虚ろな目を虚空に向ける初老の男。  
崩れた壁の間より差す陽光。  
ホコリの舞う灰色の廃墟ビルの大広間には、ところどころ破れた三人がけの緑色のソファーがある。  
 
〈こつ、こつ――〉  
 
そこに腰かける男が面は上に向けたまま、眼球を正面に回すと、品の良い足音が広間に響いた。  
「見つけたぞ、草壁桜」  
この場所にはおよそ不釣り合いな、清潔な身なりをした、黒い和服を着た女性。  
その切れ長の瞳で「草壁桜」と呼ばれた男を睨み、  
「神の領域を侵す数々の薬の開発、および天使の拉致・監禁行為。許されることではない」  
「く、くっくっく……」  
何がおかしいのか、男は肩を震わせ、喉にひっかかるような笑いを漏らし始めた。  
「草壁桜、我々神の使いは貴様に神罰を下しに来た」  
黒髪の喪服の女性の背後からは、険しい表情をした、頭上に光る輪を浮かべた人間がさらに数人出てきた。  
「遅い」  
ひとしきり笑った男が初めて口を開き、そう言った。  
「あんたら、天使だろ。何でこんな遅いのさ」  
「……『あの天使』が最後に起こした厄介事の処理に手間取っての……。だが、それももうじき終わる」  
「何ッ?! 彼女はまだ……?」  
ソファーに深く腰掛けていた男は女の言葉に過剰な反応を示し、バネのごとく上半身を跳ね起こし、身を乗り出した。  
「……彼女の公開処刑はお前にも見せたハズだがの」  
女のその言葉を聞くと男はがっくりと頭を垂らし  
「あんたらダケは許さない……」  
そう一言、つぶやいた。  
まるでボロ雑巾のような服を身にまとった男は、その汚れた指先で、傍らにあるパソコンのキーボードを操作した。  
「遺伝子操作によって生まれた究極生命体。あんたらを一掃するために僕が作り出した」  
突然天使たちの背後の壁が、大きな音をたてて崩れると、そこから大量の飛行生物が部屋に入ってきた。  
「なっ……これはっ……!」  
鷲ぐらいの大きさのその生物は、もはや生物と呼べるのかも分らないグロテスクな姿をしていた。  
人工的な配色をしたその群れは低速で飛行し、天使たちをかく乱した後、まるで元からいなかったかのように、跡形もなく消えうせた。  
「消えた……?」  
女がそう呟いた瞬間、他の天使たちに異常が起こった。  
 
〈ぱんっ〉  
 
「うわあああああっ!」  
天使たちの全身の皮膚が、泡立ち、破裂し始めた。  
「くっ……!」  
超高速で飛行し、正体不明の攻撃をしてくるそれをかいくぐり、女は男の胸ぐらをつかんだ。  
「わらわの娘は……サバトはどこじゃ! 言え!」  
男は生気のない瞳で女を一瞥すると、  
「見たい? もう原型を留めてないケド」  
何でもないことのように、そう言った。  
「何……?」  
男が再びキーを操作すると天井が開き、そこから『何か』が〈どさっ〉と女の目の前に降って来た。  
「うっ……あ……」  
それは体中を解剖された、頭に羊のような角を持った少女であった。  
しばし目を見開いて言葉を失っていた女は、その場にうずくまると、胃の内容物を盛大に吐き出した。  
「う……うおえええええっ……うっ……ど、どうしてこんな……こんな、ことを……うっく……」  
女はみっともなく泣きじゃくっていた。  
「あんたらはあの日、『僕を』殺したんだよ。あの日、僕は彼女が、ドクロちゃんが僕にとってどれだけ大切だったかに気付いた。ドクロちゃんは僕の全てだった。それを殺したあんたらを許さない。だから、僕は亡霊なんだよ。あんたらを呪うためだけに存在している」  
そう言った男の右腕が、破裂した。  
「これは復讐なんだよ」  
 
