(――あぁ、これじゃ私って挙動不審みたいじゃない・・・)
商店街のはずれの書店、その店内に今数名の客がいる。
その一人、原田梨紅はある本棚の前を何度も往復していた。
彼女の手の中には数冊の本がある。
スポーツ・正しいトレーニング、
誰でもできる創作料理、
そしてこの街の週間情報誌である。
この中にもう一冊本を加えようとしているのだが、なかなか手が出せないでいた。
棚の前を通るとき横目で少し確認していて気づいたが、その本の横にあった本は
抜き取られているらしく、すっと取りやすくなっている。
呼吸を整える。周囲に気を配る。その棚に誰も近づいていないのを確認し、
(よし・・・・・・!)
意を決し早足でその本の前まで来ると左手を伸ばした。
えっちに関する百のテクニック〜女性編〜、
その本を手にし、持っていた本の間に挟んだ。
一気にレジへ駆け、
『清算お願い――え?』
同時に横から聞こえてきた声に心臓が止まるほどの驚きを覚えた。
梨紅がこの店を選んだのは、店番が高齢のおじいさんであったからだ。
何を買っても咎められない、ということが彼女にはわかっていた。
実際その店で年不相応の本を買ったというクラスメートも何人かいると聞いた。
外れの方にあるので、誰にも会わないで買うことができると思っていた。
「丹羽君?!ど、どうしてここに」
よりによって一番会いたくない人物、少なくとも今は会いたくなかった彼がここにいた。
「ぼ、僕は、えっとこれ、画材と、あと本買いに来たんだ」
大助の手の中には確かに絵の具や筆,その下に本が2,3冊見えた。
「梨紅さん、先に清算済ませていいよ。待ってるから」
言われて梨紅は顔を上げ、
「あ、あー!私まだ欲しい本あったんだ。丹羽君から先にいいよ。外で待ってて」
行って梨紅は一目散に店の奥へと消えていった。
(まずいまずい。清算の時に本見えちゃうかもしれないじゃない・・・)
こんな本を買っていることを知られるのがとても恥ずかしかった。
大助が清算を終え、外に出たのを確認してから梨紅も急いで後を追った。
帰りは二人で他愛もない話をした。
先日の一件には触れることなく、楽しいときは過ぎていく。
「じゃあまた明日、学校で」
「うん、気をつけてね」
手を振り、梨紅の背を見送った大助は家まで走って帰った。
「ただいま!」
「あら、お帰り大ちゃん。遅かった――」
キッチンから聞こえる笑子の声を無視するように大助は部屋まで駆け上がる。
部屋に着くと鞄を放り出し、今しがた買ってきたものが入った包みを開けた。
「ふぅ、いくらなんでもこんなもの買ったってばれたら終わりだったよ」
「きゅぅ?」
独り言に反応したウィズには気を留めず、中から一冊の本を取り出す。
えっちに関する百のテクニック〜男性編〜、
それを手にし、いつもならダークから冷やかしの声が聞こえるはずだ。
だが今はそれがない。
昨日、ダークが出てこなくなったことを大樹と笑子に告げた。
どうやら想像以上に魔力の消費は激しく、しばらく出て来れなくなったということだ。
しかしいつ出てくるかわからない。今日かもしれないし、明日、明後日かもしれない。
(とにかく、冷やかしが入らないうちにいろいろ勉強しないと・・・)
そして大助はその本を読み始めた。
(へぇー、こんなことして・・・うわ、こんなこと丹羽君とするんだ・・・)
読み始めてしばらくたつと、梨紅は前回大助とやったことがまだ全然幼稚なものだったと気づいた。
本の中には詳細に奉仕の仕方や、悦ばせる触り方などが書いてあった。
「うむむむむぅ・・・」
声を出して唸る梨紅。
「りーくー」
ノックと同時、部屋の扉が空けられた。机に座っていた彼女は跳ねるように立ち上がると、
「り、りりりりりり梨紗!何か用?!」
(しまった――!)
動揺が声に現れている。何か感づかれるかもしれない、と不安になった。
(大丈夫、本は机の棚にタイトルが見えないように押し込んでるし。でも・・・)
しかし梨紅の不安をよそに梨紗は笑顔で近づいてくる。
「ねー梨紅ー、数学の宿題み・せ・て」
(それが目的かい!)
