「どうしたの? なんで、そんな顔してるの?」  
 もう夜空になりそうな外で明かりが目立つ図書室で、南さんは僕に歩み寄ってきます。  
 僕は静希ちゃんとのやり取りを見られていたのではないかと思って冷や汗を流しつつありました。  
 いえ、南さんのことだから、絶対に気づいているでしょう。  
 けど、南さんは特に反応するような事もなく、いつものポーカーフェイスを浮かべていました。  
 ですが、今はその冷静さが逆に怖かったのです。  
 南さんは硬直している僕にどんどん近づいてきます。  
「水上さんと楽しくやっていたみたいね」  
「なっ」  
 そして、いきなりの直球発言。  
 僕は平静を保とうとしますが、南さんがどんどん近寄ってくるので保ちきれません。  
 南さんは僕のすぐ目の前で止まり、僕の顔をスッと見上げてきました。  
 その彼女の顔と瞳は澄み切ったもの。  
 一週間前に、僕を襲った南さんと一緒に思えないくらいでした。  
 僕は何でもいいから話題を逸らそうとします。  
「南さんこそ、ここで何やってるの?」  
「私? 私の事はどうでもいいわ」  
 ふと、いつの間にか南さんの手が僕の左胸に置かれていました。  
 空気の流れのような動きをする南さんの手は白く繊細です。  
 そして、何を思ったのか彼女が柔らかい笑みを浮かべました。  
「桜くん、ドキドキしてるのね」  
「別に何でもないよ」  
 僕は強がるように言い返しますが、南さんは、ただ柔らかい笑みを浮かべます。  
 僕は、その南さんならではの独特な雰囲気に何故か緊張してしまいます。  
 ついさっき南さんの姿を見つけて湧き出した焦燥感とは違っていました。  
 南さんは、そっと僕の胸から手を離すと、代わりとばかりに耳をつけました。  
 僕の胸に顔をうずめている南さんに、僕は更にドキドキしてしまいます。  
「はっきり分かる……桜くんの鼓動」  
「その、あの……」  
「それに……桜くんの胸、温かい」  
 何がどうなったのか。僕は南さんの行動にあたふたするだけ。  
 本当に、この女の子は一週間前に僕を襲った女の子なのか?  
 そんな答えの出ない事を何回も自問するほど、今の南さんは可憐でした。  
「水上さんに告白されたの……嬉しかったの?」  
「えっ!?」  
 一体、南さんはどの部分から僕と静希ちゃんとのやり取りを聞いていたのか気になります。  
 もしかしたら、最初から全部聞かれていたというのも考えられます。  
 南さんはまだ、僕の胸に顔を埋め、僕の答えを待っているかのようでした。  
 ここまで来た以上、何も隠すことはありません。  
「う、嬉しかったよ。だって……僕も、静希ちゃんのことが好きだから」  
「やっぱり……そうだったのね」  
 南さんとの、あの関係を断ち切るべく、僕はキッパリと言いました。  
 返事をする南さんの顔は、いつものポーカーフェイスです。  
「だから……その……もう、南さんとは」  
「分かってるわ……」  
 僕の言葉を遮り、南さんが僕の胸から顔を放して、僕を見上げます。  
 そして、すっと爪先立ちになって、僕の顔を両手で包み込みました。  
 僕はハッとして抵抗しようとしましたが、南さんが首を振ります。  
「最後だから……少し目を閉じて」  
「で、でも!」  
「口付けする訳じゃないわ。少しだけ目を閉じて」  
「……うん」  
 南さんの言葉を信じて、僕は少しだけ瞼を下げます。  
 わずかな視界の中で南さんの顔が近づいてきます。  
 南さんも僕と同じように瞼を下げつつ、僕の顔を寄せています。  
 そして、触れ合ったのはお互いの目、まつ毛の部分でした。  
 数秒重ね合わせた後、南さんはまた同じような動きで顔を離しました。  
「バタフライ・キスって言うの……こういうのもいいでしょ」  
「よく分からないよ……」  
 南さんは何か満足したように体を離して、くるりと僕に背を向けました。  
 
 そして、隅に置かれていたカバンを手に取って、出入り口に歩いて行きます。  