   ★  
 
「いぃーち、にぃーい……」  
湯気曇る浴室。  
僕とドクロちゃんは二人仲良くバスタイムです。  
ガス代の節約というワケではないですが、もう恋人同士だから気兼ねなく二人でお風呂に入れます。  
きっかけは、僕が一番風呂をいただいているときに全裸のドクロちゃんが浴室に飛び込んできたコトです。  
拒む理由もないので、こうして今に至るワケなのですが、  
「数ヶ月前までは考えられない状況だなあ……」  
当のドクロちゃんは今、お湯の満ちた浴槽の中で、僕の脚の上にお座りして、数を数えているのです。  
「ごぉーお、ろぉーく……」  
数ヶ月前なら彼女のオールヌードを見ただけで、僕は命の花を散らしていたコトでしょう。  
頭の上には輪っかが〈きらり〉。  
暗銀色の髪の毛は艶があり、手入れが行き届いています。  
色白で瑞々しい肌はお湯につかって、ほんのり桃色。  
どこをとっても申し分ない僕の自慢の彼女、ドクロちゃんのリーサルウェポン、最強伝説にして空前絶後、四面楚歌で四捨五入な、彼女の自己主張が過ぎる胸が、―いえ、このさい『おっぱい』と言い切りましょう―が〈ふよふよ〉と水面に揺れています。  
 
「じゅーう、じゅーいちっ!」  
湧き上がるイタズラ心。  
果たしてドクロちゃんは僕のコトをどこまで許してくれるのか、気になるトコロではあります。  
「んー? どうしたの? 桜くん」  
黙っていた僕を怪訝に思ったドクロちゃんが数えるのを中断します。  
僕は決死の覚悟でその八十五センチを  
 
〈ふにゅん〉  
 
後ろからそっと掴みます。  
ヘブン。  
手のひらより脳に電気信号で送られるその感触。  
脳を支配するフレーズはすなわち、  
―おっぱいって素晴らしい―  
一瞬な永遠を楽しみ、そして撲殺に備える僕ですが  
「あんっ、もう桜くん……」  
以外にもドクロちゃんは僕を撲殺することはしませんでした。  
「あれ? ……胸、触られても、ドクロちゃん、平気なの?」  
「何で? ボク、桜くんの恋人だよ? あんっ……ねえ、桜くん、もっと触って……?」  
感動しました。  
男、草壁桜、ついにやったのですね。  
ドクロちゃん、何て可愛いんでしょう……ッ!  
「そんなこと言ったら、もっとイタズラしたくなっちゃうよ、ドクロちゃん……」  
背後からドクロちゃんの胸の桃色の突起をつまんであげると  
「ひゃあん! ……あっあっ、胸が切なくて、気持ちいいよお……」  
僕の上でドクロちゃんが嬌声を上げ、よがります。  
そんなドクロちゃんを見てると、ますます彼女への独占欲は膨らんでいくばかりです。  
「あっ……桜くん……」  
「ん?」  
何故か急にドクロちゃんは顔を真っ赤にします。  
「当たってる……」  
見ればすっかりエレクト状態なマイ・サン。  
「ご、ごめん……ドクロちゃん」  
僕も何だか照れくさくなります。  
「ううん。ねえ、桜くん……」  
ドクロちゃんはお湯の中、体制を変えて僕の方を向くと、  
「んっ……ふっ……ちゅっ……んっ……んっ……」  
柔らかくて可愛らしい唇で、ディープキスを食らわせてきます。  
「後でボクと、いっぱいしよう?」  
僕の肩に頭を預け、耳元でそう囁きます。  
「ドクロちゃん……」  
僕は、世界一幸せな男です。  
 
