「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」「大丈夫?桜くん?」「もう・・・こんなの・・・」「頑張って、もう少し、もう少しだか
ら・・・」「でも・・・これ以上は・・・無理・・・」「きゃあっ!」「はぁ・・・はぁ・・・」「もー、いったーい!」「そん
な事言われても・・・」僕、中学二年生の草壁桜はいま、林間学校の真っ最中。自然観察を終えた後でゲルニカ山の頂上にある寮
を目指しているところで、足をくじいてしまったドクロちゃん(本当は歩きたくないだけだと思いますが)をおぶって歩いているの
です。「もう!桜くんは本当に使えないなぁ!」僕はこのアホ天使に、岩を思いっきり投げつけたい衝動に駆られましたが、きっ
とエスカリボルグで僕が肉片になってしまうという地獄絵図が一瞬で頭に浮かんだので止めました。「だったら自分で歩いてよ!
僕はドクロちゃんと違って普通の人間なんだからそんなに簡単に背負っていけないよ!」「もう!桜くんはそれでも男なの!?」
「男とかそういう問題じゃないでしょ!?第一ドクロちゃんなんでそんなに重・・・何そのリュック!?来るときそんなの持って
たっけ!?ちょっと見せて!」「ちょっと!桜くん!ダメーーーー!!!」 バキュン! ドクロちゃんのリュックを奪おう
とした僕はその天使が振り下ろしたアイテム『エスカリボルグ』の一撃によって肉の塊になってしまいました。「あぁ!桜くんが
森に自分の養分を与えすぎちゃうっ!」
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー
「・・・ねぇ、教えてくれるかな。なんで今日はこんなにも簡単に撲殺されなきゃなんないのさ!」「それはねー、作者が違うか
ら!」「えぇ!?確かにそうだけどそれをいったら元も子もなくなっちゃうじゃん!」「子って12歳の?」「違いますっ!断じて
違いますっ!どうしてそういう意味でばっかり捕らえるの!言葉としてあるでしょっ!?」「またそうやって桜くんは物知り博士
みたいな顔をしてボクを馬鹿にする!」「なんで僕がドクロちゃんを馬鹿にしなくちゃなんないのさ!僕はただ作者・・・(はっ、
このことにこれ以上突っ込んだらやばい気がする!)・・・そんなことより!そのリュックの中には何が入ってるの!?」「話しを
そらさないで!12歳の子なんて入ってないから!」「そらしてないっ!それにそんな意味で聞いたんじゃありませんから!」「そ
んなに見たいの?」「えっ・・・?」いきなり口調が変わりおとなしい声になったドクロちゃんに一瞬僕は戸惑ってしまいました。
「う、うん。何が入ってるの?」数秒の沈黙の後目の前の天使はこう言いました。「秘密!!」なんなんでしょうこの天使は、い
きなりおとなしくなったのかと思ったらこんどはいきなりこれです。「いいから見せなさいっ!」僕は死ぬ覚悟でドクロちゃんか
らリュックを奪いました。
「あぁ!」今度はなんとかリュックを奪うことが出来ました、がしかしこのままではエスカリボルグを
かまえ、ただならぬオーラを身にまとったドクロちゃんの死の一撃が僕に飛んでくることは間違いありません。「あっ!あそこに
敏感一郎(登山中)がいるっ!(僕)」「えぇ!どこどこ!?」今の一言をがなかったら今の僕もなかったでしょう、というくらいに
ドクロちゃんはその鋼鉄バット『エスカリボルグ』を振り下ろしかけていました。「い、いまのうちに!」ドクロちゃんがいるは
ずもない敏感一郎を探しているあいだに僕はリュックの中身を確認します。「こ、これは!」自然観察中に見つけた・・・地蔵。
「ねぇ桜くぅーん!どこにもいないよーっ!」「ドクロちゃん!何これ!?なんでこんなものが!?」「あぁ!桜くん!僕の漬物
石にさわんないでっ!」「えぇ!?これ漬物石!?っていうか!えぇっ!?うそぉぉ!!赤い布巻かれてるけど!?お地蔵さんじゃ
ないの!?」「もー、桜くんごちゃごちゃうるさい!!」
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー
「ごめん、ちょっと騒ぎすぎたみたい・・・」「まったく桜くんは僕がいないとダメダメなんだからっ」「でもひとつ聞かせて・・
・なんでドクロちゃんはあんなのを背負ってるの?」「おみやげっ!」「おみやげって、えぇっ!?」「だからおみやげ!ザクロち
ゃんに漬物石もっていってあげるの!」「ちょっとまって!あれはお地蔵さんだよね!?断じて漬物石じゃないから!それにザクロ
ちゃんはあんなものつかわないよ!持っていっても困るだけだよ!」「だってボクに拾ってって言ってきたんだもん!」「そんなの
石が言うわけないでしょ!早く戻してらっしゃい!」と、その直後どこからか聞こえてきた謎の声
(拾ってーザンスぅ、拾ってーザンスぅ)
「!?」「ほら喋った!」「嘘ぉ!?なんで!?っていうか今の声って・・・!」
(助けてーザンスぅ、助けてーザンスぅ)
「うわあぁ!ざ、ザンスさん!?なんでお地蔵さんからザンスさんの声が!?」
(さ、桜くぅーん、ミィザンス、ザンスザンスぅ)
「僕の名前が呼ばれてるっ!ドクロちゃん!今すぐ捨てなさい!っていうか壊しなさい!」「えーやだよぉ、これボクが拾ったんだ
もん」「石なら後で僕がいくらでも買ってあげるから!」「本当!?じゃあこれいらなーいっ!」ドクロちゃんは景色が見える方向
にその石をポイッっと投げ捨て、石(お地蔵さん)はころがって落ちていきました。それとともに小さくなっていく何かの声。
(さ!さくらくぅーん!たすけ・・・ザンスぅぅぅ!)
「さぁ、早く寮に行こう!」「うんっ」
これは、僕とドクロちゃんの何が起こるかわからない物語