「あたし、こいつの元彼女(モトカノ)なんだよ」  
 
 
 
 
 ある日の午後、キリが自室で美術活動に励んでいると、  
 ひょっこりとスイが顔を出した。  
「試したいことがあるんだけど、いいよな?」  
「いいよな、っておかしいだろ」  
 少し目を離した隙に、スイはキリの服に手をかけている。  
「お、おいっ」  
「試したいことがあるって言っただろ? 性交って奴を試してみたい」  
「せ、せせ……ハァーーー!?」  
「ヤバそうな響きだよな。ドキドキしてきただろ?」  
 そう言うとスイは半ば強引にキリのシャツをはぎ取った。  
 感触を確かめているのか、ぺたぺたとキリの胸板に触る。  
「フフーン」  
(ヤベ、こいつマジっぽい)  
 キリが危惧したころには遅く、ズボンも脱がされようとしていた。  
 お母さんと子供よろしく、大人しく脱ぎそうになってキリは止まる。  
「ちょ、ちょっと待った! なんで俺だけ服脱がされてるんだよ!」  
「あたしにも脱げっての?」  
「……いや、それは」  
 探るような瞳でスイはキリのことを見つめてきた。  
 いっそのこと、無理な要求をして話を終わりにしようとキリは考える。  
「そう、そうだよ! スイが脱いだら俺も脱ぐよ」  
 その言葉が意外だったのか、スイはしばし悩んだ様子を見せた。  
 少しして、スイは胸を隠している上着に手をかける。  
 そのまま上にずらして脱ぐのかと思いきや、キリを見て言った。  
「こっち見んなよ!」  
(えええええ!?)  
 勢いに押され、後ろを向くと、背後から衣擦れの音。  
 これは覚悟を決めるしかないと考え、キリは息をゆっくりはいた。  
 同時に、緊張と興奮でちょっと息子が子供から大人への歩みを見せる。  
 ちらっと振り返ると、髪に隠れてはいたがスイの綺麗な背中が見えた。  
 慌てて視線を逸らすキリ。すると、スイが背中をくっつけてくる。  
「ま、まあどうせ見られるもんだし……隠してもしょうがねぇか。  
 こっち向いていいぞ、キリ」  
 そう言われたので、キリはスイの方を向いた。  
 彼女は確かに上着を脱いでいたが、手で胸部を隠している。  
 その顔は少し赤くなっているようにも見えた。  
「あたしが読んだ本によると、まずは男の下部を弄りまわしてたから……」  
 スイは膝をつき、キリのパンツに手をかけようとする。  
 そこで、キリのお子様が立派に成長していることに気がついた。  
「子供のころと違うぞ!?」  
「同じなはずねえだろ!」  
 
「……し、仕方ねぇな」  
 見るのをためらったのか、スイの手が止まる。  
 今度こそ、ちょっと気まずいが終わりにしようとキリが思った瞬間。  
 パンツ越しにスイが指を這わせた。  
「うっ、く……」  
 声が出そうになって、キリは意識して口を閉じる。  
「あったかいな。お、なんか触ったらもっとでかくなってきたぞ」  
(コイツ、なんて半端な知識……)  
 そんなことを思いながらも、キリの息子さんは大人になっていった。  
 手で触るのが飽きたのか、やがてスイは息子さんに顔を近づける。  
「ん……ちゅ……」  
 おずおずと舌を出すスイの姿は、キリにはかなり新鮮なものに見えた。  
 慣れない舌つきで、裏筋の部分を舐めあげる。  
 それに熱中しているせいか、胸元の注意がおろそかになり、  
 先ほどまで隠れていた乳頭があらわになっていた。  
 好奇心でキリはその先端に触れてみる。  
「んっ……!」  
 驚きの声をあげると、スイは身体を竦めて胸を手で隠した。  
「いや、驚いただけだから……気にすんな」  
 そう言うので、キリは彼女の乳首が立っていることは言わないでおく。  
 気にしないという言葉が、口だけなのも黙っておく。  
「次は挿入だ」  
「は、えっと……何か足りない気がしないか?」  
「……あたしは、下を脱がないから足りなくねえんだよ」  
「恥ずかしいからか?」  
「そうじゃねえ! 脱ぐのが面倒なだけだ」  
 前戯は必要ないのか、と思ったがキリはそれを言うのを止めた。  
 そうして黙っているとスイはキリを押し倒し、キリのパンツを完全にはぎ取る。  
 それから自分のズボンとパンツをずり下ろした。  
「脱がないんじゃなかったっけ……?」  
「見んな! 脱いでねえよ、ちょっと下げただけだ」  
 大差ないだろ、とは口にしないでおくキリ。  
 彼が頬を朱色に染めたスイの顔を見ていると、  
 息子さんの先端に何かが当たった。そりゃあ当然ながら、尻だ。  
 スイはかなり手こずりながら、それを身体の中に沈めていく。  
「……い、痛え」  
「大丈夫か?」  
「あたしを誰だと思ってる! こんなのは、大した事ねえ。  
 試しに動いてみろよ、大丈夫だから」  
「ほ、ほんとに大丈夫なのか?」  
「当たり前だっ」  
 そう仰るのでキリは下からぐっとスイの身体を押し上げてみた。  
「あっ……つ……い、痛くないぞ」  
「じゃあもう少し激しく動くからな」  
「ちょ、んっ……くあっ……」  
 痛みと気持ち良さの入り混じった表情でスイの顔が歪む。  
 キリも快感と若干の痛みで、身体が火照っていた。  
「う、動きっ……すぎ、だ……っ……」  
 がたがたとベッドを揺らすキリに、スイは苦しそうな顔で文句を言う。  
 片手をベッドにつき、片手を顔に当てているので手も出せなかった。  
「気持ちよくて、ごめん……止まらねえ」  
「ふざけんなっ……ひっ、くぅっ……あ、あ、ああっ」  
「で、出る……」  
「は……ハァ? ちょっと、ま……」  
 初めて故か、思ったよりずっと早くキリは達してしまう。  
 びくびくと脈打つ息子さんに、スイはぞくぞくと身体を震わせた。スイはずしっとキリの胸に倒れこむ。  
「半端すぎる」  
「わり」  
「あたしが満足するまで、これからしばらく練習だからな」  
「わかったよ……って、ええええ?」  
 
 
「というわけで、まあ元彼女みたいなもんだろ?」  
 スイがそうやって過去に色々なものをつけて語って見せると、  
 話していたはずのエルーの姿が見えなくなっている。  
「あれ? あの子は?」  
「ここだよ、ここ」  
 足元を見ると、キリと真っ赤になって倒れこむエルーの姿があった。  
 

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