初めての二人(前編)「真の最終回だっしゅ」 その1+  
 
「本当にいいんだな?」  
竜牙は改めて、問いただした。  
「何よ今更・・・私のこと、素っ裸にしておいて。」  
(この状況にいたって何を言って居るんだろう?)そう思いながら桃花は、周りからは薄衣一枚で  
隔てられているベッドの上で、毒づいてしまった。  
「鈍いなぁ、お前・・・こんな時に限って素直になれないんだから。」  
そんな彼女を横に、鼻の先を軽く押しながら竜牙はそう言って、肝心なときに本当の思いを伝え  
られない桃花を皮肉った。  
「それに・・・」  
「それに?」  
何故か急に真剣な表情になって、竜牙は話を続けようとした。せっかく雰囲気が出てきたのにと  
興をそがれたと思っている桃花の方はきょとんとしている。  
「本当に俺なんかで・・・・後悔しないんだな?俺はそういいたかったんだよ。」  
これから始めること、すなわち、桃花を抱くという行為に対して未だ迷いがあると言うことを  
そういって彼は改めて表明した。しかし、竜牙が真剣になればなるほど桃花の方は何でそんな  
事をと言う気分になりしらけてくる。  
「別に、初めて・・・というわけじゃないんでしょ?竜牙は。」  
竜牙も道士の端くれである。そして彼は17歳。童貞というわけでも決してないし、房中術の心得  
もある。実際にしたこともあるし、この歳にしてみたら女を喜ばせる術を知識としてではなく技術と  
して知っている方でもある。しかし、相手が相手なのだ。彼にとって桃花の処女を奪うと言うことは  
そこいらの依頼人の女性を相手にするのとは重みという物が違った。  
だが、それでも彼は平静を装った。  
「ああ」  
「確かにその通りだ。でもな。俺は桃花だから言ったんだ。」  
竜牙は事実を認め、かつ、自分にも言い聞かせるようにそういった。桃花を傷つけるだけで終わり  
たくないという、のは彼の本当の気持ちでもあった。しかし、彼はその真意が通じているかどうかと言う  
のには疑問があった。些細なことからお互いを疑り合い、素直になれない関係というのはそういう  
やりとりの積み重ねから生まれてきたような物だ。今もまた・・・そうだ。だからこそ、竜牙は更に  
具体的に言った。  
「そんなこと言っても、桃花、お前は初めてなんだろ?」  
この言葉に対して、彼女の方は初めこくんと頷くだけだった。しかし、その後、少し間をおいて  
うっすらと目に涙を浮かべながら、本当の気持ちを漏らし始めた。  
「初めからそういってほしかった・・・。竜牙のバカァ・・・。」  
「痛くは・・・しないぜ。」  
そういいながら竜牙は桃花の思ったよりも丸みを帯びた裸身を愛撫し始めた。  
「あんっ・・・えっちぃっ・・・」  
相変わらず小さい胸の方は見なかったことにしつつ、竜牙は手と目線の方を、桃花の鍛えられた  
下半身の方へ向ける。  
「竜牙、ちょっと・・・私が胸小さいの気にしているからって、そんなところ・・・」  
桃花が、恥ずかしそうに竜牙に目を背ける中、竜牙の関心は彼女のお尻と股間の方へと  
移っていく。  
「後ろ向いてよ。桃花」  
「ちょっと・・・竜牙、そんなところ、見ないでぇ・・・。」  
竜牙が桃花の体を裏返すと、桃花の羞恥心は、最高潮に達する。そして裏返した桃花の腰を腕で  
引き上げると、その筋肉がついて立体感のあるお尻を突き出して四つんばいになった格好となり、  
そこに桃花の「実」が露わとなった。  
「やだ・・・竜牙っ・・・」  
竜牙が桃花の種へと続く裂け目へむしゃぶりつき始めると、桃花は更に顔を紅潮させて淫らに  
体を捩らせ始めた。  
「もう・・・我慢できない・・・。」  
「俺だって、桃花のそんな姿見たら、我慢できないよ。」  
「いくぜ・・・桃花」  
「いいよ・・・竜牙なら」  
桃花は、まるで生まれて初めて竜牙にときめいたかのような顔をしながら、仰向けになって  
ゆっくりと股を開き、足を絡めて彼を迎え入れようとする。彼女は自分の手ではなく、本当に  
好きな男性の手によって自分の体が愛撫された性的な刺激は自分にとって最高の物であり、  
かつ全身を使って竜牙を愛し、幸せな初体験を迎えられる物と確信していた。  
 
竜牙の方は顔にこそ出さない物の、まるで女性とするのが初めてであるかのように緊張  
していた。前述の通り、彼の価値序列に於いて、桃花と交わうと言うことはかなりの上位に  
位置する行為であり、周囲、そして、彼女自身の事を考えなければ成らぬ重大事だと  
思っている。ましてや、状況が状況だ。冬夜達が主催した模擬結婚式(原作8巻参照)の  
あと、桃花の方から誘ってきたとはいえ、軽々しくこんな事をしていい物だろうかと言う  
思いが先行して未だに迷っている。  
 
