『どうして、こんなことになってしまったんだろう』
内心につぶやく。
こんな惨状を迎えてしまう前に、自分の手でなんとかできたはずなのだ。それを怠った、
自分の愚かさが招いた――。
「呑んでるかあっ、にわだいすけえっ!? 」
異様にハイテンションな声に合わせ、ばぁんっ、と思い切り肩をはたかれた。
瞬間呼吸が止まった。結構痛い。
「り、梨紅さん……」
「おうおうどしたい、ずいぶんしょぼくれてるぢゃねえか!」
べらんめい。
すっかりオヤジめいた声を張りあげ、バンバン背中をはたくのは原田梨紅である。大助
にとって哀しむべきことに間違いなく。
服越しの背中には、小さなもみじがいくつも刻み込まれていることだろう。
じんじん響く痛みをこらえながら目を配ると、梨紅の右手にはさっきまでアルコールを
含みまくった液体で満たされていたはずのグラス。側の床には無造作に置かれた、大きな、
しかしもう中身は残り少ない酒瓶。その顔は今やこってり炙られたかのように朱に染まり、
掛け値なしのユデダコ状態。
そうつまり。
酔っ払い。
すっかり出来上がっている、というかこれはきっぱりと酒乱の域だ。
「あははーっ、正月そーそーくらい、くらいよーっ!」
なにがおかしいのかゲラゲラ笑いながらビシバシ繰り返される張り手、いやむしろ掌打。
すっかりキャラが変わり果て――壊れていた。
おまけに、側では梨紗も同様にへべれけになっている。
『どうして、こんなことに――』
変わり果てた姿を絶望的な想いで見つめながら、大助は記憶をたどっていった。
新年、明けましておめでとうございます。
と、くればお約束。大助は、原田家の双子姉妹梨紅と梨紗、両手に花と連れ立って初詣
――異国情緒あふれる東野町だが、神社くらいある。そろいの振袖姿に目を奪われたり、
おみくじ引いて吉だ凶だと騒いだりしてからひとまず原田邸にもどってみれば、ご両親や
執事の坪内さんも不在。
梨紅の部屋に招かれ私服に着替えたふたりにおせち料理をごちそうになってしばらく、
「じゃーん」
景気よい声とともに部屋に入ってきた梨紗が抱えてきたのは、大きなボトルだった。
「梨紗、あんたそれ、お父さんとっておきのウイスキーじゃない! 今度帰ってきたら飲
むんだって楽しみにしてたのに」
そういえば、梨紅さん達のお父さんってどんな仕事に就いているのかなんて訊いたこと
なかったなあ。しょっちゅう不在みたいだけど。ああそれから、僕たち未成年なんだから
アルコールはどうかと。
「いいじゃないいいじゃない、固いこと言いっこなし。正月なんだからブレーコーよ」
既に三人分のグラスを配ってるし。
「いいのかなあ、お父さん泣くよ」
「だーいじょうぶ、その時は丹羽くんに無理矢理飲まされたってことにしとくから」
新春早々冤罪の危機!
「うん、じゃあそれで」
しかも追い討ち二面楚歌!!
「り、梨紅さんっ!?」
「なぁんてね。だいじょうぶよ、責任は梨紗に取らせるから」
「ナンダヨー、あんただって共犯のクセに」
「だーれーがー? 勝手に持ち出したのは梨紗でしょ」
「とか言いながら手酌で始めてるのはどなた?」
「おや?」
それもストレートでなみなみと。
「んふふ、実はわたし、お酒っていっぺん飲んでみたかったのよね」
「でしょ、あたしもあたしも」
「丹羽くんは飲んだことあるの?」
有無を言わさず大助のグラスにも注いでいく梨紅。
「うん、実はじいちゃんに付き合わされて時々。その度に母さんに怒られてるんだけどね、
じいちゃん」
「うわ、不良」
「うん、不良」
「あのね」
表面張力の限りに注いでおいて言う台詞か。
「ま、ともかく……かんぱーいっ!」
「あ、もう梨紗ってば勝手に仕切らないでよっ!」
「か、乾杯!」
グラスを高々テンションも高々な梨紗に、ぶつくさ漏らす梨紅と慌てる大助。遅れてグ
ラスを掲げ、中身をこぼしそうになりながら、コツ、と触れ合わせ、口元に運んだ。
ちびり、と舐めるようにひとくち味わう。とっておきというだけに味わい深いが、度数
がかなり高く、含んだ口内から流し込む食道、胃の腑にかけて焼けるようだ。やっぱり、
水で割らずにこれを飲むのは結構きついものが――。
「かぁーっ!」
「おいしーっ!」
タンッ!
そろって勢いよく空のグラスをテーブルに置いたのは梨紅と梨紗だ。
「へ?」
目を疑う大助。
グラスいっぱいのウイスキーが全滅!? 3秒と経たずにか!