「帰るわ。先生に見つかったら、怒られそうだし」  
「あ、うん」  
 そうです。もう最終下校時刻はとっくに過ぎていたのです。  
 南さんの背中を見た時、僕は心にもなくドキッとしてしまいました。  
 そして、何かに駆られたように言い出します。  
「あ、あの、南さん。良かったら送っていくよ。もう、外暗いし」  
「もう、終わりにするんじゃないの?」  
「そ、それとは違うよ。ただ、こんな遅い時間に女の子の一人歩きは危ないかなって……」  
 振り返った南さんは一瞬、何やら笑みを浮かべて、また背を向けました。  
「じゃあ、送ってくれる?」  
「う、うんっ」  
 僕は柄にもなく、照れたように頷き、南さんの後に続きました。  
 隣に並んだ南さんが、こちらに顔を向けます。  
「桜くんはいつでも優しいのね」  
「え?」  
「図書室の鍵、閉めなくていいの?」  
「あ、そうだった」  
「早くしないと置いていくわよ」  
「待ってよ、南さん! すぐ終わるから」  
 まるで、普通の友人の接しあいのごとく、僕と南さんの間には暖かいものがありました。  
 そして、僕は、これを最後に南さんとの関係を断ち切りました。  
 
 
 翌日、教室で会った僕と静希ちゃんは、はにかみ合いながら挨拶を交わしました。  
 一緒にいたドクロちゃんは、不機嫌そうに、つまんないと言ってきます。  
 何がつまんないの、と聞くと、僕は問答無用でドクロちゃんに撲殺されました。  
 すかさず静希ちゃんが心配してくれて、僕は満更でもなく頬が緩んでしまいます。  
 別に何かが見るからに変わった訳ではないですが、静希ちゃんの僕に対する接し方は変わっていました。  
 こう、積極的というか、たくさん話しかけてくるというか、とにかく少しずつ変化が見られています。  
「桜くんといると、何だか楽しい」  
 そう言っては、ご機嫌のように微笑み、満足そうに話を弾ませます。  
 ですが、それはドクロちゃんが介入してこなければの話でした。  
 その日の放課後、あの天使の大逆襲が僕に降りかかったのです。  
「最近、桜くん、ご無沙汰すぎ! どうして、ボクに構ってくれないの!?」  
「待ってよ、ドクロちゃん! 僕にだって色々と都合が……」  
 エスカリボルグをブンブン振り回し、ヒステリックに言い放つドクロちゃんに僕は、しどろもどろです。  
 ここ最近、劇的な事が起こりすぎて、ドクロちゃんのようにボケだらけの生活はできません。  
 そうして、こうにも放置状態にあったドクロちゃんは、かなりのご立腹状態でした。  
「桜くんはボクのものでしょ!? すーこーしーはーあーそーんーでー!」  
「勝手に僕を下僕か何かのように言わないでよ! ちょっと、何ヒソヒソ話してるの、そこ! 僕は何でもないよ!」  
「とにかくー。今日は絶対、一緒に帰って遊ぶよ!」  
 ドクロちゃんは振り回していたエスカリボルグの先端を僕の顔に、ピタッと止めてきます。  
 ですが、もう僕は静希ちゃんの用事が終わったら、一緒に帰るという約束をしているのです。  
 ここでドクロちゃんにはサバトちゃん辺りと帰ってもらいたいところです。  
 僕は最凶の凶器を前にして冷や汗を流しながらも深呼吸一回。  
「また今度ね!」  
 そう言って、僕は踵を返してカバンを持って、教室から走り出します。  
「こらー! 桜くん、待てー!」  
 再び、エスカリボルグを振り上げつつ、ドクロちゃんも僕を追ってきます。  
 
 しかし、ここでドクロちゃんに捕まるわけにはいきません。  
 僕が本気を出せば、三十分で地球を一周できるわけではないですが、とにかく逃げます。  
 曲がり角を利用して、振り切れれば儲けものです。  
 階段を下りては上がって、曲がり角を右に左にと、まさに縦横無尽です。  
 それでも、後ろからの天使は全く離せません。  
 このままじゃ、僕の体力が危ないと思いつつ、次の角を曲がると。  
「桜くん、こっち」  
 なんと、とある場所から手招きをする静希ちゃんが見えたのです。  
