テーマパークの『ケイブ・ラビリンス』。  
洞窟を模したそこは、薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。  
ラビリンスと名付けられているが、それほど入り組んでいるわけではない。  
雰囲気を楽しむための、それが一番の目的のアトラクションであり、二人に都合がよかった。  

本筋から分岐した小さなルートの、その奥の奥。  
背筋が寒くなるような冷たい中で、二人は強く、熱く抱き合った。  
岩肌が剥きだしになっている壁に梨紅を押し付けるように強く抱きしめ、口付け、舌を絡める。  
観覧車でおあずけを喰らうかたちになった二人は、それを埋め合わせるように互いを求め合った。  
もう興奮が高まって、顔は赤みを帯び、上気した身体が熱い。  
唾液の絡む音が、周囲の静けさを破るように響き渡る。  
舌を離すと、すぐに梨紅はしゃがみ込み、大助の股間からその怒張を引っ張り出した。  
いきなり咥えようとせず、舌と突き出して尿道付近をちろちろと舐め上げる。  
「……っ」  
たまらず目の前の壁に手を付き、腰が砕けそうになるのを堪える。先ほどまで梨紅と繋がっていたそれの限界は近い。  
激しくやられればすぐにでも精を放出してしまうのだが、身体の欲求をわざと焦らすように、梨紅はゆっくりと攻めたてる。  
陰嚢を弄り、付け根を唇で挟み込み、亀頭へゆっくりと這い上がっていく。  
梨紅の薄い唇の動きに合わせるように大助の射精欲も高まるが、決定的な刺激を与えてこない。  
白い熱が腰に集まり、溜まり続けるばかりで開放できない苦悶が大助を襲う。  
舌が裏筋を這い、ようやく唇が大助の先端を包み込む。  
思わず、溜め息が漏れる。  
艶やかな唇がすぼめられ、ペニスをしごき始める。  
すぐにでも出してしまいたいという快楽に、その身を振るわせた。  
堪えること叶わず、一瞬にして梨紅の口内でびくびくと脈打ち、暴れだした。  
口奥に白い塊がへばり付き、苦味を含んだ匂いが粘膜を刺激するが、構わずにこくりと飲み込んだ。  
鼻へ突き抜ける刺激臭が、興奮を加速させていく。  

言葉を発することなく、そっと梨紅を立たせ、壁に手を付くように促した。  
大助が、お尻を突き出すような格好をとらせた梨紅の背後から覆いかぶさった。  
隙間なく密着した二人の身体。梨紅のお尻を、大助の萎えたそれがくすぶるような熱さでくすぐってくる。  
「ぁんっ…」  
胸に触れるだけで押し殺した声が漏れる。  
胸のほうは感度を確かめる程度でさっと流し、先を急いだ。早く欲望を満たしたいという思いがそうさせている。  
梨紅のショートパンツをショーツも一緒に一気に脱がし、あっという間に突き出されたお尻が露わになった。  
大助は膝を折ると、貪るように梨紅の薄い陰唇にしゃぶりついた。  
「んん……」  
そこから湧き出るように絶え間なく汁が出てきては床を汚していく。  
充血して大きくなっている蕾を舌で転がす。  
「ッ……」  
梨紅の背中が仰け反るように激しく痙攣する。軽い絶頂が襲ってきた。  
全身の力が抜けるように感じられ、壁に上体を預けるように寄りかかった。  
舐めていただけで、果ててしまっていた大助の肉茎が再びその硬度を取り戻した。  
まだ突き出されている梨紅のお尻を掴むと、さっきまでしゃぶりついていたところに擦りつけて先端を濡らす。  
止まることのないと思えるほど溢れている露は、先端だけでなく全体を濡らすほど滴っている。  
十分に濡れたことを確認すると、大助は一息間を置いて、そして腰をぐぐぐっと前に押し出していく。  
肉を割って進む感触は少なく、思った以上にすんなりと呑み込んでいく。  
それが入ってくると、梨紅の身体も芯に棒を入れられたように硬く緊張していった。  