うわばみツインズ。
「おう、のみねえ」
すかさず互いに注ぎ合い始めた。しかもまたそんないっぱいいっぱい。
「あ……あの、おふたりさん?」
おずおず。
「んんー?」
「なぁーにぃー?」
そろって大助を見る目が据わっていた。
「……なんでもないです」
で。
『どうして、こんなことに――』
何度目とも知れぬ後悔にさいなまれながら、部屋を見渡した。
高級酒をミネラルウォーターもかくやの勢いで次から次へと飲み干し続け、床には暴虐
の名残を示す空き瓶が何本も散乱。もはや原田姉妹の猛威は止まるところを知らない。
連邦の白いヤツが一機ならず二機、がん首そろえて戦場を駆け回っているようなものだ。
『そんな中、自分になにかできることがあっただろうか』
いや、ない。
反語で述懐にふける大助の瞳にも、諦念が色濃い。もはや戦局は決した。努めるべきは
いかに撤退戦を演じ切るか、だ。
しかし、急迫する情勢はそれすらも許さず。
「ほれほれ、ぐぐっーと」
目の前では、グラス片手にくだを巻いて絡む梨紅。言う間にひと口あおる。吐き出す息
はすっかり酒臭い。というか揮発したアルコールそのもの。
「い、いや梨紅さん――」
「なぁにぃ、あたしの酒がのめんのだとぉ、それでも大陸軍(グランダルメ)の一員かっ!」
「そ、そんなことない、ていうか大陸軍って」
大助だって自分のアルコール受容限界くらい把握している。こんな度数の酒をこれ以上
――しかもストレートで――飲んでは、本気で危険。
だが、そんな事情を解するヘビードランカー梨紅ではない。
「のめんのかー」
不必要に顔を寄せて迫る。
酒乱、それも絡み酒。
「んじゃあねえ……」
とまどったままの大助に業を煮やしたか、ぷいっとそむけると床に置いてあったボトル
をわしづかむや、
「あ……」
呆然と見守る大助の前で、ごきゅっとラッパ飲み。そして、ぷうっ、と頬を膨らませて向
き直ると、がしっと両の手のひらで頭をつかんで顔を寄せ――。
唇を重ねてきた。
「――!?」
不意打ちに目を白黒、両手をばたつかせてる大助だが、梨紅の強引な口づけを拒めない、
拒むつもりもまたない。
一気に注ぎ込まれる喉を焼く酒精。
「んんーっ!」
思わずそれを飲み干すと、あっという間に胸の底から炎が広がっていったのは、酒精と
カクテルされた梨紅の唾液による心理効果も大きかった。
「んっふふ、のんだのんだー」
嬉しそうに唇を離し、しなだれかかりながら常には見せない艶としたまなざしを大助に
注ぐ。
「あぁーっ!」
大助と梨紅のやりとり一部始終を、かたわらでぽやーんと見届けていた梨紗が、ふたり
を指差して大声をあげた。
「ちゅーしてたぁっ!」
ちゅーいうな。
「まーったくこのバカップルは、ひとまえでいっつもいっつもはらたつなー」
「いっつもって――」
そりゃクリスマスイブのあの時はしたけど。
「きっともうふたりは倫理も人目もはばからず年中発情期のケダモノさながら底なしの愛
欲にふけるのね。嗚呼、お父さんお母さんっ、梨紅が不良にーっ!」
勢いでとんでもないことを口走る。
「梨紗、あんたねえ」
「だからぁ」
なんのつもりか、そそっと擦り寄ってきた。
あきれ顔の梨紅を、ずい、と押しのけ、ほのかな危険を感知して身を引きかける大助の
頭をがしっと――またか――つかむと、にっこり。
「あたしもするぅ」
否を告げる間もなく。
「へ――んんんんーっ!?」
大助の唇は梨紗のそれによってふさがれていた。しかも含んだアルコールのおまけつき。
「あぁぁぁーっ!!」
今度は梨紗に押しのけられた梨紅が叫ぶ番だった。
「あ、ああああんた、なんばしょっとかあああっ!!」
ぱぁんっ!
背後から梨紗の頭部、左右の耳あたりを両掌ではさみ打った。それこそ、一瞬の間に数
百回打ち合わされた頭、その中で揺さぶられた脳がパンチドランカー症状を呈してしまい
そうな勢いで。
そのままぐぎっと90度上に首をへし曲げられると、きゅぽん、と妙な音を立てながら、
重ねた唇も外れた。
「おぶっ!? なぁにすんのよっ、梨紅ぅ!」
危険な角度の首を直しながら、梨紗はうがーっと吼える。
「なにすんの、じゃなあぁぁいっ! ひとの、ひとの……に……なに、をっ……」
激昂のあまり言葉に詰まった梨紅は、ぐいっと再び酒をあおると、
「梨紅さん、あの、これは――んわっ!?」
しどろもどろな大助の唇をふさいだ。
アルコールのどさくさに舌まで滑り込んでくる。いろんな意味で強すぎる刺激に抵抗の
意思も消え失せた。
ひとしきり堪能すると、梨紅は満足げな笑顔を浮かべて唇を離し、
「消毒完了」
「あたしは毒かいっ!?」
また横合いから梨紗にひっつかまれ、唇を奪わ――。
「やらせはせんっ!」
寸前、梨紅の手のひらがしぱっと割り込み梨紗の唇をふにっとふさぎ抑え、
「コレはわたしの!」
改めてキス。
ああもうコレ扱いされてるけど、なんかどうでもいいや、と為されるがままの大助。
過度のアルコール摂取にとうとう脳のボルトがゆるみ始めたらしい。
「姉おーぼー!」
理不尽な梨紗のブーイングなど受け容れられるはずもなく、黙殺してキス継続。
「むー。いいもん、じゃあ、こっちにする」
にへら〜、と笑うと、興味津々といったまなざしで、あぐらを組んだ大助の下半身を見
やると、すっと手を伸ばして、ズボンのファスナーを下ろしてきた。
