星の海を、船団が行く。  
移民船はちょっとしたビルよりも大きく、さらに見た目以上に中は空間を活かしているため、  
大勢が乗っていても、狭さは感じられず、生活にも不自由は無かった。  
そんな中で、無数のモニターやコンソール、そして多数の研究者と政府重役が空間を占める会議室だけは、  
十分な部屋の広さにもかかわらず、少々窮屈な印象がある。  
「…例の星の大気組成は?」  
その場にそぐわない、高めの声が響く。幼いと言っていいほど若い少年の声。  
「はっ、地球に比べて酸素濃度がマイナス2%弱です。数値上では問題ありません」  
「…一応、国民の皆には、着陸後数日間船内待機してもらって、調査隊を出しましょう。  
 大気だけでなく、地質調査班も。学者を中心に志望者を募ってください」  
「わかりました」  
イヌ族の少年が報告を聞いてすぐさま出す指示に、彼の倍以上の年齢がありそうな役員があっさり従う。  
「それから、着陸後の居住地の割り当て案ですが…地形図を見るとB地区は傾斜がきつめで、  
 特にお年寄りなどが長く暮らすには辛いでしょう。他の場所にまわせませんか?」  
「はっ、補正案を検討しておきます」  
てきぱきと的確な方針を示す少年。その場の最年少でありながら、彼は明らかに会議の中心だった。  
やがて会議が終わり、皆が席を立つ中、少年の隣の席に座っていた現・大統領は、  
長いマズルの先の白いヒゲを撫で付けながら感嘆したように言った。  
「お見事な手腕です。“初代大統領”」  
「…やめてください。昔の話です」  
少年…イチは、照れくさそうに頭をかきながら、それでも少し嬉しそうに尻尾を振った。  
 
「あ、チーコ?」  
移民船の各ブロックを繋ぐ広い廊下を歩いていると、イチは、友人のイヌ族の少女、チーコとばったり出くわした。  
考え事をしていたのか、チーコは呼ばれてはじめてイチに気付いて、驚いたように尻尾がぴくんとはねる。  
「あ…っ…会議、終わったんだ? ハチ…あ、いや、イチ、さん」  
慌てて言いなおすチーコに、イチは苦笑した。  
「今までどおり、『ハチ』でいいよ。『さん』もいらない」  
「…そ、そう」  
チーコの様子がどこかおかしいことにイチは疑問を持った。  
いや、今日だけではない。移民船が出航してから、ここ最近チーコの態度が妙によそよそしく…  
「…あ、そうだ! しゃ、シャミーさんが『迷惑かけたお詫びに』って、ね、  
 こ、今度のコンサートのチケット、今からでも用意してくれるって! …ハチも、どう? 行かない?」  
急に話を切り出すチーコ。尻尾が緊張してるようにピンと立って、声が少しうわずっているのは何故だろう。  
「…ごめん。その日はちょっと用事があって…」  
「……また、仕事? そんなの…今の大統領や大人達に任せておけばいいのに!」  
肩を落とすチーコに、イチはすまなそうな表情をしながらも、  
「うん…そうしたいのは山々なんだけど…でも…」  
何処か遠くを見るような目をして、「あの人」の言葉を思い出す。  
―――イチ、これからは、君がみんなのリーダーになるんだよ―――  
その言葉を胸に、彼は国を創った。千年の時を経ても、その思いは変わらない。  
そんな彼の表情を見て、いたたまれなくなったチーコが声をかけようとしたその時、  
「イチさん! 大変です! 第5ブロックでまた…!」  
「何!? ネコジャラのヤツ、またサボって悪さしてるのか!?」  
走ってきた警備員の叫びに、イチはすぐさま駆け出していた。  
「チーコ、ゴメン! また今度な!」  
走り去るイチの背中を見て、チーコは耳と尻尾を力なく垂らした。  
「ハチ……」  
 
