「…そうですね」  
ディルもふっと笑った。  
………  
……  
…  
「こういうの、女性主体なんですか?」  
沈黙の後の質問に、ルウが突っ伏した。  
お湯が波打つ。  
「いや…いやいやいや…普通は男性主体なんじゃないんですか!?」  
慌ててルウが聞き返す。  
「え!?そんな法律あったんですか!?」  
ゴンッ!!  
後ろに仰いで壁に頭を打った。  
(人の体を扱う仕事なのに予備知識も無しですか!?ここまでいけたのに!?)  
心の中で問い叫ぶ。  
いや…そもそも…  
何かが欠落している。  
(…この様子じゃあ…)  
「…えーと。ディル君?性交の経験は?」  
しばらく考え…  
「あ、一回あります」  
その答えにほっと胸をなで下ろす。  
(…童貞じゃありませんか…)  
すると、別の疑問が沸き上がる。  
「…どういった勢いでですか?」  
質問攻めだ。さっきのムードもへったくれもない。  
「…何といいますか。酒を飲んだ戦士♀に勢いでヤられまして…」  
沈黙するルウ。  
(…多分それは襲われたというのでは…)  
そして半ば一方的にヤったのだろう。  
そのときの経験が、女性主体とディルに思わせているのだろうか。  
…スゴい勘違いである。  
(こういう時は…)  
どうしようか。  
夜魔族の時でもこのパターンは聞いたことがない。  
(落ち着きなさい…ルウ…夜の三冠王のあだ名は伊達じゃないんですから…)  
考える。  
ひたすら考える。  
 
ふと…  
肩に手がポン、と置かれた。  
「ひゃん!?」  
ビックリしてしまった。  
「ルウさん。マイペースマイペース…」  
にっこり笑ってディルが喋る。  
(その私のペースを崩してるのは…あなたですよ…)  
心の中で突っ込む。  
(まぁ、いいでしょう…)  
ため息一つ。  
「ディル君、とりあえず…」  
風呂の縁に誘導する。  
言われるがままに腰掛けるディル。  
「さてと…」  
ルウがまじまじとディルの逸物を眺める。  
「…サイズとしては中の上ですか…ふむう…戦法としては…」  
腕を組んで思案するルウ。  
「…あの…ルウさん?何を…」  
ディルの言葉に耳を傾けず、ひたすら思案する。  
「噛みちぎるくらいの勢いで…いや…やっぱ優しく撫でるように?…蝋でも垂らそうかしら…」  
怖い。  
拷問だ。  
背筋が寒くなるのをディルは感じた。  
 
「…まあいいか…」  
言うや否や…  
いきなりディルの陰茎を口に含んだ。  
「くあっ!?」  
いきなり電撃のような感覚がディルを襲う。  
「ん…ふ…むっ」  
唾を陰茎に擦り付けるルウ。  
見る見るうちに、唾でベトベトになった。  
「よし…月並みですが…」  
一旦口を離し…  
豊かな乳房で挟み込む。  
「胸を使っていきますか…」  
乳房でしごきながら、陰茎に口で奉仕する。  
たまらない刺激。  
「う…あっ…」  
口から漏れる。  
「ふう…ん…んむ…」  
チュパチュパと、淫らな音が浴場に響く。  
「む…ふっ…ん…んはぁっ…」  
口を離し、乳房でしごく。  
背筋を快感がぞくぞくと走り回る。  
 
「き…気持ち…良いですか?」  
少々ルウも感じてきているらしい。  
口を開けられずにただ頷くディル。  
「それじゃ…」  
再度口に含む。  
そして上下に口を滑らせる。  
唾が泡立ち、胸に垂れている。  
とても淫猥な光景だ。  
「ルウさん…そろそろ…!」  
限界が近いらしい。  
根元がびくびくと脈打っている。  
それを感じ取ったのか、ルウがスピードを上げた。  
「ふ……いいですよ…イッちゃっても…ん…」  
上気した顔でルウが言う。  
その光景にたまらなくなり…  
「くあっ!!」  
びゅくっ!!  
欲望が弾けた。  
「んんっ!!」  
白濁がルウの口の中を蹂躙する。  
だが、それをけして吐き出さず、ルウは飲み干す。  
「ん…む…はぁっ…」  
飲み終えた。  
口の端をつうっ…と、白い液体がはしる。  
「どうでした?」  
微笑と共にルウが尋ねる。  
ディルは、ただ頷くしかなかった。  
「じゃあ…」  
秘部を露わにするルウ。  
「次は…ここで…」  
お湯と愛液が垂れている。  
その光景に、ディルは目を奪われていた。  
 