『貞操の危機!?』
そう大助が察した時には、中に侵入した梨紗の手によって、すでに固く張り詰め完全
変形モードのダイスケMk-2は引っ張り出されてしまっていた。
「――っ!」
反射的な抵抗も、がっちり梨紅に頭を抱えられてキスされている上に酔いも手伝っては
ままならない。
なにより、
「んふふふ〜」
妖しげな笑みを浮かべつつ、さわさわとそよぐ梨紗の手のひら、指先の温かさと柔らかさ、
心地よさときたら。
身を屈めて顔が、唇が近づき――。
「なにをしとるか」
ごすっ。
梨紗の後頭部に、蠍の毒針のごとく容赦のカケラもない梨紅の左肘打ち下ろしが突き刺
さった。声もなく、頭を押さえてうずくまる梨紗。
「こ・れ・も」
身を屈めて大助の身体を南下。
「わたしの〜」
剥き出しにされた大助のものを無造作に握った。
「うわっ、うわっ」
もう声をあげるしか。
「あぁもぉ! 梨紅、上も下もひとり占めずるいーっ!!」
「わけわかんないこといってんじゃないっての! やんのかこらー!」
早くも立ち直って叫ぶ梨紗に切り返す梨紅は、肘を90度に曲げた左手を身体の前で死神
の鎌のごとくヒュンヒュンと振ってみせた。今にも鞭のようなジャブと打ち下ろしの右を
繰り出しそうな構えだ。
「おお、やったらー。アンタとはいちど決着つけなきゃいけないと思ってたのよ!」
対する梨紗は両拳をそろえて顎下につけ、上半身でグリングリンと無限の記号を描いて
ローリング。そこから繰り出されるのは左右のフック連打か。
遠隔戦闘と近接戦闘、奇しくも好一対をなすふたりの構えだった。
……観戦している場合ではなく。
止めないと。
「ふたりとも、喧嘩はよくな――」
「「丹羽くんは黙ってて!」」
ユニゾンで遮られた。
だがここでくじけるわけにはいかない。ここはただひとり理性を保つ自分が止めねば。
一触即発緊迫する空気の中、ぴきゅーんと名案――たぶん――がポップアップ。
「じゃ、じゃあ」
ぴっと人差し指を立てて、
「ふたり仲よくいっしょに、っていうのはどうかな」
言ってしまってから、大助は悪寒に囚われた。酔った勢いとはいえ、とんでもないことを
口走ったと気付くだけの判断力はまだ働いている。
いや、本気でいい考えだと思ったんだってば。
「ふたりで――」
「いっしょに?」
ぎん、と姉妹の視線が突き刺さった。
『ひいっ』
コロサレル。
慄然たる予感に凍りつく。
キジも鳴かずば討たれまいに。
"生きるって、ほんとうに大変……"
そんな幻聴まで聞こえてきた。
『ああっ、知らない台詞なのにっ!?』
"あははー、しあわせになりやがれー"
これはついにあちらからお迎えが。
人生の走馬灯が巡り始めた大助をよそに、梨紅と梨紗はゆっくりと構えを解いた。
「そう……だね」
「お正月から喧嘩なんてしたくないし」
酒精以外の成分で顔を真っ赤に染め、見つめ合ってそんな言葉を口にする梨紅と梨紗。
「へ?」
大助は我が耳を疑った。
「今日だけ、今日だけだからね!」
「うん!」
どうやら、独占から共有物へ扱いがシフトしたらしい。
『こ、この状況は……』
左右からふたりが擦り寄ってくる。
肩のあたりでそろえたボブカットと、さらりと長いロングヘア。
ほのかな陽光の薫りと、甘い花の匂い。
誰よりも、なによりも大切な少女と、初めて心を惹かれた少女。
迫る誘惑は鮮烈この上なくそれだけに現実味を欠いた――。
『ああ、なるほど』
ふと、閃く。
これは初夢オチに違いない。
『うん、きっとそうだ』
ほぐれ散っていく理性の断片をそんな想いでたばかりつつ、ふたりの少女の唇づけを同
時に受け、衝動のまま大助は甘美な流れに身を任せていった。
ベッドの上。
端に腰掛け、左隣りの梨紅と再びキス。おずおずとした求めに応じて唇を開くと、隙間
から熱く柔らかな舌がそっと滑り込んできた。積極的に迎え入れて絡め合う。最初はとま
どい遠慮がちだった大助の行為もほどなく大胆さを増し、自分から梨紅の口腔に侵入して
整然と並ぶ真珠のような歯列から歯茎、口蓋、口内粘膜まで舐めあげ、たっぷりと互いの
舌触りを味わうと、ふたり分の唾液を飲み干し合った。
「ん……ふぅ……」
時間をかけた梨紅とのディープキスにひと区切りつければ、かたわらで待ち焦がれてい
た梨紗が顔を寄せてくる。
『僕が好きなのは……』
だが、日ごろ万事に控えめといえどもやはりそうした年頃には違いない大助にとって、
この状況は魅惑的にすぎた。
ためらいも一瞬、求められるままに唇を触れ合わせ、梨紅に対すると同様、同じだけの
時間をかけてむさぼり合う。舌に転がすふたりの味はやはり同じく。
過剰摂取したアルコール分に加え、姉妹と交互に交わすディープキスに大助の頭は霞み
がかったようになってしまい、
『僕が好きなのは梨紅さんだ―――』
その想いに嘘も揺らぎもない。そうありながら、理性も意志も、この濃艶な背徳の幻実を
前に掻き消えていく。
ふたりを相手の口づけはまったく飽きるということがない。繰り返すうち、すっかり大
助の鼓動は高まり呼吸も荒くなっていった。
何度目かになる梨紅との行為に当然とふけっていた大助の張りつめた器官、そこに触れ
てくるものがあった。
先ほどからむき出されたままだった男の部分に、またしても梨紗が触れてきたのだ。
