カッと照りつけてくる陽射し、生ぬるい風すら吹かない荒野  
立っているだけでも汗ばんでくるような厳しい環境でも、2人は頑張って手を繋ぎ続けていた  
「……」  
「……」  
繋いだ手が暑い、というか蒸れる  
じっとりと互いの掌にそう感じた  
「なぁ」  
「なんでしょう」  
「……どうしよう」  
「どうもこうも、手ははずせませんし」  
ぐったりとした声でエルーとキリは応答しあう  
正直なところ、手を離したい  
駄目なことはわかっているけれども、この間にも手のなかの不快感が増してくる  
「んー、じゃあ別のところに触れるとか」  
「いいですけど、どこに?」  
この気温に人の体温だ、どこに触れても暑苦しくなってくるに違いない  
「少しでも冷えてそうなところ……」  
じろじろとキリがエルーを見ると、彼女が少し引く  
そして、彼は目をつけたのか素早く手を離した  
ほんのわずか、発作が起きる前にキリはエルーをつかんだ  
「ひゃぅッ」  
耳たぶ  
彼がつまんだところは、エルーの耳たぶだった  
確かにフードを被り影になっていることもあるし、元より体温が低めなところだ  
「ちょっと、キリさん」  
「あれ、ダメ?」  
彼がつまむ指にふにっと軽く、撫でるくらいの力が入った  
「あっ」  
エルーが肩を狭めつつ、声をあげた  
そうやって首をすくめて肩を上げることで、思わず身構えているような姿勢をとる  
「……」  
キリがふににっと強弱をつけてつまんでみる  
「ひッ、ぁあ」  
それに対し、過敏なまでにエルーが反応を見せた  
キリはぽかんとしている  
「や、ヤメ」  
あうあうと彼女がお願いし、空いている手で彼の手を振り払おうとする  
彼はさっとその手を避け、腕を伸ばし彼女と距離を取る  
それでも彼女は必死に、おかえしと言わんばかりに彼の耳たぶをつかもうとしているようだ  
狙いを定めようにも彼に耳たぶをいじられうまくいかず、またリーチと背の差でわずかに届かない  
「……」  
キリは無言でエルーの耳たぶを触り続けた  
もう最初のようなひんやりはない  
彼の指の体温また違うものも伝わったのか、彼女は真っ赤で暑そうだ  
抵抗も次第になくなり、彼のいじめに彼女は身体をのけぞるようにしてこらえている  
のけぞってはいても、耳たぶをつかまれていてはそう強く逃げられない  
彼女がちらりと薄っすらと涙目でキリを見てきた  
「っ、もぅ……キリさ」  
荒い息遣いと一緒に漏れるような声が出てきたところで、彼の何かがキレた  
 
ささっと腕を曲げて彼女に近づき、のけぞっている身体にのしかかるようにして……その耳に息を吹きかけた  
「ひゃあぅうァ……っ!」  
彼女にゾクゾクゾクゾクっと悪寒がはしる  
それで腰が砕けてしまい、エルーはすがるようにキリの腕をぺたぺたと掴みつつその場に座り込んでしまった  
キリはそれを見て、ようやく正気に返ったのか「やっちゃった」と言わんばかりに左手で口の辺りを隠しつつそっぽを向く  
「……」  
「……ぅぅ」  
エルーが恨めしそうにうめくと、キリはぽつりとつぶやいた  
「す、涼しくなった?」  
「……キリさんのバカ」  
つかんでいた彼の腕を思い切り引き寄せるように、支えにして彼女が立ち上がる  
それからお互いが無言のまま、耳たぶにあった彼の手はまた彼女の手と繋ぎあって歩き出した  
彼の視線は上に、彼女の視線は下に  
2人の顔はほんのり赤いまま、この後その日はずっと目を合わせられなかった  
 
「……暑いな」  
「やってらんねーくらいあっちーな、今日は」  
後ろをついて歩いているファランとスイの呟きは2人には届かなかった  
 
 

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