D・N・ANGEL  

登校し、教室に向かい廊下を歩いている途中で、大助はがっくりと肩を落としていた。  
(しょうがないっていっても、結局条件呑んじゃったんだよなぁ)  
はぁー、と大きなため息が漏れる。今日だけで十数回目である。  
(こんなんじゃ原田さんに合わせる顔がないよ)  
まだ何かしたわけでもないのに梨紗に対し罪悪感を感じてしまう。  
「おはよう、丹羽君」  
「うわああぁぁぁっっ?!!」  
急に後ろから聞きなれた声で話し掛けられ、大助は飛び跳ねるほどの勢いで振り向いた。  
今大助が罪悪感を感じているその人が声を掛けたからだ。  
「は、は、原田さんっ!?」  
「どうしたの丹羽君?」  
「いいいいや、何でもない、何でもないよ!おはよう原田さん!」  
「ふふ、変な丹羽君」  
にこりと微笑む。以前ならそれだけで彼の恋愛遺伝子は反応したはずだ。  
「今日は遅いんだね。梨紅さんはまだ来てないの?」  
とりあえず適当に会話を済ませて一刻も早く梨紗の前から去りたかった。  
梨紅、とういう名前が出た瞬間、ほんの少し、まさに一瞬だけ梨紗の目が細められた。  
「うん。体調が悪いって言って朝の部活は休んだの」  
「えっ、身体壊したの!大丈夫?」  
大助は梨紗の一瞬の変化に気づかずに梨紅の心配をする。  
「大丈夫。ホームルームまでには来るって言ってたから」  
「そう・・・そうなんだ。教えてくれてありがとう原田さん」  
そう言うと大助は梨紗に手を振りながら教室に向かい走り出した。  
それを梨紗は見届けてからゆっくりと教室に向けて歩き出した。  
(――そう、やっぱりもう丹羽君は梨紅しか眼中にないんだ・・・)  
梨紗は大助を振った、それが事実。だが、梨紗は今になってそうすべきではなかったのでは?と思っている。  
振ったために大助と梨紅は付き合いだした。そのことが最近になって胸をちくりと痛める。  
(梨紅が、・・・・・・羨ましい)  

 

「梨紅さん大丈夫身体きつくない?」  
ホームルーム開始の直前になってようやく梨紅は教室へ姿を現した。  
「う、うん。もう平気。だから心配しないで」  
一気にまくし立てるように問いただしてくる大助に気圧されながら答えた。  
「そっか。でも本当に無理しないでね」  
「うん。心配してくれてありがとう」  
それから一言二言言葉を交わすと大助は自分の席に戻り授業の準備を始めた。  
「ぃよお、大助!」  
威勢のいい声とともに大助の首に腕が回された。  
「・・・・・・冴原〜」  
少し不快そうな声を出して大助は顔の真横に位置する冴原剛を横目で確認した。  
「どうしたどうしたー。朝から元気ねーぞ」  
「お前が元気すぎなんだよ、まったく」  
いいやつだが、たまにこのテンションの高さについていけないときがある。  
今がまさにそれだ。  
「で、何の用?宿題なら見せないからね」  
「おいおい、俺がお前にある用で思いつくのはそれしかねーのか?」  
うん、と言いかけて、またややこしくなるのは面倒なので冴原の話を促した。  
「で、用件は?」  
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた!」  
バッ、と懐から何かを取り出す。それは写真の束だった。  
そしてそこに写っているのは、  
「こ、こ、これ僕と梨紅さんじゃないか!」  
思わず大声を上げてしまった。クラスの視線がいくつか突き刺さる。  
「これ、いつの写真だよ?」  
今度は小声で冴原の耳元に囁いた。  
「この前の修学旅行のときのやつだよ」  
確かにそこに写っている風景には見覚えがあった。修学旅行の最終日前日に梨紅と一緒に回った場所だ。  
何でこんなものを冴原が?疑問を口にする前に冴原が続けた。  
「お前ら途中でいい感じじゃなかっただろ?だからこの俺がお前らの貴重な修学旅行ツーショット写真を撮ってやったんだよ」  
「・・・・・・・・・」  
修学旅行初日の出来事が脳裏を過った。小さな誤解から生まれた大きな歪み。  
辛い思い出だったが、今だからこそ大切なものになっている。  
冴原の心遣いに大助は心から感謝――  
「って、だからって無断で撮るやつがあるかー!」  
――できなかった。  