これは、幸せな世界にほころびが生じ始める物語。  
 
   ★  
 
闇に浮かぶ白い肌。  
薄暗い寝室に二人きり。  
「桜くん……ボク、すごいドキドキしてる……」  
目の前には濡れた暗銀色の髪をしたドクロちゃんが、両手を自分の胸に押し当てて、恥ずかしそうにうつむいています。  
そんな可愛い天使の少女に歩みより、  
「本当だ……」  
そっと抱きしめます。  
抱きしめた彼女から、温かい体温と共に〈とくんとくん〉と鼓動が伝わってきます。  
「桜くんは、ボクを見て、ドキドキする?」  
僕の胸に顔をうずめて、安心したような表情で、そう問います。  
シャンプーの優しい香りが鼻腔をくすぐります。  
「ドクロちゃんみたいな可愛い女の子が目の前にいて、ドキドキしないわけないでしょ?」  
ドクロちゃんの頭をゆっくり撫でながら、僕もドクロちゃんを抱きしめて、幸せを噛みしめます。  
「んっ……」  
ドクロちゃんが僕の顔を引きよせて、瑞々しい唇を重ねてきます。  
僕はそのまま力を抜いて、ドクロちゃんを腕に抱いたまま、背後のベッドに倒れこみます。  
〈どさっ〉  
ベッドの上で二人の身体が重なり、なおもキスは続きます。  
「んっ……んっ……」  
どのくらいそうしていたでしょうか、しばらくすると彼女は唇を離し、何か物言いたげに僕を見つめます。  
「……じゃあ、脱がしてもいい? ドクロちゃん」  
「うん……」  
ドクロちゃんは恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうな表情をします。  
今のドクロちゃんはTシャツに下着一枚という格好。  
僕も同じです。  
僕が下から彼女のTシャツをたくし上げようとすると、ドクロちゃんは両腕を上げて脱がしやすいようにしてくれます。  
〈ぷるんっ〉  
Tシャツといっしょに途中まで持ち上げられた彼女の大きなおっぱいがこぼれ落ちます。  
そんな光景に少し目を奪われていると、  
「桜くんは、胸が大きい娘が好き?」  
ドクロちゃんが不思議そうに聞いてきます。  
かつての僕=ロリコン疑惑よりくる疑問でしょうか。  
それはとても心外です。  
「僕は、ドクロちゃんが好きだよ」  
お返しに僕はそう言って、ドクロちゃんの胸の薄桃色の先端にキスをします。  
「もう、桜くんはそうやって上手いこと言ってー……あんっ! もう、桜くん強く吸いすぎー!」  
ドクロちゃんが僕の頭を〈ぽかぽか〉叩きます。  
手のひらでその大きな胸を包み、ゆっくり揉んでみます。  
「あ……んっ……桜くん……」  
親指と人差し指で乳首を優しく愛撫しながら、首筋に舐めるようなキスをします。  
 
「ひゃん……桜くん、それ、すごく気持ちいいよ……」  
僕のつたない愛撫でも、ドクロちゃんはちゃんと感じてくれているようです。  
しばらく乳首をいじっていると、少し堅くなってきたような気がします。  
何かの本で読んだ気がしますが、本当に堅くなるんですね。  
それだけドクロちゃんが感じてくれていることに、僕は何だか嬉しくなります。  
「はっ……はっ……桜くん……大好き……」  
僕が愛する女の子は僕のことを好きだと言いながら、僕の腕の中でしだいに呼吸を荒くしていってます。  
彼女をもっと僕の色で染めてしまいたい。  
そう思い、彼女の綺麗な色をした乳首を、僕の口に含みます。  
「ひゃっ! ……さ、桜くん、赤ちゃんみたいだよぅ……」  
ドクロちゃんは真赤になりながらも、目を堅く閉じて、ベッドのシーツを握りしめています。  
口の中で乳首を舌でころがすように舐めまわしてみます。  
「やあっ! だ、だめだよ桜くん……! そんなにしたら、ボク、イっちゃうよぅ……! ……あっ……はっ……はっ……」  
僕は開いてるもう片方の手でも胸を愛撫します。  
「あっ……だめっ、だめ……本当に、本当に来ちゃうよぅっ……やっ……あああーっ!」  
ドクロちゃんは僕の頭を両腕で抱きしめると、身体を弓なりにして、そのまま果ててしまったようです。  
「はあっ……はあっ……はあっ……」  
ドクロちゃんは荒い呼吸を繰り返しながら、僕にもたれかかって来ます。  
「もう……ひどいよ桜くぅん……胸だけでボクをイかすなんて……」  
「気もちよかった?」  
「うんっ! 桜くん上手〜! どこかで習ったの?」  
ドクロちゃんが〈にぃ〜っ〉と半眼で僕を睨みます。  
「僕が身体を許すのは、ドクロちゃん以外にはいないよ?」  
「えへへっ! 浮気したらダメだからねっ! ボクの初めても桜くんだったんだから、ずーっとボクだけと遊んでくれなきゃ嫌だよ?」  
そう言ってドクロちゃんは、僕にはもったいないくらいの笑顔を向けてくれるのです。  
「うん。ドクロちゃんとしか、しない。でもね……」  
ドクロちゃんの顎を持ち上げて、軽くキスをします。  
「遊びじゃなくて、僕は本気ですよ?」  
「もうっ! さすがは布団の上では常勝無敗の桜くんなんだからっ! ねえねえ、続きも、して?」  
ドクロちゃんが、まるで猫のように僕の腕に頬ずりして続きをせがみます。  
「じゃあ、横になって?」  
「うんっ!」  
 