 

暗い洞窟の中で、一つのカップルが移動もせずにある一地点に陣取っていた。  
そのうちの一人、男のほうは、かなり暗いというのになぜかサングラスをかけていた。  
もう一人、女のほうは、こんな洞窟の中で双眼鏡を覗きながら一点を凝視していた。  
「………」  
「ぁふぅ」  
「………」  
「はぁぁ」  
「………」  
「あ、入れちゃった」  
「………俺には見えん」  
「サングラス取れば?」  
「それはできない」  
「じゃあ諦めてね。私一人で楽しむわ」  
「覗きをか?」  
「覗きなんかじゃないわ。これは……これは…はぁ…」  
「これはなんだ?」  
「ぅ、……そ、そう視姦プレイよ視姦!」  
「もうわけがわからん」  
「いいの!私よければ全てよしってことわざだってあるんだから!」  
「いやないだろ…」  

 

腰の抽迭は意外なほどスムーズだ。多量に分泌された愛汁のおかげだ。  
さっきイッたとは思えないほど中の肉はくねり、揉みたてるように吸い付いてくる。  
淫らな水音を立てて二人の腰が何度もぶつかり合う。  
声を出さないように堪えながら、腰を絡ませる。  
一度出してしまったために次の射精までまだ持ちこたえることができる。  
腰を送るスピードを上げ、梨紅をイかせようとする。  
梨紅の身体が大助に押し潰されるようにぺったりと壁に張り付いた。  
動きに合わせて切なげに息が漏れる。  
「ひぐッ、んぅ…うぅぅ」  
ペニスをもぎ取るような動きで肉壁が波打ち、梨紅はきゅんきゅんと蠢動を繰り返した。  
「ん…」  
梨紅の絶頂に合わせるように、大助も盛大に中に出した。  
二人は砕けるように膝を折り、そのまましばらく動けなかった。  
ぱっくりと開いた梨紅の秘穴と抜き取られた大助の肉茎を繋ぐように、一筋の糸が引いていた。  

 

時刻は五時を回っていた。満足した様子で二人は退場ゲートをくぐった。  
「今日はありがと。とっても楽しかったよ」  
にっこりと笑いかける梨紅の笑顔が、傾きかけた西日に照らされて眩しかった。  
「本当?そう言ってもらえると嬉しいな。頑張った甲斐があったよ」  
今日のデートだけ特別に張り切って計画を練ったことが報われて、大助は嬉しくなった。  
「んー、でも…」  
「え、なに?」  
「何だか今日一日、妙な違和感感じてたんだよねー」  
「違和感?僕は全然感じなかったけど」  
「んとね、監視されているっていうか、そんな感じだったんだ」  
「監視……穏やかじゃないね。帰りは家まで送っていくよ」  
「うん、ありがと」  
とまあそんな感じで今日のデートは無事に終ったと。  

 

大助たちが退場した後に続いて同じく退場してきた覗きカップルがいた。  
「日渡くん」  
「なんだ?」  
「いつまでサングラスかけてるの?」  
「目の周りの傷が治るまでだ」  
「ふーん……とっていい?」  
「ダメだ」  
断固として拒否する日渡。少しだけ今の日渡の顔に興味がある梨紗であった。  
「そんなサングラスかけてると、銃弾とか避けれそうだね」  
「……すまん、君が何を言ってるのかよくわからない」  
「きっとクンフーとかもうまいんだよね」  
しゅしゅっと得意の型を披露する梨紗。梨紗の言動についていけず疲労する日渡。  
「私の拳なんかささっと捌くんだよね」  
ぐるんぐるんと腕を大車輪のように振り回す梨紗。  
「そんなに回すな。当たったら危険だ」  
飛び出す鉄拳。目指す先はもちろん日渡総司令殿の顔面だった――。  

 
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