「桜君は、これでいいのかな?」
僕は俯いたまま目の前にいる少女の話を聞きます。
「ぼ、僕は…本当は・・・」
―この物語はある一人の平凡な少年と、二人の少女が織り成す恋の物語。
秋のある休日、僕は珍しくドクロちゃんの妨害もなく心地よい朝を
迎えることができました。
「珍しいな…。あ、さてはドクロちゃんまだ寝てるのかな?」
僕がそう思い襖に手を掛けピシャン!と勢いよく開けたその時でした。
ぼくはまたとびらをしめました。
「ねぇ、ザンスさん、ナニヲシテオラレルノデショウカネ?貴様ぁぁぁっ!」
ザンスさんはドクロちゃんに添い寝をするような形でそこにいたのです。
僕はピンキーモヒカンの天使のわっかを手前に引きました。
自分の被害なんて関係ありません。
するとわっかが正に鋭い音をたててピンキーなモヒカンをスパッと斬りました。
「アー!ミィの自慢のモヒカンがぁぁっ!」
ザンスさんは切れたモヒカンを抑えながら言います。
「今日はドクロちゃんとザクロちゃんに伝言があるので来たザンス!
ちょうど落ちた場所が場所だったザンsぐぶぉぉっ!」
ザンスさんの必死の弁解もむなしく僕に殴られました。
「もう伝言だけ伝えるザンス!えっと、至急ルルティエへの帰還を命ずる。
ザンス!もう帰る!」
あ、本当だったんだ伝言。
とりあえず心の中でごめんなさい。とだけ言っておきますか。
「なんかあったの?」
あ、ドクロちゃんおきてたのね。僕はピンキーモヒカンとの出来事を話しました。
「そっかぁ…ルルティエに帰らなくちゃいけないのかぁ・・・」
あ、ザクロちゃん。
「ルルティエへの帰還ですか、仕方ありません。命令ですから。」
「ちょとの間寂しくなるね。」
「うん。」
「またすぐにあえますよ。……多分」
「あれ?いま小声で多分っていったよね?今絶対言ったよね?」
最後にとても不安になる一言を残してドクロちゃんとザクロちゃんは去っていきました。
あの二人はきっと大丈夫ですよね。きっと戻ってきますよすぐ。
さて、今は両親もまたどこかへ行ったみたいですし、僕も出かけるとしますか。
僕は着替えるとザクロちゃんが作ってくれていた朝ごはんを食べて
誰もいない家に「いってきます。」とだけ言い残して家をあとにしました。
「出たのはいいけど、どこにいけばいいかな・・・とりあえず久しぶりに
駅前でも行こうかな。」
今の所持金は6000円、特に不自由はない金額でしょうし、あの天使もいないので
滅多に減ることはないでしょう。
//////
そうこうしている内に駅前に着きました。とりあえず大きな店にでも入るかな。
と、百貨店の入り口に行くとそこには見覚えのある顔。
「あれ?そこにいるのは田辺さんかな?」
不幸(?)なことにもばったりと田辺さんと遭遇してしまいました。田辺さんは
まだ僕の存在には気づいてはいないようです。と、とりあえずばれない内に違う場所へ、
こんなことした僕が間違っていたのね。
「桜くん、今私のこと見て逃げた?」
やっぱりばれました。
「や、やあ田辺さん。」
僕はぎこちなく片手を上げます。
「あれ?ドクロちゃんはいないんだ。」
「実はね…」
とりあえず僕は朝の出来事を話しました。
「つまり、ドクロちゃんとはしばらくの間会えないのね。」
「うん。」
いつ帰ってくるかは分かりませんが…
「どうかした?」
突然田辺さんが少し俯き加減だった僕の顔を覗き込んできました。
ちょっとドッキリです。
「それじゃぁ、私の買い物に付き合ってよ。」
「え?」
「買い物!男の子がいれば色々助かるの!それに心配しすぎだよ。
私が言えることじゃないけど心配いらないって!
だから今日は楽しもうよ、ね?」
・・・まぁ確かに気にしすぎかな。とりあえず励ましてくれた田辺さんに感謝です。
「ありがとう、田辺さん」
「じゃ、行こ。」
「うん。」
//////
結構疲れました。
死ぬかと。僕をコロス気ですか、貴女は。
もう3時を回っていました。僕の資金は…あれ?ヘッテルヨウナキガシマスネ
キノセイカナ?3000円?オカシイナ?