僕がそう言うと、ドクロちゃんは素直に布団の上に仰向けに横たわります。  
「可愛いよ。ドクロちゃん」  
僕のそんな言葉だけでも彼女は敏感に反応し、頬を染めてくれます。  
「えへへへっ、ありがとう桜くん」  
そう言って彼女は恥ずかしそうにゆっくり両脚を開くと  
「挿れても、いいよ?」  
闇の中でよりいっそう映えるドクロちゃんの健康的な白い両脚が印象的です。  
ふとももの付け根、彼女の可愛らしい恥部にはうっすらとしか生えていません。  
そんな普段からは考えられないドクロちゃんの姿に、僕の身体は息子に大量に血液を送りこみ、海綿体はハガネのゴトク。SAN値は絶賛低下中。  
ビーストモードにギアチェンジ。  
されど彼女をいたわり、愛すことも忘れてはナラズ。  
「挿れるよ、ドクロちゃん」  
「桜くん、手……手ぇ握って……」  
ドクロちゃんは挿入されるのが怖いのか、必ず挿入前に手を握るよう懇願します。  
「んっ……あっ……桜くんが入ってくる……」  
〈ずぷぷぷ〉と埋もれて行く僕の怒張。  
完全に怒張が埋もれば先端に彼女の子宮口を感じます。  
僕もドクロちゃんもここで一息。だって二人はまだまだこんなの慣れてないのです。  
「……桜くんと、合体しちゃったぁ……はぁ……はぁ……桜くん……好きぃ……」  
ドクロちゃんが囁きます。  
僕は彼女を安心させるため、繋がったまま彼女を抱きよせ、優しく抱擁してあげます。  
僕の胸板で二つのふくらみが柔らかに形を変えます。  
「じゃあ、ドクロちゃん、動くよ?」  
「ねえ桜くん?」  
耳元で囁かれる、いつもの元気一杯な声とは少し違った甘い声。  
「何? ドクロちゃん」  
「ボクのこと、メチャクチャにして? 桜くんのコト、もう忘れられなくなっちゃうくらい」  
……思わず目頭が熱くなってしまったではありませんか。  
男、草壁桜。キミが望むトコロへどこまでも誘おう。  
「ドクロちゃん、そんなこと言って、カクゴは出来てるんでしょうね? ……んんっ……」  
彼女は返事をするかわりに僕の口を彼女の口でふさぎました。  
もうあともどりは出来ません。  
二人の恋の片道切符がたった今発行されたのですッ!  
僕はドクロちゃんの小柄だけど張りのあるヒップを両手で抱き抱えると、そのまま立ち上がりました。  
「ひゃあっ?!」  
びっくりしたドクロちゃんは慌てて僕の首に腕を回します。  
 