『は、原田さん!?』
発しかけた驚きの言葉はしかし、梨紅の唇に吸い取られた。
そんな反応にはお構いなく、まだまだ小柄で骨格も固まっていない少年らしからぬ威勢
を示す、まさしく怒張そのものといった器官を梨紗の指は繰り返しなぞりあげてきた。
列を為した小さな虫が、股間から尾底骨を経由して背骨を這い登ってくる感触に本能的
な恐怖すら覚え、より強く梨紅の舌を吸いあげることで中枢の刺激から意識を逸らそうと
試みる。
そんなささやかな抵抗も、つい、と張り出した先端の周囲を繰り返し撫であげられては
ひとたまりもない。自分の肉体中、おそらくは最も鋭敏な箇所に繊細な愛撫を受け、たま
らず腰が跳ね上がり、はずみで固く絡み合っていた梨紅の舌が離れた。
「あ……」
頬を上気させ桜色の唇を艶やかに光らせ、なごり惜しげに大助を見つめる梨紅だったが、
やがて微かにいたずらっぽい表情を浮かべると、下半身へと移った。
固くなった大助の分身に指先を添え、捉えた未確認生物を扱うようにしげしげと眺める
梨紗と、そこに加わり、おずおずと指先を重ねると、同じく興味深そうに見入る梨紅。
『な、なんか品定めされているみたい……』
さしずめ、まな板の鯉。
興奮のあまりメーターが突き抜け吹っ切れでもしたものか、変に落ち着いてきた大助は
自分を客観視する余裕すらできていたりした。
だが。
ちろり。
先端に梨紅の舌先が桃色の表面に触れてきた瞬間、そんなものは消し飛んだ。
「―――っ!?」
空前絶後、前代未聞。第一次接触はそんな印象だった。
熱く、柔らかく、わずかにざらついた刺激に全身を大きくのけぞらせ、跳ねあがりそう
な腰を必死になって食い止める。だが、攻撃はそれだけでは終わらない。続いて梨紗の舌
も舞い降り、姉妹が両サイドからはさんで同時に舐めあげ始めたのだ。
ただ声もなく耐える大助だが、そら恐ろしくなるほどの快楽から逃れる発想はかけらも
ない。逃れたいはずなどなかった。
相似通った双貌が自分の股間に寄り合い、両側から男の器官にちろちろと桃色の舌先を
這わせて唾液でべっとりと照り光らせている。服装と髪型の相違を除けば、自分の正中線
に鏡を置いて映したようなその光景。
しばらく先端から棹のあたりを舐めあげられてから、おもむろに固くはりつめた部分が
熱く滑らかなものにくるまれた。
「う――わ」
想像以上の刺激、いや衝撃が股間から全身に伝わる。
大助の肉柱が、梨紅の小さな口内に含まれたのだ。一方、梨紗は場所をずらして付け根
の部分に舌を這わせている。
鈴口、裏筋、雁首。生温かい舌と唇の動きに合わせて、日ごろ浮かべもしない単語が脳
裏に閃いた。
「ん……ふぅ……」
響くのは鼻に掛かった梨紅の吐息と、猫がミルクを舐めるような湿った音。
くるくると全体をまんべんなく清められたうえ、にじみ出した先走りの液体ごと卑猥な
音を立てて吸いあげられる。ただでさえはちきれそうになっていたその部分の充血を強制
的に増され、痛みと快楽が不分明に溶け合い始めた。
続けて、ひとしきり梨紅が大助を清め終えると今度は梨紗が口中に含み、舌を絡みつか
せながら先端から竿の中ほどまで唇を往復させてきた。替わって梨紗の先ほどまでの行為
を梨紅が継ぐ。
さらに、ひとりが熱く張り詰めた表皮にまんべんなく唾液を塗りつけ、もうひとりがそ
れを追いかけ綺麗に拭い去っていった。
おそるおそるといった手つきで付け根の袋まで揉みあげまでする。
今やふたりには初めての口唇奉仕という抵抗も拙さもなく、双子ならではの絶妙な連携
を発揮してそそり立つ肉柱を唇と舌で同時に愛撫し、ほしいままにしていった。
『死んでもいいかも』
先ほどは、冗談を含みながら死の恐怖に怯えた大助だったが、今では転じて快楽の中で
そんなことまで夢想してしまう。舌に唇、指先はもちろん、鼻から漏れ掛かる熱い息や、
ふたりの栗色掛かった髪からのぞく白いうなじまで、愉悦を高める役割りを果たしていた。
たまらず限界を迎え、
「梨紅さん、原田さん……もうっ……」
ふたりの頭を押さえながら、快楽に眉を寄せてせっぱ詰まった声をあげてしまう。
そんな状況を訴えられてなお、控えるどころか暴発を促すようにいっそう激しく舌と指
を使う梨紅と梨紗。
喉の奥こらえられる限りまで肉柱を含み込んだ梨紅が、頬をすぼめてひときわ強く吸い
あげた瞬間、
「――っ!!」
あっさり止めを刺された。
なにも考えられず、ただ背骨を引っこ抜かれるかのような衝動に突き動かされるまま、
溜め込んでいた精液を梨紅の口腔に解き放つ。
「っ!?」
予想以上の量と熱さと勢いで喉を灼き撃たれ、思わず口を離してしまった梨紅と弾みで
離れた梨紗、ふたりの顔に断続的に痙攣を繰り返す男根からほとばしる白濁の粘液が降り
掛かっていった。
「あっ……」
「ん……」
自らの体液が姉妹を汚す光景がさらなる興奮を呼び、濃厚な精液を止めどなく撃ち出す。
その行為をなかば陶然、なかば呆然とまぶたを閉じて受け容れるふたり。
長々とした射精行為がようやく終わっても、三人の間に漂い流れる異様な興奮は、余韻
へと変わるどころかさらに昂ぶり満ちていった。
口中に溜まっていた粘液を、梨紅が味わうように飲み下す。その様を眺めていた梨紗が
なにやら突き動かされるように近づくと、舌を伸ばして姉の顔、そこに飛び散りこびりつ