 
移民船の食堂では、ワンニャン国でも有名なレストラン「山猫亭」のスタッフが働いていた。  
当初は殺風景だった食堂にも、スタッフが軽く手を加えて、山猫亭を思わせる内装になっている。  
事実上「出張版山猫亭」となった食堂には、地上にあったときと同じように、看板娘の歌声が響いていた。  
「亜麻色の髪の乙女」「ペルセウス」と澄んだ歌声を響かせ、最後はいつもの、優しい歌で締める。  
―――明日 また 幸せであるように―――  
以前より小さなステージの上でも良く通る声がフェードアウトすると、客席から大きな拍手が起こる。  
その拍手に微笑みと会釈を投げ返しつつ、優雅に尻尾を揺らして、ステージを去ろうとしたとき、  
ネコ族の歌姫、シャミーは、店の片隅に見知った顔を見付けた。ステージを降りて、その席に歩み寄る。  
「こんにちは。元気?…じゃないみたいね」  
「…シャミーさん…」  
チーコは力なく答えを返す。  
シャミーがテーブルの上を見ると、料理を頼んでいるのに一口二口しか手を付けていなかった。  
「…“恋の悩み”かしら?」  
シャミーはからかうような口調で言った。…チーコは赤面して動揺するか、怒り出すかするに違いない…  
だがシャミーの予想に反して、チーコの反応は深いため息だった。  
「…そうだったら、まだマシなのかもね…」  
予想外に深刻そうな事態に、シャミーはからかうのをやめて、チーコの隣の席に座る。  
「……何か、あったの?」  
チーコは、言おうとして、一度ためらって、しかし結局うつむきながらつぶやくように言った。  
「…ハチは…もう、私の知ってるハチじゃ無いんだな、って…」  
 
記憶を取り戻した彼は、ずっと大人っぽくなった。  
今まで自分のこと「オイラ」って言ってたのに、「私」とか「僕」とか時折言うようになった。  
今まで誰に対しても乱暴な言葉遣いだったのに、時々敬語を使うようになった。  
大人達と難しい話ばかりして、イタズラすることも、一緒に遊ぶことも少なくなった。  
雰囲気が穏やかになった。ずっと遠くを見るようになった。  
彼女は、そんな彼に惹かれ…でも、同時に、不安も感じていた。  
彼は自分を置いて、どこか遠いところに行ってしまうのではないか、と。  
 
「それはダメよ。チーコちゃん」  
「…え?」  
突然の言葉に振り向くと、シャミーが驚くほど真摯な瞳でチーコを見つめていた。  
「そんなこと言っちゃ、絶対にダメ」  
そして彼女は、唐突に別の話を語り始めた。  
「自分で言うのもなんだけど…この国には、私を好きって言ってくれるひとがたくさんいるわ。  
 もちろんそれはとても嬉しいし、ありがたいことよ。でも…」  
そう言って、彼女は目を伏せる  
「ほとんどの人は、私の声とか、外見とかが好きなだけ。表面だけなのよ。  
 “私そのもの”を見て、好きだって言ってくれるひとは…」  
さらわれたときに、全速力で助けに来てくれるようなひとは  
怪我させられたとき、相手を本気で怒ってくれるようなひとは  
だまされていたのを知りながら、なおも信じてくれるひとは   
「…そうは、居ないって、思うの」  
「……シャミーさん……」  
 
シャミーは静かな声で問いかける。  
「チーコちゃん…あなたはハチ君の何処が好きなの? 表面だけ?  
 声や服で飾り立てなければ、あなたは彼のこと嫌いになっちゃう?」  
「ち…違うわよ! 私は、そんなんじゃ…! 私が、私が好きなのは…」  
「なら…彼の『そこ』は、変わっちゃった?」  
言われて、気付いた。  
両親を助けるため、危険をかえりみずネコジャーランドに乗り込んだ“ハチ”。  
皆を救うため、命がけでノラジウムのトラックを走らせた“イチ”。  
そうだ、変わってなどいない。私の大好きな彼は、何一つ変わっては…!  
「やっとわかったみたいね」  
シャミーが微笑む。  
「わ、わたし…私…!」  
「がんばってね。遠ざかったように見えても、まだ手が届くんだから。……私と違って」  
最後の一言は、自分だけにしか聞こえないように小さく呟く。  
「あ、ありがとう。シャミーさん!」  
「どういたしまして。…ああ、でも…」  
「?」  
「…結局、やっぱり“恋の悩み”だったみたい、ね?」  
今度こそ予想通り、チーコは赤面したのだった。  
 