「そう怒るな。これでも見て落ち着けよ」  
ほれっ、と差し出された新たな写真に目を落とす。  
「――――!!!??」  
照りつける太陽、輝く海、舞い散る水飛沫、はしゃぎ回る女子生徒、それも水着姿。  
小振りながらも豊かな胸の張り。しっかりと括れた腰。水着からこぼれ出そうなお尻。健康的な脚線美。  
「あ、あわ、あわ・・・ああぁあっぁぁ――――!!」  
眩しい笑顔の持ち主。間違いなく原田梨紅だ。  
「さ・え・は・らあぁぁぁぁ!!!」  
顔を赤くし目を怒らせながら冴原に顔を寄せる。珍しく本気で頭にきた様子の丹羽大介君である。  
「どうだ、欲しくないのか?」  
にひひぃ、と聞こえてきそうなほどのあくどい笑顔。大助の怒りに臆すことなく、まるで勝利を確信しているかのようだ。  
「・・・ぐぅっ・・・・・・」  
唸る大助。欲しくない、と言えるわけがないではないか。  
「でも大助がどーうしても欲しくないって言うんなら他の男子に売りつけるか」  
「いるよ!」  
あっさりと負けを認めた。  

 

表面上は梨紅も梨紗もそれほど変わった様子はない。  
事実、事があったのは昨夜一回限りで、その後は梨紗もあのような奇行に走っていない。  
クラスメイトのほとんどは何も気づかない。だが、大助だけは梨紅の些細な変化に気づいた。  
それは、本当に小さな気がかり、といったほどのものである。  
だからそのことを問いかけても、  
「何でもないよ。そんなに心配しないでよぉ」  
笑顔でそう言われ流されてしまう。そのため本気で心配することもなく、平穏な一週間がすぎた。  

「原田さーん、宅急便でーす!」  
その声に誘われて玄関の扉を開けてのは梨紗だった。  
「原田梨紗さん宛に小包が届いています。ご本人ですか?」  
「はい、印鑑とサインですね。わかりました」  
パタパタと音を立てて家の奥に消えていく。間もなく印鑑をもった梨紗が再び姿を現す。  
「はい・・・・・・はい、どうも、ありがとうございましたー!」  
威勢良く彼は白猫の描かれた運搬車に飛び乗り次の目的地へと向かった。  
終始にこやかな笑みを浮かべていた梨紗は扉を閉め、家の中へ消えていった。  

(っはあぁぁぁ、緊張したー・・・)  
さすがにまだ心臓がどきどきしている。いくら梨紗を装ったとしても、これを受け取るには度胸がいった。  
梨紗かつらを外すと丁寧に元あった場所に戻した。  
ベッドの上で包装を剥がす。そして箱の中に入っていたものを取り出す。  
――――間違いない。彼女が注文したものだ。  
先日買った本に載せてあった通販の記事。それを使って彼女は今手にしているものを手に入れた。  
箱は何が入っていたかわからないように細切れにしてゴミ箱の奥へ捨てた。  
再びベッドの上に腰を下ろす。それを包み込むように膝を抱え込む。  
(・・・・・・・・・ふふ)  
このために、梨紅は一週間我慢した。  
(ふふ、ふ、ふふふ、あはははは!)  
下準備は終えた。後は実行に移すだけだった。  
(これで、これであんたも今夜やられるのよ、梨紗!!)  

寝苦しい。あまりにも寝苦しかった。それに気づいた梨紗は次第に目が覚めていった。  
薄っすらと開かれた目には人影が見える。  
「・・・・・・梨紅?」  
寝惚けた声で呟き身体を起こそうとした。  
がくっ、と身体が後ろへ引っ張られる。  
急な衝撃がそのまま梨紗をベッドの上へと戻した。  
後ろに引っ張られたわけではない。初めから両手を頭上で縛られ、それがベッドへ結び付けられていたのだ。  
「え、や、ちょっとなによこれ・・・?」  
さらに身体を動かそうとして、足も片方ずつ縛り付けられていることに気づいた。  
梨紗はさっきはぼんやりとしか見えなかった人影に目をやる。  
今度ははっきりとわかる、梨紅だ。  
「あ、あんた!一体どういう――?!」  
そこで気がついた、デジャヴ。以前梨紗がとった行動と全く同じ事が起こっている。  
いや、全てが同じというわけではない。違う点、梨紗は既に裸であった。  
「い、いやぁ!梨紅、何考えてるの?!」  
眠気は既に吹き飛んだ。代わって恐怖・不安が押し寄せてきた。  
「何?」  
梨紅は梨紗を覆うように身体を重ねた。顔と顔が触れるほどに近づける。  
「何って、復讐に決まってるでしょ!」  
梨紅のいつもと全く違う雰囲気に梨紗はたじろいだ。身体が、硬く緊張した。  
ふふ、と笑みを漏らし梨紅は体を離した。梨紗の足元へと姿が消えた。と、  
パシャッ、パシャッ。  
音とともに光が瞬く。  
「な、何してるの!」  
首を起こし、足元に目をやる。梨紅はインスタントカメラを構え梨紗の秘部を撮っていた。  

