崩れさった醍醐の城を前に百鬼丸とどろろは向かい合っていた。  
47もの魔神を倒し醍醐の野望も阻止し  
あまりいいものでは無かったとはいえ出生の秘密も知った。  
しかし、百鬼丸の表情はとても喜んでいる者のそれではない。  
「どろろ、俺はお前の体に隠れている魔神を引きずり出す方法を探しに行く。  
 いつになるかわかんねえが、必ず戻ってくる。  
 達者で暮らせよ」  
百鬼丸の言葉にどろろは驚きと困惑の入り混じった表情を浮かべた。  
「あにき!俺はって・・」  
「お前を殺さずに体を取り戻すにはこれしかねえんだ・・・」  
これだけの言葉を振り絞ると百鬼丸はどろろに背を向けた。  
「ま、待ってくれよ!あにき!  
 おいらを置いてっちゃうのかよ!」  
百鬼丸はさっさと歩き出しどろろの呼びかけに答えない。  
「おいらの中に魔神がいるんなら一緒にいないと倒せないじゃねえか!  
 お、おいらもついてくよ!」  
どろろは走って百鬼丸の前に出るとまるで威張ってるように胸を張った。  
呼吸一つ分の悩んで百鬼丸は虚勢を張るどろろの前にしゃがみこんだ。  
「いいか、どろろ。  
 魔神だけを引きずり出す方法を探すと言ったが  
 見つけられるかどうかわかんねえんだ。  
 一生みつからねえかもしれねえ。  
 もしかしたらそんなもん無いかもしれねえんだ。  
 お前にはお前の人生がある。  
 俺なんかの人生に付き合うこたあねえよ」  
百鬼丸は左手でどろろの頭をぐしぐしと撫でてからゆっくりと立ち上がった。  
「じゃあな、年頃になったらもう少し女の子らしくするんだぜ」  
 
「てやんでエーッ!  
 この薄情者ッ  
 おいらの気持ちもしらねえで・・・  
 ヘソ噛んでくだばっちまえ!」  
最後の方は涙声になりながらどろろは思いつく限りの罵声を浴びせた。  
しかし百鬼丸の歩みは止まらない。  
今度はそこらに落ちてる石を手当たり次第投げつける。  
石を散らかし終えたどろろの目から涙が溢れ出した。  
「なんだよ!チクショーォ!  
 おいらが魔神に操られてもしらねえかんな!ウワ―ン!」  
ついに、どろろはへたり込みわんわん泣き出した。  
(魔神に・・・!?)  
どろろが苦し紛れに言った言葉に百鬼丸は振り返った。  
どろろは最後に放った言葉が効いた事にも気付かず  
突っ伏して泣き叫んでいる。  
(どろろなら大丈夫だと思うが・・。  
 普通の魔物にならどろろが唆されて操られる事は無いかもしれないが  
 最後の奴は既にどろろの中にいる・・・)  
泣き喚くどろろを見つめながらしばらく百鬼丸は悩んだ。  
自分ならもしどろろが魔神に操られてもどうにか出来るかもしれない。  
47もの魔神を倒したのだからきっと出来る。  
だが、自分と来ればどろろはまともな娘に育てず  
人間社会からつまはじきにされる人間になってしまうかもしれない。  
だが、魔神に操られればそれ以上に不幸な事になるだろう。  
しかし、操られないのならここに残った方が良い。  
百鬼丸が悩んでいた時間はどれほどであっただろうか。。  
「・・・あにき」  
遂には、どろろも百鬼丸が目の前にいる事に気付き顔を上げた。  
 
「どろろ」  
名でくぎり、もう一度百鬼丸は自分に問い質した。  
「・・俺と一緒に来るとまた今までのようなフーテンだぞ。  
 汚ねえし、ひもじいし、いい事なんか1個もねえ。  
 それでも、それでもいいってんなら・・・一緒に来い」  
耳から聞こえてきた百鬼丸の言葉がゆっくりと頭に入っていく。  
涙まみれの瞳に輝きが戻ってくるとどろろは飛び上がって喜んだ。  
「キャッホ―!さっすがあにき!話がわかるぜ!」  
涙で汚れた顔をごしごしと服でこすると、どろろは二ヒヒと笑う。  
「それと一つだけ条件がある」  
百鬼丸がそう言うとどろろの顔が少し青ざめる。  
「風呂に入れ」  
どろろはほっとため息をついた。  
「なんだ、そんな事ならお安いこった」  
今まで百鬼丸が何回言っても風呂に入らなかったことも忘れてどろろは胸を張った。  
「ヘヘェ、あにきもおいらの有り難味をようやく思い出したみたいだな。  
 まあ、しょうがねえ。  
 今回ばかりは忘れてたことも許してやらぁ」  
さっきまでの泣き虫はどこ吹く風。  
どろろは早速いたずらっぽい笑みを浮かべている。  
「じゃあ、行くか」  
百鬼丸が歩き出すとどろろもその隣を得意そうに大股で歩き出した。  
「本当にいいんだな」  
「へ、どうせおいらぁ元からフーテンだい」  
鼻を擦るどろろを見て百鬼丸は微笑を浮かべた。  
「あにき、どっかあてはあるのかい?」  
「とりあえず俺を育ててくれた父さんの所に帰ろうかと思う。  
 手術で魔神を取り出すってわけにはいかないだろうが何か教えてくれるかもしれない」  
燃え盛る町から離れていく二人の胸に様々な思いが去来する。  
どろろは顔を赤らめながら百鬼丸の左手にそっと自分の手を潜り込ませた。   
 
