「だからもう呼ばないってば」
「あれ?もしかして照れてるんですか?」
「っ…そういうわけじゃないけど」
「じゃあこっちを向いてくださいよ」
先程から二人はずっとこの調子だ。
この甘い空気に耐えられなくなったのか、傷心中のスイは部屋から出ていった。
普段ならアタシを無視してイチャつくなよ、と茶化すのだが、今の彼女はそんな気分ではないらしい。
「あ、スイさん出ていっちゃいましたね」
「すぐ戻ってくるよ」
欠伸をしながら気怠げに言うキリ。
――一瞬の間。部屋の雰囲気が変わったような気がした。
「あの…キリさん?」
上目遣いで潤んだ目を彼に向けるエルー。
「何?」
「私たちシスターは武術だけでなく、一通り学問も習うことになっています。語学やら数学やら、人の身体についても。だから…」
そこまで言って口をつぐむエルー。
何かあるな、とキリは直感した。
「随分回りくどいけど、何が言いたいんだ?」
少し身構えながらキリが尋ねた。
「その…キリさんも男の子ですし、色々大変なのかなー、なんて…」
恥じらいながら、ぼそぼそとエルーは呟く。
キリはバツが悪そうに、そうでもないよ、とだけ言ったが、それが逆にまずかったらしい。妙な方向に彼女は突き進んでいく。
「それって私に魅力が無いってことですか?」
「そういうわけじゃないけどさ…」
スイといい、この人といい、女ってのはよく分からないな、と思いながら答える。
「じゃあ…!証明してください」
自分の上に乗ってくる少女を見て、もう戻れないことをキリは悟った。
それでも彼の頭には僅かばかり理性が残っていた。
それは今まで我慢していたことから派生する意地でもあったのだが。
「あのさ、こういうのってもっと落ち着いてするものだと思うんだよな」
本能や煩悩を抑えることで精一杯のキリは震える声で言った。
それでもネジが外れた彼女の手は止まらない。
事実、エルーは半裸であり、まともに直視など出来ない状態である。
腕を瞼に押しつけたまま、キリが呟く。
「オレはあんたが、エルーが好きだから、もっとちゃんとした形でしたいんだよ…」
はた、とエルーは手を止めた。
それと同時に、啜り泣きの声が聞こえ始めた。
「え?あ…ごめん、何か気に障る言ったかな?」
自分に非が見つからず、ひたすら狼狽えるキリ。
「違うんです…嬉しくて」
「え?」
「ちゃんと女の子として見ていてくれたんですね…私、何故か今までそれが不安で…」
涙を目に浮かべたまま微笑む彼女を見て、白い妖精と称されていた理由がキリにもよく分かった。
可愛い。妖精という表現が決して大袈裟ではない程に。
「私も、好きですよ?」
もう二人に言葉は必要無かった。
身体を離すわけにはいかなかったので、唇を重ねたまま、服を脱いでいく。
窮屈な体勢ではあったが、それすら今の二人には意識の内に留めることが出来なかった。
「え?あ…ごめん、何か気に障ること言ったかな?」
自分に非が見つからず、ひたすら狼狽えるキリ。
「違うんです…嬉しくて」
「え?」
「ちゃんと女の子として見ていてくれたんですね…私、何故か今までそれが不安で…」
涙を目に浮かべたまま微笑む彼女を見て、白い妖精と称されていた理由がキリにもよく分かった。
可愛い。妖精という表現が決して大袈裟ではない程に。
「私も、好きですよ?」
もう二人に言葉は必要無かった。
身体を離すわけにはいかなかったので、唇を重ねたまま、服を脱いでいく。
窮屈な体勢ではあったが、それすら今の二人には意識の内に留めることが出来なかった。
「そんなに見つめないでください…キリさんのえっち」
頬を紅色に染めて呟くエルーを見て、まだ若いキリは我慢の限界に達していた。
「ごめん、もうオレ…挿れて良い?」
「…良いですよ」
ゆっくりと濡れた未開のつぼみに押し入っていく。
受け入れる準備は万端だったようだ。
「痛くないか?」
「大丈夫ですっ…」
本当は痛いが、好きだという気持ちに比べれば大したことはない。
彼女は微笑んだ。
痛みすらも寧ろ心地良い。
肌で愛し合うことなんて、決して叶わないと思っていたから。
人を愛することなんて、決して叶わないと思っていたから。
「駄目だ…もう出そう…」
「良いですよ…中に、どうぞ」
まだ少し幼い二人の恋人は、ぐったりとしながらも決して身体を離すことはなかった。
「中に出しちゃったけど…大丈夫なのかな」
「大丈夫ですよ。ちゃんと責任は取ってもらいますから」
そういう問題じゃないだろ、とツッコむのも野暮なのでキリは小さく頷いた。
スイが途中から二人の情事を覗いていたことを知るのは、数時間後の話である。