「さ、桜くん、こんな格好でするの?」  
そう、彼女はまさに今、僕に抱っこされているような状態。早くも腕がつりそうなんですが、これがいわゆるエキベンなる体位です。  
「ドクロちゃんは、イヤ? イヤなら止めるケド」  
「もうっ、桜くんったら……」  
ドクロちゃんは頬を膨らませながらも、両脚を僕に絡めて落ちないようにしっかりホールド。  
これでもう僕とドクロちゃんは離れたくても離れられません。  
彼女が落ちないコトを確認して、僕はゆっくりと抽挿運動を開始します。  
「やあっ……はっ……これ、すごい奥まで当たるよぅ……あっ、あっ、あっ……」  
僕の動きに合わせてドクロちゃんの膣壁は激しく脈動し、僕を絞り取ろうとします。  
「あーっ、あっあっ……桜くん、桜くん……ボクのお腹、桜くんのが、かき回してるよ……すごいよっ……んんっ……! ちゅっ…んちゅ……」  
彼女の唇を奪って貪るようなディープキス。  
激しい動きに連動するように僕とドクロちゃんの舌もお互いの口内で自由に暴れまわります。  
「んあっ……足りないよぅ……もっと、もっと桜くんが欲しいよ……ッ! …あんっ、んっんっんっ……」  
あまりに激しい動きに僕の下半身はそろそろ限界を迎えそうです。尿道をゆっくりと這い上がってくる射精感。  
「んっ……ドクロちゃん、僕、そろそろ……」  
「んふっ…ふっ……うん、出してッ……いいよ。中に、ボクのお腹の中に桜くんの全部出して……」  
「え? 大丈夫なの……?」  
「うんっ! 今日は大丈夫だよ? ……あっ……だから、早くちょうだい?」  
僕は腕もそろそろ限界なので「えいや」とばかりにピッチを上げます。  
うねり、僕の怒張を〈きゅっきゅっ〉と締め付けるドクロちゃんの膣内。  
射精感はすぐ先端に到達。カウントダウンに入ります。  
「やっ……はっ……ボク、またイっちゃいそうだよッ……! ……あっ、ああーっ! 桜くんっ!」  
ドクロちゃんが声を上げて〈ぎゅーっ〉と僕を抱きしめます。  
「うっ……ドクロちゃん……ッ!」  
どうやらイってしまったドクロちゃんの膣がかつてない力で僕を締め付け、そして僕にも限界が訪れます。  
先端からほとばしる僕の子孫たち。  
中に放出するというあまりの気持ちよさに失神しそうです。ついでに抱きつくドクロちゃんの万力のような腕の力に背骨も折れそうです。  
さようなら僕精子。新たな冒険に向かったキミたちに一つ言いたい。彼女は今日は安全日。  
「ああーっ……桜くんの木工ボンドがーマヨネーズがー……いっぱい……」  
「ちょっとドクロちゃん大丈夫?!」  
恍惚とした表情でぶつぶつとヒワイな単語をつぶやくドクロちゃん。  
僕の息子さんは「これでもか、これでもか」とばかりに未だ精子を彼女の中に〈ぴゅるぴゅる〉放出しています。つか、ぶっ倒れそう。  
 
言うまでもなく僕の体はグロッキー。  
ドクロちゃんを抱いたまま布団に背中から倒れこみます。  
「ぐぐぐ……イササカ本気を出しすぎた……」  
これもドクロちゃんが愛しいがユエの行いですが、明日は確実に筋肉痛でしょう。腕の感覚がありません。ついでに背中も。  
「ん……? アレ? ドクロちゃん?」  
見れば彼女は僕の上にまたがり、未だ繋がったままの局部を見ています。  
「ドクロちゃん、もう抜いてもいいよ?」  
「やだ。ボクまだ抜きたくない」  
「ぇ」  
嫌な予感。  
「桜くん、ボクまだ全然足りないよぅ。桜くんはまだまだイケるクチだよね?」  
「無理ですイケません! 何言ってるのドクロちゃん! アナタいつからそんな絶倫に……ってだから問答無用で動かないでー! いたたたた! 尿道が痛い?! 二回戦なんてまだムリぃッ! ぃぎゃああああぁぁぁ………」  
 
   ★  
 
あの後結局二回戦、三回戦と付き合わされ、尿道はズキズキ、合計三回子供のもとを体内より放出した僕はすっかり干からびました。  
最後に彼女のアソコから僕のアレを〈ずるり〉と引き抜けば〈どろり〉と中より溢れる木工ボンドではない何だか妙に白い流体。  
二人とも全身汗だくなので、再度シャワーをあびようと声をかけても返事はなし。  
見れば穏やかな寝息を立てる天使な少女。  
仕方なく抱きかかえて風呂場に運べば彼女の気分を損ね真っ赤に乱れ咲く僕の四肢→ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪→仲良く洗いっこ。  
 
余韻を味わうためにもう一度布団の中でハダカで抱擁すれば、こんどこそ僕の胸の中で穏やかな寝息を立て始めるドクロちゃん。  
美しい白い肌を惜しげもなくさらすドクロちゃんはまさに天使そのものです。  
ふと、『月に帰らないかぐや姫』なんてフレーズが頭に浮かびました。  
こんなにも幸せそうな顔で眠る姫に、帰って欲しくない。  
そんなことを思っていたときでした。  
穏やかな表情で眠っていた彼女が突然苦しげな表情を見せたと思えば  
「いやああああーっ!! 桜くんっ! 桜くんっ!」  
〈がばっ!〉と身を起こし目を見開いて悲鳴を上げるドクロちゃん。  
「ド、ドクロちゃん? どうしたの?」  
「あ……桜くん……」  
〈つー〉と天使の頬を伝うのは一筋の涙。  
やがて彼女は僕に抱きつき、嗚咽を漏らし始めます。  
 