「や、やめてぇ!何で、何でそんなことするの!!?」  
「・・・・・・何で何で、ねぇ」  
ふぅ、と呟くようにそう漏らす。カメラを机の上に置き、梨紗に近づく。  
「やめてやめて。私が何度もそう言ったのに、あんたやめなかったじゃない!!」  
梨紗の肩を掴み、揺さぶるように激しく言い捨てる。  
梨紅の目が梨紗の目を覗き込む。  
梨紅の目、大きく、熱く、怒り、憎悪の色が宿る瞳。  
その感情は、全て目の前の妹へ向けられていた。  
再び体を離し、同じように足元へと姿を消す。  
「梨紗〜、めんどいから前戯しないから」  
「えっ・・・ひゃぁあ!!」  
問い掛けようとした梨紗の股間に梨紅の手が触れた。そしてぬるぬるとしたものが塗られる。  
ローションである。  
「さってと、これでいいわね。それじゃ梨紗の処女奪ったげる」  
「ひぃ・・・・・・!」  
その台詞に顔が引きつった。  
梨紗は自分の初めてをふさわしい人物―今現在はダーク―に捧げるつもりだったからだ。  
「お願い!それだけは、それだけはやめて!!」  
必死に嘆願する梨紗。その言葉を聞いて梨紅の口の端が不適に釣り上がったことに彼女は気付かなかった。  
「・・・・・・そう、そんなに嫌なんだ?」  
涙を浮かべながら梨紗が頷く。  
「しょうがないわね、ったく。それじゃお尻の穴でするけど、それでいいのね?」  
尻の穴、そう聞いて梨紗は抵抗を覚えた。しかし断れば何をされるかわからない。  
処女を無残に散らす結果になるかもしれない。  
梨紗には頷くことしかできなかった。  

梨紅の手が今度は梨紗の肛門へと向かった。  
「っひぐぅ・・・!」  
ローションにまみれた手でほぐすように肛門を弄られ、梨紗は声を上げた。  
奇妙な感覚がそこから伝わってくる。  
肛門に転がしていた梨紅の中指が梨紗の恥穴の中に進入した。  
「ふああぁぁぁあ!!?」  
予告もなく与えられた刺激に恥穴が強く締められる。  
「あん・・・ちょっと梨紗、力入れると肛門引っ掻くわよ?」  
「そ・・・そんなこと言ったって・・・・・・」  
一向に弱まる気配のない締め付けを無視し、梨紅は力任せに指を引き抜いた。  
ずりゅっ、という妙な感触が梨紅の指に伝わった。  
引き抜いた指にローションを塗り再び穴の中に埋没させていく。  
「う・・・あぁ、い・・・・・・ったいぃ」  
梨紗の息が次第に荒くなっていく。痛みを堪えるために必死に歯を食いしばる。  
梨紅の指が引き抜かれる。少しではあるが、梨紗の肛門は開いている。  
「すごい・・・梨紗のここぱっくり開いてる」  
「う、ひぐっ・・・・・・うぅ」  
梨紅の言葉から与えられる羞恥に涙が溢れる。自分が、ひどく惨めに感じられた。  
三度梨紅の指が入れられる。  
ずぶっ、ずぶっ  
さっきよりもより深く、指はとうとう根元まで入った。  
ローションのぬめっとした感触が腹の奥で感じられる。言葉どおり異物が腹の中を穢している。  
「こんだけ濡れてりゃ大丈夫でしょ。それじゃ本番いくよ」  
梨紗は涙目で梨紅の言葉を受け止め、畏怖を含んだ目で彼女を見た。  
そしてその目は、梨紅が手にしている物に釘付けになった。  
その手には歪な形で、大きく、黒光りするバイブが握られていた。  