いた白濁の液体を舐め取り始めた。
「あ……?」
驚いたように少し目を見張る梨紅だが、再び目を伏せると黙ってされるままに。そして、
ひとしきり清め終わった梨紗が離れると、お返しに妹の顔も舐め清めていく。その行為を
心地よさそう、加えてどこか幸せそうに受け止める梨紗。
ふき取り終わった梨紅の舌が離れ、梨紅と見つめ合う。その唇がどちらからともなく重
ね合わされた。
始めは小鳥がついばむように、徐々に大胆さを増してむさぼるように。
同じ顔立ちをした双子の姉妹、重なった唇の間を二枚の舌が踊るように出入りし吸いあ
げ絡み合い、放ったばかりの精液とふたりの唾液がぴちゃぴちゃと交わされていくあまり
に扇情的な光景に、大助は冷めるどころかさらに激しく劣情を燃え上がらせていった。
ベッドの上、しどけなく並んで横たわる梨紅と梨紗を間近に見下ろし、大助はじっと魅
入られていた。
向かって左手、梨紅のブラウスはボタンを外してはだけ、右の梨紗はセーターを大きく
まくりあげてその下のブラジャーをどちらも外した大助だったが、ものごころついて以来
初めて目にするふくらみ、それが二対も並んでいる様に息を呑んでしまっていたのだ。
羞恥に相貌を染めながら、大助の視線に肌をさらす姉妹。どちらも成長途上、まだまだ
これからといった風情の曲線はなだらかだが、それゆえに引きつけて止まない。よっつの
頂点にはつつましやかな桜色のつぼみが結実していた。
『やっぱり、胸もそっくりなんだ』
残る理性の片隅でぶしつけとは感じつつ、じっくりなんども見比べてしまう。
きれいだな、とか、やわらかそうだな、とか、そんなことばかり頭の中をぐるぐるとり
とめなく駆け巡っていた。
欲望に突き動かされるまま、それでも乱暴にならないよう抑制しつつ、覆いかぶさるよ
うに梨紅のそれにむしゃぶりついていく。
「あっ……」
ひくん、と身をすくめる梨紅。
心臓の上、左の乳房に大助は唇で吸いつき、左手は残る右側を、揉む、というには気を
つかいすぎなほどのやんわりとした手つきで愛撫を始めた。
そして、かたわらでふたりの様子を見つめていた梨紗の右の乳房にも右手を伸ばして、
同様に。自分がひとりしかいないことがもどかしい。もうひとりいれば、梨紅と梨紗を同
時に、均しく愛せるのに。
詮無いことに思い馳せながら、今の自分にできる限りに心を尽くしてふたりの胸を丹念
に指と舌でほぐしていく。
14歳という年齢相応、梨紅と梨紗のふくらみはまだ生硬さを残しながら、弾むような張
りと沈むような柔らかさを充分指先に伝えてきた。
マシュマロのような、とは陳腐極まりない表現だと自覚しつつ、乏しい大助の経験では
そうとしか喩え様がない。
「ふ……あ、にわ、くぅん……」
「んぅ……」
ふたりの唇から、押し殺した声が漏れ始めた。
それをもっと高めたい、はっきり聞きたいと、手のひらから指先を器用に――まるで鍵
を開け罠を外すように――操っていく。唇についばまれつつ舌先で転がされた、あるいは
指先でつまみ擦られた先端は、それと分かるほど固く充血していった。
大助の唇が隣りにひかえた梨紗の胸に移ろうとする。
「あ、に、丹羽くん……」
「なに?」
小さな、そしてどこか気弱げな梨紗の声に、大助は愛撫の動きを止めた。
「そ、その……」
恥ずかしげに顔をすむけ、さらしていた自分の胸を右手で隠すようにしてしまう。
「あたし、梨紅ほど胸、おおきくないから、あまりみないで……」
最後は消え入るようだった。
「――」
えーと。
第一印象ではふたりの違いなどまったく気づかなかった。少なくとも大助には。思いも
よらない言葉にあっけにとられもしたが、そう言われると天邪鬼に比べたくもなったり。
「そんなこと、ないと思うけど」
「だって……」
大助の言葉にうつむいて。
「去年、測ったら梨紅の方が大きかった……」
「梨紗、そんなこと気にしてたの?」
呆れたような声をあげたのは梨紅だ。
「あんなの、たった5ミリじゃない」
「"たった"でも違うの!」
少し拗ねたような梨紗の言葉。
ぷい、とそむけた瞳にはしかし、切なそうな色がにじんでいた。
確かに、大助にとっても5ミリなんてやはり"たった"でしかない。実際こうして見て
も分からないのだから。それでも、数値として示された差異は、同じであるはずの双子に
とってはささいなものでも意識せずにはいられないものだったのだろう。
『梨紅さんがスポーツ――ラクロスをやっているから』
おそらく、そうやって身体を鍛えたか否かで生じた差だと見当をつける。だからといっ
て、大助にとって双方の魅力がわずかも減じるものではない。
それどころか。
「違わないよ」
梨紗の姿になんだか微笑ましいものを感じてしまい、胸の上から彼女の右手をそっと外
すと、顔を寄せて抜けるように白くきめ細かい肌にキスの雨を降らせていく。
「あっ!?」
積極的な大助の行為に、梨紗は軽く驚いて身悶える。が、嫌がって避ける風はない。
「やっぱり梨紅さんと、同じ」
慰めやへつらいではなく、本心からの言葉だった。外見はもちろん、肌に伝わる感触は
梨紅同様、なんらそん色なく大助を魅了した。
「……」
言葉もなく、ただ恥ずかしそうに梨紗は両手で顔を隠した。
そんな様子に微笑みながら、
