―――やっと、着いた。  
そう思った瞬間、エルーはその場にへたり込んでしまった。  
「おいおい、大丈夫か?」  
微笑みながら手を取り直すキリ。二人の絆は、敵に襲われる等の数々の困難を乗り越えてきたことで、非常に強固になっていた。  
男女間の愛情すら芽生える程だったが、お互いにそのことには考えないようにしていた。何故なら、意識してしまうと手を繋いでいることすら恥ずかしくなってしまうからだ。  
「さあ、行くぞ」  
「はい…」  
そして二人は協会本部へと足を踏み入れた…  
 
 
エルーとキリが協会に着いてから一週間後。遂にトロイを治す方法が分かったそうだ。  
「シスター・マーサ、早くその方法を教えてください!」  
目を爛々と輝かせて、エルーは言った。するとマーサはエルーに何かを耳打ちした。  
「ええええぇぇぇ!?」  
突然のエルーの叫び声に不意を突かれて飛び上がるキリ。彼は未だ事態が飲み込めず、困惑している。  
「それじゃ、あとはお二人だけでごゆっくり〜」  
意味深な台詞を残して、半笑いでマーサは去っていった。  
 
「それで、方法は何なんだ?」  
赤面しているエルーの顔を覗き込むキリ。  
「え、えっとそのぉ…」  
「早く言えよー」  
キリはその方法が気になって仕方ないらしい。  
しきりにエルーを促す。  
「キリさんの、…しを、わた…に…さい」  
うつむきながらボソボソと話すエルー。  
「ん?ごめん、聞こえなかった」  
「キリさんの精子を私の中に入れてくださいっ…」  
一気に言い終えるエルー。  
「ええええぇぇぇ!?」  
先程のエルーと同じ反応をキリは示した。  
「えっと…私、そういう経験ありませ「いやいやいや!オレも無いから!」  
思わず言葉を被せるキリ。そして、参ったなぁ、と言ったきり黙り込んでしまった。  
沈黙を破ったのはエルー。  
「私じゃ、駄目ですか?」  
赤面を保ったまま、震える声で尋ねた。  
「駄目とかじゃなくて、その…」  
珍しく威勢の無いキリを見て、エルーは叫んだ。  
「わ、私はキリさんとならしてもいいです!」  
 
「…分かったよ」  
キリは観念したのか、おもむろに服を脱ぎ始めた。躊躇いながらエルーもそれに続く。お互い目を合わせないようにして、単調にその作業は行われた。  
「あの…そんなに、見つめないでください…」  
「あっ、ああごめん」  
キリは改めて見たエルーの身体に思わず見とれてしまっていた。バランスのとれた四肢に、小ぶりながら形の良い胸。そしてまだ薄い秘毛。  
その全てが、甘美な未体験の世界へと少年を誘う。  
「わ、私どうすれば良いのか…」  
頬を紅潮させたまま、エルーは小さく呟いた。手を繋いでいるので既に二人の距離はかなり近い。  
「とりあえずこれ、舐めてくれる?」  
同じく頬を紅潮させたキリが遠慮がちに言う。  
 
「はい…」  
震える手で少し熱を帯びたキリのそれに触れる。  
そして、その先端を指で、触れるか触れないかくらいの強さで撫でる。  
「んっ…」  
思わず声を漏らすキリ。  
「おっきくなってますよ?」  
その可愛い姿を見て、少し意地悪なことを囁くエルー。  
「いちいち恥ずかしいこと言わなよ!」  
顔を真っ赤にしてキリは叫んだ。くすくす、と軽く笑ってエルーはそれを口に含んだ。  
ぎこちない舌使いでも、初めてのキリには相当刺激が強い。エルーの肩を掴んで、必死に衝動を堪える。  
「ごめんエルー…もう、限界っ」  
 
エルーが目線を上げた時にはもう遅かった。口内に溢れ出す白濁液。  
「けほっ、けほっ…」  
エルーは幾らかの量は吐き出したが、残りを全て飲み込み、涙目になりながらキリを見上げた。  
「ごめん、その…」  
「ふふ、今日はキリさん謝ってばっかりですね」  
すぐに笑顔を取り戻したエルーが言う。  
「まだ終わりじゃないんですよ?」  
エルーは立ち上がり、そのままキリを押し倒す。そして、まだいきり勃ったままのそれを扱く。  
「私、知ってるんですよ?私が寝たフリをしている間にキリさんが一人でえっちなことをしてたって…」  
言い返すことも出来ず、キリは顔を背ける。  
「昼に私と繋いでた手で、夜は何をしてたんですか?こんな風にされるのを想像してたんですか?」  
扱く手を速くするエルー。キリのそれは先程よりも硬度が増していた。  
 
「ふふ、もう元気になりましたね。じゃあそろそろいきますよ」  
それを優しく握ったまま、エルーは仰向けのキリに跨った。そして、硬く勃起したそれを自らの入り口に導く。  
「ん、ふうっ…」  
初めであるせいか、なかなかそこに挿れられない。腰を動かして、その場所を探す。  
そして―――。  
「入った…」  
エルーとキリの声が重なる。  
そのままエルーはゆっくりと腰を沈めた。多少痛みを感じたが、今の彼女にはそれすらも愛しく思えてくる。  
「エルー、血出てるぞ?大丈夫か?」  
キリが思わず声をかける。  
「大丈夫です…私、キリさん好きですからっ…」  
それは理由にならないだろう、と心の中で苦笑いしながらキリは身体を起き上げてエルーを抱き締める。  
「少し動かすぞ?」  
「はい…」  
キリは少しずつ腰を前後に動かし始める。  
 
「なあ、エルー?」  
「はい?」  
「オレも好きだ」  
「恥ずかしいですよ…」  
満更でも無い顔で、エルーはうつむいた。  
それを見て舞い上がったキリは少し強く突き上げてしまった。  
「ひぁっ!」  
エルーが声を上げる。  
なに、これ…気持ちいい…  
幸福感に包まれたせいか、快感の波が押し寄せてくる。  
私っ…初めてなのに…  
「ひゃあうっ!」  
程無くして、エルーは絶頂を迎えた。  
そして、キリも…  
「エルー、もう出っ…」  
 
 
次の日。  
「いやー、お二人さん若いねぇ」  
ニヤケ面を引っ下げて、シスター・マーサが疲れ気味の二人に言った。  
「まさか聴いてたんですかっ!?」  
頬を紅に染めてエルーが声を大にして訊いた。  
「どうだろうね?」  
あははっ、とマーサはいつもの調子で笑いながら茶化す。  
「そうそう、言い忘れてたけど精子は飲み込むだけでいいのよ?」  
「ええええぇぇぇ!?」  
そう叫ぶ二人の手はまだ繋いだままだった。  
 

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