 
「ハチ!」  
イチの寝室に飛びこむなり、チーコは叫んだ。  
「ち、チーコ? どうしたんだよこんな時間に…」  
驚いているイチに構わず、チーコは大声で言った  
「私、ハチが好きッ!」  
「……は?」  
あっけにとられるイチを半ば無視するように、チーコはまくしたてる。  
「ハチのことが好き!大好き! だってハチはハチだから! イチかも知れないけどハチなの!」  
「……チー…コ…?」  
「ホントはおじいさんでも、大人と難しい話してても、実は偉い人でも好きなの!だってハチだから!」  
「…………」  
もはや絶句したイチの前で、チーコは息切れしつつ、最後に泣きそうな声で言った。  
「……私の…大好きな、ハチだから…」  
「………………………」  
しばらくぽかんとしていたイチは、苦笑した。  
「…『ホントはおじいさん』はちょっと酷いんじゃないのか?」  
チーコは笑わず、潤んだ目でにじり寄ってくる。  
「…大人になったハチは…もう、私みたいな子供なんか、嫌い?」  
イチは微笑んで……彼女を、抱きしめた。  
「…好きだよ。チーコ」  
記憶を取り戻し、変わってしまった自分を、「ハチはハチだ」と、「好き」と言ってくれる彼女が、  
今のイチにとっては、言葉に出来ないほどありがたかった。  
自分が変わることで周りとの関係が壊れてしまうことを、  
誰あろう、彼自身が、一番不安に感じていたのだから。  
 
チーコは、目を閉じて口を突き出した。イチも、その求めに応じる。  
少し緊張しながらのその口付けのあどけなさは、見た目相応の少年のもので、キスの味は甘く…  
……………………………………………  
「……チーコ、オマエ、酒臭いぞ」  
「えー?お酒なんて飲んでないよ。シャミーさんから“勇気の出るジュース”はおごってもらったけど」  
「…………」  
その言葉を鵜呑みにするチーコもどうかと思ったが、  
(この悪知恵はネコジャラゆずりなのか、シャミー…)とイチはこめかみをおさえた。  
なるほど、半ば錯乱したようなさっきの暴露じみた告白は、酒の力を借りてのことだったか。  
「ハチ…ぃ…この部屋、暑いよぉ…」  
と、更に本格的に酔いがまわってきたのか、頬を上気させたチーコは自分の衣服に手をかけた。  
「ち、チーコ!?」  
よりにもよって、チーコは脱ぎ上戸だったのか。  
「…ハチ…私、へん……ハチのそばに居ると、どんどん暑くなる…」  
「や、やめろ、チー…!」  
チーコはブーツを脱ぎ捨て、タイツをずり下ろす。  
『太股を晒すのは下着姿と同じ』という価値観を持つワンニャン国の住人にとって、  
素足というものは、21世紀の人間に対するオールヌード以上の刺激物なのである。  
その肢体を目の当たりにして、イチは思わずつばを飲み込んだ。  
「暑いよ…熱いよ、ハチぃ…」  
興奮を抑えられなくなってきたイチ。股間が熱くたぎり始めている。  
「……助けて、ハチ…」  
潤んだ目で、そう囁くチーコを、イチは気が付くと、ベッドに押し倒していた。  
 