「え………、な、なな…」  
梨紅の手に握られているものに梨紗は混乱した。コードが付いている電動式のバイブ。  
なぜ、そんなものを梨紅が持っているのか?そして、それをどうするつもりなのか?  
「梨紗もすごいよねぇ。こんなのお尻に入れてもいい、なんて言っちゃって」  
「な――――、い、言ってないわよそんなこと!!」  
「嫌なの?私はどっちでもいいんだよ」  
凍てつくように冷たく、突き放した言い方。嫌だと、言えるわけがない。  
「じゃあいくよ」  
そう言って梨紗の肛門へとバイブを押し当てる。  
「や、やあぁぁッッッ!!」  
いざ入れられそうになるとやはり本能が拒絶した。あんなものを、ましてや尻に入れられるなど。  
腰を動かし、必死にバイブの進入を拒んだ。  
「こらッ、暴れない……の!」  
「ひぎゃッ――あッ、はあぁぁぁぁッッッッ!!!」  
無理矢理に貫いた。めりめりと腸内の肉壁が音を立て、バイブが奥へと挿入されていく。  
「ひがぁッ、ふぐぁ、はぁ……あ、…はッ」  
あまりの激痛に梨紗の呼吸が苦しくなった。肺が空気を取り込まずにどんどん抜けていく。  
「あ、ほらほら。さっき撮っといた写真があるよ。見てみなよ梨紗」  
梨紗の目の前に、さっき撮られた秘部の写真がかざされた。  
「ふぁ、はぁあッ……や、……だぁ」  

「は、あははッ。ついでにこっちも撮ったげる」  
次に梨紅がカメラで撮ったのは黒々としたバイブが挿入されているアナルである。  
「うあぁ……ぁぁ、………はず、かしい…よぉ……ぅふぁぁ…」  
痛みを堪えながら、消え入りそうな声を出す。  
「これはいいアングルだわ、梨紗の割れ目までしっかり写るよ」  
数枚撮り終えると梨紅はカメラを右手に持ち、左手でバイブを引き抜き始めた。  
「ぅがはッ、はぁ、ぁあぁ……かはッ…」  
抜かれていくバイブは先ほど十分に直腸に注ぎこんだローションがヌラリとついている。  
まとわりつくように梨紗の肛門が盛り上がる。赤く、肛門の皺も完全に張っている。  
バイブの亀頭部分が肛門から出るか出ないかというところで再び奥へ沈めていった。  
盛り上がっていた肛門が今度は逆に腸内へと押し込まれていく。  
「ねえ、梨紗」  
片手でバイブ、逆の手でカメラを撮りながら梨紅は話し出した。  
「最近さあ、丹羽君を見る目が変わってきてるでしょ?」  
優しく問いかけるような口調だが頭の中に激痛が渦巻いている梨紗の耳にはほとんど届いていない。  
「私ね、丹羽君を見るあんたの目が………怖いの」  
梨紅の口と、そして手は休むことなく動き続ける。  
「あんたが、丹羽君を私から奪っていくような気がするの。……だから、だから!」  
抑えていた感情が少しずつ漏れ出す。漏れた感情が梨紅の左手に力を与えていく。  
「もう、二度とあんな目ができなくしてやるッ……!!」  

「ぎぃぁあ………!!いッ、は…あぁ!……たいぃ、よぉ…!!ッかぁ、めてぇ…」  
今までゆっくりと正確に刻まれていたリズムが、激しく荒々しいものに変わった。  
動かされるバイブは梨紗の肛門を痛め付け、  
ぶぅちっ  
という鈍い刺激。梨紅は動かしていた手を止め、そして、  
「……ふっ、ふふっ、ねえ、見える梨紗!?あんたの肛門裂けちゃったんだよ!」  
「………ぁ…ぁぁ…?」  
「あはははッ、ははははははははッ!どんどん血が流れてるよ、ねえ!!?」  
「…裂け……ちゃ、った……?」  
ほらっほらっ、と梨紅は手の動きを再開させた。梨紗に対する破壊的な虐待心が梨紅を駆り立てる。  
手が動くたびに梨紗の肛門の裂け目は少しずつ拡がっていった。  
赤く色がかかったローションがぶしゅぶしゅと音を立てて肛門から噴き出す。  
梨紗は全く反応を示さなくなった。  
肛門からは耐え難い激痛が伝わっているはずなのに、それに気付いた様子がない。  
その有様に、今まで嬉々として手を動かしていた梨紅は急激に冷めていった。  
「………つまんない」  
そう吐き捨てると、梨紅は梨紗の肛門の奥までバイブを突っ込みそのスイッチを入れた。  
ヴゥゥーーーーーッ……  
と低く唸る音とともに、梨紗の腹に収められたそれが激しくうねりだした。  
「梨紗ー。今度また変な気起こしたら、この写真冴原君にやるから」  
言い捨てて梨紅は梨紗の部屋を後にした。  

「――――――……」  
一人部屋に残された梨紗はベッドのシーツを強く握り締めている。  
「……いッ、……さい…」  
未だに低いローター音が部屋に響いている。  
「…な……さい、ごめ………」  
その中で梨紗は一人呟き続ける。  
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」  
涙を流し、ただそれだけを繰り返していた。  

 
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