 ご都合主義万歳、ではないですが、僕は何も考えずに静希ちゃんのいる場所に駆け込みました。  
 すぐさま、静希ちゃんは僕の手を引いて中に入り、ドアをバタンと閉めました。  
 次の瞬間、あのアホ天使の声がこだましては、すぐに小さくなっていきました。  
「はぁ、はぁ、はぁ。静希ちゃん、助かったよ」  
「桜くんはいつも大変ね」  
「まあ、ドクロちゃんだし。もう、慣れたよ」  
「そっか」  
 静希ちゃんはクスっと笑いました。  
 と、ここで僕は周りを見渡しました。  
 そして、ん?と疑問に思ってしまうのです。  
「静希ちゃん」  
「何、桜くん?」  
「ここ、どこ?」  
「え? トイレの個室だけど……分からなかった?」  
「…………」  
 ドクロちゃんから逃げることしか頭になかった僕は何も考えずにトイレの個室に静希ちゃんと二人で入ってしまったのです。  
 僕は、妙な雰囲気でドキドキして、なんとか平常心を取り戻します。  
「ご、ごめん。ちょっと逃げる事に夢中で気付かなかった……って、女子トイレ?」  
「うん、そう……」  
 静希ちゃんも何か恥ずかしそうに頷きます。  
 ですが、僕の方は女子トイレに入ってしまったことに、とても後悔していました。  
 今、目の前にいる女の子が静希ちゃんだから、良かったものの、他の女の子に見つかりでもされたら、あっという間に僕は変態です。  
 幸い、ドクロちゃんも、この辺りからいなくなり、静希ちゃんとも会えたので、ここから出ようと思います。  
「じゃあ、出ようか。僕が、ここにいたらマズイし……」  
「あ、そ、そうね」  
 静希ちゃんは、何かもじもじと何かを出し渋っている感じがしますが、僕は気付きませんでした。  
 早く、ここを出ないと本格的に僕に対する変態のイメージが固定化されていくことでしょう。  
 すると、静希ちゃんがすっと扉の前に立ち、とうせんぼするかのように僕の顔をじっと見ていました。  
「あ、あのね、桜くん……」  
「ん? どうしたの、静希ちゃん?」  
「えっと、その……」  
 ついさっきから、もじもじしている静希ちゃんを前に、僕はちょっとドキドキしています。  
 静希ちゃんが、こんな態度を取るなんて、以前いつ見たのか考えてしまうくらいです。  
 と、ボーっとしていてまた僕は我に帰ります。  
 だから、ここを早く出ないと変態が確定されるんです。  
「取り合えず、話があるなら、ここから出て……」  
「ま、待って……わあっ!」  
 僕が一歩踏み出すと同時に、静希ちゃんが反射されたように前に踏み込みます。  
 しかし、何か足元が滑ったのか、静希ちゃんはバランスを崩して、僕に倒れ掛かってきます。  
 僕は咄嗟に手を伸ばして、静希ちゃんの体を抱きとめていました。  
「あ、危なかったね」  
「うん……」  
 僕の腕の中にいる静希ちゃんはぎこちなく頷きました。  
 床を見てみると、ペチャンコになったトイレットペーパーの芯が転がっていました。  
 
 僕は静希ちゃんの小柄な体を受け止めたまま、動けなくなりました。  
 どさくさに紛れて、こんな格好になったのはよしとして、ここからどうすればいいのか。  
 
 1.二人きりだし、ここで僕から告白する。  
 2.ここで悲鳴を上げて、変態宣言をしてみる。  
 3.昨日のこともあるし、ここのまま襲ってみるのもいいかもしれない。  
 4.取り合えず、この洋式トイレの水路から脱出する。  
 
 こんな下らない選択肢を全部潰して、僕は、そっと静希ちゃんの体から手を離しました。  
 そして、紳士な気持ちを前面に押し出し。  
「待って、桜くん」  
 ふと、突然に出される静希ちゃんの静かな声。  
 先ほどとは違い、落ち着きさがあり、いつもの彼女の声のようでした。  
 僕は顔を見下ろすと、すぐそこには頬を染めた幼馴染。  
 さっきから、慌てて我に返っての繰り返しで、脳内がミキサーにかけられた感覚がします。  
「さっきからどうしたの……静希ちゃん?」  
「桜くん……私にもさせて……」  
「……え?」  