そのころ…  
「ラーズ君、すごいね…」  
学校。帰りのホームルーム。  
テストの答案が返されていた。  
「…うるせー」  
力無くラーズが言う。  
「○肉○食って…普通の人なら「弱肉強食」か「焼肉定食」かどっちかと思ってたけど、まさか『牛肉試食』とは予想外だったよ…」  
シーナは純粋に驚いていた。  
すると…  
「でもそれで赤点になってちゃ意味無いよね〜」  
前の方から声がする。  
シーナの前の席の女魔道師…アルミナが  
「ひょっとしてラーズって馬鹿?」  
「うるせーな!!おまえ何点だよ!!」  
「あたし?あたしは73点。29点の誰かさんとは違うよ〜」  
おちゃらけた風に言うアルミナ。  
「シーナは?」  
アルミナが尋ねる。  
「あたしは…97点。」  
……  
「あ、あれ?どうしたの?二人とも地面にうなだれて…」  
(負けた…)  
(上には上が居るのね…)  
実感せざるをえない二人。  
シーナはただおろおろするばかりだった。  
 
「さて…と…」  
腰をゆっくりと上げ、妖しく蠢く秘部をゆっくりと、ディルの陰茎の上にもっていく。  
「さてと…用意はいいですか?」  
妖しく微笑むルウ。  
「え?あ、あの、今日は中は…」  
ディルの発言に、ルウは答える。  
「忘れました♪」  
「…え?」  
あっけにとられるディル。  
「ま、いいじゃないですか…」  
ゆっくりと腰を下げていく。  
「たとえ…んっ…今日が危険日でも…」  
ずぶずぶと、ディルの怒張がルウの秘唇に飲み込まれていく。  
「愛する家族が…増えるだけです…」  
最深部まで到達した。  
膣内で逸物がビクビクと動いている。  
秘肉がディル自身を離さない。  
(…あの人以来ずっとやってませんでしたからね…少し敏感になってますか…)  
そう思ったルウ。  
(まぁ…何とかなるでしょう…)  
考え終わると同時に腰を上下にゆっくりと動かしていく。  
「あ…はうっ、く…んはぁっ!!」  
じゅぶじゅぶと淫らな音を奏でながら、怒張がルウの中を往復する。  
そのたびに乳房が揺れ動く。  
ディルはなすがままになっていた。  
「んっ…あ、ふぅっ…」  
「る、ルウさん…!」  
ディルの腰が動き始めた。  
「ふぁっ!?ちょ…ディル君!?」  
思いがけない不意打ちだった。  
 
「あ〜終わった終わった」  
首をコキコキと鳴らしながら、アルミナが呟く。  
学校も終わり、教室から生徒が出ていっている。  
アルミナ、ラーズ、シーナの三人は、鞄を手に廊下を歩いていた。  
もう夜だ。満月が見える、美しい夜。  
「これからどうしよっかな〜」  
「どうするって…ふつう帰るだろ」  
アルミナの呟きにラーズが反応した。  
アルミナは人差し指を左右に振りながら、舌打ちする。  
「なに言ってんのよ。学校終わって戒めから解放されたのよ?遊びに行くに決まってんじゃない」  
楽しそうに口ずさむアルミナに  
「お母さんに連絡しなくていいの?」  
ビキッ!!  
アルミナが固まった。  
「…忘れたのか?シーナ。アルミナのお母さんは…」  
「…あ、校長先生か」  
思いだし、ポン、と手を打つ。  
途端にがっくりとうなだれるアルミナ。  
「…一応、言いに行っとこうかな…お母さん怒ると超クール百連発だし…」  
冷や汗をたらしながらアルミナが呟く。  
「今日校長先生いるのか?」  
もっともな疑問だった。  
「うーん…あ、おーい。」  
シーナが声を上げた。  
 