そんな彼女の頭を優しく撫でながら  
「怖い夢、見たの?」  
「うん……うん……とっても怖い夢……桜くんがいなくなっちゃう夢。……うーっうっうっ……えうーっ……桜くん……いなくなっちゃヤダぁ……」  
「大丈夫だよ……僕は、ここにいるよ? ぜったいドクロちゃんを一人にしないから。……ね? ……ずっといっしょだよ……」  
 
   ★  
 
秋。紅葉は燃えるような彩で大学の木々を染めます。  
本日はお日柄もよく、突き抜けるどこまでも青い空。  
休日はよくドクロちゃんとお出かけするようになりました。  
大学公園を歩く僕の腕に抱きつきご機嫌なドクロちゃんは、白いブラウスにベージュのカーディガンを羽織り、赤い大きなリボンは胸元を強調。ワインレッドに黒の線が入ったミニスカートをはいています。  
そんな少し秋めいてきた彼女の出立ちに僕のハートは高鳴りっぱなし。僕たち、いわゆるカップルなのですか?!  
見れば公園には少なからず男女のペアが見受けられます。思わず彼らに「ほら見て? 僕の彼女はこんなに可愛いんだよ?」と自慢したくなりますがここはグッとガマン。  
〈はらはら〉と舞う落ち葉の中、ドクロちゃんと目が合います。  
『あっ……』  
お互い赤面。しばしの沈黙。  
もどかしくなった僕はドクロちゃんの唇をそっと奪います。ってきゃー! 何やってんの僕―?!     パブリックスペースですよ?! イケナイよこんなのー!  
「もーっ! 桜くん……人前だよ?」  
ドクロちゃんは頬を染めつつ人差し指を立てて僕のほっぺに「めっ」と突き刺します。  
ドクロちゃんのあまりの可愛さに彼女を拉致りたい衝動を抑えつつも歩いていればたどり着く目的のベンチ。  
ここは僕とドクロちゃんのお気に入り。  
目の前には立派な大木が力強く広げた枝葉を綺麗な赤に染め上げています。  
ベンチに二人で腰をかければ、ドクロちゃんが持っていた袋から取り出したのは、少し大きめの可愛らしい布に包まれた長方形の物体。  
「えへへー、じゃあ、開けるね?」  
何を隠そう今日はドクロちゃんがお弁当を作ってくれたのです。  
信じられませんか?彼女は実は料理上手。  
作るときに僕が隣で材料の監視さえしていれば、「ボクって以外に家庭的なんだよ?」なドクロちゃんなのです。  
特に彼女が作るマヨネーズは絶品。皆さんにご賞味いただけないのが残念なくらいです。  
「わあ、すごくおいしそうだね。ドクロちゃん」  
いっしょに手伝ったとはいえ、改めて感動を覚えます。  
 
豪華さはないけど、素朴で可愛らしい盛り付けはいかにもドクロちゃんらしいです。  
カロリーが全体的に高そうなのが難点でしょうが、ドクロちゃんの彼氏を自称する僕は日常的に、より多くのカロリーを必要とします。  
このカロリーの高さはドクロちゃんの彼氏である証と言えなくもありません。  
「あのね、アレがいっぱい入ってるから。ほら、ボクのー……桜くんに対するー……ね?」  
「もう、ドクロちゃんはー」  
何とも憎いコトを言うじゃないですか。  
僕が天使の少女のおでこを拳で〈こつん〉とすると、ドクロちゃんはいまさら自分の言ったことに恥ずかしくなったのか、後頭部をかきながら頬を染めています。  
「じゃあー……桜くん、お口開けて? ボク、あれがやりたいよぅ」  
ドクロちゃんはフォークでウィンナー(ソーセージではない)を刺し、マヨネーズを少しつけて僕の口の前に持ってきます。  
言いたいコトは理解できます。僕が素直に口を開けたそのときでした。  
 
〈ひゅっ〉  
 
一陣の風が僕の頬を撫でました。  
「っつ……?」  
一瞬遅れて頬に鋭い痛み。どろっとした何かの液体が頬を伝い、指で拭ってみればソレは  
「え……血……?」  
「桜くん!!危ないッ!」  
「え?」  
ドクロちゃんがその言葉を発した瞬間、天地が逆転。  
僕はドクロちゃんに胸ぐらをつかまれ、地面に押し倒されていました。  
 