 静希ちゃんの何か覚悟を決めたような声に、僕の素っ頓狂な声が交錯します。  
 こんな狭い空間で、静希ちゃんは一体何を言っているのか僕にはよく分かりません。  
 もしかしたら、これは僕の脳内で繰り広げられている妄想の一部なのかもしれません。  
 ですが、そんな事は僕に密着している静希ちゃんの温もりで、全て否定されました。  
「その……昨日、私ばっかりだったから……」  
「い、いや! いいんだよ、そんなこと!」  
 僕は事の重大さを認識して、大慌ててで首をブンブン振り、直後に大きな後悔をします。  
 甘美な誘惑が、また僕をお花畑に連れていこうとします。  
「ううん……私がしたいの……桜くんにも……」  
「静希ちゃん……その……」  
 僕は一瞬で赤くなってしまった顔で、静希ちゃんに顔向けできません。  
 また昨日のような一瞬の度胸でもあれば、まともな返事が出せたのでしょうが。  
 少しして顔を下げた僕が見たのは、なんとも目を潤ませた静希ちゃんでした。  
「お願い……桜くんが欲しい……」  
「うん、分かった……」  
 結局、僕は静希ちゃんの熱っぽい声の誘惑に負けて、流されるままに頷くだけでした。  
 それにしても、どうして静希ちゃんが、こうにも積極的なんだろう。  
 そんな事が、ぼやけた僕の頭の隅に現れて消えていきました。  
「静希ちゃん……僕はどうしたら、いい?」  
「あ……」  
 静希ちゃんはまた真っ赤に顔を染め、僕からスッと離れました。  
 僕は静希ちゃんの重みが消え、バランスを失ったかのように壁にもたれました。  
 そして、静希ちゃんが屈んで、僕のズボンに手を伸ばします。  
 心なしか、その手は震えていて、まるで怯えているようです。  
「静希ちゃん……無理しなくてもいいんだよ……」  
 僕は静希ちゃんの動作が無理矢理なのが分かっています。  
 静希ちゃんは、少し不安そうな顔を僕に向けます。  
「大丈夫……私にだって出来るから……」  
 静希ちゃんはゴクリと唾を飲み込み、すうっと撫でるように僕の股間に手を添えました。  
 彼女の手が触れ、僕も唾を飲み込み、次の一動作を待ちます。  
 すっすっとゆっくり、丁寧に扱うように静希ちゃんは、僕の股間を撫でています。  
 わずかな温もりがズボン越しに伝わり、マッサージ感覚で気持ちいい感じ。  
 しかし、アレ自身は大した反応がありません。  
 
 しばらく、さすっているばかりで反応がないせいか、静希ちゃんがつぶやきます。  
「ねえ……やっぱり直に触ったほうがいい……?」  
「えっ」  
 静希ちゃんの答えづらい質問に、僕は、しどろもどろです。  
 ここで、触って欲しいと言えば、静希ちゃんは素直に受け入れてくれると思います。  
 しかし、そんなことを思うだけで顔から火が出そうです。  
 僕が黙ったままでいると、静希ちゃんが、心細い声で言います。  
「桜くん……何か返事して……。私、ちゃんとするから……」  
 今の静希ちゃんは、まるで触れたら脆く崩れてしまうような氷の結晶のようでした。  
 確かな輝きがありながらも、それはちょっとの刺激でも崩壊するような儚さ。  
 僕は、その静希ちゃんの輝きが消えないよう、僕なりにフォローするようにしました。  
「大丈夫だよ、静希ちゃん。静希ちゃんのペースで進めて……」  
 そう言って、僕は恥ずかしながらも制服のズボンを脱ぎました。  
 普段はすぐ脱げるのに、今に限ってベルトが外すのに、やけに手間取ってしまいます。  
 静希ちゃんも相当恥ずかしい思いをしているのだから、僕もこのくらいはやってみせます。  
 ズボンを下げて、パンツになった所で静希ちゃんが恐る恐る、顔を向けました。  
「ありがとう、桜くん……」  
 静希ちゃんは目線を元に戻して、僕のアレにパンツ越しに手を添えました。  
 静希ちゃんの手の感触がより一層、暖かく感じられます。  
 その小さな温もりと、恥ずかしさと気持ち良さが入り混じり、僕のアレは少しずつ反応していました。  
 しばらく触り続けて、静希ちゃんは意を決したように、僕のパンツに手をかけました。  