 
二人が道ずれになってから一週間が過ぎていた。  
「おい、どろろ、花が咲いてるぞ」  
百鬼丸が道端の花を見つけ駆け寄る。  
「そんな花そこいらにごろごろしてらあ。  
 珍しくも何ともねえぜ」  
百鬼丸はどろろの悪態に見向きもせず花の前で胸一杯に空気を吸い込んでいる。  
「そこらにあったのかも知れねえが俺にとっちゃ初めて見た花だ。  
 どんな香か気になるじゃねえか」  
「ちぇ、あにきにかかっちゃ何でも初めてなんだからな」  
どろろが思わずこぼすように百鬼丸は色んなものを発見するたびに寄り道をする。  
魔神も残り一体、死霊や妖怪もほとんど追ってこなくなった。  
心に余裕が出来たらしく  
百鬼丸は旅の道すがら取り戻した人間の感覚を堪能していた。  
「ふふふ」  
百鬼丸は微笑んでどろろの頭に手をやった。  
「ん!?」  
見上げるどろろの頭には花かんざしが刺してある。  
「似合うぞ」  
どろろの顔が見る見る内に真っ赤になる。  
「ちぇ、すぐそうやってからかうんだから!」  
どろろは急いで花を自分の髪から引っこ抜くとポイと放り捨てた。  
(駄目だったか・・)  
女の子らしくなれと言ったものの百鬼丸も女に詳しいわけではない。  
どろろに娘として育って貰おうと百鬼丸なりに考えてるのだがどうにも上手くいかない。  
「からかっちゃいないさ。  
 お前は女の子なんだから女扱いしていいだろう?」  
「ちぇっ!本気でそんなこと思っちゃいないくせに。  
 いいからおいらの事、女だなんて思ってくれるない!」  
女扱いすると不機嫌そうにどろろはすぐこう言い返してくる。  
百鬼丸は大きく息を吐きどうしたもんかと頭をかいた。  
 
それからしばらく歩くと橋のかかった浅く広い川にぶつかった。  
「魚いねえかな」  
百鬼丸が橋の上から川を眺めると、どろろも真似したように並んで川を見下ろす。  
「あ、いるよ!」  
どろろがそう言うと百鬼丸はすぐに橋の下へ飛び降りた。  
川原に着地したかと思うとヤァッと気合一閃、川の中に刀を振るう。  
「ほら、一匹捕れたぜ。  
 どろろ、木の枝かなんか燃えるもん集めて来い。  
 ここで飯にしようぜ」  
「がってん!」  
百鬼丸が刀の先に刺さった魚を見せると、どろろも腕をまくって走っていく。  
二人とも慣れたものであっという間に何匹もの魚が陸にあげられ  
木っ端の山に火がついて魚がバチバチという音を立てる。  
「いい匂いがしてきたな」  
魚の焼ける音に百鬼丸が鼻を動かす。  
「あにき、随分匂いがお気に入りだね」  
「ああ、俺はこの間まで匂いなんてかいだ事無かったからな」  
百鬼丸は本当に嬉しそうにそう答えた。  
「へえ、くせえの嗅がなくてすむから鼻なんか無い方が良さそうだけどな」  
「くせえと言ったら、どろろお前いい加減風呂入れ。  
 ほら、この川なんか綺麗だしちょうどいい」  
百鬼丸が言う通り川の水は澄んでいて非常に綺麗である。  
「えー・・いいよ、まだ。  
 六日前に入ったばっかじゃんか」  
どろろはちょっとバツの悪そうな顔をして百鬼丸から目をそらした。  
「まあいい、焼けたみたいだし食うか。  
 食ったら風呂だぞ」  
どろろは口をとがらせたが百鬼丸は焼き魚に気をとられていて見ていなかった。  
しょうがなく、どろろも焼き魚を手にとってがぶりついた。  
 
 
「よし、じゃあ風呂入るぞ」  
飯が終わるやいなや百鬼丸はそう宣言した。  
「どろろ、一緒にはいろうぜ」  
「いいよ、おいら・・・  
 後で入るから」  
どろろが後ずさりしようとするのを百鬼丸が咎める。  
「お前いつもそうやって入らねえじゃねえか。  
 いいから来い」  
そういうと百鬼丸は逃げ出そうとしたどろろに飛びつき抱きかかえた。  
「やだーい、やだやだ」  
どろろの手足が空中でばたばたと動く。  
「入れって!」  
「ウワ―ッ!」  
そう言うと百鬼丸はどろろを抱きかかえたままザブーンと川に飛び込んだ。  
立っていれば百鬼丸の腰にも届かない深さの川だ。  
溺れたりする心配は少ない。  
「ぷぅー、気持ちいいな」  
水面から顔を出すと百鬼丸はアハハと明るく笑ってびしょぬれの着物を脱いだ。  
「どろろも脱げよ」  
百鬼丸はずぶ濡れの着物の懐から手ぬぐいを取り出すと着物を火の側に放り投げた。  
「どした?背中流してやるから脱ぎな?」  
百鬼丸がそう言うと、どろろは真っ赤になって振り向いた。  
「バカ!エッチ!なんだい、あにきの助平!  
 おいらだって女だぞ!」  
どろろの反撃に百鬼丸はにやりと笑う。  
「安心したぜ、どろろ。  
 お前もちゃーんと女だって自覚があったんだな」  
「あっ!」  
どろろは百鬼丸の計略にひっかかった事に気付き、しまったという顔をした。  
 
