<きぃ…かしゃ…>
耳障りな音を立てる金属質の右腕で、その老人は膝の上のネコを撫でていました。
老人の顔には、どれだけの苦労をしてきたのでしょう、数え切れないほどの皺と憂いが刻まれています。
ふとこちらに気付いたように、老人は白髭に隠れてしまっている口を開きました。
『僕は――』
ひび割れた鐘のような、嗄れた声。
落ち着きを装ってはいるものの、その奥には、哀しみのような感情が見え隠れしています。
『僕は、ただ、あの頃を取り戻したいだけだった。』
『撲殺されても、感電死しても(中略)ても、それは僕の、唯一無二の時だったんだ。』
『僕は、若返りたかった。だからその手掛かりを、例の“薬”に求めた。』
『それが、僕の人生を狂わせた。僕の人生を狂わせたのは、僕だったんだ。』
『なら、狂わされなかった可能性は、どこへ消えたんだろう?』
『もし昔の僕がこれを見たなら、考えて欲しい。自分の人生を、狂わせない方法を――』
話しながら、いつの間にか老人は涙していました。
そして気付けば、僕もまた、目頭が熱くなっていたのです。
《撲殺天使ドクロちゃん on Movie 〜草壁桜 失えし青春〜》
《いつかの夏、放映――する訳がない》