じゅぷじゅぷと湿る卑猥な音と腰を嬲られる感覚に、途絶えていた意識がじわじわと覚醒  
してきた。  
「……ん、……あぁ…………?」  
 背中に頭、ガンガンと鳴り響く鈍痛に顔をしかめながら、朧に霞む視界の中心に動くもの  
があることに気付いた。  
 繰り返されるえずくような声、従って打ち震える下半身。ようやくなにをされているの  
かが分かった。  
「! ちょっと、ちょっとぉ!?」  
 一気に目が覚める。つい直前に自分を倒した相手が股間に顔を埋め、咥え、熱い口内に  
自身を受け入れている行為がひどく気持ちよく、それから驚いた。  
「なん、なんなんな、何……!?」  
 事態を把握できない中で梨紅の顔が頭を掠め、逃れようとしたところで両手が後ろに回さ  
れ自由が利かないことにはっとする。手首が紐で縛られていた。  
「目が覚めましたか? 丹羽先輩」  
 地べたに身を伏せ、大助と同じく背中の方で手首を縛られながら動きを繰り返す彼女の  
すぐ後方に月影の下で青白く映る女性が見下ろしていた。  
 まず考えたのは彼女が誰であるか。一瞬後に思い至ったのは正体がばれているという事実。  
顔を隠していたものがなくなったことに狼狽し何か隠すものは、と周囲を見回すが、自由の  
利かない状況ではどの道どうにもできない。  
 
「……君は?」  
 こうなれば毅然と相対すしかない。きりっと表情を締めて相手の目を捉えるが、下半身  
がむずむずするのだけは止めることができない。  
「あらあら? 一度お会いしたのにもうお忘れですか? ねえなぎさ」  
 ホワイトのブーツの先がブラックの恥部を嬲り、抵抗とも嬌声ともつかない音が喉を震  
わす。振動に大助の先端が敏感に跳ねる。  
「なぎさ……?」  
 聞き覚えのある名に引っかかりを感じ、頭を上下に動かす少女に目を落とす。上目遣い  
に目尻に雫を溜める少女の、かすかに見える表情。  
「まさか、今日の……っ?!」  
 髪型……雰囲気そのものが変わっていて分からなかったが、茶色がかった髪と顔立ちが  
今日であった少女と同じだということにようやく気付いた。そして先ほどからなぎさのお尻を  
虐めているのは、今日一緒にラクロスの練習試合を観戦したほのかという名の少女の友人  
だと分かるのも時間を要さなかった。  
「ご名答です。覚えていてくださったんですね」  
 にこやかに、朗らかに、ほのかはなぎさを弄んでいる。拙い舌使いで与えられる刺激に  
翻弄されそうになりながらも、しっかりとほのかを見据えながら大助は問いただした。  
「何でこんなことを? ううん、それよりどうしてここに……?」  
 人も寄り付かない廃屋に今日見知ったばかりの二人が、コスプレまがいの格好で、しかも  
自分以上の力を備えていることを疑問に思うのは当然である。  
「それは私もお聞きしたいですわ。どうして先輩がここにいらっしゃったのでしょうか?」  
 切り返され言葉に窮した。事実を話すことを躊躇ったのに対し、彼女は小気味よく笑った。  
「お互い様ですよ。その点は秘密ということにしておきましょう。それとこれはお返しし  
ます」  
 衣装の胸元から彼女が取り出したのは、虹色に光り続けている輝石だった。  
 
「それはっ――」  
「ごめんなさい、勝手に拝借してしまって。でも、これは私たちが探してる物じゃなかった  
ので先輩に……」  
 彼女の手がスーツの胸ポケットに差し込まれた。指先が艶かしい動きで肌をなぞった気  
がし、思わず痺れてしまう。  
「さ。これで後腐れはなしですよ? 今からはこの子に付き合ってくださいね」  
 嬉々としているのが言葉と態度から滲み出ている。大助はこれから何をする気か、なに  
をされるかはこの状況から何となく察していた。  
「お……お願い、もう止めてよぉ……。あたし、これ以上は」  
 長時間口を動かしていたせいでなぎさの呂律はたどたどしかった。言葉を受けてほのか  
は困ったように眉を顰めた。  
「そうだよっ。嫌がってるのにそんなことするなんて間違ってるよ」  
 機を見つけたと感じた大助はこの状況を逃れようとなぎさを援護した。彼にしてみれば、  
梨紅という大事な彼女がいるのに他人と交わってしまうことは非常に許せない行為である。  
ウィズは気絶したまま姿が見えず、かといって一人で逃げ出そうとすればほのかに引き止  
められるはずである。地道な説得が一番効を成すと判断し、懸命に訴えた。  
「あぁん、でもぉ……」  
 とにかくするのはよくないよと言い放つ大助は、さらに困るほのかを見てよしもう一息!  
と確信した。  
「困ります、先輩」  
 太い眉を寄せたまま、ほのかの手がなぎさのスパッツの中へとのびた。  
「ぁうッ! あ、止めて……ッ!」  
「だってこの子、こんなに濡れてるんですよ?」  
 スパッツから出てきたほのかの指には透明な液体が、糸を引きながら手首まで垂れるほ  
ど多量に絡みついていた。  
「え…………」  
「止めてっ! あたし、そんな気なんて……ッ」  
「うふふ。なぎさってエッチな子だもんね。この前だって弟くんにお口でしちゃったしね」  
 弟と禁断の……と考えただけで素直に興奮してしまう。バカか僕はぁ!心の中で罵っても  
下半身は元気なままである。  
 