胸中で毒づく、と同時に安堵が広がる。しかし長く部屋に居座られるのは都合が悪い。
「ごめーんまだ終わってないの終わったら部屋に持ってくからそれまで待っててじゃあね」
捲くし立て梨紅の背を戸口まで押していく。
「ちょ、ちょっと梨紅ー?」
「それじゃあね」
バタン、と戸を閉め梨紗を追い出した。
「っっふうぅー」
思わず大きな息が漏れる。
「っと、続き続き」
梨紅は椅子に腰掛け、再び本を開いた。
「ふぅ」
一通り読み終え、大助は息をついた。
目を閉じ天を仰ぐ。
よし、もう一回だ。と、気を取り直してまた最初から読み始めようとした。
(へぇー、今はそうやるのがいいのか)
突然頭の中に聞きなれた声が響いた。
「ダ、ダーク!?」
(お前、おれがいない間になんかしやがったな?)
「な、何も・・・」
(隠し事しても無駄だぜ、正直に話したほうがお互いのためだと思うがな)
「う・・・」
(――なるほど。おれがいない間にとうとうやっちまったか)
「・・・ごめん」
(でも残念だったな。俺が目ぇ覚ましたからにはもう二人っきりでできねぇだろ)
へへへ、とダークは意地悪く笑った。
「・・・・・・」
大助もそれは覚悟していた。しかし実際そのときが訪れると自分が思っていた以上に気が滅入った。
「はあぁーー」
大きなため息を漏らした後、しばし沈黙が流れた。
(なぁ、やってる間俺は寝ててもいいんだぜ?)
思いがけず、ダークはそんな提案をしてきた。
「ほ、本当?!」
大助はその提案にすぐさま食いついた。
(ああ、本当だとも。た・だ・しだ)
「何か条件つける気だろ、ダーク」
(へへっ、察しがいいな。条件ってのはだな――)
「ってのは・・・?」
(――梨紗を抱かせろ)
いきなり言われて梨紅は風呂の湯を盛大にぶちまけた。
「うわっ、もう・・・いきなりなによぉ?」
「い、い、いきなりはあんたでしょーが!?」
「だからって、そんなに驚くことないじゃない」
「んぐぅ・・・」
そうだ、ここで変に慌ててしまうと返って梨紗に怪しまれるじゃないか。
そう、ここはいつものように平静に平静に・・・。
「ちょーっと胸も大きくなったんじゃないの?それ!」
梨紗が梨紅の背後から胸を掴んできた。
「んあ・・・!ちょ、やめてよ!」
梨紅は梨紗を引き離すとそのまま湯船を出た。
「先に上がるからね。ったく・・・」
「あ・・・ちょっと梨紅!」
バタンッ、と風呂場の戸が閉められ、梨紗一人が残された。
更衣室の鏡に梨紅は自分の映していた。
(・・・・・・女の子らしい、だって)
言われてしげしげと自分の身体を眺め回す。
別にこれといった変化はない。
いや、変化は起きている。梨紗に胸を触られたことで梨紅の乳首は勃起していた。
(うそ!?私、感じてたの?)
その事実に少しだけ狼狽した。
(丹羽君じゃなくて梨紗にされてもこうなるなんて。私って本当はエッチなのかな・・・)
その考えを振り払うように頭をぷるぷると振った。
溜め息をつき、
(宿題しよっと・・・)
湯船の中で梨紗は考えていた。
(・・・梨紅、感じてた・・・・・・?)
その考えが梨紗の中に非常に気持ちの悪いものを残している。
(もしかして、もう丹羽君とエッチしたの?)
それは梨紅の方が先に初体験を済ませたということを認めることになる。
(――だめ、そんなのだめよ!私は、私はあいつより優れてないとだめなんだから・・・!)