「きて・・・」  
桃花はゆっくりと竜牙の体を抱きしめ、自分の上下を彼のそれぞれに対応する部分へと  
近づけさせた。  
「あぁ。本当に好きだよ、桃花・・・。」  
竜牙はそう言うと、彼のために予約された指定席へ腰を下ろした。そして、竜牙は  
緊張と興奮でもう我慢の出来ない自分の分身を狭い桃花の中へと、深くねじ込んだ。  
ミリ!、ミリミリミリッ!びじっ!  
出血と快感が入り交じった甘美な激痛が、桃花の体を走る。彼女はそれをうっすらと  
涙を浮かべながら、グッとこらえる。  
「痛くないか?」  
「いいの。竜牙だから。」  
バージンを捧げられた方の、最大級の献辞に対する桃花の答えを竜牙は聞くと、  
彼は上と下で、深く接吻する・・・。  
が、その時、奇跡、もとい喜劇は起こった。  
「桃花様・・・?」  
二人がゆっくりと動いてお互いの腰を堪能していると、滅多に聞かない物の聞き覚えのある  
声が聞こえてくる。その声に対しては、呼ばれた側ーすなわちその主ーの方は軽い喘ぎ声  
程度しか返してこない。そこで彼は一拍おいてから、目の前に映っている物を直截に、彼の  
言葉で要約した。  
「まさかとは思いますが、交尾して為さるのですね?」  
交尾・・・そのあまりにも身も蓋もない言葉を聞いて驚いた桃花はその声がした方向を向き、  
声の主の名を叫んだ。  
「紫王・・・?」  
「紫、紫王・・・何でお前がそこに居るんだよ。(げっ、もしかしていつもの癖でやっちまったかも)」  
紫王・・・それは桃花にとりついた聖龍の名前である。その龍が竜牙のキスで封印を解かれ  
本来二人だけの世界であったはずの帳の中へ顕れたのだ。そして、呼ばれざる乱入者は  
竜牙の方を軽蔑のまなざしで見ながらこう続けた。  
「桃花様を傷物にしたのは、汝か?竜牙」  
紫王も、竜牙が桃花の思い人である程度のことは知っている。しかし彼にしてみれば  
意味もないのに呼び出され、なおかつ、結婚すらしていないはずの主を傷物にする瞬間を見せ  
つけられるという事自体が許せなかった。  
「桃花様、我の不徳ををお許しください。(おいたわしや・・・)」  
「そんな・・・気にしなくてもいいのに。」  
「悪いな。紫王。本当は、桃花から誘ってきたんだけどな。」  
紫王が桃花に対して謝ろうとすると、桃花は彼をなだめようとし、竜牙は以前の質問に対して  
合意の上であることを盾に混ぜっ返して見せた。  
「だからといって、軽はずみなことをしていると気づいたならお前が止めるくらいの・・・」  
「おいおい、お前の説教は聞きたくないぜ。前もそうだったけど、もしかして俺に嫉妬している  
のか?それにお前には・・・」  
「黄珠が居る・・・だろ?それとこれとは別問題であろう!桃花様を守護するという立場にありながら  
それを損ねようとするとは何事かと聞いて居るんだ。」  
竜牙と紫王、二人のやりとりは、お互いの前提が微妙にかみ合わないすれ違いの中に  
嫌みをブレンドしながら、加速していく。  
「すぐに封印してやってもいいんだけどなぁ、もう一度だけきっつ〜いお灸を据えてやろうかと  
思うぜ。お前が桃花に手を出せないようにね。」  
「そんなことをしたら、女陰に隠れるぞ。」  
「二度と桃花に手を出させないために・・・か。でも、これは事故だ。」  
「何を言う!?桃花様と交わっておきながら、何故事故だと言い切れる?」  
「なぜって?お前さんを呼ぶつもりは全然無かったからさ。本当は軽くキスしていたら  
いつもの癖がでちまったということかな?」  
「よくもまた見え透いた言い逃れを!」  
「じゃぁ、何でそんな事言うのかな?ひょっとして、お前、桃花のことを・・・。だとしたら  
黄珠を・・・」  
「我と桃花様は主従の関係。それ以上でもそれ以下でもそれ以外でもない!だいいち  
彼女を呼んだところで無関係であろう!」  
「じゃぁ、ばれたくないのか?もしかして図星だろ?」  
やりとりはだんだんと二人の足下のすくい合いとなっていく。そうなっていくと次第に  
このやりとりにうんざりしていた。桃花が漸く口を開く。  
「紫王・・・竜牙・・・あんたたちねぇ・・・?」  
次第に低レベルとなっていく口げんかに対して、桃花は内なる怒りの炎を宿していた。  
「ちょっといい加減にしなさいよ!せっかくいい気分の所に二人して水を差して!!」  
「も、桃花様、ご、ご乱心だけは!」  
「用もないならとっとと封印してよ竜牙!」  
「も、桃花、封印するから、やめろ!ぶたないでくれ!!」  
桃花はそこら辺にあった枕を投げたり、二人を蹴飛ばしたりして俄に暴れ出した。  
・・・その時だった。  
「急々如律令!」  
その呪文にはっと我に返る三人。神妙な面持ちになって扉をみると入ってきたのは  
煌家の長と春蘭だった。紫王は直ちに封印され、桃花と竜牙は長と、桃花の父の  
説教を受け、桃花の初体験は、間抜けな未遂という結果に終わってしまった。  
ー後編「我愛你」へ続くー  
 

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