―ベースパネル内―
「レインよ、よく聞きなさい。 ラハール様もエトナ様もみんな、みんな死にました、残されたのは私とあなただけです。
外には、まだ大量の魔物がいます・・・おそらく私でも・・・良くて相打ちでしょう。」
「師匠、逃げましょうよ・・・体制を立て直して、あたしのLVもあがればきっと・・・。」
いきなりの魔物の大群の襲撃。 残されたのは師弟の天使兵2人、しかも弟子の方は生まれたてであった。
「私はみんなの敵をとらねばなりません、1匹でも多くヤツらを道連れにします。」
「そんな、あたしは・・・あ、あたしも一緒に戦います!」
「いいえ、今のお前では一太刀も浴びせることはできないでしょう、いいですかレイン。 いつか必ず・・・みんなを。」
ゴゴゴゴゴゴッ
突如ベースパネルが揺れ始めた。
「くっ、ヤツら・・・ここまで!」
「うう、師匠〜怖いよぉ。」
「レイン・・・後のことは、任せました!」
「え? 師匠? やだよ!おいてかないで!!」
師匠の天使兵は剣を取ると、ベースパネルを飛び出していった。
数時間後。
外から聞こえていた激しい戦いの音が止むと、それ以上に大きな沈黙が訪れた。
「うっ・・・うっ・・・・師匠・・・。」
レインは恐る恐るベースパネルから出てきた。
目前に広がるのは無数の屍。 敵もいれば・・・味方もいる。
その一人一人の顔をのぞいていく。 優しくて姉代わりであった僧侶、いつも冗談を言って笑わせてくれた盗賊
強くてカッコよかった魔法戦士。 いつもすぐそこにあった笑顔達は、今はもうレインの足元で何も言わなくなっていた。
いつの間にか雨が降り出していた・・・全身を打つ雨に振るえながらレインは探し続けた・・・そして・・・。
・・・彼女は開けられたマンティコアの大きな口に剣を刺した姿勢のまま絶命していた・・・。
マンティコアの口はベースパネルに向かって開けられていた、彼女はその命を懸けて守り抜いたのであろう。
「し、師匠・・・?」
その顔は、冷たくなった今なお、誇り高く佇んでいた。
そして・・・しばらくの間、レインと絶叫と冷たい雨が続いた・・・。
―魔王城―
「どうして! どうしてですか!」
魔界病院のカウンターでレインの声が響いた。
「そう言われましてもこっちだって商売ですから、さすがにお金が1ヘルもないのでは蘇生どころか治療すら・・・。」
「そ、そんなぁ・・・ あ、そうだ!」
レインはローゼンクイーン商会へ向かった。
「えっと、コモンソードとプロテクターとキャンディー1個で・・・しめて85ヘルですね。」
「え! たったそんだけなんですか?」
「そりゃぁ・・・まぁ・・・最低装備ですから。」
「うう、それだけだと師匠どころか誰も蘇生できないんですけど。」
「そう言われましてもこっちだって商売ですから。」
「うぅ・・・。 商売人なんて嫌いだ。」
「あら? レインちゃんじゃない・・・大変だね、全滅したんだって?」
「あ、プレネールさん・・・ええ、その上お金も無くて、私どうすれば・・・。」
「あはは、何言ってるのよ。」
プレネールはポンッとレインの肩を叩いた。
「え?」
「君さ、天才なんだよ。」
「えぇ? あたしが天才・・・・?」
「うん、しかも超天使兵のね。 師匠さんから聞いてないの?」
「あ、あたしは・・・天使見習いのどうしようもないクズだって・・・。」
「あはは、素直じゃないねぇ君の師匠も。 違うよ、君は超天使兵の天才で作られたんだよ、私が言うんだから間違いないわ。
自信もちなって、君は強いんだから。 低レベルでも弱小装備でも君の秘められた力はとても大きなものだから。」
「で、でもあたし。」
「はいはい、1からスタートすれば大丈夫だって。 ほら、行った行った。」
「どちらへ行かれますか?」
時空ゲートの管理人は淡々と事務的な口調で尋ねた。
「ちゅ、チュートリアルへ。」
レインはコモンソードを片手に時空ゲートをくぐった。
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