「本当はしたいんでしょ? 丹羽先輩のを入れてみたいんでしょ?」  
 耳元で繰り返し囁きつつ濡れそぼる秘部を撫で回し、なぎさの四肢からは抵抗の力が  
抜けていく。  
「っでも、初めては好きな人と……!」  
「そ……そうだよ! 僕なんかと初体験なんてそんなのダメダメ、絶対ダメ!」  
「ふふ、心配しないでください。丹羽先輩にはこの子のお尻の調教を手伝ってもらうだけ  
です」  
『お、おしりぃッ!?』  
 驚愕したのは二人である。  
「待ってよほのか! お尻だなんて、そんな……ありえないっ!!」  
「大丈夫よ。毎日私が慣らしてたでしょ? 平気平気」  
 ほのかはニコニコ顔でなぎさのスパッツを脱がせ、まだ固く閉ざしていた窄みに人差し指  
を根元まで捻じ込んだ。いきなりの刺激になぎさは悲鳴を喉で潰したような声を上げ身体を  
大きく振るわせた。  
「やぁっ、痛い、痛いよぉ!」  
「これくらいで痛がってどうするの。それじゃ丹羽先輩のなんて咥え込めないでしょ?」  
「僕はなぎささんとなんてできないって!!」  
 大助は必死に訴え続けた。なぎさも懸命に耐えようとしたが、入り口から数センチにわた  
って内壁で蠢く一本の指に、次第にお尻が、下腹が熱くなり始めていた。  
「やぁ……熱い…………」  
「いい具合ね。これなら大丈夫」  
 力のこもらないなぎさの身体を抱え上げ、お尻を大助へ向け使い込まれていない蕾を、  
情けなくもこの状況に勃起してしまっているものに合わせた。  
「うわぁぁッ!? 待って、待ってってばぁ!!」  
 こんなことなら死を覚悟で逃げていればよかったと後悔しだした。気絶したままだったら、  
それよりウィズが傍にいてくれれば……。  
「ほら、丹羽先輩にお尻のバージン奪ってもらうんだからお礼言わなきゃ」  
「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい……ッ」  
 瞳はすでに鋭さを失い、涙を浮かべて大助に申し訳なく思い謝罪の言葉を述べた。うきうき  
と表情を綻ばせるほのかの導きにより、とうとう二人はつながってしまった。  
 
 初めて男性を受け入れたお尻の穴は、固い。排泄とは逆に上ってくる異物に対し、拒絶  
を示すようだった。  
「痛ぁッ! 無理、もう無理ぃ!」  
「ダーメ。まだ半分も入ってないわよ」  
 ほのかの手が無理矢理になぎさの腰を落とそうと押し下げ、声を引きつらせてなぎさは  
身悶える。顔は溢れた体液でぐしゃぐしゃになっていた。  
 大助も堪ったものではなかった。潤滑油といえば先ほどの奉仕でついた唾液しかないた  
め、挿入は苦痛を伴う。裏筋が切れるのではないかという締めつけ、抵抗の中にあっても  
梨紅の顔を忘れないことで、罪の意識を持って行為に溺れないよう努めていた。  
「これくらいで音を上げるような拡張はしてないわよ?」  
「はぅ、い、弄らないでぇ!」  
 ほのかの指が無防備ななぎさの陰部を攻め回す。処女膜を傷つけないよう細心の注意を  
払いつつ中で指を動かす。悲痛に強張っていたなぎさの表情がわずかに緩み、苦しげに荒  
げていた呼吸も切ない吐息が混じりだした。  
「えっちな子。でも分かりやすくて好きよ」  
「ちっ……違う、わよ…………きゃゥ!」  
 言葉で否定しようとも身体が反応してしまう。愉しく弄っているほのかはなぎさの肢体がほ  
ぐれた瞬間に、  
「えいっ」  
 と一気に腰を押し下げた。  
「ひぐっ!」  
「うぁ……」  
 たちまち大助の屹立がすべて体内に呑み込まれた。根元に強く噛みついてくるバージン  
だったお尻のせいで噴出しそうになってしまう。大助が少しだけ気持ちよくなるのに反して  
なぎさは大袈裟と言えるほど声を荒げた。  
「いい、今ぶちって……! お尻、お尻裂けちゃった!?」  
 ひりひりというかずきずきというか、疼きとは違う違和感を抱いたなぎさは取り乱した。  
 