「それでいいんだ。  
 すぐには難しいかもしれねえが女の子らしくしろよ。  
 それに女なんだから体ぐらい綺麗にしてろ。  
 見やしねえから」  
百鬼丸はそう言うと手ぬぐいをどろろに放り投げて川に潜った。  
「ちぇ、なんだい兄貴の奴」  
どろろはぶつぶつと文句を言いながら百鬼丸の方に背を向け手ぬぐいで体を拭き始めた。  
着物を着たまま器用に体を拭きながら、どろろはさっきの感覚を思い出していた。  
百鬼丸に抱きかかえられた時、ふわっと体が温かくなるような感覚と  
触られた胸のところからびりっと痺れる感覚が全身に走った。  
(なんだったんだろう・・・)  
どろろは振り返り百鬼丸の様子を確めた。  
百鬼丸は子供のように川を泳いでいる。  
見られていない事を確認すると、どろろは触られたあたりを自分で触ってみた。  
(ん・・・?)  
今度は走り抜けるような刺激ではなく、力が奪われるような感覚。  
「ふう、この水はつめてえなァ」  
百鬼丸は嬉しそうに言うと川から上がった。  
百鬼丸は冷たい、温かい、そんな感覚すら持っていなかったのだ。  
「おい、今日はここに泊まるか」  
濡れた着物を絞りながら百鬼丸が声をかける。  
「う、うん、いいよ」  
返事をしながら、どろろも川から上がる。  
そろそろ、空に赤みが差し始める頃だ。  
急ぐ旅でもなし、食料と飲み水が同時に確保できる場所は理想的である。  
「どろろ風邪ひかねえように火にあたれよ」  
そういうと百鬼丸はごろりと横になって寝息を立て始める。  
命を狙われつづけていた百鬼丸はすぐ寝れるしすぐに起きれる。  
どろろは少し待って百鬼丸が本当に寝たのを確認すると体をまさぐるのを再開した。  
 
 
その夜、随分と遅い時分に百鬼丸はどろろの足音に起こされた。  
どろろは側までやってきて百鬼丸をじーっと眺めてから川の方へ歩いていく。  
常に死霊や妖魔に狙われていた百鬼丸は些細な物音でも起きてしまう。  
百鬼丸は姿は寝たままで心の目でどろろの様子を見ていた。  
どろろは川べりに行くと振り返ってもう一度百鬼丸の様子を見る。  
そのまま百鬼丸の方を見ながらどろろはふんどしを解き始めた。  
(しょんべんか・・・)  
どろろの行動を悟ると百鬼丸は心の目を閉じた。  
川音にまぎれてもう一つせせらぎの音が聞こえてくる。  
(フフ・・・隠れてするなんてどろろもちゃんと女の子だな)  
百鬼丸はそんな事を考えて寝なおそうとしていたのだが  
不思議な事にしばらく経ってもどろろが帰ってこない。  
百鬼丸が再び心の目を開くと、どろろは体をかきむしっている。  
(なんだ・・?虫にでも刺されたか?)  
それにしてはどうも様子がおかしい。  
妙に苦しそうにして胸をこすっている。  
(なんか病気にでもかかったか?)  
しばらくすると、ようやく痒みがおさまったらしく  
どろろはゆっくりと百鬼丸の所に歩いてきた。  
息が乱れたままコロンと体をくっつけて横たわる。  
(まだ子供だな)  
どろろが帰ってきたらおどかしてやろうか、なんて考えていたのだが  
百鬼丸はどろろの様子を見て起きていた事は教えない事にした。  
どろろは女の子のくせに子供扱いしても女扱いしても怒るからだ。  
百鬼丸が今度こそ寝なおそうとした時どろろが上半身だけを起こした。  
そして百鬼丸の右腕を動かしては横たわるのを繰り返し始めた。  
(俺の手は枕代わりか)  
 
どろろは百鬼丸の右腕が枕としてちょうどいい位置になるように調節しているらしい。  
上げたり下げたりひねったりとこねこりまわす。  
そうこうしている内に百鬼丸の右腕がスポッととれてしまった。  
(全く、何やってんだ)  
百鬼丸が呆れているとどろろは取れてしまった右腕をじっと見つめている。  
(・・・どうした?戻し方がわからないのか)  
すぐに戻してくれると思っていた百鬼丸の予想を裏切り  
どろろは思いがけない行動をとった。  
なんと百鬼丸の右手を着物の中に突っ込んだのだ。  
「んっ・・」  
今度は百鬼丸の右手で胸を掻きどろろは苦しげな声を出し始めた。  
百鬼丸はどろろの行動に戸惑いながらも心の目を閉じれなかった。  
着物の中に自らの右手も入れ義手と手を重ねると  
どろろの動きは益々激しくなってくる。  
「あっ・・」  
(何を・・・何をしているんだ・・・どろろ)  
百鬼丸に見られているなぞ思ってもいないのだろう。  
どろろの行為は留まる事を知らず、膝立ちになってついには右手を股間に持っていった。  
「ふぅっ・・」  
ふんどしの上から右手に股間を擦らせ自分の左手は胸をさすっている。  
(どろろ・・・)  
百鬼丸は自分の目で見てみようかと思ったがそれは出来なかった。  
どろろがずっと見ているからだ。  
起きている事に気付いたとは思えないのだが  
何故かどろろがちらちらと見てくるので百鬼丸は寝たふりを続けるほか無かった。  
「あ・・にぃ・・・」  
あまりにも不可解などろろの行動に百鬼丸はついに心を読むことにした。  
もしかしたら、どろろは魔神に操られて苦しんでいるのかもしれないからだ。  
 