「桜くん、つき合わせちゃってごめんね。」
「いいよ、おかげで色々と楽しい思い出ができたから。」
「12歳…沢山見れたの?」
「なんで田辺さんはそればっかり言うのさ!」
くそぅ!田辺さんが男だったら、男だったらぁぁ!
「あ、あの、ちょっとさ、言いたい事があるから店、でよ。」
明らかにさっきの田辺さんのトーンとは違う、小さな声で言ってきました。
どこか不安げな表情で「…ついてきて」とだけいって店をでました。
//////
夕方、時間はもう四時を回りました。秋が近づいているのか、肌寒く感じてきました。
着いた先はアバランチ公園。
「話って何?」
静寂を破った一言。実はここにくるまで田辺さんと僕は一言も話していないのです。
だって、きまずいんだもん!
「あのね…」
もしかして、今になって色々といってくるのでしょうか。実は買い物の間、
田辺さんは不思議なことに特になにも毒づくことはなかったのです。
あ、さっきの「12歳沢山見れたの?」発言はなしで。
「わ、私ね、今までさぁ、桜くんに結構変な事言ってきたから…その…ごめん!
…学校じゃ言いづらかったから…」
「え?いや、僕は気にはしてないよ。それに謝ってくれたの凄い嬉しいよ。」
「ごめん…もう、言わないから。」
深く頭を下げてきた田辺さん。なんか僕が悪い事したような感じになっている雰囲気に
が…
「あ、あとね、もうひとつ、あるの。」
あるぇ?まだあるようです。え?お前空気よめって?KY?
知らんよそんなこと。
「わ、私ね、桜くんのことがね…」
ここまできたらあの言葉しかありません!
でも僕はいいませんよ!待ちます。僕は待っちゃうのです!え?自重しろ?
知るかぁぁっ!
と、まぁこんくらいドキドキしてるワケですよ。だって、さっきまで普通だったのに
急に田辺さんの顔みたらドキがムネムネしてくるんですもの。
その、素直に可愛いです。微妙に頬が朱くなってるとことか、俯いてもじもじしてるとことか。
あぁ!!!抱きしめてやりたい!え?自重しろ?俺はいたって平常心さ。
少しの間をおいて放たれた言葉。
「好きなの。」
そりゃもう可愛いのなんのって。あれ?俺キャラ変わってる?気のせいだよ。
その可愛さに圧倒されて、
「いいよ。」
と言ってしまったのです。
頭の中でまとまりがよくついてないまま、空気よみすぎたと、反省。
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月曜日、今日は朝早くから静希ちゃん母から連絡があり、今日は休む
とのことです。
「静希ちゃんになんて言おうかな、田辺さんのこと。」
田辺さんと付き合っている事知ったらどういう反応するかな。
ドクロちゃんがまだ帰ってきてないので一人で学校に行くことになりました。
家からでるとそこには田辺さんが…
「ってなんで僕の家知ってんのさ!?」
「いいじゃん。あれ?静希ちゃんは来てないの?」
やけににやけた顔で僕に言ってきました。
…てことは、分かってきやがったなこのあほ毛娘め。
「風邪だって。」
「むふふ・・・」
なんですか、その目は?今は朝なんd
あるぇ?たなべさんがぼくのくちにくちをつけてるよぅ?
「っうわ!」
僕はびっくりして口を離してしまいました。死んじぢゃえ!今の僕!
中途半端にキスされたせいか、『もう一人の僕』が反応をし始めました。
てか、今のファーストキスね。
……実は大人のキスがしたかった僕がここにいます。
「桜くん、どうしちゃったの?凄い元気じゃん。もしかして焦らされるの
弱いタイプ?」
言われたー!で、でも今のなんか誘ってた感が…
《じゃぁ、のってやろうぜ!》
僕の頭の中では緊急集会が開かれています。
《だめだって!これから学校だし!》
《戦闘開始!》
《僕の話聞いてよ!》
僕は中学校生活初めてのサボタージュを決行致しました。
さらば、真面目な僕、いや、俺。
「あれ?昨日もう言わないとかいってなかった?」
「へ?あ、いや、その……」
「学校、一日サボったって平気さぁ。」
「あ、え、えぇ!サボるの!?」
「うん。親、今日は夜までいないし。」
内の親がいないから僕がこわれるのです。馬鹿親め。
「入ろう。」
「え?う、うん。」