「ほら、フロンちゃんこれ。」
エトナはフロンにのし袋を渡した。
「? 何ですか、これ?」
「この間の殿下のお年玉の件で殿下が損害賠償を支払ったでしょ?
それのフロンちゃんの取り分よ。」
「あ、ありがとうございます。」
「それにしても、殿下は何でああも出し渋ったのかしらね?
自分のこづかいや予算からじゃなくて軍資金から捻出すればいいのに。
まあ殿下はお金の管理をしていないからわかんないだろうけど。」
「そういえば今の軍資金っていくらですか?」
「645917101338ヘル。」
「へ?」
「ああ、ちょっとわかりづらいわね。6459,1710,1338ヘルよ。」
「・・・・あの〜エトナさん、漢字を混ぜてもらえるとありがたいんですけど。」
「ああごめん。6459億1710万1338ヘル(およそ7兆円)よ。」
「うわっ!! 誰かがちょろまかしてもまだ余りますね。」
「・・・・フロンちゃんがちょろまかすって言うんじゃないの。」
「ごめんなさい。あそうだ、エトナさん。初詣に行きませんか?」
「初詣?」
「神社に行って今年一年いいことありますようにってお参りするんです。」
「今から行くの? 世間が成人式で騒いでいる今に?」
「仕方ないですよ。ここ最近魔王城で新年パーティーをずっとやってたんですから。」
「・・・・まあいいわ。早いとこ行きましょ。」
「あそうだエトナさん。いまだに引きこもっている青ゴキブリとみんなも連れて行きましょう。」
「・・・・青ゴキブリが誰かわかったけどあえて言わないでおくわ。」
―魔界神社総本山
「ここが魔界で一番大きい神社よ。」
「エトナさん、鳥居の前に来たら一言もしゃべらないでくださいね。神様に失礼ですから。
鳥居の前ではちゃんとおじぎして下さい。浅いおじぎも失礼ですから。
水はひしゃくで汲んで右手、左手、右手、口に軽く入れてハンカチやタオルに吐いてください。
おさいせんをあげる時はちゃんとお金を洗って下さい。お札は失礼ですよ。
お賽銭箱の前に行ったら二礼二拍手して願い事を頭の中で考えて下さい。
縄がぶら下がっているものは最近は付いてないところが多いから鳴らさなくて結構です。
そして最後に一礼してから鳥居を出て下さい。」
「フロンちゃん、どこでそんなの聞いたの?」
「1日のテレビ番組で細○数○さんが言ってました。」
「・・・・まああの人が言うんなら仕方ないわね。」
エトナたちはお参りを済ませた。
「あっ、エトナさん。おみくじを買って行きませんか? これで今年の吉凶を占うんです。」
「1つ10ヘルか。んじゃ、アタシも買っとこうかな。」
エトナたちはそれぞれおみくじを買った。
「わたしは小吉でした。エトナさんは?」
「よしっ、大凶が出たわ。」
「・・・・エトナさん、何でそこで喜ぶんですか? 普通の人ならへこみますよ。」
「いいのよ。いろいろ試練があったほうが面白いでしょ?」
「吉以上なら携帯して、凶以下なら神社の木にくくっておいて下さい。」
「・・・・・・。」
「あれ、殿下どうしたんですか?」
「・・・・吉なのか凶なのかわからんものを引き当てた。」
「何ですか?」
「“ちっちきち〜”だ。」
ずるっ
「何ですか、それは!!」
「あっ、ラハールさんのくじ、“面白くじ”って書いてありますよ。」
注:こういうくじは実在しません。
「まあいいんじゃない? 大凶引くよりは。」
今年一年も騒がしくなりそうだ。