旅の夜は更け、キリとエルーはつかのまの休息を得るべく宿に落ち着いた。  
手を繋いだままベッドに腰かけると、エルーは大きなため息をついて後ろに倒れ込んだ。  
「あー、あんた、大丈夫か? だいぶ疲れてるみたいだけど。」  
キリが少し心配そうに声をかける。  
「いやあ、さすがに疲れました・・・しばらく歩きづめでしたからね。でもたいした事ないですよ。キリさんのフレアもありますし。」  
事実、キリの特殊能力フレアによって旅の疲れは大きく軽減されていた。  
とはいえ、常にガゼルの暗殺者の襲撃に備え、そして世界の希望であるキリを死なせてはならないという  
重圧の伴う旅はエルーの心身を消耗させるものだった。  
「んー、じゃあさ、寝るにはまだ早いし、オレがちょっと気持ちいいことしてやろうか?」  
「え、何ですか? マッサージとかですか?」  
「うーん、まあそんなようなものだけど。なんて言うんだろ。愛撫?」  
何をするのかよくわからないながら、強張った体を伸ばしていたエルーは、キリの申し出にたまらなく魅力を感じた。  
いつも迷惑をかけてばかりいるキリのさらなる好意に対して遠慮する部分はあったが、それにしてもエルーはへとへとに疲れていたのだ。  
 
「えへへ、いいのかなあ・・・じゃあちょっとお願いしてもいいですか?」  
「ああ、オレは町でも上手いって評判だったんだぜ。じゃあちょっとこうして・・・」  
言うが早いがキリはエルーの上半身を起こすと後ろから覆いかぶさり、うなじにくちづけた。  
「ひゃっ!? 何するん・・・」  
エルーが驚く間にも、キリのつないでいない方の手は驚くべき繊細さでエルーの胸にあてがわれ、  
キリの濡れた舌が首筋を舐めあげると、エルーの身体の中心に電気のような衝撃が走った。  
「あっ・・・! えっ・・・あの・・・」  
「うん、大丈夫だから力抜いて。」  
エルーがわけもわからず混乱しているうちに、キリの手はエルーの身体をまさぐり、舌は執拗に首筋を肩から耳に向かって這っている。  
エルーは全く予期していなかった快感にぶるぶると震えた。  
「あのっ・・・キリさん・・・・これっ・・・て・・・・ふあっ!!」  
舌が耳の穴に差し込まれ、エルーは思わず声を上げた。  
ほんの一瞬のうちに、エルーの身体からは力が抜け、キリの動きにまったく抗えなくなっていた。  
自分がキリに何をされているのかを徐々に把握したエルーは、あまりの恥ずかしさと驚きに顔を凍り付かせたが、  
もはや身体はまったく言う事を聞かないほどに熱くなっていた。  
 
「キ・・・キリさん・・・これ、マッサージじゃ・・・ない・・・」  
「そうそう、ちょっと違うよな。もっと気持ちいいだろ? んじゃ服脱がすよー」  
「・・・・えっ?」  
キリはエルーが抗う間もなく上衣を器用に脱がし、そのままあっという間にエルーを裸にしてしまった。  
「あっ・・・」  
気が付けば、エルーの誰にも見せたことのない裸身が、ベッドの上でキリの前に晒されていた。  
すらりと伸びた四肢はなめらかな白い肌に覆われ、桜色の乳首と淡い陰毛が色を添えている。  
「いっ・・・・いやっ・・・・!!!」  
我にかえったエルーは思わず叫び声をあげて身体を隠した。  
真っ赤になった顔が、これ以上ないほど熱く火照っている。  
「なっ・・・・なにするんですかキリさん!! こ、こんな・・・・・」  
「あーごめんごめん、いきなりだったから驚いたかな。でも裸になった方が気持ちいいから!」  
「だから何言って・・・・」  
エルーの言葉に構わず、キリはエルーのあらわになった白い肢体に両手を這わせ始めた。  
左手はくびれた腰から背中に這い上がり、右手は腕から柔らかい腹を伝って太腿に滑り降りる。  
キリの両手が強くも弱くもない繊細なタッチでエルーの肌を撫で回すと、緊張に強張った四肢から少しずつ力が抜けていった。  
 
「・・・いや、キリさん・・・なんか、変な感じ・・・・・・んっ・・・」  
エルーは固く目を閉じて身体を強張らせていたが、徐々に身体がムズムズして来るのを感じていた。  
「ほら、手をどけて。」  
「あっ・・・・」  
胸を覆っていたエルーの腕をどけると、キリの唇が小ぶりな乳首にかぶせられた。  
「ひあぁっ!?」  
キリが濡れた舌で乳首を巧妙に愛撫すると、すでに火が付き始めていたエルーの身体に電流のような快感が走った。  
「ふあっ・・・あっ・・・・こんな・・・・」  
キリは片方の乳首をひとしきり愛撫すると、唇を離し、すかさずもう片方の乳首に吸い付いた。  
「んああっ! ああ・・・」  
すでに固く立っていた乳首を優しく舌でころがしつつ、先程まで舐めていた濡れた乳首は指でぬるぬると撫でる。  
「はあっ・・・・あっ・・・・あっ・・・・・」  
乳首への巧妙な責めによって、エルーの身体からは完全に力が抜け、すでに抵抗の術を失くしていた。  
(あたし何されてるんだろ・・・? キリさんにはだかにされて・・・・・おっぱい舐められてる・・・?)  
ほんの少しだけ我に返ると、エルーの顔は再び恥ずかしさで熱くなった。  
「キ・・キリさん!・・・・あたし・・・恥ずかしい・・・です・・・うわっ!」  
「え? 何?」  
消え入りそうなエルーの声はキリの耳には入らず、そのままエルーはシーツの上に押し倒された。  
 
