壊そうとする。壊れるのが嫌なボクは、泣きながら全てを拒絶した。  
 
「…オレがこんなことをする理由が解るか?」  
 
奴はただ笑っていた。  
そして、ボクの胸に爪を立てた。布越しなのに、物凄い痛みが襲う。  
 
「お前が邪魔だからだ。かと言って殺してしまえばサララは泣くだろう。それは望ましくない」  
「ア、あ」  
「…こうすれば壊れるだろう?女は脆い物だからな」  
 
ビリ。  
そんな音が聞こえたかと思ったら、ひんやりした空気が熱く火照った下腹部に伝わる。  
ボクが本当に産まれたままの姿にされてしまった証拠だ。  
 
「や…嫌だ……これ以上、は」  
 
お願いだから見ないで。女であることの証拠として、ぐしょぐしょに濡れそぼってしまった其処を。  
必死に足に力を込めて閉ざしたけれど、奴はボクの両足に手を置いて。そのまま左右に大きく開いてしまった。  
 
「嫌っ、嫌、嫌…!」  
「お前の都合など知らん」  
 
壊れた玩具の様に嫌とだけ繰り返す。  
無表情にボクを見据える彼の顔は、魔王そのものだ。背筋が凍りついた。  
 
「お前にはこれで十分だろう」  
 
入り口に固い物が押し当てられる。それは──…奴の、剣の柄だった。  
そんな、まさか慣らしもせずに突き込むなんて!しかも、おまけにそんな物を。  
絶対痛い。痛いなんてもんじゃないだろう。  
 
ああ、まさかこんな場所で初めてを散らす羽目になるとは。しかも相手は憎き魔王(候補)の剣。  
 
「くっ…ひううう…」  
 
泣きじゃくりながら、全てに絶望したボク。  
魂まで汚される前に命を断とうと、舌に歯を立てたその時だった。  
 
「あらあら魔王候補サマ。少しおいたが過ぎるんじゃありませんの?」  
 
若い女の声が聞こえた。ゆっくりと奴が振り返る。ボクも肩越しにその人の姿を伺った。  
 
ピンクに近い赤い髪と、露出気味の服に身を包んだ女性。  
ボクもよく知っている。彼女もまた、サララさんの店の常連だから。  
 
「ルビィ…さん……」  
 
ルビィさんはやんわり微笑むと、ボクらの方に足を進める。  
 
「そんなに御相手が欲しいのなら、私がしてあげてもよろしくてよ?…無事で済むかは保証致しませんけど」  
 
彼女は鉄の扇を構える。途端、ボクの前に居た魔王候補は脱ぎ捨てていたマントを再び纏う。  
そして、ボクからも彼女からも一瞬で離れ。  
 
「…気が削がれた。」  
 
それだけ言い残すと、まるで闇に溶けるように……消えてしまった。  
 
 
「アスカちゃん、大丈夫!?」  
 
ルビィさんが蒼白な顔で駆け寄って来る。抱き起こされ、ぺちぺちと頬を叩かれた。  
 
「剣、を」  
「剣?彼処に転がっている奴かしら?」  
 
ボクはコクリと頷いた。ルビィさんは心配そうに早口で尋ねてくる。  
 
「あれ、は…ボクの、たいせ…つ、な……」  
「アスカちゃん?アスカちゃん!」  
 
緊張の糸が途切れたボク。意識もまた、そこで途絶えた。  
 

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