梨紗が梨紅に抱く劣等感。それが彼女にある行動をさせる原因となった。
ベッドの上、梨紅は自分の胸を愛撫していた。
先ほど感じた興奮を抑えることができなかったのだ。
すでにパンツ一枚しか穿いていないという状態である。
「はぁ・・・はぁ・・・、んっ・・・あぁ」
乳首を指で挟みくにくにと抓り、捻り、さまざまに弄り回す。
性欲が高まるにつれ彼女の股間がしっとりと濡れてくる。
濡れている筋を指でなぞる。
敏感な彼女のひだはしっかりとその刺激を感じ取る。
顔を歪め、息を荒くしているそのさまはいつものはつらつとした様子とは大違いだ。
パンツの中に指を滑り込ませ直接その縦筋に這わせる。
粘着性のある体液が梨紅の指を濡らす。
濡れた指を口に含むとちゅぱちゅぱと吸い出した。
それだけで興奮が一気に高まっていく。
再び股間に向かっていく指は、今度は筋の上のほう、ちょうどクリトリスの位置で止まった。
指がクリトリスを刺激するようにぐりぐりと押し当てられる。
漏れそうになる声を必死に堪えて指を動かし続ける。
右手の人差し指と薬指で器用に秘裂を開くと、中指でクリトリスを擦る。
擦りだすとすぐに秘穴からは多量の愛液が分泌された。
溢れ出した体液は梨紅のベッドのシーツに一つのしみを作っていく。
クリトリスを擦っていた指を下に這わせ、そのまま膣の中に挿入した。
それほどほぐしてはいなかった穴は、それでもすんなりと指を咥えこんでいった。
入れた指を前後に動かすたびにくちゅくちゅという音が聞こえてくる。
指を曲げ、自分の膣壁を刺激する。
そして奥の奥のほうで曲げたとき、今までにないほどの快感が突き抜ける。
そこが梨紅のGスポットだった。
そのポイントを知った梨紅は、重点的にそこを刺激しだした。
指を曲げるたびに快楽が身体を貫き、理性を刈り取っていくような感覚になる。
そして理性が薄くなるほど指を激しく動かす。その指がさらなる快感を与えていく。
入れていた指を1本から2本に増やした。
ぎゅうぎゅうと2本の指を締め付けてくるが、十分に濡れているので指は動いた。
前後に動かし曲げるだけでなく、2本の指を違う動きをさせたり手首を回してぐるぐると掻き混ぜたりする。
さまざまな動作で自分の新たな感じ方を開発させていくように、執拗に攻め続けた。
胸を弄んでいた左手でクリトリスを刺激する。
右手ほど器用に動かないが、かえってそれが新しい発見となる。
中と外からの責め。二重の刺激にあっというまに梨紅は限界に達した。
何を見るともなく、ボーっと上を向いている。宿題をする気力もないようだ。
「・・・あー、またお風呂入んないと」
服はすでに着ていたが、先ほどのオナニーで汗がじっとりと肌に付いている。
先ほどのオナニーの中で、梨紅は昼に買ってきた本で得た知識をいくつか参考にしていた。
今までクリトリスを弄ることが気持ちいいとは知らなかったし、Gスポットのこともそうだ。
(でもあんなに気持ちいいなんて、思わなかったなあ・・・)
オナニー後の脱力感の中でそう思った。
(あー・・・、このまま寝ちゃおう・・・)
疲労感が押し寄せてきた。
シーツのしみが気になるが、今は両親が長期の旅行の真っ最中だった。
それに梨紗がわざわざ梨紅のシーツを洗うわけがなかった。
結局素直に睡魔に従った。時刻は10時過ぎ。
梨紅にとっては早めの就寝になる、はずだった。
寝苦しい。あまりにも寝苦しかった。それに気づいた梨紅は次第に目が覚めていった。
薄っすらと開かれた目には人影が見える。
「・・・・・・梨紗?」
寝惚けた声で呟き身体を起こそうとした。
がくっ、と身体が後ろへ引っ張られる。
急な衝撃がそのまま梨紅をベッドの上へと戻した。
後ろに引っ張られたわけではない。初めから両手を頭上で縛られ、それがベッドへ結び付けられていたのだ。
「え、や、ちょっとなによこれ・・・?」
さらに身体を動かそうとして、足も片方ずつ縛り付けられていることに気づいた。
梨紅はさっきはぼんやりとしか見えなかった人影に目をやる。
今度ははっきりとわかる、梨紗だ。
「あ、あんた!一体どういうつもり?!」
梨紗はそれには答えようとせずただ梨紅のほうを見下ろしている。
「ちょっと、聞いてんの!」
苛立ちを覚えて声を張り上げる。そこで梨紗は視線を逸らした。
逸らした先を見ながら呟く。
「梨紅、オナニーしてたんだ・・・」
言われて一気に梨紅の興奮が冷めた。
梨紗の視線の先、そこには数刻前に梨紅が作った大きなしみがあった。
「あ・・・あ・・・」
冷めた身体が今度は羞恥で熱くなる。顔が赤く染まる。
梨紗の視線が梨紅の視線と交わる。梨紗の顔は微笑を浮かべている。
「梨紅ってそんなにエッチな娘だったんだ」
耳元に口を寄せそう囁く。
「!ち、ちが・・・」
否定しようとする梨紅を遮るように梨紗が口を開く。
「丹羽君のこと考えてたの?」
その名前に、梨紅は言いかけた言葉を呑み込んだ。
なぜならさっきのオナニーでは大助のことを考えることなどしなかったからだ。
そのことが、ただ快感を求めるために自分を弄り回していたのではないか?と梨紅に思わせた。
その考えが、梨紅に否定の言葉を出させなかった。
「ふーん、やっぱり考えてたんだ」
梨紗はなぜ梨紅が否定しないかを勘違いしている。
だが梨紅にはそんなことを考える余裕などない。羞恥心で張り裂けそうな胸の高鳴りを必死に堪える。
「丹羽君とのエッチって気持ちよかった?」
そんな梨紅にはお構いなしに梨紗は梨紅の興奮を煽るように問いかけてくる。
(ダメ、梨紗の言うことなんか聞いちゃ!)