「脱がして……いい?」  
「う、うん……」  
 僕は勿論のこと、静希ちゃんも恐らく緊張で胸が高ぶっているのだと思います。  
 静希ちゃんは、そーっとした手つきで、僕のパンツをするすると下ろして行きます。  
 数秒も経たず、露になった僕のアレは少しからず大きくなっていました。  
 静希ちゃんは一瞬、驚いたように口を手で塞ぎましたが、すぐに僕のアレに向かって手を延ばします。  
 そして、包み込むように下の方から手で触れ、すっすっと擦るように上下に動かします。  
 それはとても、ぎこちない動作でしたが、アレはすぐさま反応して限界の大きさまで達してしまいます。  
「あ……はぁ……」  
 僕は思わず吐息を漏らします。  
 静希ちゃんは顔を赤くし、無言のままアレに刺激を与え続けます。  
「…………」  
 静希ちゃんは、ゆっくりと撫でているように擦っていきますが、ふと動きを止めました。  
 すると、顔をアレにゆっくりと近づけ、口の中にある小さな舌を恥ずかしげに出そうとします。  
 アレの棒の部分を両手で包み、静希ちゃんの口が触れようした時、彼女は僕の顔を見ました。  
「ねえ、桜くん……お風呂、入ってるよね?」  
「え? そりゃ……勿論だけど」  
「じゃ、じゃあ……ここも洗って……」  
 そう言って、すっかり直立した僕のアレを見据える静希ちゃん。  
 僕はそういう事かと納得し、コクリと頷きます。  
「じゃあ……安心ね」  
 何故か、僕ではなく静希ちゃんは呼吸が荒く、僕のアレを執拗に見つめていました。  
 そして、目を閉じながら、アレに舌を伸ばし伸ばし、つーっと走らせました。  
 少しゾワゾワしたものを感じますが、充分耐えれるレベルでした。  
 
「ん……んー……」  
 一度、二度はついばむように舐めていましたが、もう慣れたのか、静希ちゃんは断続的に舌を走らせて行きます。  
 静希ちゃんは、おぼつかない舌遣いでアレを愛撫していきますが、どうもピンと来ません。  
「ぺろ……ん、んん……」  
 でも、静希ちゃんは一所懸命に僕のアレを舐めてくれています。  
 そんな彼女に申し訳ないと思いながらも、僕は、今のアレの大きさを保つ程度の快感しか感じられませんでした。  
 何も反応を見せなかったのがマズかったのか、静希ちゃんは一旦、口を離して問いかけてきます。  
「桜くん……気持ちよくない……?」  
「う、ううん……そんなことないよ。気持ちいいよ」  
 正直な所は、それほど気持ちよくありません。  
 原因はあの南さんの強烈な愛撫を受けてしまったことです。  
 最初に受ける愛撫としては本当に強烈で、僕はあっという間に限界に果てていました。  
 その味を、僕の体が完全に覚えてしまい、それに劣る愛撫ではあまりよくないということ。  
 あの南さんの愛撫でなければ、僕は本当に気持ちよくなれなくなっていました。  
 だからと言って、そんなことを静希ちゃんに話せるわけもありません。  
「その、こうして欲しいとかあったら言って……私、まだ全然だから……」  
「それじゃ……くわえてくれるかな……?」  
「あ……」  
 静希ちゃんは一瞬、躊躇いを見せるものの。  
「分かった……」  
 素直に頷きました。  
 ゆっくりと口を開けて、静希ちゃんは僕のアレをくわえていき、スッポリと被せていきます。  
 彼女の唇が直接、アレに触った時、新たな快感が生まれます。  
 それでも、南さんのような愛撫には程遠く、じわじわと時間をかけて昇ってくるかのようです。  
「ん、んん……ん……」  
 静希ちゃんは、ゆっくりと顔を上下に動かし、僕のアレを愛撫しにかかってくれます。  
 テクニックはなしにしても、静希ちゃんだからこその献身的な思いが徐々に快感に繋がっていきます。  
 結構な時間が経った中、僕の息も気付けば荒くなっていました。  
「静希ちゃん……気持ちいいよ」  
「んん……ん、ん、んっ」  
 静希ちゃんはペースを速め、熱心に僕のアレを刺激し続けてくれません。  
