宿舎の夜。電気もつけない部屋の中で、今日山であった出来事を気にしていた。
梨江: 「昨日、丹羽君のこと好きかもって言ってたよね・・」
梨紗: 「うん。・・え?」
梨江: 「・・私、丹羽君のこと好きだから。」
梨紗: 「そっかあ。前から、そうじゃないかなって思ってたけどっ・・きゃっ!?」
気づいたときには、焦る気持ちが梨紗を押し倒してしまっていた。
梨江: 「でも、・・でも私、梨紗のことも好きっ!」
梨紗: 「・・梨江!」
深いキス。
二人には既に、やるせない想いが大きく募っていた。
自分に振り向いてくれない。そんな心の痛みを、お互いで慰め合う。
双子であるからか、愛撫し合うその手は、お互いのことを知り尽くしていた。
からみあった二人の首筋を、満月の優しい光がそっと照らしている。
冴原: 「へへ、もう少しだぜ。みおちゃーん♪」
大助: 「もうやめようよー、でも桧尾さんの部屋ってこっちじゃなかったような・・」
そのすぐ外で、コンクリートの壁をよじ登る二つの影があった。
冴原: 「しっ!こんなチャンスはなぁ、一生のうちにあるかないかって・・うっうわー!!」
大助: 「・・あーぁ、落ちちゃったし。。ってついていく僕もどうかしてるよなぁ、はあ。
引き返そうかな。・・・・あっ!」
梨江: 「に、丹羽・・君・・・」
半ば裸で重なり合う二人の目の前に、ガラス越しに大助のぽかんとした顔があった。
戸惑った三人は、声を上げることすらできなかった。
半ばどきどきした様子で、大助が二人のいる部屋に入ってきた。
大助: 「なに・・してるの?」
梨江: 「丹羽君!!」
胸に飛び込んでいた。大助は、顔にかかった水が涙であることに気づいたときには、
既に梨紗がいるベッドのほうに押し倒されていた。
梨江自身も、そして梨紗も、自分が何をしているのかわからなかった。
ただ、本能のままに・・
梨紗: 「ずるいよ、二人ばっかりぃ。」
梨江とそっとキスしていた大助の唇を、次は梨紗が重ねた。姉妹の甘い香りがベッドの中を包む。
梨紗・梨江: 「・・大好き。」
大助: 「・・うん。僕もだよ。」
梨紗 : 「・・んっ、あんっ」
梨江 : 「あっ、ぅあっ、・・丹羽君」
二人の肩を、優しい腕が包んでゆく。三人の重なり合う背中を、朝焼けの光が少しずつ照らしていた。