「梨紅さん」
「なに?」
「一緒に、手伝ってくれるかな?」
そう伝えて、梨紗の左胸に顔を寄せていった。
「ああっ……」
本格的な愛撫の開始に、たまらず梨紗は声をあげ、大助の意図を汲んだ梨紅は顔を赤ら
めながらもうつぶせになり、空いた妹の右胸に唇を近づけ、固く息づいていた乳首を抵抗
もなく含んだ。
「にわくん……りくぅっ……」
ふたりがかりの愛撫に梨紗の嬌声が1オクターブ跳ね上がった。
その響きは、梨紅の胸裡に身を分け血のつながった妹に対する甘やかな愛おしさを呼び
覚ます。
母性に通じる感情、とでもいうのだろうか。もっとも、その象徴を吸っているのは彼女
の方だが。そう気づいて笑みを誘われた梨紅が傍らの大助に目をやると、こちらは赤児の
ように夢中で梨紗の胸に吸いついていた。
くすり、と新たな笑みを漏らしつつ、妹への愛撫を再開。
アルコールに灼かれた脳裏にも背徳感はあった。それを包み込んでしまうほどの愛おし
さも、また。だからこそ、その舌づかいは煽られるように激しい。
「あっ……やぁ……」
耐えかねこぼれる梨紗の声をどこか心地よく聞き届けながら、乳首を上下の唇ではさん
で強く吸いあげ舌で転がす梨紅の背筋が、つう、となでられた。
「ひゃっ!?」
思わず妙な声をあげてしまう。
大助の左手、その指先が伸びてきていたのだ。それは背骨に沿ってつつ、と這い下り、
腰にまとったキュロットからすべり入って薄い下着の上から尾底骨をなぞり――。
「や、あぁっ……」
深い谷間を触れるか触れないかのところで撫で下ろした指先は、その果て、誰にも触れ
られたことなどない部分へ薄布越しにたどり着いた。
「だっ、だめっ!」
秘部にとどまった指先がそこへ繊細な接触を試み始めると、妹への愛撫どころではなく
なった梨紅が恥じらいから声をあげてしまう。
アルコール効果はもちろんだが、ずっとどこかにくすぶり続けていた梨紗への対抗心、
いや、ありていに言ってしまえば大助の心を奪われるのではないか――そんなことはあり
えないと確信していても本能的にこびりついてしまう微かな猜疑心が裡にあって、知らず
暴走に拍車をかけていた。
だが、それも梨紗と触れ合ううちどこかへ解け去り、酒にふやけた脳みそはそのまま、
よみがえった本能的な羞恥心が静止の声をあげさせたのだった。
そんな梨紅にあえて構わず指先は花弁をなぞり、このうえなく柔らかい感触を味わう。
下着の上からでもはっきりと分かる縦筋に沿って浅く上下させると、全身に痙攣が走った。
「ふぁ、あっ……んんぅ……」
唇で梨紗の胸への愛撫にも専念しているとは思えないほど、独立したパーツのように大
助の指先は巧みに梨紅の下半身を蕩かしていく。
まんべんなく舐め尽くされ、全体を照り輝かせる梨紗の半球から離れると身体をずらし、
梨紗のほっそりとしていながらうっすらと脂肪の乗った腹部を徐々に舐め下ろしていき、
ついには腰から下へ。
ロングスカートをまくりあげると、清楚なデザインの白い下着が目に入った。
快楽に弛緩した両脚をたやすく開かせると、白色の中心に、わずかだが明らかな染みが
にじんでいた。
迷わずそこに口づける。
「あっ……」
薄布越しとはいえ、敏感きわまりない個所に口づけされ梨紗の腰が小さく跳ねた。一方、
かたわらでは大助の指先に操られるように腰をうねらせてしまう梨紅。
ふたりの快楽を同時に引き出しながら、大助は巧みに彼女たちの下半身を覆う布切れを
剥ぎ取っていった。
しどけなく開いた両脚の間に、ものごころついてから大助が見たこともない、魅惑的な
女性そのものの器官が申し訳程度の淡いかげりに秘められて、あった。
うつぶせになって腰を少し浮かせた梨紅に、くたりとあおむけに横たわる梨紗。
『もっとよく、見たい』
理性では抑えきれない昂ぶりに従って梨紅の腰に手を伸ばすと、ぐい、とうつぶせのま
ま梨紗の上に来るよう導いた。
「あ……」
「ん……」
思いもしない組み合わせの体勢をとらされた梨紅と、その下で体重を受けた梨紗が小さ
く声をあげる。
重なり合ったふたりのしなやかな脚を大きく広げさせ、大助はその間に分け入った。
「やだ……こんな……」
さすがに梨紅が顔を真っ赤にして訴える。
だが、なんというかもうあまりに刺激的な眼前の光景にすっかり魅了された大助の耳に
は、限界まで高まりきった自分の鼓動、血管を走る熱い脈流以外届いていない。
姉妹の瑞々しい肢体が艶めかしく絡む、この世のものとは思えない光景。
かつて14歳の誕生日、ダークに変身したとき以上の衝撃。
脳が灼けて、融け出す。
シンメトリを為して上下に重なり合う、ほころびひとつなく綺麗な縦線を成したふたり
の秘裂は、鮮やかな桃色をあふれ出た蜜液によって照り光らせていた。
『やっぱり、ここもそっくりなんだ』
記憶に残る限り初めて目にするその部分を上下しげしげと見比べ、素直にそんな感想を
浮かべてしまう。
さらに、秘めやかな個所はもちろん、身に付けていたブラウスやセーター、ソックスは
そのまま、さらけ出された下半身の生き生きとした肌の白さ、まだ少女らしく脂肪は乗り
きらないながらも充分な柔らかさを示した丸みあるお尻とその谷間、伸びやかな太もも、
なにもかもが蠱惑的にすぎて。
ああもうなんというか――。
ビバ! エロティシズム!