廊下の向こうから人影一つ。  
風貌はアーチャー。だが重そうに本を抱え、眼鏡を掛けている。  
彼女の名前はエリス。  
「…え…あ、シーナさん…」  
どことなくぼんやりしている。  
立ち振る舞いもどことなく儚げだ。  
「エリスちゃん、校長先生知らない?」  
シーナが尋ねた。エリスは少し考え…  
「校長先生なら…校長室にいらっしゃると思います…」  
「…校長室…あの重苦しい校長室…」  
エリスの答えにがっくりとうなだれるアルミナ。  
「うんわかった。ありがと!!」  
「いえ…それでは…」  
そう言って彼女は足早に廊下を駆けていった。  
「…?どうしたんだろ?」  
首を傾げるシーナ。  
「…さぁな…」  
ラーズも分からなかった。  
「…じゃ…とりあえず校長室に…」  
重苦しい足取りで歩き出すアルミナ。  
 
「着くのが早いわよ…」  
「校長室」と太い文字で彫られたプレートが下がっている。  
「…じゃ、行くわよ…」  
二回ノックする。  
中から「どうぞ」と声がした。  
「えっと…アルミナです。校長先生に用があって…」  
「アルミナ?入りなさい」  
「し、失礼します!!」  
ドアを開け、ガチガチになりながらも中に入るアルミナ。  
二人もその後に続いた。  
 
「それで?用って?」  
真っ正面からアルミナを見据えている。  
威圧感漂うマジシャン。  
この学校の校長にして、アルミナの母、ミーティ。  
「い、今から遊びに行っちゃいけないかな〜?」  
「今から?」  
視線を真っ直ぐに向けられる。  
「そ、そう!!この二人と一緒に!!」  
「え?」  
「しっ!!」  
声を上げるが、すぐに遮られるラーズ。  
しばらく思案するミーティ。  
「…ねぇ?アルミナ?」  
「な、何!?」  
「テスト…何点だったの?」  
ぎくぅっ!!  
心臓の音が聞こえた気がした。  
「73点…」  
か細い声で言うアルミナ。  
言葉と共に魂も抜けていくようだった。  
「微妙ね…」  
さらに思案するミーティ。  
重苦しい沈黙。  
「まぁ、いいわ」  
一言。  
「え?」  
「ただし今度のテストでどれか90点以上。取れない場合は…」  
ごくりと唾を飲み込む。  
「…家から出られなくなるわよ」  
「…はい」  
((((;゚д゚))ガクガクブルブル  
ラーズとシーナは心の中で震えていた。  
出ていこうとするアルミナに  
「…楽しんでいらっしゃいね」  
優しい声がかけられた。  
アルミナはあえて振り返らずに…  
「うん!!」  
精一杯頷いた。  
 
「よっし!遊ぶわよ!!」  
急にやる気を取り戻したアルミナ。  
「…マジで俺たちも付いて行くのか?」  
「当然!…と言いたいところだけど…」  
声のトーンを低くするアルミナ。  
「別についてこなくてもいいわよ。勢いで決まっちゃったし、親も心配してるだろうし…」  
少々責任を感じているようだ。  
「…別に俺んちはいいぜ。親も今日は居ないし…」  
「あら。じゃあシーナは?」  
少し思いを巡らせるシーナ。  
「ん〜、何か今帰っちゃいけない気がするんだよね…ついて行くよ」  
煮え切らないが頷くシーナ。  
「何よそれ…まぁいいわ。行きましょう!」  
元気に歩き出すアルミナ。ラーズとシーナもついていく。  
 
このシーナの勘は正しかった。  
いま家に帰ったら親と親のイヤーンなシーンを見ることになっていたからだ。  
…読者の皆さんごめんなさい。乱交は無理だったよ…  
ごめんなさい…  
 