天才的な知力を持っているとはいえ、イチは元々はタダの犬だった。  
その頃の、身体を動かす衝動を…本能を思い出す。  
「ハ…ハチぃ…」  
チーコも怯えながらも抵抗の色を見せず、なすがままだ。あるいは彼女もまた、発情しているのだろうか。  
イチはチーコの上に覆い被さり、彼女の口に舌を這わせた。  
「ん…あむゥ…ん…む」  
チーコもイチの口を舐め、舌と舌が絡み合う。唇を触れ合わせるだけのさっきのキスとはまるで違う。  
お互いの口を舐めあうような、獣じみた接吻。彼女の口内に残る酒の香りが、イチの頭も痺れさせる。  
イチは、キスをする場所を、彼女の口からずらし、マズルをなぞりながら、段々と下の方へ移していった。  
鼻で彼女の肌をつつきながら、ぺろぺろと舐めるように。  
「や…ふぅ…ン、は、ハチ…んッ」  
舌が皮膚を撫でるたびに、チーコは切なげな声を上げる。  
首までキスしたところで、イチはチーコの着衣を優しく脱がせた。  
「あ……ッ」  
太股を晒すのは下着姿と同じ、素足を晒すのは全裸と同じ。では、裸体を晒すのは…?  
酔っている状態でも、チーコは、言語を絶する羞恥心を感じた。  
自分の、どうしようもない痴態(と感じる姿)を、ハチに、大好きなひとに、見られている。  
「や…い、いやぁ…ッ」  
恥ずかしさに気が狂いそうだ。…いや、ひょっとしたらもう狂ってるのかもしれない。  
だって、そうでもなければ…こんな状況なのに、死ぬほど恥ずかしくてたまらないのに、  
……自分の尻尾が、お尻の下で嬉しそうにぱたぱた揺れてる事の、説明がつかない。  
 
イチは、露わになったチーコの裸身に再びくちづけた。ぴくっ、ぴくんと、彼女の身体が震えて反応する。  
柔らかい体毛に顔をうずめる。風呂好きの彼女の艶めかしい毛皮からは、  
ほのかな石鹸の香りと、ほんの少し甘酸っぱい、汗の匂いがした。  
まだ発展途上の胸の双丘、その乳首に赤子のようにむしゃぶりつく。  
「ふやぁ…ッ! や、ひぅやぁ…んッ!」  
恥ずかしい声が自分の喉から溢れて止まらない。  
その羞恥すら快感に変わっていき、更に恥ずかしい声が湧きあがってくる。発狂しそうな悪循環。  
と、突然、刺激がぴたりと止んだ。  
「……?」  
チーコが大きく息をつきながらも、怪訝に思ってイチを見ようとした次の瞬間。  
ぺろり  
「ひやぁッ!?」  
何かの液体でいつのまにか濡れそぼっていた股間を舐め上げられ、チーコは嬌声を上げた。  
ぺろぺろとイチの舌が舐めるたびに、唾液と湧きあがる液体がぴちゃぴちゃと淫猥な音を立てる。  
「あぅッ!?あはうぅうッ!!?」  
チーコは今までに感じた事の無い感覚に、パニックに陥っていた。  
全裸の上そんな所を舐められるという信じられない羞恥に卒倒しそうになりながらも、  
舐められたところから全身に電気のように広がる感覚が、彼女をとらえてはなさない。  
快楽が積み重なっていく。頭が朦朧としてきて、このままじゃホントに狂うか死ぬかしてしまう!  
限界に達しそうになった瞬間、イチは、チーコの秘所から口を離した。  
 
「ふ…ぁ…?」  
疑問の視線を投げかけるチーコに、イチは、苦しそうに言う。  
「チーコ…ゴメン。コレ以上は、ダメだ…やっちゃいけない事なんだ」  
暴れ狂いそうな本能を、理性で必死に押しとどめる。  
既に、「性」の意味すら知らない少女を、自分は欲望のまま辱めてしまった。  
これ以上、本能に従えば、取り返しのつかないことになる。   
「ハチ……」  
チーコは、揺れるイチの瞳を見た。  
ああ、あの目だ。…遠くを見る、“大人”の目。ハチの中の、“イチ”の目だ。優しく、少し悲しい目。  
今の彼は、“大人”として、私を気遣ってくれているんだろう。…けれど…  
「……いい、よ…」  
チーコは、かすれたような、半ば吐息ともつかない声で囁く。  
「……え?」  
「ガマン…しないで、いいよ…ハチ…」  
「…チーコ……でも…」  
首を振るイチにチーコは続ける。  
「わたし…ハチなら……ハチになら…何されても、いい…」  
「…チー…コ……」  
「…だって、ハチが、好きだから…」  
その言葉に、息をのむイチ。  
「……本当に、いいのか」  
「うん……ソレに…」  
彼女は、びしょびしょになった自分の股間を見て  
「もう…私も……ガマン、できないみたい」  
 