ビバはイタリア語でエロティシズムは英語だ!!
なんだか訳が分からなくなっているけれど、やることははっきりしている。
重なり合いつながり合ったようなふたつの縦裂に、大助は顔を埋めていった。
女性たらしめるほのぐらい割れ目、熱く濡れた襞、莢にくるまれた秘芽、淡い繊毛。姉
妹ふたりのそれら全てが熱く濡れ、大助を迎え入れる。
無造作に舌を伸ばし、舐めあげ、舐め下ろした。
「ひぁ――」
「んぅっ……」
わずかなタイムラグで梨紅と梨紗が震える。
舌を届く限りに突き出して、むさぼるように内奥まで挿し込んでいく。既に熱い蜜をに
じませ始めていたそこは、ふたりの恥じらいに反比例するごとく妖しい蠢きをもって侵入
者を迎え入れ、無数の襞がさざめくように奥へと招く。
ここの味わいもまた、そろって同じ。
「あ……ふぅ……」
胎内を舐めまわされ、花弁を吸いあげられ、さらにその上で小さくすぼまっている菊座
まで鼻先で擦られた梨紅の奥から、新たな蜜が次から次へとあふれ出る。日頃はつらつと
した少女の身体の一部とは思えない淫らな反応をもっと引き出そうと、大助の舌づかいは
激しさを増した。
滴る蜜はその下で花開く梨紗の花芯へとろとろ伝い落ちていく。追うように大助の舌は
移り、ふたり分の愛液にぬらつく花弁を割り開いて深く挿し込んでいった。同時に指先は
梨紅の花弁を弄り、浅く潜り込ませてくちゅくちゅと音を立ててかき混ぜる。
既に固くなっていた陰核を探り当てられ、舌と指でそれぞれに転がされると、ひときわ
高い嬌声がそろって湧き上がった。
交互、かつ同時に丹念な愛撫を受けた梨紅と梨紗は、もはや意志とは関係なく腰をくね
らせ、跳ねさせる。
「あっ、ひうっ、にわ、くんっ」
「も、もう……あぁっ!」
やがて、導かれるまま同調したかのようにふたりの声と動きは重なり合い、
「「んああぁぁぁっ!!」」
ひときわ大きな痙攣にそろって全身をのけぞらせ、同時に快楽の頂点を極めていった。
ふたりそろっての絶頂を見届けた大助が、膝をついて立ち上がった。
くたりと力を失い、梨紗に身体をあずけた梨紅の腰をぐっとつかみ、ふたりの隙間にそ
そり立つ肉柱をあてがうと、ぬめぬめと蜜を吐き出す肉襞同士の境目に押し込んでいく。
「あ……またぁ……」
「いま、だめぇ……」
余韻覚めやらぬ肉体に加えられた新たな刺激に、ふたりはおそれと期待の入り混じる声
をあげた。
女同士の柔らかな感触に男の硬さが分け入ると、股間で上下から男根を挟んだ姉妹は、
触れ合う面積を少しでも広げようとそれぞれにぬかるんだ秘裂を擦りつける。その行為は
大助越しに互いの花弁を擦り合わせる結果となり、背徳的な快感をいや増した。
わずかな擦れ合いでも伝わってくる充分な快楽を受け、大助は動き始める。
にちゅっ、にちゅっ、と、三人の粘膜が触れ合う個所から響く粘ついた水音。
姉妹の肢体を夢中になって、分け隔てなく均等に一本の肉茎で貪る。
破瓜の痛みを伴なわない、しかし男根によって与えられる純粋な性の快楽。それは絶頂
に達したばかりの梨紅と梨紗を再度おぼれさせた。
たまらず互いに手を回してしっかりと抱き合う。
大助はそんなふたりの重なり合いぴたりと密着した乳房の間に、左手のひらを上、右は
下に向けて差し込んだ。左右互い違いに入れた手の甲と掌に感じるひしゃげた半球は、そ
れぞれ量感と柔らかさ、そして心地よさもひとしい。
汗の浮く滑らかな肌に上下から挟み込まれた手のひらを巧みに操る。
乳房の柔らかさの中に固く実る突起を指の間で挟み、姉妹の乳首を擦り合わせてやると、
思いもしなかった快楽の得方に気付かされたふたりが歓喜の声をあげた。
両手の動きに加えて腰も激しく動かしにかかる。
肉孔の入り口と屹立した小粒な淫芽を、三人分の粘液にまみれた男根に擦られるたび、
姉妹の全身に快楽の電流が生まれ伝わり広がっていった。
「んっ……ぁあ……」
「ふ……ひぁ……」
零れ落ちる悦楽の声。小刻みな震えに取りつかれ始めたふたりの反応に、再度の絶頂の
到来を察した大助は、ふと思いついて腰を止めてしまう。
「……あっ!?」
「やぁ……」
男性器を挟んで貝合わせのとりこになっていた梨紅と梨紗は、急に途絶えた悦楽の波紋