心に集中し頭にググッと力を入れる。  
暗闇の中にゆっくりとどろろの心の中が映し出されていく。  
(な、なんだ!?)  
浮かび上がった光景はどろろの行動と同じく不可解なものだった。  
百鬼丸がどろろを無理矢理に捕まえて体中を掻きむしっている。  
どろろは捕まえられて嫌がっているようにも喜んでいるようにも見える。  
それにどろろの中の百鬼丸は一人だったり何人にも増えたりもする。  
(どろろ、一体これは何なんだ!?  
 お前は今何を考えているんだ?)  
「ぅ〜〜」  
それが見えていたのも束の間  
どろろのくぐもった叫びと供にその光景は霧散し真っ白になってしまった。  
「はぁ・・・はぁ・・・」  
どろろは大きく息を吐くとようやく右手を返して百鬼丸の上に倒れこんだ。  
どろろの体は妙に熱く汗ばんでいる。  
ぜぃぜぃと肩で息をしながら密着するどろろが  
今まで知っていたどろろとは違う感じがして百鬼丸は戸惑っていた。  
(今のは何か淫らな行為だったのでは・・・?)  
百鬼丸もさすがにどろろの行為の方向性は察知していた。  
そう考えなければ己の体の興奮が説明できないからだ。  
一度そう思ってみればそれ以外には無いようにも思える。  
(魔神め・・・どろろを苦しめて何をしようってんだ・・)  
心の中を見た時に魔神の影は見当たらなかった。  
だが、女の子が、どろろが自らあのような振る舞いをするとは百鬼丸には思えなかった。  
ついこの間初めて女性を見た百鬼丸にとっては  
そのような思い違いも仕方無い事かもしれない。  
(どろろ・・・絶対にお前の中から魔神を追い出してやるからな)  
魔神の仕業としても意味がわからないが魔神のする事など分かる事の方が珍しい。  
わからずとも倒せばいいのだ。  
百鬼丸の腕を枕にしたどろろは苦しそうに胸を上下させ、まだ辛そうに震えている。  
その姿に百鬼丸は魔神だけを倒す事を誓いなおすのであった。  
 
 
翌朝、百鬼丸は起きてすぐにどろろの姿が無い事に気がついた。  
「どろろ?どろろどこだ?」  
いつもならそう心配する事ではない。  
枯れ木を集めてるか鳥でも捕りにいってるか用足しというところだろう。  
ただ、昨夜のどろろの姿が百鬼丸を不安にさせた。  
「どろろォー!」  
「ここだよ!あにきどうしたの?」  
川の中からずぶ濡れのどろろが上がってきた。  
百鬼丸が心配してくれたからかその顔はどことなく嬉しそうだ。  
「朝から風呂入ってたのか、偉いぞ」  
どろろの姿を確認すると百鬼丸はほっとため息を吐いた。  
「へへ、魚とれねえかと思ったんだけどさ」  
どろろは両手をひらひらさせた。  
「ふっ、捕ってやるからちょっと待ってろ。  
 待ってりゃ逃げたのが戻ってくるだろう」  
百鬼丸は川に近づきながらどろろの顔を覗き込んだ。  
「どろろ、昨日俺の横で寝てなかったか?」  
「う、うん、おいらが寝てる間にあにきがとんづらしないようにって思ってさ。  
 さすがに一緒に寝てたら置いてかれないだろ」  
どろろの様子はいつも通りで何もおかしい所は無い。  
「もうお前を置いて行ったりしないさ」  
「いいや、信用できないね。  
 あにきったらそんな事言っておいらを厄介払いしようとしてるだろ」  
どこまで本気かわからないがいつも通りの軽口だ。  
百鬼丸には昨夜のどろろとは別人のように見える。  
(やはり魔神に操られていたのか。  
 全く覚えていないようだな)  
「信用無いんだな・・・・好きにしな」  
百鬼丸が何気なく言ったこの言葉を  
どろろは一緒に寝ていいという許しを貰ったと解釈した。  
結果、この日から百鬼丸の右手はどろろの枕も兼任する破目となるのだった。  
 