所変わって自宅。  
「くあぅっ!!ひぁっ、あぁっ!!」  
聞こえるのはルウの嬌声。  
いつの間にか、ディルもがむしゃらに腰を振っていた。  
「ルウさん…そろそろ…」  
ディルにも終わりが近づいていた。  
「だ、出して下さい…膣内にっ!!」  
無我夢中でピストン運動するディル。  
「はぁっはぁっ…はぁぁぁっっ!!」  
体を震わせ、絶頂を感じるルウ。  
それと同時に柔肉がディルの怒張を締め付けた。  
「ルウさん!!」  
ルウの膣にディル自身を放つ。  
「あ…熱いのが…出てます…」  
混濁した意識の中、ルウがぼんやり呟いた。  
 
「あー、気持ちよかったですねぇ〜」  
満足げに呟くルウ。  
「…そうですね…」  
げっそりとやつれた顔で相づちを打つディル。  
「ひょっとして疲れたんですか?第二ラウンド…」  
「…無理です」  
ソファーに寝転がるディル。  
「今日はここで寝ます…」  
そう言ってぐったりするディル。  
二階に登る気力もないらしい。  
「あら…残念…」  
心底残念そうにつぶやいた  
すでにディルは寝息を立てている。  
「あなた…お休みなさい…」  
その言葉と共に、彼に毛布がかけられた。  
 
 
図書室。  
扉を開けて、アーチャー…エリスが入ってきた。  
腕には数冊の辞書が。  
それをカウンターに置く。  
そして並べ始める。  
エリスの他には誰も居ない。  
 
 
元々悪魔は歴史や文学に疎い。  
魔法を学ぶなら自然に触れて魔力を上げればよいし、力を極めたいならひたすら鍛錬すればいい。  
欲望が強い悪魔はそれに集中し、他のことには興味を持たない。  
それ故に、力や魔力と関係が薄いこの場所は使用されにくい。  
 
 
だが、エリスにとってそれは良いことだった。  
剣士が力を求め、魔術師が魔力を欲する。それは欲望の矛先がそれらに向いただけのこと。別の事に向かう悪魔もいる。  
彼女もその一人。  
彼女が欲望の矛先向けたのは、ひたすら知識を深めることだった。  
ひたすら文書を読みあさり、知識を深める。  
それがたまらない充実感を彼女に与えてくれるのだ。  
元来争いを好まないアーチャーの性格もそれに関わっているのだろう。  
暇なときはひたすら本を読む。  
空いた時間に図書室で読んだことのない本を読む。  
それだけで彼女は幸せだった。  
 
図書室はひっそりと静まり返っている。  
淡々と本を並べ、読んだことのない本を取り出していく。  
前までは見る度にあったものだが、今では数冊しか見かけなくなった。  
丹念に見回してみても、四冊。タ○ンページ位の厚さはあるが…  
「……どうしよう…」  
これだけなら数時間で読み終わってしまう。  
それからの時間の潰し方を考えていなかった。  
家に帰っても、本は片っ端から読み尽くしてしまった。  
寝てもいいのだが…  
(…それだけは駄目…)  
ものすごくもったいない気がするのだ。  
そんな時間があれば本を読む。寝る間も惜しんでとはこのことだろうか。  
どうしようと考えていたとき…  
 
バタァン!!  
けたたましい音と共にドアが倒れた。  
「…えっ?」  
ドアはエリスの後ろ。  
成すすべなく…  
彼女はドアの下敷きになった。  
 
「い…痛ってぇ…」  
ドアの上から声がした。  
そこには、戦士♂が一人。  
まだ幼さの残る顔立ちだが、若々しくたくましい顔。  
「まさかコケるとは…ん?」  
下の感触に気づく。  
「……きゅうぅ……」  
そこではエリスが、目を回していた…  
 
Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)  
 
「本当にゴメン!!」  
手をあわせて彼は謝る。  
「別に…いいですよ」  
エリスも本心から返答する。  
だが、彼には不機嫌そうに聞こえるらしい。ひたすら謝っていた。  
彼の名前はグレイ。  
一応シーナやエリス達のクラスメートだ。  
「本当にいいですよ…」  
その言葉にグレイは  
「…本当に?」  
真正面から見据えられる。  
エリスはこくんと頷いた。  
 
