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朝です。
もう朝です。といっても8時前くらいですが。
…ああ、あの気持ちいいまどろみという名の巣から飛び立たなければ。そして光を浴びて骨太に。
最近の朝はとてつもない起き方ばかりでした。
ダンボールに梱包されて国連に送られそうになったりカスタードクリームに漬け込まれてもう少しで人間デザート(甘いよ〜。出来立てだよ〜。)になりかけたり。
今日こそはッ!今日こそはあのアホ天使に邪魔されないですがすがしいモーニングを迎えたいです!
ゆっくりと目を開けます。暗くありません。第一の関門突破です。寝返ります。音はしません。第二関門突破です。
ミッションオールクリアー!!やりましたよ隊長!そしてもそもそと体を起こし……
「あー、朝だ……アメッ!!?」
誰の声ですか?今の声は?僕の声?僕の声なのッ!?僕は誰なんだ!?フーアムアァァァァイ!
「…落ち着こう、僕。とりあえず…別に体は変わって……るよッ!何この膨らみはッ!?僕のパジャマが押されてるよ!胸がきついよ!しかも違和感あると思ったら…僕のマイサムがいない!どこ行ったー!わが息子よー!」
状況を説明すると、僕の声はやけに可愛い声で、ドクロちゃん以上静希ちゃん以下といった感じです。
……静希ちゃんって言うのは僕のクラスメイトで、ドクロちゃんは…後で説明することになると思います。
胸の部分には膨らみがあり、下の一部が見えません。そして、その下が何もないんです。オトコノコとしてあるべき物があるはずなのに…
どうなってるんでしょうか…一体…僕の体はどうなってしまったんでしょうか!!
……原因はわかってるんです。理由は後で聞くことにして…とにかく…
ガバッと立ち上がり、すぐに向かった先は…押入れ。
こんな親不孝なことをしやがるのは後にも先にもここにいるアホ天使しかいません。ふすまを思い切り……
「出てこいやアホ天使ーーー!<シュパーーン!>」
開けました。
そこにいたのは体をちぢこませて寝ている一人の少女。
ライトブルーの髪に、今は閉じている鮮やかな緑の眼、そして――頭上に輝く金色のわっか。
彼女が先ほど話していたドクロちゃん。未来からやってきた天使なのです。
「……ん…さくら…くん……?」
あどけない少女のような声で答えます。
「説明してくれないかな!?一体どういう訳で…」
「きゃぁぁ!桜くんに襲われちゃうぅぅぅ!」
<ゴキュ>という音と同時に左目が見えなくなりました。それもそのはずです。なにせ僕の頭の左半分は黒光りする物で潰されてしまいましたから。
そのまま崩れ落ちる僕の体。
「ごっ、ごめんなさい!ボク…てっきり…!」
その惨状を見て、すぐに僕を殺した物体…『魔法の鋼鉄バット エスカリボルグ』を頭上にかざし、振り回します。
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪
気の抜けるような音と共に、僕の頭が膨らみハイ元通り。
気を抜いてる暇なんかありません。すぐに立ち上がり…
「何でこんな体にしたか答えなさいッ!さもなくば…わっかがどうなるかわかるね……?」
語尾のほうこそ冷静に見えますが、今の僕なら太ももの鎌でドクロちゃんを切り刻んだり見えない手で引きちぎったりできる気がします。
「だって、桜くんが…いきなり…」
涙目で自分を抱きしめるドクロちゃん。
「そこじゃなくて!何で僕が女の子になってるかだよ!」
そう…皆さんは気づいていると思いますが、僕は今、女の子なんです!
まだ顔は見てませんが、多分なかなかいけると思っています。
「ずるいよ…」
「何がだい!?別に何もやってないじゃないか!」
そんな僕はおかまいなしで、ドクロちゃんは…
「ボクの話を聞かないで…なんで…なんで自分のことばっかり…桜くんのバカぁ!」
「ドクロちゃんだって人の事言えないじゃないふぁぁ!」
いきなりエスカリボルグを振り回してきたので、なんとか紙一重でよけました。
ふっ。今の僕なら弾丸さえもかわせる。
―これは、最近お兄さんたちに萌えられて少し落ち込み気味の僕、草壁桜と、『絶対赤飯前の十八歳以上を見つけ出す』と大きいお友達と約束してしまったドクロちゃんの、ドロドロのR指定物語。