 南さんに勝る訳ではありませんが、静希ちゃんの思いが伝わってくるかのようです。  
「んん、んうん……ん」  
 静希ちゃんの二本にまとめた髪が揺れ続け、次第に水滴音も奏で始めます。  
 僕は思わず静希ちゃんの頭を手で押さえ込み、彼女の速い動きに更に加速をかけ、奥に食い込ませます。  
「んんっ! うぐんぅっ!」  
 静希ちゃんが一瞬、呻きますが、僕はもうちょっと到達できる欲望に駆り立てられ気にしません。  
 少し苦しそうな顔をしながらも静希ちゃんは逆らおうともせず、寧ろ、僕のペースに合わせてくれます。  
「ん、んん、ん、んんん!」  
「し、静希ちゃん……!」  
 次第に僕の頭もクラクラしてきて、絶頂に達するほど、体の自由を奪われ、壁にもたれかけます。  
 静希ちゃんの動きも相当な加速で、頭を動かして愛撫をしてきます。  
 視界すらぼやけた時、僕は限界に達していました。  
「ううん! んん、んんん……」  
 瞬間、静希ちゃんは目を見開いて、自分の口に放出された液体を受け止めていました。  
 静希ちゃんは僕の腰に手を置いて、アレをしっかりくわえ込み、まるで液体を逃さないようでした。  
 しかし、その顔は苦しげなもので耐えているようにしか見えません。  
 十数秒かけて、静希ちゃんは僕が放出した液体を口に収めて、ゆっくりと引き抜きました。  
 
 僕は少しの間、呼吸を整えていましたが、静希ちゃんの状態をすぐ把握して、彼女の肩を支えました。  
 静希ちゃんは口元を手で押さえながら、苦しそうです。  
「し、静希ちゃん、吐き出して……!」  
 トイレットペーパーを何重にか重ねて、静希ちゃんの口元に持っていこうとしますが。  
「んん……ごくん……」  
 なんと、静希ちゃんは飲み込んでしまったのです。  
 でも、すぐさま静希ちゃんは咳き込み、気持ち悪そうに顔を伏せました。  
 僕は背中をさすって、どうにか状態を落ち着けようとします。  
「飲んじゃった……はは……」  
 静希ちゃんは、それでも僕に対して笑顔を向けてくれました。  
 僕は間抜けすぎて、密着した静希ちゃんの顔にドキドキします。  
「桜くんの……味かな」  
 何気なく呟いた静希ちゃんの一言に僕は真っ赤になります。  
 それと同時に、僕の中で何かがプツンと切れたような感じがしました。  
「静希ちゃん、立てる?」  
「うん、大丈夫」  
 僕は静希ちゃんを立たせて、ズボンを履きました。  
 そして、有無を言わさず、今度は僕が静希ちゃんの下半身に潜り込みます。  
「きゃっ……さ、桜くん?」  
「静希ちゃんに苦しい思いさせちゃったから、今度は僕がしてあげる」  
「え、で、でも……」  
 静希ちゃんは恥ずかしそうにスカートを押さえて、僕の侵入を防ぎます。  
 しかし、今の僕にはそんなことは通用しません。  
「静希ちゃん、スカートを持ち上げて」  
「ええっ……」  
「僕も静希ちゃんに気持ちよくなって欲しいんだ……」  
 静希ちゃんはスカートを押さえたまま、微動に震えますが、しばらくすると、スーッとスカートの裾を持ち上げてきました。  
 目線を泳がせ、まるで自分の行為を誤魔化そうとする静希ちゃん。  
「うん……お願い……」  
 静希ちゃんがスカートを持ち上げてくれているので、下着が丸見えです。  
 僕は下着の上から指を走らせ、軽くいじってみました。  
 静希ちゃんがほんの少しですが、震えました。  
 僕は前座を抜きにして、彼女のパンティーを下ろしました。  
 静希ちゃんはスカートを持ち上げたまま、恥ずかしさで目を瞑ったままでした。  
 パンティーを脱がした静希ちゃんのソコは湿ってなくても、とても熱かったのです。  
 僕は素早く舌を遣い、彼女のソコを愛撫し始めました。  
「あく……んん……」  
 静希ちゃんが堪らず喘ぎ、ふるふると震えます。  
 声は最小限に留めているのでしょうが、はっきりと艶やかに聞こえてきます。  
 僕は静希ちゃんが逃げないよう、両手で彼女の腰を掴んで、舌走りを強めます。  