そう自分に言い聞かせる。
しかし、梨紗の言葉は大助との行為を少なからず思い出させる。
それだけで梨紅の身体は疼き、あのときの興奮が甦ってくる。
今、梨紅の手が拘束されていなければ大助を思いながら再び自分を弄っているだろう。
「すっかり色気づいちゃって、本当に腹が立つわ」
梨紗の目、鋭く、冷たく、暗い光が宿る瞳。
姉への劣等感、それが今の梨紗を突き動かす行動原理である。
「丹羽君以外の人に触られても感じるんだよね、梨紅は」
梨紗の手が梨紅の豊かな乳房を触り始める。
「ひっ、や、やめて・・・!」
梨紅の言葉に耳を貸さずに、ゆっくりと優しく揉み始める。
「私は梨紅に気持ちよくなってもらいたいだけなの。逆らわないで」
言葉とは裏腹に、その目はやはり暗い色をしている。
「あ、あんたなんかに触られて嬉しいわけないじゃない!」
「あら、お風呂で感じてたのは誰かしら?」
「あ・・・」
突然そのことを持ち出され、梨紅は返事に窮した。そして、それは肯定を意味する。
「ね、やっぱり嬉しかったんでしょ?」
顔を近づけ詰問してくる梨紗から背けるように顔を逸らす。
羞恥で顔は赤く染まり目には薄っすらと涙が浮かぶ。
梨紗は両手で梨紅の双房を、形が変わるほど強く揉んだ。
「くぅっ・・・」
苦痛で顔が歪むが、構わずにそのまま揉み続ける。
「あはは、ごめーん。力入れすぎちゃった」
てへ、と梨紗は謝罪の言葉を口にするが、それが白々しい物に過ぎないということはわかっていた。
「今度はもっとちゃんと愛撫してあげる」
服を捲し上げ、慣れた手つきでブラジャーを外す。
「いやぁ、やめて!」
必死に抗おうとするが、縛られていては満足に力も出ない。
身をよじるとベッドがぎしぎしと音を立てるだけ。それ以上は何もできない。
「もうちょっと大人しくしててよ」
そう言うと梨紗は梨紅の胸に顔を近づけ、そして乳首に吸い付いた。
「ひゃう!ああ、・・・もう、やめて」
ついに梨紅の目から涙が零れ落ちた。
「これくらいで泣くことないじゃない。丹羽君にはもっとしてもらったんでしょ?」
丹羽君――。その名前が梨紅の脳裏を通り過ぎた。
(丹羽君、丹羽君!助けて、お願いだから助けてよぉ!)