途端、机に突っ伏すグレイ。  
「良かった…嫌われたかと思ったよ…」  
つぶやくグレイ。  
「……あの…」  
エリスが口を開く。  
「どうしてコケたんですか?」  
ビクン!!  
グレイの体が大きく跳ねた。  
ぎぎぎぎぃっと音を鳴らすような動きで、エリスと目を合わせる。  
「…どうしても…言わなきゃ駄目?」  
おずおずと口を開く。  
「いえ、無理には言わなくても…」  
慌てて答えるのだが、  
「ドアぶち抜いたしな…言わないとやっぱ男として駄目だよな…」  
ぶつぶつと突っ伏してグレイは言い…  
がばぁっと顔を上げた。  
驚くエリス。  
そしてグレイが一言。  
「…剣の練習してたら腹が減って倒れた…」  
 
数秒の沈黙。  
「…他言無用でお願いします」  
その言葉にエリスは…  
クスクスと笑ってしまった。  
「あーっ!!笑ったな!?」  
「あ…す、すいません…」  
丁寧にお辞儀して謝るエリス。  
「あ、い、いやこちらこそ…」  
途端に腰が低くなるグレイ。  
そしてまた目が合う二人。  
そして今度は…  
二人とも笑ってしまった。  
 
「そういやここで何してるんだい?」  
ドアの修繕をした後、エリスに問いかけた。  
「本を…読んでます」  
パラパラとページをめくりながらエリスは答えた。  
「本…ねぇ…」  
頭をぽりぽりと掻きながらグレイが呟く。  
「…楽しいかい?」  
「楽しいです」  
即答するエリス。  
「どのくらい?」  
その問いかけにうーんと少し考え…  
「…無限大」  
ずしゃぁっ!!  
ずり落ちるグレイ。  
「む、無限大かぁ…」  
とても、かなりなど、そういう風に答えるのかと思っていた彼にとっては予想外の答えだった。  
「…楽しそうだね」  
そう言って立ち上がるグレイ。  
「…楽しい?私がですか?」  
首を傾げながら考える。  
彼は本棚を眺めていた。  
「そうそう。本を読んでるときが一番楽しそうだ」  
にこやかに笑みを浮かべて言うグレイ。  
 
どくん!!  
 
「…!?」  
不意に身じろぎするエリス。  
「…どうしたの?」  
慌てて首を振るエリス。  
不審そうに首を傾げながらも、本棚を眺めなおすグレイ。  
(…なんだろう…)  
頭で考えるエリス。  
彼の…グレイの笑顔を見たとき、心臓が高鳴った。  
何かイケない物でも食べただろうか。  
未だに高鳴っている心臓。  
彼女に原因は分からなかった。  
 
「…じゃあ、本とかどこで買ってるの?」  
「…え?」  
グレイの唐突な質問。  
「だって、本好きだろ?だったら足繁く買いに行ってる本屋とか……?」  
ポカーンとした表情のエリス。  
「本屋って…なんですか?」  
グシャッ!!  
本棚から盛大に身投げしたグレイ。  
床に顔がめり込んでいる。  
「え…いや、ちょっと、待って…」  
顔だけを上げながらエリスの方を向く。  
「本屋知らねぇの!?」  
大声を張り上げたグレイに驚きながらも、こくこくと頷くエリス。  
「…本屋っていうのは、あらかじめ色々な本が置いてあって、それから気に入ったのを金を出して買う場所」  
グレイにとって本屋の説明なんぞをしたのは初めてだった。  
そしてその説明を聞いたエリスの瞳は輝いていた。  
「…すごい…楽しそうです…!」  
キラキラと輝いているようなエリスの瞳。  
グレイは少しの間だけ見とれていた。  
そして…  
「…じゃあさ…行ってみる?」  
思わず口からこぼれ出た言葉。  
「…え?」  
エリスが少し首を傾げた。  
「その…本屋にさ…」  
その言葉を言い終えた彼の顔は、とても真っ赤になっていた。  
エリスも少し顔を赤らめながら…  
「…はい…」  
こくんと頷いた。  
 

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