 
無駄に広い室内に二つの影がゆらゆらと並んで映し出されている。  
かつては寺と呼ばれたはずの建物だが屋根は破れ壁には穴もあき  
中には何一つ物は無く、今では外観にしか面影は残っていない。  
おまけにたまに来る者といえば  
床板の端っこを引っぺがして焚き木にするような不心得ものばかり。  
百鬼丸とどろろは大分マシな方と言えるだろう。  
「どうした、眠いか?」  
どろろが大きくあくびをしたのを見て百鬼丸が声をかける。  
「ううん」  
どろろは首を振ったが目をしばしばさせている表情はいかにも眠そうだ。  
「そろそろ寝るか、話の続きは明日な」  
そう言って百鬼丸が寝転がると  
その真似をするかのようにどろろも百鬼丸の隣にコロンと寝転がった。  
「おやすみー」  
当たり前のように百鬼丸の右手に頭をのせてどろろは目を閉じた。  
百鬼丸がどろろの中に魔神の影を感じたあの日からすでに一月。  
どろろが百鬼丸の右手を枕にするのもいつもの事となった。  
そして夜中にどろろが苦しむのも。  
「・・・・」  
百鬼丸は目を開けて左半身を起こしどろろを見た。  
いたずらっこも寝る時ははあどけない顔をしている。  
「・・・ん?」  
視線に気付いたのかどろろが目を開ける。  
「・・夜中にしょんべんしたくなったら起こすんだぞ。  
 ここいらは狼や犬が出そうだからな。  
 俺が起きなかったら構わないから部屋の隅でしちまえ」  
「うん、わかった」  
どろろが目を閉じても百鬼丸はしばらくその寝顔から目を離さなかった。  
普通の娘になれるチャンスを捨ててまでついて来たどろろに  
百鬼丸はいとおしさと哀れみを感じていた。  
 
 
(・・・・・・?  
 ・・・・・雨か)  
辺りの雰囲気の変化に気付き百鬼丸は浅い眠りから目覚めた。  
どろろは枕にしていた義手部分からずり落ちすーすーと寝息を立てている。  
健やかな寝姿に百鬼丸は安堵のため息をついた。  
どろろの悶える声で起こされる事には慣れた百鬼丸だったが  
どろろの苦しむ様にはいまだ慣れない。  
寝なおそうとした時、百鬼丸は近づいてくる気配に気がついた。  
妖気や殺気が感じられるわけではないが用心の為  
百鬼丸は太刀を手にとり身を起こした。  
相手が何にしろ夜に活動している以上、まっとうな人間の可能性は低い。  
百鬼丸の鋭い視線を浴びながら大きな扉が鈍い音をたてて開いていく。  
「おっと先客がいなすったかい」  
「び、琵琶法師のおっさん!」  
禿げた頭に歪んだ人相、只ならぬ気配を身にまとうその奇抜な姿は間違え様もない。  
「その声は百鬼丸?ヒッヒッヒ  
 おめえさんとはよくよく縁がありなさるね」  
思わぬ再会に百鬼丸は驚き喜んだ。  
百鬼丸にとっては数少ない知人と呼べる人間である。  
「どうしたんだ!?こんな夜半に・・・  
 いや、そんな事よりあがってくれ」  
百鬼丸はがそう言うと琵琶法師は相変わらず表情の読み取れない  
不気味な顔をいささかも変えずに中に入ってきた。  
「あっしのような盲人にゃ昼よりこんな夜中の方が歩き良いんでね。  
 ヒッヒッヒ」  
この琵琶法師が何者なのか、何をしているのか  
そしてどこへ行こうとしているのか百鬼丸も全く知りはしない。  
ただ、只者ではない事だけは確かだ。  
 
「実はあんたに聞きたい事があって会えねえかと探してたんだ」  
火を熾すと百鬼丸はそう切り出した。  
「ほう・・・あっしに・・?」  
「実は47の魔神を倒して残りは一体になったんだが・・・」  
百鬼丸は言葉を止めて眠っているどろろを確認した。  
「ほう・・そいつはめでてェ。  
 おめえさんの目標はほとんど達しちまったってこった、ヒッヒッヒ」  
琵琶法師の褒め言葉に百鬼丸は顔を曇らせた。  
「いや、その一体が問題なんだ・・・。  
 実は人間の体の中に隠れていて・・どうすれば倒せるのか見当もつかねえ。  
 おっさんなら何かわかるんじゃねえかと・・」  
「妖怪退治にかけちゃあおめえさんの方が慣れたもんでございやしょう?」  
百鬼丸は激しくかぶりを振った。  
「こいつは・・・今まで奴らとは違うんだ・・・」  
百鬼丸の声は消えそうに小さい。  
「あと一つぐらいって思えねえかい?  
 そんなに戦い続けても仕方あんめえ。  
 それより普通の生活ってのをを目指すのがいいと思うがね」  
「それはいいんだ。  
 いや、どうでもいいって訳じゃねえが・・・・  
 それよりあいつが・・俺はあいつを助けたい」  
最近ではどろろが夜中に悶える事も多い。  
早くしなければ本当にどろろがどうにかなるのではないかという焦りもある。  
「倒せなくても追い出されば・・・」  
琵琶法師は見えないはずの目でうなだれる百鬼丸を見つめた。  
「・・・おめえさん、立派になりやすったねえ。  
 随分と人間になりやすった」  
百鬼丸は少し顔を上げた。  
「あ、ああ。残りは一箇所だけだからな」  
「いんや、そういうこっちゃねえ」  
いつもの不気味な笑いを消して琵琶法師は神妙に言葉を紡いだ。  
 