「じゃあ本格的に行くからなー」  
そう言ってキリはエルーの全身に手と舌を繰り出した。  
首筋から肩と鎖骨、背筋と腰、二の腕、腿、手足の指とその間、腹、両の乳房、耳の裏──  
汚れを知らぬエルーのあらゆる部分にキリの繊細な指と掌と唇と舌が這わされ、  
エルーの全身はしっとりと汗と唾液に濡れて紅潮し、切なげな喘ぎを漏らし続けた。  
「はぁ・・・・はぁ・・・・あんっ・・・・・はぁ・・・・・」  
キリのあまりにも巧みな愛撫によってエルーはいまや夢うつつとなり、ゆるやかで心地よい刺激に合わせて身体をくねらせている。  
「どうだ? エルー、気持ちいいだろ?」  
「えっ・・・・・」  
エルーが目を開けると、真上からキリがまっすぐ見下ろしている。  
「ほら、オレにはフレアの力があるからさ、どうもこういうことにも効くみたいなんだよねー。撫でるだけでもかなり気持ち良くない?」  
「あっ・・・あの・・・・」  
我を忘れて愛撫に身を任せていたエルーだったが、はっきり聞かれてしまうととたんに冷静になり、  
またもや恥ずかしさが猛然と蘇るのであった。  
「キリさん・・・・ばか・・・・」  
もはやどうしていいかわからなくなり、エルーは半泣きで目を逸らした。  
 
「あ、そうだここも気持ちいいんだぜ」  
そんなエルーに構わず、キリはエルーの両腕を頭上に上げさせると、あらわになった白い腋に舌を這わせた。  
「ひゃあっ!・・・・んぁっ・・・・あっ・・・」  
柔らかで敏感な皮膚を舐められ、くすぐったさと紙一重の快感がエルーを襲う。  
ひとしきり腋を責めると、キリは体を起こして言った。  
「さてと、じゃあそろそろ本番だからな。」  
「え・・・?」  
エルーがそれ以上聞くよりも早く、キリの指がエルーの、すでに愛液であふれる秘所に触れた。  
「ふわあああっ!!!!」  
エルーの身体が大きく跳ね上がる。  
「うんうん、いい感じに濡れてるな。気持ちいいだろ。」  
キリの中指が、サラサラした粘液を掬いながら、エルーの柔らかい切れ込みの表面を浅く撫でた。  
その部分に触れられるだけで、エルーの身体には電撃のような快感が走った。  
今までの長くゆるやかな愛撫で慣らされた身体は、激しい快感を受け入れる準備が充分に整っていた。  
 
「あっ!・・あぁ・・・・こんなの・・・・・・うああっ・・・!」  
「じゃあちょっと中に入れるぞ。」  
キリの指が濡れた襞の奥にぬるりと入り込む。エルーは身体の深い部分にキリの指を感じて、新たな快楽にのけぞった。  
「んああっ!・・・あっ・・・そんな・・・・・動かさな・・・あっ!」  
エルーの襞の中で中指の関節が曲げられる度に、圧倒的な快感が身体の中心に送り込まれて来る。  
中指がしばらくエルーの中を堪能すると、やがて親指が愛液をまぶされ、クリトリスにあてがわれた。  
「あはあっ!!・・・あっ・・・・ああっ!!」  
エルーは激しく喘ぎながらキリにしがみつき、大きすぎる快楽に耐えた。  
もはや何も考えられず、かつて知らなかった悦楽にエルーは翻弄されるがままだった。  
「いいぞエルー、すごく感じやすいんだな・・・じゃあこっちも行くぞ。」  
そう言うとキリは、指であふれる愛液を掬って下に伸ばし、エルーのすぼまった肛門に塗り付けた。  
「ひあっ!!・・なに・・・?・・・・んあっ・・・」  
キリは中指でエルーの後ろの穴をぬるぬると愛撫し、人差し指で襞の中を掻き回し、親指でクリトリスを刺激した。  
エルーにとってはもはや何をされているのかもわからず、  
ただ自らの粘液でぐちょぐちょになった秘所からすさまじい快感が全身にほとばしるのを感じるだけだった。  
「あっ・・・あっ・・・キリさ、ん・・・・なんか・・・・来るっ・・・」  
エルーは身体の中で巨大な熱さが破裂しつつあるのを感じておののいた。  
「いいぞ、ほら、行っちゃいな。」  
「あっ、あっ、あっ・・・いや、キリさん・・・う・・ああああああああああっっっっ!!!!!」  
ひときわ高い声をあげ、エルーはキリに強くしがみつきながらびくびく、びくびくと痙攣した。  
痙攣は断続的に続き、その度にエルーはいまだかつてない快感に貫かれ、やがて痙攣がおさまると、  
エルーの身体は力が抜けてぐったりとシーツに投げ出された。  
 
「はぁっ・・・・・はあっ・・・・・はあっ・・・・・」  
エルーは汗にまみれた身体をあられもない姿でベッドに投げ出し、荒い息をついている。  
目は初めての恍惚に呆けたようにうっとりと閉じられ、紅潮した身体はときおり絶頂の余韻にビクン、ビクンと震えている。  
キリはそんなエルーを満足そうに見下ろして言った。  
「なっ、気持ち良かっただろ?」  
エルーは息も絶え絶えに返事をした。  
「キリ、さん・・・・」  
「ん?」  
「はあっ・・・・これ・・・マッサージじゃ、ない・・・・・」  
 
<完>  
 
 
 

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