「あらあら本当。血が出てるわ」  
 結合部を覗いたほのかはあらあらどうしましょうと全く慌てた素振りを見せずに慌てた。  
「どうしようじゃなくて! どうしてくれるの!?」  
「……とりあえず退いた方がいいんじゃないかな?」  
「いけませんっっ!!」  
 隙を見て止めようと考えていたのだが見事に制された。  
「せっかく入れたんですもの。最後までしていただきませんと」  
「待って待って! お尻が、お尻がぁ!」  
「気合よ」  
 拳を握って告げる瞳は力強かった。  
『待ってぇ!!』  
 二人の制止を聞かずほのかはなぎさの身体を前後に揺すり始めた。  
「気持ちよくなるから。それまで我慢」  
「痛いって! 止め、傷拡がっちゃうぅ!」  
 前後の動きはお尻にできた裂傷を拡げる結果となっていた。ほのかはわざとやっている  
のだろうか?わざとやっている、間違いない。  
 流れ出す血とともに傷の拡がりが感じられるような気にさせられ、大助だけがいい感じに  
なっていた。嘆き喚くなぎさをよそに一人昇天しそうになる。ごめんね梨紅さん……。  
「先輩。どうですか、なぎさの具合は?」  
「気持ちい…………ってそうじゃなくて! ダメだってこんなの! すぐ止めないと」  
 
 どぴゅん  
 
「出てる!? お尻に出てる!?」  
「…………あ」  
「まあ。そんなによろしかったんですね」  
 真紅と白濁の混じる液が結ばれている箇所からどくどくと溢れ出す。こうして三者三様の  
驚きをもって、丹羽大助と美墨なぎさのアナル体験は終幕を迎えたのだった。  
 
 
「――穢された……僕、汚れちゃったよ」  
 色っぽく脚を横に投げ出して大助は地に手をついていた。  
「ごめんね梨紅さん…………あぁ……」  
「に、丹羽先輩……」  
「そんなに落ち込まないでください。別れの時くらいにこやかに、ね?」  
 悪びれる様子もなくほのかはけろっとしている。三人の中で最も満足したのは彼女に  
違いない。  
「ほのかのせいじゃない! ちょっとは謝るとかアイタタタぁ……ッ」  
 ほのかの肩を借りるなぎさの腰は見事に砕けていた。むずむずするのか、突き出した  
お尻を時折りくねらせる。  
「早く帰ってお薬塗りましょ。痔になったら男の子に嫌われちゃうわ」  
 なぎさのことを気遣うとても優しい子である。そんな子が何故あんなふうに歪んでしまっ  
たのか、知る由はない。  
「丹羽先輩。今日はありがとうございました」  
「礼なんて言われても……穢されちゃったし……」  
「よろしかったら今度プライベートでお会いしましょう。私も先輩と――ふふ」  
「もう勘弁してえぇぇぇッッッ!!」  
 素晴らしい響きを洋館に残し、この日の仕事は一応成功した。…………のだろう。  
 
 
 
 
「梨紅さんん……」  
 梨紅の部屋、ベッドの上で猫撫で声で梨紅に甘える大助の姿があった。もうすぐゴール  
デンウィーク、離れ離れになる前にたっぷりといちゃつきたかった。  
「もぉ、しょうがないんだからあ。疲れが残んないくらいでね」  
「努力するよ」  
 するつもりなど毛頭なかったりする。とにかく精一杯甘えて押し倒してと、ピンクな考えし  
かない。  
「梨紅さんっ」  
 突然押し倒された上で意を決した表情で臨まれ、梨紅は頭上にはてなを浮かべた。  
「お、おし……おし……あ、な」  
 ベッドの上の彼にしては珍しく舌が回っていない。顔を赤く染める彼など見たのはいつ  
以来だろうかと思うと、梨紅の顔には自然と笑みが浮かんでいた。  
「なに? どうしたの?」  
 屈託のない笑顔で言われ、大助の邪念は綺麗さっぱり霧散した。  
「おしぃぃぃ……」  
 わけの分からない音を漏らしながら梨紅に抱きつき、後はいつもどおり、である。  
 まだまだ変な要求に踏み出すことのできない大ちゃんだった。  
 
 

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