「おめえさんが自分の体を取り戻す為でなく  
 人を助ける為に戦おうとしてるってのがな、ヒッヒッヒ」  
琵琶法師の言葉に百鬼丸は昔の自分を思い返し頭をかいた。  
「今のおめえさんなら出来るかもしれねえな」  
「な、何か方法があるのか!?」  
百鬼丸が思わず立ち上がる。  
琵琶法師は手にしていた仕込み杖で床に簡単な絵を描き始めた。  
「おめえさんと魔神ってのは表と裏、陽と陰だ。  
 正反対のもんってのは反発するもんだ」  
琵琶法師の言葉を一言も聞き逃すまいと百鬼丸は真剣な表情だ。  
「だから、おめえさんの生気を叩き込めば魔神だけが逃げ出すって寸法よ」  
「なんだって!?」  
百鬼丸は耳を疑った。  
そんな方法で本当に魔神を追い出せるというのだろうか。  
「・・・あの子かい?」  
「・・・ああ」  
百鬼丸は振り返ってどろろを見た。  
「おめえさんの生気をあの子の中に入れれば  
 きっと魔神は嫌がり逃げていくだろうよ」  
琵琶法師はもう一度同じ事を繰り返した。  
「本当に、そんな方法で上手くいくのか?  
 どろろに危険は無いのか?」  
「上手くいくかどうかはおめえさん次第だね」  
そう言うと琵琶法師はヨッと声を出して立ち上がった。  
「どうした?」  
「ヒッヒッヒ、あっしは雨避けに寄っただけだ。  
 またいつか会いやしょう」  
「ああ、すまねえ。色々とありがとう」  
琵琶法師はそのまま寺から出て行った。  
百鬼丸はその背中を見送ったまましばらく動く事が出来なかった。  
 
 
昨夜、一旦止んだ雨は朝になってまた降り始めた。  
二人のいる廃寺もやぶれた屋根から雨が吹き込んでいる。  
冷たい湿気が寝不足な頭に心地よい。  
結局、百鬼丸は一睡も出来ずに朝を迎えていた。  
「あにき、目が赤いよ」  
雨のせいで出て行けない事を散々愚痴った後、  
どろろはまるで今気付いたかのように言った。  
「あ、ああ。  
 ちょっと昨日の夜、知った人がここに来てな。  
 ちょっと話が長くなっちまったんだ」  
「へー、全然気が付かなかった。  
 その人もういないのかい?」  
一瞬、どろろが昨日の話を聞いていなかったか疑った百鬼丸だったが  
どうやら本当に熟睡していたとわかり安堵のため息を吐いた。  
「ああ、夜の方が歩きやすいって言ってすぐに出て行った」  
「どんな話したの?」  
昨夜、百鬼丸が苦悩したことも知らずどろろは無邪気に聞いてくる。  
「ん、まァ大した話はしてねえよ。  
 だいぶ身体を取り戻したぜ、そいつぁめでてえなってぐらいのもんさ」  
百鬼丸はおどけて話をはぐらかした。  
「ほんと?」  
しかし、百鬼丸の様子に何か感じ取ったのかどろろはじっと百鬼丸の瞳を覗き込んだ。  
「本当さ、何疑う事があるんだ?」  
「ううん、別に」  
どろろは首を振って退屈そうに寝転がった。  
しかし、すぐに起き上がり百鬼丸の顔を眺めまた寝転がった。  
「お前こそどうしたんだ?」  
どろろの落ち着きが無いのはいつもの事だが今日は少し度が越している。  
そう言われるとどろろは起き上がってあぐらをかいた。  
「・・・おいら、聞いてたよ」  
 
「なんだって?  
 何を・・・琵琶法師のおっさんの話をか?」  
百鬼丸がそう言うとどろろはうなずいた。  
「そうか・・・でも俺はあの方法をやるつもりは無い。  
 いくら魔神を追い出せるからって・・・そのお前はまだ子供だし・・・」  
「どうして子供じゃいけないんだい?」  
どろろが無邪気に聞くと百鬼丸は言葉につまった。  
「どういう事かわかってんのか?  
 性器を入れるなんてお前・・・子供が出来ちまうじゃねえか!  
 子供が子供産んじゃいけねえ」  
「えっ!」  
百鬼丸がそう言うとどろろは驚きの声を上げた後、真っ赤になってうつむいてしまった。  
「あっ、お前・・・本当は聞いてなかったのか!  
 と、とにかくやらないから安心しろ」  
そう言って百鬼丸は恥ずかしそうにそっぽを向いた。  
サーサーという雨の音が沈黙を手助けする。  
薄暗い室内に濃密な空気が流れていく。  
「・・・あにきぃ」  
どれぐらいだっただろうか静寂に耐え切れなくなったどろろが口をひらいた。  
「おいら・・・おいらはいいよ」  
「どろろっ!お前・・・」  
驚いて百鬼丸が振り向くと今度はどろろがそっぽを向いた。  
どろろは腕を組んで目をつぶり百鬼丸の視線から身を守っている。  
「た、ただし!1個だけ条件があらァ!  
 こいつを守れるんならいいぜ!」  
どろろは言葉こそ威勢がいいものの顔は赤く体は小刻みに震えている。  
「おいらを絶対に置いてかない事!」  
ついに体ごと百鬼丸に背を向けたどろろはうなじまで赤い。  
「どろろ・・・・・・・置いていかないさ。  
 そんな事しなくたってな」  
百鬼丸がそう言うとどろろは体を半回転させて向き合った。  
 