〈とっ、とっ、とっ〉  
 
目が釘付けになったのは、一瞬前まで僕がいた場所に突き刺さる畳針状のモノ。  
「なっ……これは……ッ?!」  
「微睡弄御ヒルドスレイフ……?」  
「あっちゃー、ハズしたかー」  
「!」  
明るげな女の子の声がした方を向けば、そこには狐を思わせる、ひょうひょうとしたたたずまいの女性。  
「田辺さん?!」  
ここにいるハズのない人物が、そこにはいました。  
地元である埼玉の大学に通っているハズの彼女が、なぜここに、という疑問よりも、最初に目が行ったのは彼女が手にしている棒状の物体。  
「ナニ、それ……吹き、矢……?」  
明らかに笛とは違った、暗殺用に作られた武器。  
それが今彼女の手に握られている事実と、先ほど僕を襲った針の相関関係は、言うまでもありません。  
「桜くんッ!」  
ごく自然な動作で吹き矢を口元にもっていったので、反応が一瞬遅れました。  
 
ドクロちゃんに押されて僕は針の直撃を免れましたが、ソレは代わりにドクロちゃんの右腕に刺さりました。  
「あぐっ……! っ痛ぁいーっ!」  
「なっ……ドクロちゃん?! 大丈夫?!」  
僕はすぐに起き上がって彼女を助けようとしますが  
 
〈ばしん〉  
 
腕が払われました。ドクロちゃんの右腕に。  
「え……? ドクロちゃん?」  
「え? あ……何、コレぇ……」  
そこで僕が目にしたものは明らかな異常事態。  
ドクロちゃんが、彼女自身の右腕に〈ずるずる〉引きずられています。  
〈キッ〉と田辺さんを睨めば彼女は満面の笑み。  
「桜くんに当てるつもりだったんだけど……まあこれもおもしろいから、いいかな」  
「田辺さん?! これは一体どういうことなの?! 何で……!」  
「ああ、これは『微睡弄御ヒルドスレイフ改』って言うの。脊髄じゃなくても、刺さった箇所から徐々に体の自由を奪うの。面白いでしょ?」  
それを聞いて驚愕したドクロちゃんは歯を食いしばって左手で力いっぱい右腕に刺さる針を〈ずるり〉と引き抜きます。  
「ドクロちゃん! 大丈夫?! ………田辺さん、どういうこと? 何で僕たちを……それに、そのアイテムは何?! どこでそんな危険極まりないモノを手に入れたの!」  
もしザンスならあのクソ野郎、後で絶対コロス。  
「んー、教えてもいいけど、とりあえず桜くんを殺そうかなって。ムカつくし」  
「なっ……!」  
信じられません。信じろというほうが無理です。  
だって、僕と田辺さんは  
「……どうして、そんなこと言うの? 僕たち、友達じゃないの?」  
「そう思ってるのは桜くんだけかもよ。あははっ」  
「久しぶりだね。桜くん」  
新たな男の声。田辺さんの背後から現れた彼は  
「に、西田……」  
あの西田がいました。  
「彼女に説明を求めてもムダだよ。だって、説明する必要がないから。もうすぐこの世界はね、なくなるんだよ」  
見れば西田の頭上の木の枝からつり下がっているのは、いつか見たミラーボール。  
忘れるハズもない、最悪の光景。  
悪夢だとしか、思えない。  
「一つ教えると、正確には僕たちは僕たちじゃないんだ。僕は『光の西田』。彼女は『光の田辺』さん。『この世界を破棄しに来た者』。任務はキミたち二人のどちらかの抹殺。僕はこの『枷繰白昼夢エルクスナウト改』でドクロちゃんを始末する」  
頭上のミラーボールが回り、光を発せば、公園にいた人たちがそれぞれナイフを片手に、虚ろな目でこちらに歩みよって来ます。  
 