心の中で何度もそう繰り返した。もちろん助けになど来るはずがない。
しかし大助の名前を何度も反芻するだけで、梨紗から与えられる刺激を忘れようとした。
乳首を吸い、舌で転がしていた梨紗は、梨紅の反応がいまいちなことに気がついた。
「んもう、面白くないわね」
明らかに苛立ち、そして敵意が込められた台詞を吐いた。が、それは一瞬のことで、
「それとも、胸よりこっちのほうがいいのかしら」
口調が最前のように冷たいものに戻り、そしてその手が梨紅の下腹部へと下りていった。
「あ、だめ!そこだけは・・・!」
さすがにその変化に気づいた。それが仇となった。
大助の名を繰り返して忘れようとしていた刺激に対し、再び意識が集中してしまった。
梨紗の指がパンツの中、そしてつるつるの恥丘を進み、その一番上、クリトリスの部分に達した。
「ひゃぁ、ああ、・・・あ、ああ!」
細い指が陰核を刺激する。痛く、激しく、鋭い。そんな感覚が突き抜ける。
「あ、やっぱり。梨紅はここがいいんだ」
「ち、違うわっ・・・」
「悪いけど説得力ゼロ。梨紅はとってもエッチな女の子にけってーい!」
無邪気な、本当に無邪気な笑顔で梨紗が告げる。
酷い、本当に酷い泣き顔で梨紅はその言葉を浴びせられる。
同じ顔の二人。しかしこの状況では全くの別人に見えてしまう。
それが、今の梨紗と梨紅の決定的な違い。
快楽を与える者と、望まずしてそれを与えられるものの違い。
梨紗の指が割れ目まで到達する。1,2度その上を滑らせる。
「梨紅、全然濡れてないよ。これじゃ痛いでしょ」
指が2本、梨紅の中に無理やり進入していく。
「!――やめてぇ!い、痛っ、・・・から、お・・・ねが、あ、あぁぁ!」
ぶちぶちと、肉壁と肉壁がくっついているのを剥がしていく感触。
その刺激が梨紗の指へと鈍く響いてくる。そして奥まで達した指を一度引き抜いた。
(・・・やっぱり。もう処女膜、ない)
そのことに気がついた。指には血が付いていなかった。
「ほら、痛いって言ったでしょ?早く濡らして」
「む、無理だよぉ・・・。だか、ら、もうやめて・・・」
むっ、と梨紗の顔がしかめられた。
「無理じゃない!」
そう言って梨紗は再び中に入れて指を無理矢理に動かした。
「ひゃああぁぁぁ!!い、・・・たい、いた・・・!」
その顔は今までにないほど歪み、ぼろぼろと涙を流している。
それでも梨紗は止めようとしない。
梨紅が処女ではないという事実。それが梨紗の中にさらなる残虐性を生み出した。
梨紗の爪が乱暴に梨紅の中を引っ掻き、がりっ、とした鋭痛を与える。
下手をすれば膣壁の出血もあるかもしれない。だが、さらに激しさを増し指は動き続ける。
そして指が奥のほうに達した時、
「んああぁぁ、・・・あ、あぁ」
かすかに艶が混じった、その変化を敏感に感じ取ったのだ。
さらに数度、さっきのポイントを攻め立てる。苦痛に歪んでいた顔が少し緩んだ。
「そう、ここね。梨紅はここがいいのね!」
一気に顔を歪ませ――といってもこちらは歓喜のために、だ――入れた指を動かす。
それは先ほどまでよりさらに激しい、しかし爪は立てないようにそこを刺激する。
「あ、あああぁ!い、いや・・・だよ、こんなの!」
心とは裏腹に身体は正直にその快楽に負ける。
さきほどまで全くの乾燥状態だった梨紅の割れ目はあっというまに潤いを帯びた。
「ほら、わかる?梨紅のここもうぐしょぐしょだよ!」
大きな声でそう告げる。いやでも梨紅の耳に届いてしまう。
「あは、ほら、もう梨紅のパンツもこんなに濡れてるよ」
「う、うぐ、ぐすっ・・・」
すでに大泣き状態の梨紅をさらに梨紗は攻める。
指を出し入れし、その動きが梨紅の身体に快楽を与えてくる。
(うぅ・・・、丹羽君・・・)
「梨紅!いっちゃっていいんだよ?ほら!」
言葉で攻め、指で攻める。梨紅の身体の絶頂は間近だ。
(いやだ、いやだよ!丹羽君以外に、こんなの・・・)
あぁ・・・、早く、早く梨紅の醜態が見たい。その思いが梨紗を動かす。
(そうよ。あんたなんて、ただの雌なんだから・・・!)
凶悪なまでの思想。狂悪なまでの行動。全ては、姉に負けたくないから。
もう、だめだ。身体のほうがもちそうになかった。
(丹羽君、丹羽君――!!)
そこで、梨紅の思考はブレーカーが落ちるようにぶっつりと途切れた。
どれほどの時間そうしていたのだろう?
ベッドの上で膝を抱えて梨紅はうずくまっている。
シーツには大きなしみが二つ、どちらも同じくらいのサイズで存在している。
(――いや)
外は暗い。月の明かりも星の明かりも差していない。
(――こんなの、いや)
部屋の時計はすでに1時を回っている。とても静かな夜だ。
(――許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない、絶対に!)
秋も目前の季節、寝苦しくはない。暖かくはないが寒くもない、そんな気候だ。
(――絶対に、あんただけは許さないから・・・!!)
その中で、うずめた顔から覗く瞳だけが異様に冷たい光を放っている。
それは、ついさきほどまでの梨紗と同じように、闇を内包した光。
かくして話は次の段階へと進んでいく――――。