※ 第六話、アクジが記憶を失っている最中の設定。マリアの宣言後〜れんげ前あたり。  
 
【アクジの記憶を取り戻すと宣言したマリア、その言葉に連れられて理科室にやってきたアクジは、  
 マリアの不意打ちで意識を失い、気がつけば理科室の机に縛り付けられていた。】  
 
 
「お前……いったいどうする気なんだよ」  
「手段は選ばないって言ったはずよ。だから、一番手っ取り早い方法で大事なことを思い出させてあげる」  
 くそっ、仰向けで縛られて、これじゃまな板のコイじゃねーか。  
 力を入れようにも、ビニールロープが食い込んで頭しか上がらねぇ。  
「大事なことってなんだよ。だいたい、魔女だの天使だの、ありもしないことを思い出すわけないだろ」  
 と、頭を上げたオレの視線の先で、マリアが大きく片足を机にのせ、両手で体を持ち上げて机の上に乗り上げてきた。  
(おおっ……お前なんてこと……)  
 片脚を膝立ちにしてもう一方の脚を机にのせるその瞬間、開いた両フトモモの間のデルタ地帯がばっちりお目見えする。  
 放課後の理科室、下校時間が過ぎた薄紫色の闇の中でも、ぴらりとのぞいた水色と白のしましまが目に焼き付いた。  
(オレの欲望マンダラの頂点、隠された聖域がこんなにも簡単に……)  
 マリアは大の字に開いたオレの体の、丁度股の間に挟まるようにして、ちょこんとかがみこんだ。  
「あなたが私にしたこと、まるっきりお返ししてあげるわ。そうしたら、絶対思い出すんだから」  
「お、おい。オレはなんのことだかさっぱりだけど、責任だけは取るから早まるな」  
「バカ! 責任なんて言葉、人の気持ちをさんざん宙ぶらりんにする奴に言われたくないわよ」  
 ぐっとのしかかるようにマリアの体が倒れ込んだ。  
 息詰まる距離、四つん這いに覆い被さったマリアは、うつむいて、オレの体を探るように見つめていた、  
(やべっ、シャンプーのにおい……)  
 オレは前から、ふと無防備になった瞬間に漂ってくる幼なじみのコレに弱かった。  
 楽しかったことも、そうでなかったことも、ずっと昔から一緒だったマリア。だからこそ一緒にいるのが当たり前で、  
それ以上の意味を求められずにいたが、時々はその、クラッと来ることもあるわけで……  
「手段は選ばないんだから。覚悟しなさい」  
 マリアの少しだけ震えた声に、オレは我に返った。  
「ちょ、待て……!」  
 マリアの指がつつつっと開いた胸元をなぞり、首筋まで昇ってきたために、オレの言葉は中断された。  
「な、何やってんだ、お前。これは人体実験じゃすまされねーぞ」  
「実験なんかじゃないわよ! コレはどっちかっていうと実戦よ」  
「実践だろ!」  
「どっちでもいいわよ!」  
 真っ赤な顔で、オレの顔をじっと見つめるマリアの表情は、いつもの向かい風を受けてポジティブに笑うマリアの姿とは重ならなかった。  
「マリア……ううっ」  
 それ以上言葉が出ないまま、オレは指だけじゃない、両手のひら全体でぴとりと首筋の両側をなでるマリアの手に意識を持って行かれる。  
 マリアはそのまま真っ赤になった顔を背けると、更に上体を乗り出して、オレの顔をかかえるようにしたまま、横顔に顔を近づけた。  
「……ふー」  
「うわぁっ」  
 突然の感触にオレの全身を電気が走った。  
「ふふふ、なんだ、アクジも弱いんじゃない、ここ」  
 初めての感触に体のざわめきが落ち着いた頃、ようやく耳元に息を吹きかけられたのだと気付いた。  
「な、なにすんだよ。オレに恨みでもあるのか。だいたい、こんなことで思い出す記憶っていったいなんだ」  
 やけにあたたかな気配を感じ、会話しながら視線をめぐらすと、すぐ目の前で、マリアの胸元の膨らみが浅く早い呼吸とともに揺れ弾んでいた。  
 マリアがオレの顔を抱え込むようにしている都合上、自然とすぐ近くにこの将来有望な石油産出国が現れる。  
このところのGDP成長率も著しく、小学校の頃と比べると所得倍増計画もかくやだ。  
「なにって、魔女のこと、私のこと、それから……色々よ!」  
 耳元での言葉に、また熱い吐息を感じて体が震える。  
 ついでに興奮したのか、体ごと揺らして喋るマリアの胸にオレの視線は釘付けだった。  
 