「ううっ……さ、桜くん……上手……どうして……」  
 静希ちゃんの言葉に、胸に刺さるものがありますが、今はどうでもいいのです。  
 彼女が気持ちよくなってくれれば、僕だって嬉しいのです。  
「これじゃ……すぐ……あはぁ……はぁ、はぁ……くぁ」  
 静希ちゃんはあっという間に高みに昇り、僕は彼女テンションに合わせてペースを上げます。  
 裂け目を舐めていくうちに、小さい突起に突き当たり、今度をそれを舌先で突付いたり、舐め回します。  
「桜……く、ん……激しいよ……気持ちよ……す、ぎる……」  
 静希ちゃんが僕にしてくれたのとは対照的に、本当に静希ちゃんは快楽に浸っていました。  
 舐め回していくうちに、僕は舌を彼女のソコに突き入れ、その中で動かしてみます。  
 
 静希ちゃんが僕にしてくれたのとは対照的に、本当に静希ちゃんは快楽に浸っていました。  
 舐め回していくうちに、僕は舌を彼女のソコに突き入れ、その中で動かしてみます。  
「あはぁぁぁ……だめ……だめ……来る、の……」  
 僕は更に舌の動きを強めて、静希ちゃんの中をかき回しました。  
 ふと、静希ちゃんの唾液が僕の頬に当たりました。  
 そして、初めて手の指を動かして、ソコにある小さな突起をクイっと動かしました。  
「あああっ! ひいぃぃぁぁぁ……!」  
 静希ちゃんはスカートを持つ手を離し、体を支えるかのように、僕の両肩に手を置きました。  
 しかし、すぐ体が崩れ落ち、僕が支えると同時に、静希ちゃんは僕の首に腕を回して、抱きついてきました。  
「桜くん、素敵……大好き……」  
「静希ちゃん……」  
 僕は悦びに浸っている幼馴染を抱きしめたまま、言葉が出せませんでした。  
 僕からも、好きだ、とは言えず、ただただ、後ろめたい感情が渦巻いていました。  
 恐らく、僕が静希ちゃんに「好き」と言えるのは、この後ろめたいものが消えてからでしょう。  
 
 
「桜くん、どこぉぉぉぉぉぉっ?」  
 その頃、ドクロちゃんが校舎内を走り回っていました。  
 疲れを知らないのか本当に走りっぱなしです。  
 しかし、あまり周囲を見ていないので見つかるものも見つかりません。  
 ですが、ふと、ぐるっと校舎を三周くらいしてきて、自分のクラスの教室でドクロちゃんは何かに気付いて止まりました。  
「あー南さんだー」  
 教室内で一人で佇んでいる南さんを見つけて、ドクロちゃんは彼女の側に駆け寄りました。  
 南さんは近づいてくるドクロちゃんに気がつき、耳から何かを外してポーカーフェイスで迎えました。  
「どうしたの、ドクロちゃん?」  
「うん、桜くん、見なかったー? 探してるんだけどいなくてー」  
「さあ、私も見てないの。帰ったんじゃないかしら」  
 そう言って、南さんは窓から外を眺めました。  
「そっかー。って、南さん、何それー?」  
 ドクロちゃんは、南さんが手に持っているものに指差しました。  
 南さんはその手に持っているものをドクロちゃんに見せました。  
「イヤホンよ、ほら」  
「へー。南さん、音楽でも聞いているの?」  
「そうね、そんな所かしら……楽しい音楽よ」  
 南さんはポーカーフェイスでイヤホンを握り、ドクロちゃんの顔を見据えました。  
「桜くんなら、どうせ、また十二歳の研究でもしてるのよ。ドクロちゃん、早く止めてあげて」  
「うわー許せないー! じゃあ、桜くんをとっちめてくるよ!」  
 そして、ドクロちゃんはまたあっという間に教室から消えていきました。  
 南さんはポーカーフェイスのまま、またイヤホンを耳につけ、窓の外を見つめます。  
 どこからか開いている窓からビューっと風が吹き込み、南さんの長い髪を揺らします。  
 髪が靡き、南さんはスッと瞼を閉じました。  
「桜くん……」  
 そして、彼のことを呟きます。  
 誰もいない教室で佇ずみ、南さんはいつの間にか、そこから姿を消していました。  
 

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