「絶対だぞ!おいらの中から魔神がいなくなっても  
 あにきの体が全部元にもどってもだ!  
 それでも置いていかねえってんならいい!」  
あぐらをかいて腕を組んで虚勢を張るどろろの前に百鬼丸はしゃがみ込んだ。  
「置いていかない。  
 だが、俺は他の方法を探す。  
 何もこれだけしか方法が無いってこともないだろうし・・・  
 それにお前はまだ子供だ」  
百鬼丸もまた虚勢を張る。  
正直な所、百鬼丸は夜に悶えるどろろの姿に劣情を抱いた事がある。  
くっついて眠るどろろの温かさに安らいだ事もある。  
なんと言っても百鬼丸も若い男だ。  
最も女に興味がある年齢である。  
だが、どろろはまだ子供であるという思いが百鬼丸を押し留めていた。  
「子供っておいらもう十と二つぐらいはあらあ。  
 十と二つったら都じゃ結婚してらい。  
 あにきは十と四つ。二つしか違わねえ」  
「お前この間は十ぐらいって言ってたじゃないか」  
「二つぐらいはおいらも見誤るってもんよ」  
おちゃらけた調子のどろろに夜のどろろの姿が重なり百鬼丸ははっとした。  
最近は頻繁に目にする光景が浮かぶ。  
魔神は一刻も早く追い出すべきなのだ。  
「本当にいいのか・・・?」  
百鬼丸にみつめられてどろろは一瞬だけ迷いうなずいた。  
「あ、あにきこそ・・・いいの?  
 おいらが言ってるのは・・その・・・」  
「わかってるさ、お前の気がすむまでずっと一緒だ」  
百鬼丸の手がどろろの肩に置かれる。  
立て膝をついて百鬼丸が迫る。  
引き寄せられるようにどろろはお尻を浮かせた。  
 
二人の唇が重なり合う。  
二人とも世慣れているがこういう部分に関しては知識すらほとんど無い。  
ただ、重ねただけの接吻。  
「・・・・・・・」  
唇を離しても二人とも何も言わない。  
そしてそのままもう一度重ねあった。  
肩に置かれた百鬼丸の手がどろろの背中にまわった。  
ぎゅっと抱きしめられてどろろは目を閉じた。  
百鬼丸なら片手で折れそうな華奢な体が震えている。  
百鬼丸はゆっくりと唇を離した。  
「へへ・・・何か変なの」  
どろろが驚いたような顔をしているのを見て百鬼丸は微笑んだ。  
「どろろ」  
百鬼丸は突然、帯を解くと着物を脱ぎ捨てた。  
それを見てどろろも慌てて帯を解く。  
着物を脱ぐと、どろろの貧相な体が露わになる。  
しかし、それでも百鬼丸の視線を集めるには十分だった。  
あばらの浮いた胸に浮かぶツンと尖った桃色の乳頭に百鬼丸の左手が伸びる。  
「あ、あにき・・・おいら風呂入ってないから・・・」  
「三日前に入ったばかりだろ・・」  
百鬼丸の指は貧相な胸をつまみこねる。  
どろろが身をよじり声を上げても百鬼丸の手は動きをやめない。  
どろろは百鬼丸の手を出来る限り無視して一気にふんどしも解いてしまった。  
どろろの体の中で数少ない、ほとんど日光を浴びていない場所は  
本来の肌の色が白い事を百鬼丸に主張している。  
「・・・・」  
百鬼丸は何も言葉を発せず一本のたて筋を見下ろしていた。  
「あ、あにきも脱ぎなよ」  
そう言われて百鬼丸は慌ててどろろの胸から手を離しふんどしを解き始めた。  
 
「どろろ、待て」  
百鬼丸は床に座りかけたどろろを制止し自分の着物を床に敷いた。  
「この上に座って」  
どろろは言う通りに着物の上に正座した。  
二人ともお互いのどこを見ていいのやらわからず動きがぎこちない。  
「どろろ、痛かったり嫌だったりしたら言ってくれ」  
百鬼丸はどろろの前に座りそう言った。  
「うん・・・」  
百鬼丸はつばを飲み込むとどろろの膝に手をかけた。  
ゆっくりと持ち上げられ意図をさっしたどろろは後ろに体重をかける。  
ぺたんとお尻がついてどろろの秘部が露わになる。  
ほっそりとした脚の付け根の間は真っ白で縦線が一本あるだけである。  
百鬼丸は女性のもの自体初めて見たのでどろろの幼さに気付かなかった。  
「んっ・・・」  
百鬼丸の左手が恐る恐るどろろの秘裂に触れる。  
どろろの体がビクッと震える。  
同時に百鬼丸もぷにっとした感触に驚き手を引っ込めた。  
だが、欲求を抑えきれずにすぐにもう一度触れる。  
「ん・・・」  
どろろが声を出すたびに百鬼丸はどろろの顔を窺う。  
たてすじのそばの丘をなでて肌触りを愉しむと  
百鬼丸の指は好奇心を最もかきたてる場所へと伸びていく。  
「はぁっ・・・」  
百鬼丸の指が溝をなぞる。  
何往復かなぞり続け百鬼丸は指を止めた。  
「どこだ・・・?」  
どこかに入れる場所があるはずだ。  
そう聞いていたのだが見当たらい。  
徐々に百鬼丸の顔に戸惑いが浮かび始めた。  
 