イチがズボンの金具を外すと、そこから、既に限界近くまで張り詰めたオスの象徴が現れた。  
「…まさか……ソレを…ココに…?」  
性行為を知らないチーコは、イチの肉棒と自分の秘裂を見て、これから何が行われるのか想像し震えた。  
自分の身体の中に、あんなモノが入る空間があるなんて、とても思えない。  
だが恐怖と不安とは裏腹に、イチのそれを見た彼女の身体は、興奮の度合いを高めていく。  
「…やっぱり、やめておくか?」  
問うイチに、チーコは、不安を隠し、今できる精一杯の笑顔で答えた。  
「……ううん、大丈夫。……来て」  
それを聞いたイチは、ゆっくりと、彼女の中に自身を沈めていった。  
「あ…!くぁ…んんぅッ!う、あぅ、あ…ッ!」  
異物感、圧迫感、そして、何とも言えない快感がごちゃ混ぜになって、チーコは悲鳴を上げる。  
「…ッ、ち、チーコ…大丈夫、か…ッ?」  
「う、うんんッ! へ、へい…きッ! き、きもちい…ぁはぁあッ!」  
チーコはイチの背中に手をまわし、ぎゅっとしがみついて、感覚の洪水に耐える。  
背中にツメが立って痛かったが、彼女の辛さが少しでも和らぐなら、と、イチは何も言わずに堪えた。  
「ぅ…ここが、一番、奥、だな…」  
「くふぅん…す、すごいぃ…こんなに、入る、なんてぇ…」  
「う、動くぞ…ッ? いい、か…?」  
「うん、い、いい、よ…ッ」  
ゆっくりと…そして、段々早く、二人は動き出した。  
理性で本能を抑えるでも、本能が理性を支配するでもなく、お互いの心と身体が、奥底から願った行為。  
それは、肉体的にも、精神的にも、二人にとめどない喜びをもたらした。  
 
体が燃えあがるようだ。目の奥で火花が散り、快楽で脳がはじけ飛びそう。  
限界の近い二人は、衝動のままに、腰を振りながらお互いの顔を舐めまわしていた。  
どれだけの知恵を得ても、あまりに純粋な意思からなる行為は、結局、原初の姿へと回帰するのだろう。  
ちぎれんばかりに尻尾をぶんぶん振りながら絡み合う二人の姿は、  
彼らの進化の原点たる、犬の交尾そのものだった。  
「ハ…ぁあ、ハチぃいッ!もう、もうだめッ、わた、しぃいいいッ!」  
「チーコ…ちぃ、こぉお…オイラも、も…ぅううッ!」  
全身を互いの汗と体液と唾液でびしょびしょにしながら、二人の体は快楽の終着点へと加速していき。  
「あ……ああああぁあぁぁぁぁあぁあああ……ッ!!!」  
「うぐ、ぁ、うぉあぁぁ…ッ!!」  
二人は、同時に絶頂に達した。  
チーコの身体に締め付けられ搾り取られる感触にイチは叫び、  
イチの身体が熱いほとばしりを放つ感覚にチーコは悲鳴を上げる。  
がくがくと痙攣する二人の身体は、やがて、絶頂が通り過ぎるとともに、  
全身の力が抜けたように、一緒にベッドの上に崩れ落ちた。  
「…ハチ……大好き…」  
「…ああ、大好きだよ…チーコ…」  
ほとんどうわごとのように、二人は呟いた。  
 
 
(…上手くいったかしら、あの二人)  
シャミーはステージに上がりながら、自分がお膳立てした二人のことを考えていた。  
(…私も、いつか、きっと…)  
曲が始まる。彼女は、自分たちの船の外、星空も時空も超えて彼方に届くよう、願いを込めて歌い始めた。  
―――大好きな人達が、明日もまた、幸せでありますように―――  
―――大好きな人達と、明日もまた、笑顔で会えますように―――  
 
                              〜終〜  

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