に声をあげた。切なげな視線を大助に注ぐと無意識のうちねだるように小さく腰を擦りつ
けてしまう。
そんな四つの瞳に見つめられる大助は、梨紅の身体を抱え起こすとゆっくり仰向けに倒
れ込んだ。
「ああっ!?」
大助と一緒に倒され、仰向けに重なった梨紅の両脚は大きくM字に開かれ、その中心か
らは、まるで彼女のもののように大助の肉柱がそそり立っていた。
「や、やだ、こんな……」
恥じらい顔を覆う梨紅を横目に、大助は半身を起こしてこちらを見つめていた梨紗に目
配せを送る。意味を理解したのか、顔を赤らめながら近寄り梨紅の上に覆いかぶさった。
「梨紗ぁ……」
姉の言葉に応えるように、その唇に自分のそれを重ね、舌を挿し入れていった。
そのまま自然に乳首と秘裂も円を描くように擦りつけ、夢中で先ほど覚えてしまった快
楽を求め始める。固く尖った乳首と剥きあがった肉芽をくりくりと押し付け合えば、姉妹
の肉体に弾けるような快感が走った。
同じ顔立ち、体格の双子姉妹が進んで肢体を絡め、唇と胸と女性器それぞれでつながり
合い、一度おあずけをくらってはずみのついた肉欲を進んでかき立てようと自ら動く姿は、
間近に眺める大助がわずかな羨望と疎外感を覚えてしまうほど熱に満ちて美しい。
そんな行為を邪魔するではなく快楽に上乗せするように、大助も下から腰を小刻みに突
きあげ、三人三様各々追い込み高めていった。
「にわくんっ、りさぁっ!」
突きあげる歓喜にのけぞりふたりの名を呼ぶ梨紅の唇を逃すまいと、梨紗が追いふさぐ。
横合いから大助も顔を寄せ、三人はそれぞれ三枚の舌をいっぱいに伸ばして弄い合った。
どろどろと混濁した意識の中、三人の肉体を巡る快楽はより熱く大きく白熱化していき、
火花を散らして最後の瞬間へ高め合っていく。
「んっ、ふぅ、んあぁぁっ!」
「ひ……あっ、もう……」
梨紅と梨紗の表情が恍惚に歪んだ。
同じく限界を迎えた大助が無我夢中で激しく腰を突き動かした瞬間、
「あっ、はぁっ、ひああぁぁぁっ!!」
「ふぁっ……んううぅぅぅっ!!」
淫靡な合唱とともに姉妹はそろって頂点を極め、大助も灼熱のかたまりを勢いよくふたり
の間に放っていた。
三人の絶頂はひとつに溶け合い、閃光に白く染めあげられた意識はやがて甘やかな暗闇
へと呑み込まれていく。
さて。
『夢オチじゃなかったのか』
ほどなく正気に返った大助は、ベッドの上で愕然と頭を抱えていた。
両隣に寝ているのは、当然のように梨紅と梨紗のふたり。
とりあえず、意識を失った彼女たちの身体をきれいにして、衣服を整えて。
今はこれが精一杯。
ふたりが目を覚ましたら、今度こそ命はないかも……。
刑の宣告を待つ罪人の心地で途方に暮れていたところへ。
「んん……あれ、にわくん?」
さあっ、と全身から血の気が引いていく。
梨紅が目を覚ました。梨紗もとろんと瞼を開いている。
大助は恐る恐る声を掛けた。
「オ……オハヨウゴザイマス」
だが、のろのろと身を起こした梨紅は、らしからぬけだるい表情を浮かべたまま、
「んー、あたしどうしてこんな……?」
眉根を寄せる。
「どうしてって……」
「おせち料理食べて、それから――ううっ」
顔をしかめてこめかみを押さえた。
「あたまいたい……」
「がんがんするぅ〜。静かにしてよ、りくぅ……」
梨紗とふたりそろって苦鳴を訴えている。
これはもしや。
「おぼえてないの、ふたりとも?」
おそるおそる。
「なにを……ていうかもうダメ、ねる……」
「あたしもねる〜、おやすみ……」
ふたりして、ばったりベッドに倒れ込んでしまった。
『これはもしや』
酔っ払った果てに記憶喪失、と。
「は――はは……」
乾いた笑いとともに、空気が抜けるように全身の緊張がほぐれていった。
なんともご都合主義なオチではある。
それでも、いざ忘れられてしまったとなると、
「ちょっとだけ、残念な気もするかな」
仲睦まじく並んで眠る姉妹の姿――ちとアルコールにうなされるような寝顔だが――を見
守り、喉元すぎればなんとやら、そんな言葉をつぶやいてしまう。
なにはともあれ。
『梨紅さんたちとは、お酒を呑まないようにしよう』
特に、ふたりそろっては。
でないと、命がいくつあっても足りない。
そう固く誓う大助だった。
―― 了 ――