「んと・・・」  
見かねたどろろが体を曲げ見下ろしながら自ら指をあてがった。  
どろろの指はあてがわれたと思うと先端がすじの中に少しだけ埋まった。  
驚愕する百鬼丸の目の前でどろろの指は割れ目の中を探り出す。  
「ゃ・・」  
その動きを真似して百鬼丸も指を埋める。  
熱く柔らかく湿った感触に百鬼丸は驚きさらに味わおうと動き出した。  
どろろの溝の中で二人の指がぶつかる。  
二人の吐息の音に淫らな音が混じり出す。  
「たぶん・・・ここ」  
どろろの動きが止まった場所に百鬼丸は指を向かわせる。  
「ここか?」  
「ぁんっ・・」  
百鬼丸の太い指とどろろの細い指が一つの場所の前で重なり合う。  
「いたっ・・」  
百鬼丸の指に秘口をつつかれどろろは小さな悲鳴をあげた。  
「大丈夫か?」  
どろろがうなずく。  
「なんだか、ぬるぬるしてるけどいいのか・・・?」  
百鬼丸の問いにどろろは顔を赤く染めるだけだ。  
「じゃ、じゃあ、いいか?」  
百鬼丸は指を秘所から離しどろろの体をゆっくりと押し倒した。  
「あにき・・・」  
どろろに両手を広げてせがまれ百鬼丸は望み通りに口を付けた。  
「あにき、魔神を倒しても置いてかないで・・・」  
「ああ、一緒だ、ずっとな」  
百鬼丸がもう一度キスをすると、どろろの恐怖心が溶けていく。  
「ここ・・だよな」  
指でまさぐり確認すると百鬼丸はどろろの華奢な腰を掴み  
壷の口に自分をあてがった。  
 
「っ〜〜〜!!」  
百鬼丸がぐっと腰を入れる。  
どろろの体がぐぐっと反り返る。  
百鬼丸の口から歓喜の声が漏れる。  
「ぃっ!」  
どろろが悲痛な叫びを上げるが百鬼丸は構わずまだ自身を押し込む。  
狭すぎる蜜壷に百鬼丸が入ってくる。  
歯を食いしばるどろろの口から音が漏れる。  
「どろろ、大丈夫か」  
百鬼丸が動きを止めるとようやくどろろは大きく息を吐いた。  
どろろの胸が激しく上下しているのを見て百鬼丸は動きを止めた。  
しばらく波打つお腹をさすっているとどろろがうなずいた。  
「おいら・・・大丈夫だから・・・やっちゃって」  
息も絶え絶えにそう言うどろろの目には涙がたまっている。  
一瞬躊躇して百鬼丸は思い切りどろろを貫いた。  
「ぐぅっ・・!」  
どろろの声は明らかに痛みを訴えているが百鬼丸は動きを止めない。  
初めて知った女に百鬼丸は止まらなくなっていた。  
「ぅんっ・・ぅんっ・・ぅんっ・・・」  
百鬼丸の不器用なリズムにあわせてどろろの口から息が押し出される。  
二人の激しい息が溶け合う。  
どろろの中の熱を抉り出すように百鬼丸の動きが激しくなる。  
「ふぅっ・・ふぅっ・・」  
小さく激しく呼吸をする事で耐えるどろろを百鬼丸はさらに責め立てる。  
百鬼丸が体を傾けて覆い被さると  
どろろのわずかばかりの視界が百鬼丸に埋められる。  
百鬼丸の動きが小さく早くなりどろろの息が止まる。  
「どろろォっ!」  
意識が快楽に攫われそうになり思わず百鬼丸はどろろにすがる。  
名を呼ばれどろろは視界を覆う百鬼丸の胸に抱きついた。  
「くっ」  
百鬼丸が短い歓喜の雄叫びを上げるとどろろの中に精液が注ぎ込まれた。  
 
 
「あにき・・・魔神は・・?」  
呼吸が整い喋れるようになったどろろの第一声で百鬼丸は当初の目的を思い出した。  
「・・・出て来なかったな」  
百鬼丸はそう言ってどろろの隣に横たわった。  
「なんでかな?」  
差し出された百鬼丸の右腕をすかさず枕にしてどろろは体を百鬼丸に向けた。  
「・・・全部入らなかったからか?」  
「入らなかったの?」  
「ああ・・・」  
「そっか・・・じゃ次こそだね」  
どろろは少し寂しそうにつぶやいた。  
「いいのか?・・・その・・」  
「うん・・・まだ痛いけど・・・後でなら」  
どろろははにかんで笑った。  
その女らしい笑顔に百鬼丸の胸が高鳴る。  
「そうか。じゃあいつか追い出せるようにしないとな」  
百鬼丸はそう言ってどろろの頬に左手を乗せた。  
「どろろ・・・絶対に俺の側を離れるなよ」  
「あにき、おいら・・・おいら一緒にいろって言われたの初めてだ・・」  
どろろの目からぽろりとこぼれた涙が百鬼丸の右腕にかかる。  
百鬼丸は初めて魔神に感謝した。  
よくぞ、自分の体でどろろを作ってくれたと。  
右手は取り返せなかったが今偽りの右手にのっている存在は  
本物の右手よりも素晴らしく掛け替えの無いものだと思う。  
百鬼丸はこの日、出来そこないだと思っていた自分の体に誇りを取り戻した。  
 
余談だが、この日以来どろろが魔神に苦しみ悶えさせられる事は無くなった。  
この行為は魔神を追い出せずとも魔神の動きは封じる事は出来るのだ。  
少なくとも百鬼丸はそう思った。  
二人が勘違いに気付くのはいつの日か。  
その日まで二人は魔神を追い出す作業に励むのであった。  
 

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