炬燵に入ってのんびりしているどろろ。 そこへ百鬼丸が外から帰ってきた。  
 
「どろろ、おまえ読み書きは得意じゃなかったよな?」  
「まァね、天下の大泥棒には そんなん無用ってことよ」  
「役に立つんだぜ、習字って知ってるか」  
「知らないよ? あにきこそ、どーなんだい」  
「恩人のお医者が教えてくれたから、まあ一応な…そら、土産だ」  
 
 百鬼丸は、たくさんの紙が綴られた帳面をぱさっと炬燵の上に投げて、土間で草鞋を脱ぐ。  
 
「何だい、こりゃ」  
「字の手本帳だ、筆も墨も用意できたぜ…○○屋の主人は気前が良いなァ」  
「やけに気合い入ってるねー… えっ!?もう一つあるよ??」  
「びっくりさせんなよ、変なやつだな」  
 
「だ、だって、 …男と女が、半分裸になった絵がいっぱい、…」  
「へッ? 表に何か書いてないか、少しなら読めるんだろ?」  
「えーと…、『しじゅうはち…』? あとは…分かんない」  
「…なに? ちょっと見せてみろ」  
 
 薄い冊子を開くと、春画が目に入って百鬼丸はぎょっとする。  
 
「『四十八手・閨の智恵集』 ……あのオヤジ、おまけだって言ってたのは、これの事か!」  
「? それも手本なの」  
「ある意味そうか…いや待て、お前にゃまだ早い」  
「四十八っていうと、そうか!魔物に関係あるんだね」  
「全然違う…、…とにかく、今は字の稽古だッ!」  
「あにき 顔が赤いよ…へへ、おっかしいの」  
 
 半紙と手本を置き、どろろの後ろから炬燵に入って、墨を持たせる百鬼丸。  
 
「まずは、墨のすり方からだ」  
「あのさ、あんまりくっつかないで…、」  
「おまえ姿勢悪いぞ、もっと胸を張れよ」  
「わっ、や、やだっ!」  
「…あれ?ちょっと…ふくれてきたか」  
 
「もう、何すんのさ!」  
「あー すまん、手が届かないなら俺の膝に乗っかれ」  
「あにきぃ、あちこちさわんないで」  
「だったらモゾモゾしないで、ちゃんと座りな」  
 
「そこは関係ないだろ、わ、手を入れるのはやめ…」  
「お前…女物の肌着だな、これ」  
「…う、うん…だって、あにきがせっかく買ってくれたから」  
「へえ、素直じゃねえか…珍しい」  
 
「さっきの絵草子に…こういう格好してるのあった」  
「フーン そうかい、よく覚えてんな」  
「あれも、役に立つもんなの?」  
「さあな、…いいから集中して稽古しようや」  
 
「…墨、濃くなってきたよ」  
「よし、次は筆だ、真似して持ってみろ」  
「んーと…こうかい?」  
「違う、親指はこっち…」  
 
「わっ、耳に息吹きかけるのよして、くすぐったい…くっつき過ぎ!」  
「わざとじゃねえよ、離れると手元が見えん」  
「…おいら恥ずかしいな、こういうの」  
「なに言ってんだ、今更…こっちがぞくぞくすらあ」  
 
「だから、頬っぺたとか…耳舐めるのよしてって…」  
「えらく女っぽい声出すなぁ」  
「あ、…やだ、苦しいよ、放し…」  
「放したぞ? まっすぐ筆持ちな、ほら」  
「もー、膝とか さわんないで」  
「お前がじっとしてないから押さえてるんだ、…くそッ、もう我慢ならん!」  
 
「うぁ、やっ、これって読み書きと関係あんの!?」  
「炬燵につかまってろ、ちょっと腰浮かせて」  
「聞いてるのに…、やめっ、そんなとこ!…んぅっ…」  
「…お?もう湿ってんのか」  
「やっ!やだ、嫌だぁ」  
「嫌って… でも開いてきてるぞ」  
 
「ま、まだ、入れないで……っ!!」  
「うるせえなあ、指じゃだめなら…こっちか」  
「勝手だよ…、ひゃあぁぁっ…」  
「くっ、……楽にしろ、動いていいから」  
「あぁっ、…あにきが…入ってるんだもん、無理っ!……」  
「“習うより慣れよ”って言うぜ」  
 
 
 
 あにきが教えたのは、自前の筆を使う習字でした。 おしまい。  
 

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