 マリアはそれから、オレの首筋から片腕を外すと、髪の毛や、肩や、脇腹など体のあちこちを、指を立てるようにしてさわさわとなぞっていった。  
「なんで魔女と痴漢が関係あるのかわからんが……お、オレ、お前にこんなことしたのか」  
 さらにおっぱいと会話する。  
「失礼ね! 痴漢はそっちでしょうが、ヘンタイ!」  
「いやどう考えてもお前だろ」  
「そっちが忘れたからって、都合良く被害者にはなれないのよ!」  
 耳元から顔が離れ、マリアの手も腹筋やら腕やら曖昧なところを探っていたために余裕が出てきた。  
そこで、オレはちょい悪な報復を試みた。  
 ぽいん。  
 頭をあげて、額でちょいと制服の下の脂肪球を押しつぶす。  
「いやぁっ!」  
 生き生きとした弾力に押し戻されながら、まるで額に全神経が集中したように柔らかさをタンノーすると、  
突然脳裏にフラッシュバックするモノがあった。  
(これは……この感触……前にもあったような……)  
「バカ、ヘンタイ!」  
 ごつん。  
 持ち上がったオレの頭を、マリアが思いっきり押し戻した。  
「ぎゃあ」  
「何考えてんのよ! 信じらんない!」  
 信じらんないのは幼なじみの後頭部を全力で机に叩き付けるお前の方だよ!  
「ま、待てよ。今オレ、何か思いだしかけたんだ。オレ、前にもお前のおっぱ……体に触ったことなかったか?」  
「え?! 何、頭を打ったのが効いたの!?」  
「そっちじゃねえよ! だからもう一回はやめてくれ! そうじゃなくて、お前の、その、胸に触ったら、なんていうか、そんな気がして……だな」  
「そんな気じゃなくて、現に触ったわよ。そりゃもう、あちこちネチネチとね」  
「やっぱりそうなのか」  
「でも、なんで急に……もしかして、忘れたのと同じ事をもう一度体験したら……ううん、それとも、本能的な興奮?」  
 マリアは突然姿勢を整えると、ちょこんとオレの上に座って悩み始めた。  
 やばっ、お前、そんなところに座ったら、直接的なシゲキが……  
 しましまウォッチングからおっぱい観察まで、ただでさえ反応していたオレのムスコが、じっとりとしたマリアの体温を感じて更に雄叫びをあげる。  
 おい、こら、静まれっ! これじゃいくらマリアでも、本物のヘンタイってバカにされちまうよ!  
「そうね、本能の要求が、隠された脳の記憶を呼び覚ます……肉体的な危機に生命が未知の力を発揮するように、あり得る話だわ……ん?」  
 と、独り言の途中で、ふとナニかに気がついたマリアの顔が強ばる。  
 そして、オレの目線の先でマリアが、顔はそのままに、視線だけをゆっくりと下げていった。  
 お願い、気付かないで! マリア様、見ないで!!  
「アクジ、これ……」  
「いや、これはその、生理的な……」  
 強ばった表情のまま、ひょいとお尻を持ち上げて膝立ちになったマリアのスカートの下で、オレのちょい悪マストが大きく帆を上げて、  
大海原への航海の時を待ちわびていた。  
 おそるおそる見上げると、今まで以上に真っ赤な顔で必死に唇を噛み、さらに顔中汗の玉を浮かべたまま平静を保とうとしているマリアの顔。  
「い、いいわ。そういうことなら、ここからは……」  
 マリアの手がおずおずと下りてきたかと思うと、突然ぐっと片手でオレの中心に触れ、もう片方の手をベルトに掛けた。  
「お、お前、マリア、本気か!」  
「本気よ、いいわね。手段は選ばないって決めたんだから……。本当はあんたにもう一回アレをさせるのがいいのかもしれないけど、  
自由にしたら歯止めが利かなくなりそうだし……私が……」  
 や、やばい。いつかはと思っていたけど、年貢の納め時がこんなに早く来るなんて。  
「マリア、待てよ、オレ、ちゃんと思い出す……まだ何を忘れたのかわかんないけど、これから思い出すから……」  
 オレの言葉を聞こうともせず、マリアは片手で器用にベルトのバックルを外した。  
 もう片方の手は、相変わらずしっかりとオレのホットスポットに添えられている。  
 それは何をするというわけでもなく、ただ体温と感触を知るためのようにソフトに触れているだけだったが、それだけでも十分以上に  
オレの興奮は維持されていた。  
「私は今すぐがいいのよ。これからでも、明日でもない、今よ。だから私はこうするの。それに、いつかはって思ってたし……」  
 マリアは自分に言い聞かせるようにしながらも作業を続け、ついにオレのジッパーに手を掛けた。  
「覚悟しなさい、西村アクジ……」  
 
 
             【気が向けば続きます】  
 

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