「祭の日まで、どうかしばらくご辛抱ください。ユリヤ夫人」  
 県知事邸宅から窓の外を眺めて、ピョートル・ヴェルホーヴェンスキーは  
誇らしげに言った。  
「厄介な噂を口にする者がいても、決して気にかけてはいけません」  
「噂?」  
「ええ。愚民どものこんな噂をご存知ありませんかね。”ユリヤ夫人と  
ステパン教授の息子は色恋関係にある”とね。へ、へ、へ、愚民の頭と  
きたら所詮はその程度だ、まったくばかげた噂ですよ」  
「あら」存外に明るい声が返る。「あたくしは別に、ばかげた噂なんて  
思わなくてよ?」  
「……へ?」  
   
 振り返ったピョートルは、ユリヤ夫人の姿に言葉を失った。いつの  
間にか衣服を脱ぎ捨て、あられもない姿を真昼の陽光にさらした夫人は、  
豊満な乳房を惜しげもなく揺らしながら、ピョートルのもとに歩み寄って  
きた。  
「お、奥さ……」  
「なあに、そんなに驚いて」  
「な、なんです!? その格好は!?」  
「ふふふ……たっぷり楽しみましょう。ピョートル」  
 度肝を抜かれてあとずさるピョートルを楽しげに見据えながら、  
ユリヤ夫人はいささかのためらいもなく裸足をすり寄せた。  
「ちょっと待った! 奥さん!! ストップ!!! ストーップ!!!!」  
「旦那は夜まで帰らないわ。召使にも暇を出してあるから、邪魔者は  
いなくてよ」  
「奥さん、誤解ですよ! ぼくがあなたと手を結んだ目的はあくまでも  
祭のためでしてね、こんな……こんなつもりはぼくの方は一切皆無で」  
「あら、遠慮しちゃいやよピョートル……もっとあたくしをよく見て」  
「だめです! ストップ!! 奥さん!!! タンマタンマ!!!!」  
「うふふ、そんなこと言って、自分に嘘をついちゃだめよ」  
 逃げ場を失って窓にはりついたピョートルの足元に、ユリヤ夫人は  
ひざまずいた。慣れた手つきでピョートルの強張りを取り出し、  
濃い紅の塗られた唇を吸い寄せる。  
「ひいっ」  
「少なくともあたくしの方は、最初からこのつもりだったわよ?」  
 ねっとりと濡れた舌を動かしながら、ユリヤ夫人は不敵に笑う。もはや  
抵抗する力をなくしたピョートルを見て、満足げに唇を舐めたユリヤ夫人は、  
自らの乳房の重みを下から両手で支えあげ、その深い谷間を擦り付ける。  
「ほら……気持ちいいでしょ? うふふ、可愛いわピョートル。  
我慢しないで」  
「た、助けてー! パパーーーーー!!」  
 
 
 夕刻。  
 もはや幾度ともつかぬ夫人の絶頂に応えたピョートルは、ベッドに  
這いつくばり、息も絶え絶えにつぶやいた。  
「も、もうこのあたりで結構でしょう……旦那も帰ってくる頃だし……」  
「あら、まだダメよ。若いのにもう限界なの?」  
「も、もう、事実、限界です。ぼくは行きますよ」  
「また明日も来てくれるわね?」  
「明日はスタヴローギンを連れてきますよ。あいつの絶倫ならあなたも  
ご満足でしょう」  
「明後日も来てくれるわね?」  
「明後日は五人組を連れてきますよ。6Pなんかいいんじゃないですか」  
「明々後日も来てくれるわね?」  
「明々後日は……エルケリ君をどうぞ。ショタです。好きに犯してください」  
「明々後日の次の日も来てくれるわね?」  
「明々後日の次の日は、シャートフ×キリーロフのホモプレイ鑑賞を  
お楽しみください」  
「まあ、毎日が夢のようだわ」  
 枕を抱えてうっとりとしたユリヤ夫人を尻目に、ピョートルは  
足をもつれさせながら邸宅をあとにした。  
 

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