「桜くん! 下がってて! ボクがすぐにこんなこと終わらせるから!」  
……始末? ……ドクロちゃんを始末するって抜かしたのか? この電波野郎は。  
「あははっ! 桜くん、ドクロちゃんに守られてばっかで情けないね。そんなんじゃ彼氏失格だよ〜?」  
僕がドクロちゃんを守らないで、誰が守るというのでしょう。  
「黙って! ボクが大好きな桜くんのコトを悪く言ったら、ボク、田辺さんでも許さない!」  
そして少女が持つのは黒く光る鋼鉄の金棒。  
……僕は、一体何をしている?  
「さあ殺れ。あの少女を、僕の桜くんを奪った泥棒猫に制裁を!」  
西田が狂気の笑みを張りつかせて合図すれば、いっせいにドクロちゃんに襲いかかる武装集団。  
「くっ……!」  
ドクロちゃんは必死に彼らの悪意を持ったナイフをエスカリボルグで捌きますが、数が数なだけにかなり苦しそうです。  
「さて、このスキに桜くんを殺っちゃおうかな……ッ!」  
彼女が筒に息を吹き込めば  
「ああっ! 桜くんっ!」  
再び僕目がけて飛んでくる殺意の針。  
それを防ぎに駆け寄ったドクロちゃんに再び洗脳針が突き刺さります。  
「あっぐ……ッ!」  
身もだえるドクロちゃん。  
ドクロちゃんが、苦しんでる。目の前で。  
こんな、こんな――  
 
こんなことは許されない。  
 
僕が面を上げれば音を立てて始まる空間崩壊。  
ガラスのゴトク崩壊した空間の先に現れたのは――闇。  
「深夜率一五〇%観測」  
訪れたのは、夜。  
「ドクロちゃんは、僕が守る。僕のドクロちゃんを傷つける愚者は、夜をもって僕が制裁する」  
「さ、桜、くん……?」  
ドクロちゃんが驚いた表情で僕を見あげます。  
「ドクロちゃん、ちょっと痛いケド、我慢してね?」  
そう言って僕はドクロちゃんの側に跪き、そっと針を抜いてあげます。  
「もう大丈夫だから。誰にもドクロちゃんを傷つけさせない。だから、ここで休んでて」  
彼女の頭を優しく撫でてあげます。  
こんないい娘が傷つくなんて、許せるワケがない。  
「うん。桜くん、ボク、桜くんのコト、信じてるから」  
「何やってんのよッ!」  
田辺さんの怒号とともに飛来する無数の針。  
こんなものは、夜の支配下においては何の意味もなさないのに。  
僕が右腕を虚空に薙げば、〈めりめり〉と音を立てて持ち上がる地面が、針というあまりにちっぽけな凶器を防ぎます。  
 
「なっ……!」  
「彼女を傷つける意思のある者、ことごとく斬り刻め」  
「こっ……これは一体ッ……!」  
西田が狼狽しています。  
田辺さんは苦虫を噛んだような表情。  
「『夜桜』」  
舞い散る無数の『落ち葉』。  
色とりどりのソレは僕が腕を西田と田辺さんに向けるのを合図に、純白の枕と化し、破裂。  
そば殻をまき散らし、ニードルガンのように二人を襲います。  
「きゃああっ!」  
「くっ……こんなハズじゃ……」  
〈きゅんきゅん〉と耳障りな音を発し、回避不能な攻撃を全身にあび、身を刻まれ、徐々に体中に亀裂が入る二人。  
身体が崩壊し始めた田辺さんが声を絞り出すように言いました。  
「……桜くん、もうすぐ『彼女』が来るからね……そのときはよろしく言っといて」  
西田はこの期に及んでも、僕に微笑んでました。  
そして〈がらがら〉と音を立てて完全に二人とも消滅しました。  
 
   ★  
 
「何だコレはッ……!」  
魔法のアイテムを使い、ルルティエから一部始終を見た喪服の天使は驚愕に身を打ち震わせました。  
全く予想していない事態が、今地上で起きている。  
「『光』……だと」  
6年前、ルルティエが『パンドラの言葉』に命じられて送った『光の桜』とは別種のモノであることは明確だった。  
『別次元から来訪した寄生生物』。そう表現するのが最も正しいだろう。  
「この世界の神が……沈黙した……?」  
「その通りです」  
天使の声に呼応したのは、弓道着に身を包んだ小柄な少女。  
「それで、お主達はそちらの『神』に命じられて、ここにいると? ユミシマチカとやら」  
「はい。 三塚井ドクロと草壁桜の抹殺は、わたしたちにお任せ下さい」  
ときどき思う。  
 
この世界に神様はいるのだろうか。  
 
―to be continue―  
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル