D・N・ANGEL  
夢――夢の中。  
最近はいつもここでしている、というかされていることがある。  
「丹羽くぅん、き・も・ち・い・い?」  
「んぐ、んぐぅぅ……」  
原田梨紅さんが僕の上で腰を振り、卑猥な言葉で僕を虐めてくる。  
「んねえ、早くイッちゃわない?」  
「い、いやだぁ……。イく、もんか……」  
さっちゃん曰く、『主への奉仕だ』ということで毎晩僕の夢に出てはこんなことをされていく。  
「なんで?あたしとのえっちに飽きちゃった?」  
「そそ、そんなことじゃ……」  
「じゃあいいじゃない。ほら、ほらぁ」  
「んぎぎぎぎぃ」  
なぜかいつも出てくる時は原田梨紅さんの姿をしている。  
さっちゃん曰く、『この娘のほうが主の好みだろう?』ということだ。  
しかも質が悪いことに微妙に原田さんの真似、というか甘ったるい声で攻めてくる。  
(いつの間にこんな声の出し方を身につけたんだよ)  
でも僕の方だってただ犯られていたわけじゃない。  
ちょっとずつだけどさっちゃんの腰の動きに対する耐性がついてきていた。  
「丹羽君、最近ちょっとのりが悪いよ」  
鼻にかかる甘ったるい声。原田さんがこんな声を出すなんてちょっと意外だ。  
(って、違う違う!これはさっちゃんの演技なんだから)  
「いつまでも、さっちゃんの思い通りになんかならないからね」  
今日はイかなくてすみそうだと思い、ちょっと安心した。  
だが、その考えは甘すぎた。  
 
「そうかそうか。主も大分強い男になったの」  
途端に原田さんの口調がいつものさっちゃんのそれに変わった。  
目も意地悪な悪意に満ちた光りを放つものへとなっている。  
「だが我の性戯がこの程度だと思われては困る」  
「ふ、ふわあぁぁッッ!!」  
下半身を包み込む原田さんの腰がうねうねとくねる。  
ぬめぬめと濡れた膣内で僕のものは絶妙な刺激の中で呆気なく果ててしまった。  
「あ、あぁ……ッ」  
出してしまった虚脱感で身体から力が抜けてしまう。  
「ふふ。丹羽君だらしなぁい」  
「うぁ……ッ?」  
中で萎えかけていた僕のものを原田さんの肉壁がぎゅっと締め付けてくる。  
すると僕のがみるみるうちに元気を取り戻し、彼女の中でまた限界まで張ってしまった。  
「ど、どうしてっ!?」  
「これくらいできないと淫夢の精なんて名乗れないよぉ」  
彼女の上半身が僕のほうへ密着してくる。  
両手で乳首をくりくりと弄られて感じてしまい、思わず口から声が漏れた。  
「可愛い声。さ、もっと楽しもう……」  
「はぁぁ、はあぁぁッ――――」  
 
「ああぁぁぁッッ!!」  
がばっと布団をはねのけて目を覚ました。最近はいつもこうやって目覚めている。  
そしてこれも恒例となってしまったことだけど、パンツの中に手を突っ込む。  
「今日も、やってしまった……」  
「まだまだ主も若いということだ」  
今のところ全戦全敗。毎朝と同じようにパンツを洗濯機に入れにいった。  
 
 
今日から待ちに待ったプール開き。体育の授業でようやく水泳が始まる。  
「ほー、水泳か」  
登校の準備にいそしみながらさっちゃんを首にかけた。  
「我も泳ぎたいぞ。できるか?」  
「無理じゃないかな?」  
「ふむ、残念だの。ウィズはどうだ?」  
「キュッキュウ」  
ウィズはぶるぶると首を横に振った。  
「ダメだよ。ウィズは水が苦手なんだ」  
「ほう、貴様の弱点は水か」  
「キュウ」  
水着を手に取って広げてみる。去年もこれで泳いだから今年もちゃんと着れるはずだ。  
「なんじゃそれは。色気のないパンツだ」  
「学校指定だからいいの。それに派手なのなんて、恥ずかしくて着れないよ」  
「シャイよの。そんな主が可愛いのだがな」  
ふふ、と優しく言ってくる。女性のそんな接し方に慣れてない僕はいつも照れてしまう。  
さっちゃんに弄ばれてるような気分だ。  
「ほれ照れるな。遅刻するぞ」  
「言われなくてもわかってるよ。いくよ、ウィズ」  
「キュッ」  
ウィズの変身能力を生かすために暇があれば言葉を教えようと考えた僕はしばらく学校にウィズを連れて行くことにした。  
(それにウィズがいたら)  
原田さんと話すきっかけになってくれるかもしれないという淡い期待を抱いていた。  
 
「いいなー、いいなー。夏はいいなー」  
冴原はカメラ片手にプールサイドで女子の水着姿を撮りまくっていた。  
「それはさすがにまずいんじゃないかな……」  
それとなく冴原に注意してみる。  
「心配すんな。防水加工はばっちりだぜ」  
「問題がずれてる気がするんだけどな」  
なんで先生が注意しないのかが不思議で仕方がない。  
「後で原田妹の写真やるから期待して待っとけよ」  
「ははっ……」  
 
ぱりーん  
 
音を立てて冴原のカメラのレンズが砕け散った。  
「冴原?」  
カメラを構えたまま硬直する冴原の目線の先を追った。  
「ぅげっ!」  
そこには異様にスリットの鋭い、というかTバックと言ったほうがしっくりくる水着を着た日渡君がいた。  
「冴原のカメラのレンズを砕くなんて、なんて破壊力なんだ!!」  
無意味なところで感心してしまった。  
というか学校指定の水着を着ない日渡君を注意しない先生が不思議で仕方ない。  
「丹羽、お前は見るな」  
「関本?」  
関本の声が背後から聞こえ、僕の視界が彼の手で遮られた。  
「関本、俺と丹羽の中を裂く気か?」  
日渡君の怒気を含んだ声がすぐ側で聞こえてくる。呆れ声で関本が返す。  
「何を言っとるんだお前は」  
「さてはお前も丹羽のことを付け狙う俺のライバルだな!?」  
「お前の頭にはそんなことしかないのか!」  
「俺の頭の中はそういうことでいっぱいだ」  
「きっぱりと言い切りやがった!!」  
「は、ははは……」  
一緒にいると楽しいけど、それ以上に疲れるのはいつものことだ。  
 
「丹羽君」  
原田梨紗さんの声が僕にかけられた。慌てて振り返るとそこにはスクール水着姿の彼女がいた。  
(う、うわぁっ)  
露出する白い肌。シャワーで濡れている束ねた黒髪。身体のラインがはっきりとわかる水着。  
可愛い。ドキッとする。  
そして充血する下半身。  
(わわわわわっ!?)  
さっちゃんのせいか、最近どうも敏感に反応しすぎている。  
(落ち着け、落ち着けぇ)  
言い聞かせて何とか下半身の暴走を抑え込んだ。  
「丹羽っ、俺以外の人の水着姿を見るな」  
「いいからお前はこっちにこい。な?」  
騒ぎまくる日渡君を関本が連れていってくれた。  
こういうとき普通の友達がいることがなんと心強いことか。  
「そ、それで丹羽君」  
日渡君の奇行に唖然としていたのか、原田さんがしりごみしながら話してきた。  
「どうかな、私の水着姿」  
「ど、どうって言われても」  
似合っていないわけがない。これ以上女の子に似合う格好は数えるほどしかない。  
「ん……」  
そう漏らして首を縦に振るのがやっとだった。  
「梨紗ー、あんたこっちでしょっ」  
反対のプールサイドから福田さんと石井さんが原田さんを呼んだ。  
「じゃあ私いくから。じゃあね」  
「う、うん」  
手を振ってくれたので僕も振りかえした。  
「…………」  
彼女は今までとなんら変わりなく僕と接してくれている。だから僕もできるだけそうしている。  
(僕、ふられたんだよね……)  
その事実を気にしていないように接してくれて、それは彼女が優しいからだと思う。  
でもそのことが、僕の胸中に複雑な、入り組んだ思いを抱かせている。  
 
「丹羽君」  
また声をかけられたので振り返った。  
「あれ、あれれ?」  
そこにはつい今しがた福田さんたちの元へと行った原田さんがいた。  
「どしたの?」  
「えぇっと、……あ、原田さん」  
髪を束ねた原田梨紗さんと原田梨紅さんがとてもよく似ていてすぐには分からなかった。  
本当によく似ている双子だと思う。  
「…………」  
なぜか原田さんが僕を睨んでいる。こういうところは全然似てない。  
「な、なに?」  
「なんか、やだな」  
「え……」  
「原田さんじゃあたしか梨紗かわかんないじゃない」  
「あ」  
言われればそうだ。同じ呼びかたじゃいろいろ混乱されてしまうのはあたり前だ。  
「そっか、ごめん」  
「べつに、いいけど……」  
「え?何?」  
「て、点呼よ点呼!!私と丹羽君はペアなんだからね」  
「あ、うん。そうだっけ」  
「しっかりしてよね」  
「はは……」  
なんだか原田梨紅さんには怒られてばっかりいる印象がある。  
 
 
「原田梨紅・丹羽ペア」  
『はい』  
「うん、揃ってるわね。それじゃ次――」  
先生の点呼が終ると、それからは気まずい沈黙が僕と原田さんの間に漂っていた。  
「………………」  
僕のほうは彼女に負い目がある分、なおさら声がかけづらい。  
(ど、どうしよう……)  
こんなに気まずいのは心臓に悪すぎる。  
その時、僕に助けの手、もとい鳴き声が差し伸べられた。  
「キュウ」  
「ウィズ」  
プールを囲むフェンスの上にウィズが、さっちゃんを首から提げて尻尾をパタパタと振っていた。  
「危ないよ、そんな所にいたら」  
「キュウ」  
「案ずるな。我がついておる」  
(だから心配なんだけどなぁ)  
「馬鹿にするでない。我の力があればウィズもすいすいと泳げるに決まっておる」  
(変な自信……)  
 
(あれって……)  
大助が話しかけるウサギのような毛玉のような生き物に見覚えがあった。  
それは昨日、大助と梨紗を尾行した際に彼の鞄から現れた生き物に間違いなかった。  
それにその生き物が首から提げている首飾りにも、いつかは忘れたが見た記憶があった。  
(……ちょ、ちょっと話しかけてみよっかな)  
梨紅がそう思い足を踏み出した時、  
「梨紅さん。次は丹羽君の番だからちょっと丹羽君呼んできて」  
「あ、はい」  
(うう、タイミング悪すぎぃ)  
 
(大体泳げるようになってもウィズの水嫌いが治るわけじゃないでしょ?)  
「ま、まあそれはそうだが」  
「ほらウィズ、お前も早くここから離れて」  
「……丹羽君、先生がプールに入りなさいって」  
「えっ?あっ、う」  
後ろから原田さんに呼ばれた。  
急いでプールに入ろうと指定された飛び込み台まで駆け出した時、  
「……わっ!」  
ずるっと脚を滑らしてしまった。  
バランスを失った僕はそのままプールへドボンとダイブ。  
「おい丹羽っ」  
「あいつ落ちたぞーっ!」  
「シャッターチャーンス!」  
 
「ちょっと、大丈夫?」  
「あははは」  
僕の後を追ってプールに入ってきた原田さんには笑ってごまかした。  
「丹羽君って泳げないの?水泳教えたげよっか?」  
「あっ、ありがとう。でもいいよ。僕けっこう泳げるし」  
「……本当?」  
「うん」  
原田さんが疑わしげな視線を僕に向けてくる。  
(まあ学校じゃあ運動音痴ってことにしてるし)  
普通にやったらみんなが驚く以上に引いてしまいかねないから母さんに釘を刺されている。  
 
「丹羽君っ」  
振り返ると原田さんがプールの水を掻き分けてこっちに近づいてくる。  
(なんだか今日は呼ばれっぱなしな気が……)  
「梨紗……」  
「ねえねえ、さっきいたのってウィズじゃない?」  
「見てたの?」  
「うんうん!連れてきてたの?だったら見せて」  
まさか本当に思惑通りにいくとは思っていなかった。ありがとうウィズ。  
「やめときなよ。丹羽君だって迷惑じゃないの?」  
「別にかまわないよ原……あ、んーと、梨紅さん」  
「ぁ……」  
さっき原田さんに言われたことを思い出し、僕は少しだけ考えて梨紅さんと呼んだ。  
(さすがに梨紗さんって言いづらいし)  
「あれ?いつから梨紅って名前で呼ばれてるの?」  
「へっ?あ、の、いや、えぇっ!?」  
「梨紅さんって言ったほうが原田さんとちゃんと区別がついていいかと思って。ね?」  
「う、あ、うん!そうそう」  
「えー、梨紅だけずるいよ。丹羽君、私も名前で呼んでよ」  
「それはちょっと……」  
 
 
「…………」  
「おい日渡、向こうまで競争しようぜ」  
「ああ、いいぞ」  
冴原の挑戦にあっさりと日渡は乗った。  
「よっし!そんじゃ関本、お前スタート出してくれ」  
「めんどいなぁ……。じゃあやるぞ。よーい……スタートっ」  
二人が同時にクロールでスタートを切った。  
「うぉっしゃあぁぁっっっ!!」  
「お、冴原のやつなかなか速いな」  
「ふん」  
「日渡もなかなか……って、コースずれてるぞおいっ!」  
日渡は大きくコースを外れ、そして向かう先には――。  
 
 
「丹羽!危ねーぞっ!!」  
名前のことで言い合っていた原田さんたちの声より大きく、はっきりと関本の声が聞こえた。  
「!?」  
僕が周りを見渡そうとした瞬間、原田さんがバランスを崩して僕のほうに倒れ掛かってきた。  
「うわっ!?」  
絡まるようにして僕と原田さんは水の中へと沈んでいった。  
 
 
「!っウィズ、主の危機だ。行けっ!」  
「ウ、ウキュウ……」  
大助が転倒したことに対してさっちゃんがいち早く反応した。  
ウィズにプールに飛び込むよう命令するが、水嫌いのウィズは躊躇った。  
「何を怯えておる!我を信じよ、さあ行くのだっ!主の危機を救えぇぇっっ!!」  
「ウ、ウゥ、ウキュウウゥッッ!!」  
さっちゃんの言葉に不思議な勇気をもらい、ウィズはプールへと飛び込んだ。  
 
 
(ま、まずい……!)  
何かよくわからないけど今の状況はまずすぎる。  
原田さんの肌が、胸が僕の身体に密着している。  
また下半身が少しずつ疼きだした。  
(くぅぅっ)  
必死に理性を保とうと心を落ち着かせる。  
でも原田さんのほうが突然の出来事に慌てていて僕にしがみついたまま離してくれない。  
僕に掴まる腕にぎゅっと力が込められると身体がさらに強く触れ合う。  
(こういうときこそ夢の中で培った強さが役に立つはずじゃないのか!?)  
全然役に立たなかった。  
次第に股間に通う血の量が多くなっていく。これ以上硬くなると原田さんにばれてしまう。  
(だ、ダメだ、もう……)  
「諦めるな」  
不意に頭の中に響くさっちゃんの声。  
「我を抜き放て」  
(な……?)  
薄っすらと霞む視界に、ウィズと、その首に提げられたさっちゃんが飛び込んできた。  
「さあ抜け。我の力を引き出すがいい」  
藁にもすがる思いで手を伸ばした。  
首飾りとしてウィズが提げていた短剣の柄を掴み、もがくようにそれを抜き放った。  
瞬間的に魔力が膨れ上がるのがわかり、水中でその力が爆発した。  
 
「おわぁっ、なんだよあれ!」  
「み、水柱……?」  
「おい、丹羽と原田はどうした!?」  
「シャッターチャーンスっ!!」  
爆音を轟かせてプールから水柱が高々と突き出す。舞い上がる水飛沫、+日渡君。  
どさくさに紛れ、僕はプールから更衣室へ続く通路の陰に隠れた。  
「ぷはぁっ、助かったよさっちゃん」  
「なに、あれくらい造作もないことだ」  
手に持った短剣を鞘に収めようとして、  
「あれ……ウィズは?」  
「ん?」  
ウィズがいない。  
「に、丹羽君大丈夫!?」  
僕の名前を誰かが口にした。でも、僕は姿を隠していて見つかっていない。  
どういうことかと思って声がしたほうを見ると、そこには僕が気を失って倒れていた。  
「あっ」  
「あれはウィズだの。飛び込んだ衝撃で混乱して主に変身したのやもしれん」  
「大丈夫だって言ってたじゃないか」  
「……やはり無理だったようじゃ」  
てへ、とかわいこぶった声でさっちゃんは言った。  
「とにかく今はウィズを助けるほうが先決じゃ」  
溜め息を一つついてからそれに頷いた。  
 
「丹羽君!丹羽君!」  
大助に変身して気絶しているウィズのそばで原田梨紗が彼の名前を懸命に呼んでいる。  
その首にはいつの間にか首飾りが提げてあったが騒然とするその場の人間で気に留めるものはいない。  
「溺れたのね。ほらみんな、しゅしゅっと迅速に救護活動っ!」  
教師の野澤菜海がてきぱきと周囲に指示をだす。  
「嘘だろ、こいつ泳げるはずだぜ」  
冴原がカメラのシャッターを切りながら慌てふためいている。  
「カメラやめろよ」  
呆れた口調で関本が突っ込む。  
「丹羽く……」  
「梨紗、どいてっ」  
「梨紅……」  
大助と梨紗の間に梨紅が割って入った。心音と呼吸を確認する。  
「息してない!」  
梨紅の一言にその場がさらに混乱に包まれた。  
「人工呼吸しないと」  
「え……り、梨紅がするの!?」  
「だ、だってあたしが丹羽君とペアなんだし」  
二人が顔を真赤にして言い合う。  
「俺はライセンスを」  
「持ってないだろ。こっちこい」  
「は、放せ関本ぉ!そうまでして俺と丹羽を……」  
日渡のわけわからない行動は関本の手によって未然に防がれた。  
「……と、とにかくっ。あたしが責任持つからね」  
「あ、梨紅ちょっと――」  
 
(わわわわわわわわぁぁぁっっっっ!!)  
梨紅さんの口が少しずつ僕の……じゃなくてウィズの口へと近づいていく。  
「あの小娘、主が抵抗できんと知って好き勝手しおってからに」  
(それは違うよっ)  
不機嫌そうな声のさっちゃんに一応突っ込んでおく。  
(人工呼吸しようとしてるんだ。このままじゃまずいよ)  
何がまずいかはっきりとしないけどとにかくまずい。  
「ああ、まずいのう。どれ、もう一度力を使うか」  
(力って、さっきの爆発?)  
「案ずるな。人には当てん」  
(ちょ、ちょっと――)  
もう少し落ち着いて対策を、という僕の思念は再び轟く爆音の前に霧散した。  
 
「…………」  
「ねえ梨紅」  
「な、なによ」  
「人工呼吸する気あるの?」  
さっきから大助の眼前三十センチといったところからまったく梨紅の顔は近づいていなかった。  
「あるわよ!でも心の準備ってやつが……」  
「なに言ってるの?」  
「なんでもないわよ!そ、それじゃあいくよ、丹羽君」  
「…………」  
ようやく梨紅の顔が近づいていく。その様子を梨紗は不安そうな表情で見つめている。  
(に、丹羽君の唇……)  
(ふ、二人のキス……)  
姉妹がちょっと馬鹿な妄想を抱いた。  
もう数センチで唇が触れ合う距離になったところで、異変は起きた。  
『うごぁぁぁぁああっっっ!!?』  
「な、なにっ?」「どうしたの?」  
背後から突如聞こえた絶叫に梨紅と梨紗は振り返った。  
『きゃあぁぁぁっっ!!』  
同時に仲良く叫んだ。  
そこにはプールサイドから決壊したダムのように勢いよく噴き出す水柱があり、  
男子二人――日渡と関本が鳥のように宙を舞っていた。  
しかもプールサイドに刻まれたひびは拡大し、さらに噴き出す水の量も多くなっていく。  
「なにこれっ!?」  
「いてぇっ!股間に、当たっ……」  
「ああっ、オレのカメラ……!」  
「みんなしゅしゅっと逃げて!水は私の得意分野よ!」  
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられ、文字通り音を立ててプールが崩壊していった。  
 
「さ、最悪だ……」  
「そうか?うまくいったと思うがの」  
ウィズを助けるために学校のプール一つを犠牲にしてしまった。  
「キュ?」  
ウィズはというと、何事もなかったように愛らしい笑顔を僕に向けてくる。  
「しかしプールとは面白いものだな。また連れてきてくれ」  
「もう、いやだあぁぁぁっっっっーーーー!!」  
 
結局水泳の授業が行われたのはその日の一時間だけだった。  
プールの補修作業のため、来年までそこは使えなくなってしまった。  
「はーあ。夏を水泳なしで乗り切るなんて、酷すぎるぞ」  
「だね。ところで……」  
四人で靴を履き替えて玄関から出る時、精気がまったく感じられない二人のことを関本に訊ねた。  
「冴原はカメラ失くして鬱。日渡はお前に人工呼吸できなくて激しく鬱。これでいいか?」  
「そ、そんな理由……」  
いつものように呆れてしまう。楽しいんだけどね。  
「丹羽君……」  
僕たちの目の前に原田さんが、少し悲しそうな顔をして現れた。  
「なにか僕に用?」  
「ん。でも」  
原田さんの視線が他の三人へ向けられた。  
「じゃあ俺らは先に行くからな」  
「あ、おい」  
関本が他の二人を連れて離れていった。手を振って、すたすたと歩いていく。  
途端に僕と原田さん二人だけが取り残され、沈黙が降り立った。  
 
(あれって)  
ラクロス部の練習をしていた原田梨紅は、そこから見える二人の姿を捉えた。  
グラウンドから通学路までは距離があるが、梨紅の視力ならその二人の顔の判別くらいできる。  
(丹羽君と、梨紗じゃない)  
まただ。あの二人がいるところを見ると、自分だけが大助から離れていってるように感じ、それがたまらなく辛い。  
(丹羽君が部活に入ってれば、私だって……)  
一緒に帰れるチャンスがあるんじゃないか、そう思う。  
実は大助が美術部に所属しているということは、クラスの中ではまだ誰も知らなかったりする。  
「梨紅、前、前ーーっ!」  
「へ――」  
声に反応して首をひねると、顔面に剛速球のボールが直撃した。  
「ふぎゃっ!」  
顔を抑えてうずくまった。  
「大丈夫!?」  
部員数名が駆け寄って梨紅の安否を気遣った。  
「も、もういや……」  
 
原田さんはプールで僕が溺れた責任は自分のせいだと言って頭を下げた。  
「いいよそんな。原田さんが悪いわけじゃないし」  
「でも私が倒れちゃったせいで、丹羽君があんな目に」  
原田さんの目にじんわりと涙が滲んでいる。  
「な、泣かないでよ!僕が困っちゃうよそれじゃあ」  
「ごめんなさい」  
ぐしぐしと手で涙を拭う彼女を見て、僕はポケットからハンカチを取り出した。  
「はいこれ」  
差し出されたハンカチをきょとんと見つめていた彼女は、笑って僕の手からそれを取ってくれた。  
「ありがとう」  
その笑顔は本当に可愛くって、魅力的で、どうしていいかわからなくなりそうだ。  
(僕は、どうするつもりなんだろう……)  
未だ整理のつかない彼女への気持ちを抱え、僕は自問自答を繰り返していた。  
その日も、僕は彼女と一緒に帰った。  
 
 
 
夢――夢の中。  
いつものようにさっちゃんの力でそこに取り込まれた。  
でも、その日はいつもと少し様子が違っていた。  
「さっちゃん!?」  
床に突っ伏すようにさっちゃんがぐったりと倒れている。  
その姿はいつも僕をからかうために変身している梨紅さんのものじゃなく、彼女本来の姿だ。  
ブルーのロングヘア。透き通るように白い肌。もうしわけ程度に身体を隠すコスチューム。  
大人の女性の、スレンダーで肉付きのよい身体。  
いつもしている梨紅さんの姿とはまた違ったよさがそこにはある。  
(…………何を考えてるんだ僕は!!)  
「さっちゃん、どうしたの。気分悪い?」  
気を取り直して彼女の肩を抱いて優しく揺する。まぶたが重たそうにゆっくりと開き、小さく口が動く。  
「ん……ちと疲れてな」  
「疲れたって、もしかしてプールのあれ?」  
「そうだ。無理をし過ぎたらしい」  
プールを崩壊へと導いた爆発を起こしたせいでこんなに疲れてるのか。  
「どうしたらよくなるの?」  
なんだか今にも死んじゃいそうなようすのさっちゃんだったから僕も気が急いていた。  
「魔力、補給……」  
「魔力を補給するんだね!どうやるの?」  
僕が訊ねるとさっちゃんが精一杯の力で手を動かし、  
「犯ってくれ」  
そう言ってばっとコスチュームの前部を裂き、ふくよかな双房をあらわにした。  
 
僕が驚きに口をパクパクとさせていると、  
「我の魔力の源は主の精じゃ。さ、早くしてくれ」  
両腕を僕の頭に絡ませて思いっきり引き寄せられた。  
「んぶ!」  
顔が胸の谷間に完全に挟まれた。呼吸が苦しくてんぐんぐと呻いてじたばたと暴れる。  
「んああッ」  
さっちゃんが、今まで聞いたこともないような嬉しそうな声を上げた。  
「さっちゃん……?」  
その反応の良さに僕はまた驚いた。  
「信じられん、といった顔だな」  
首を縦に振った。  
「魔力で身体を覆ってないとな、感じやすくなってしまって困る」  
「じゃあ魔力が尽きると敏感になっちゃうの?」  
「ああ。だから主がどんなに下手糞でも感じてしまうのだ」  
「へ、へたくそって」  
「さ、お喋りはもうよい。続けてくれ」  
「ん……うん」  
せがんできたのでおずおずと彼女の真っ白な肌の上に手を這わせた。  
「んんッ……」  
まだ腹の上しか撫でていないのに、それだけで彼女の顔が赤らんで汗を噴き出している。  
さっちゃんの大きな胸の乳首が勃起している。  
僕ははそれをきゅっと摘むと、それだけで大きな声を上げて悦んでくれる。  
 
「はぅっ、はぁ、ほあぁぁ……」  
「か、可愛い」  
「ぁんっ、茶化す、な……んんうっ!」  
あのさっちゃんが僕の手で感じて、よがっている姿に僕はひどく興奮した。  
「茶化してなんかないよ。こんなに可愛いさっちゃん、初めて見る」  
「ん……そ、そうか?」  
「うん。だからもっと感じてくれる?」  
「は、あぁぁッッ、ひぐぅッ!」  
空気のように柔らかなおっぱいをぐにゅっと揉むと、面白いように形を変える。  
調子に乗ってさらに強く胸を揉みしだいた。  
「はんッ、んふぅ、イく……もうイッて……はぁぁッッ!!」  
彼女の腰が宙に浮き、背中を反らしてぴくぴく痙攣する。  
口はだらしなく涎を流して、目は満足気に笑っている。  
「もうイッたの?」  
あのさっちゃんが愛撫だけで果ててしまったことに多少の驚き、そしてそれ以上の悦びが胸を占めた。  
「今日は僕の勝ちかな」  
「あ、侮るな……まだ、していい」  
その言葉を聞き終える前に僕は彼女の乳首にしゃぶりついた。  
「んふッ」  
歯で甘噛みし、舌で転がし、吸いたてる。  
乳首を責めると同時に胸も手で優しく揉んであげる。  
さっちゃんの甘い声が耳の奥に届き、その声が下半身へと力を与える。  
勃起した僕のをさっちゃんの恥丘に擦りつける。擦りつけるだけだ。  
「んあぅッ、はぁぁ……」  
切ない声を出しながら擦りつける僕のものを見てくる。  
 
「入れて欲しい?」  
「あん、うんッ!」  
熱く、おねだりするような視線を向けられ、僕の興奮は最高潮に達した。  
こんなに気分が高揚しているのは初めてだ。焦らすように先端をぐちょぐちょの割れ目にすりつける。  
「んンッ、ひはァ……」  
肢体をくねらせて全身で喜びを現しているさっちゃんの艶かしい姿が堪らない。  
何も言わずに先っぽを彼女の中に少しだけ入れた。  
「ひあぁぁッッ!」  
「すごい反応だね。中も濡れ濡れだよ」  
「は、はぁ、んあぁッ」  
言葉でさっちゃんの気持ちを煽るなんて、僕ってこんなやつだったのか。  
「も、もっと、もっと奥まで……ッ」  
「はいはい、わかってるよ」  
腰をゆっくりと突き入れていく。  
梨紅さんのときは進入を拒むようにきつく締めてくるのに、本来の姿だとするすると呑み込まれるように入っていく。  
いつもと違う膣内の感触をじっくりと味わうように挿入する。  
すぐに僕のものがすべてさっちゃんの中に隠れてしまった。  
腰の動きを止めているのにさっちゃんの壁はうねうねと搾り取るように動いている。  
(す、すごすぎ……)  
普通なら入れているだけで果てているところだけど今日の僕は一味違う。  
さっちゃんを虐めたいという思いが暴発を我慢する歯止めになっている。  
僕が腰を動かすと吸い付く彼女の淫唇がめくれ、押し込まれ、卑猥に形を変えてくる。  
「ひ、ぐッ、んはぁぁぁッッ!」  
数回ピストンしただけで呆気なくさっちゃんはイッてしまった。  
ぎゅうぎゅうと肉壁がくっつきあいそうな勢いで僕のものを締めつけてくる。  
「く、うぅぅ」  
強烈な快楽に堪らなくなった僕は女にぱんぱんと腰をぶつけた。  
未だに激しく収縮を繰り返す彼女の中に、僕はどばどばと白濁の液体をブチ撒けた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
僕とさっちゃんの呼吸が同じリズムで重なっていた。  
「ふぅ」  
余韻を惜しむようにゆっくりとさっちゃんから身体を離した。  
栓を失った穴からはとろとろと精液が逆流し、お尻の穴まで垂れていく。  
彼女の目の前に僕のものを持っていき、疲れきった表情をしているにもかかわらず僕は頼んだ。  
「舐めて」  
「んうぅっ」  
半開きの口に強引に割り込ませるように押し込んだ。  
苦しそうな声を出したけどすぐに小さくなった僕のを根元まで咥え、舌で丁寧に舐めだした。  
じゅるじゅると音を立ててきれいに、雁首のところまで舐めてくれる。  
「ああ……」  
さっちゃんの舌が僕のを這いずり回るたびにそこに元気が戻ってくる。  
口の中で大きくなっているのがわかったのか、さっちゃんが驚いた表情をした。  
でももう遅い。僕のは再び天を突くように反り返った。  
「それじゃあまたいくよ」  
「い、いや、我はもう十分……」  
「僕はまだイけるから、遠慮しなくていいよ」  
拒もうとするさっちゃんの足元に移動し、脚を開いて割れ目がよく見えるようにした。  
今日は、いままでやられた分をきっちり返すまでやめる気はない。  
「ま、待て、本当にもういいから……」  
「それじゃあイくよ」  
精液で白く染まったさっちゃんの秘裂に再び僕のものをブチ込んだ。  
夜は長い。あとどれくらい楽しめるだろうか――。  
 
 
 
次回、パラレルANGEL STAGE-04 ダブール・クッキン!!  
 

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