白く果てしなく広がる氷原の上で、フレアスカートの少女がひたすら矢を撃ち続けていた。  
 標的は一匹だけ残された、妖艶な女性型モンスター。彼女は矢を浴びてもびくともしないが、  
その反撃を受ける少女もまた無傷。  
 ジオシンボル・無敵の効果である。  
 少女……アーチャーは己の武器習得度を上げるべく、魔氷エリアに篭って修行していた。  
かれこれ数時間。最初は付き合っていた仲間達も、今はベースパネルへ戻り、眠っている。  
それもこれも、仲間達の役に立つためだ。そして師であるエトナのため、何より主君の  
青い髪を持つ魔王の少年のため。  
 そう思うと、なぜかこの極寒の地で顔が暖まる気がするのだった。アーチャーには、  
その感情の意味がわからない。  
「ふうっ……!」  
 努力家のアーチャーも、さすがに疲れが見え始めていた。ジオシンボルの効果はあくまで  
ダメージをゼロにするだけである。技に使う体力は消耗するし、何より、攻撃を受けるたびに感じる痛みで、  
精神的にかなり疲れていた。一旦、敵が追ってこない距離まで離れ、ジオシンボルのそばまでやってくる。  
(今日はこのへんにしようかな。あのジオシンボルを緑のブロックに投げて無敵を解除して……)  
そう考えていたときだった。  
 突然頭上が暗くなった。曇ったわけではない。小柄なアーチャーの背後に大きな人影が立ったのだ。  
 振り向くと、そこにいたのはアーチャーの2倍近く上背のある魔人だった。  
(たしか、最近、誰かが弟子として作成した人だ。手伝ってくれるのかな?)  
 アーチャーは、にこっと笑いかけ、ぺこりとお辞儀をした。  
 
 そして下げた頭を上げようとした。  
 何かに抑え付けられて、上げられない。  
 左右でロールにくくった髪を、魔人に両手で掴まれているのだ、と気付いた。  
「あっ……あの……?」  
 目の前に、ずいっと黒光りする巨大な棍棒が突き出される。  
 いや、棍棒ではない。太く、大きく、毒々しく血管の走ったそれは、  
(おっ……男の人の……!?)  
 弓を扱う女性種族、アーチャーは特殊な出産法で生まれるため、子孫を作るのに異性を必要としない。  
だから、女性的な発育もあまりない。男を知らないまま一生を過ごす者も少なくない。  
 それでも、知識として知ってはいた。男には自分達にはない器官があると。  
(……)  
 頭を掴まれているのも忘れ、珍しいそれに見入る。  
(こんなに大きくでっぱってて、普段どうやってしまってるんだろ……)  
 目の前まで近付いて来た、脈打つ男性器を、まじまじと見つめる。なぜか心臓が高鳴り、  
ため息がこぼれる。あたたかい息が白く吐き出され、黒い男性器にかかる。  
「う、わ!? おっきくなったあ……」  
 迫ってきていたゴツゴツしたペニスの先端が、アーチャーの白い頬にぺとりと当たる。  
「あっ?……あつ……い」  
 焼けた硬い石を、やわらかい革で包んだような感触が、額をこすり、鼻先をなぞる。  
くすぐったいような感覚に戸惑っていると、つつうっと頬を濡らすぬめりがある。  
 
 先端から先走った潤滑液。そんな知識はもちろんアーチャーにはない。ただ顔の上にぺたぺた  
無遠慮にくっつけられていく、亀頭や竿や陰嚢、そしてぬるりと糸引く液体の触感に、  
なぜか背筋がゾクゾクする。  
 冷たい魔氷の空気と、熱く昂ぶったペニスで交互になぶられ、アーチャーのもちもちした  
白いほっぺたが上気する。とろんとした目で、かすかに小首をかしげて、  
「あったかぁ……い」  
 ともらした瞬間、その開いた唇に尿道口を触れさせていたペニスが、  
 ずぐっ!  
 突き込まれた。  
 魔人は掴んでいた髪をひっぱり、逆に腰を突き出して、張り詰めきった怒張をアーチャーの  
喉奥まで一気に突き込んだ。  
「んんぶっ!?」  
 ぎゅごっ、と口内の粘膜をこすりながら一気に喉まで侵入してきた極太の塊。  
 軟口蓋を押し広げられ、吐き気が込み上げる。初めて、抵抗しなきゃ、と思う。  
とりあえず思い切り噛んだ。喰いちぎるぐらいのつもりで。  
「ごぁうっ」  
 低い唸り声が聞こえた。口の中いっぱいに男性器をほおばったまま、涙をためて魔人の顔を見上げる。  
 魔人は歯を食い縛って耐えていた。その顔には苦痛もあったが、それ以上に喜んでいるようでもある。  
「んー?……ん!」  
 アーチャーは悟った。ジオシンボル・無敵の上では決して傷付くことはない。痛みさえ耐えれば  
いくらでも無茶な行為を強いることができる。口を塞がれていては、助けも呼べない。  
「時々、したくなるプレイなんだゼニよね〜」  
 後ろから、ズズン、という地響きのような足音がした。  
 
(思い出した……)  
 最近弟子として魔人を作ったのは、ゼニスキーだ。  
「無敵のジオパネルの上では、痛みや苦しみさえ安全に楽しめるんだゼニ」  
「──っ!??」  
 スカートを捲り上げられ、パンツを下ろされたアーチャーは、後ろを振り向くこともできない。  
自由な両手で前にいる魔人の身体を叩くが、びくともしない。  
フンフンと、大きな豚鼻が、ぷりんと露出した小さなお尻に押し付けられる。  
暑く不快な鼻息が下半身にまとわりつく。  
「……!!」  
「殿下に負けて悟ったゼニ。お金ちゃんを守るためには、力がいるゼニ」  
 魔人のものより遥かに巨大で、灼熱のように熱い性器が、胸から下を脱がされたアーチャーの  
裸の背中の上にドスンと乗る。あまりの重さにほっそりした膝がかくんと折れる。  
アーチャーは氷原の上に四つんばいになってしまった。  
「んー! んぅーっ!」  
 背中の上でどんどん硬く大きくなっていくその重みに恐怖しながら、口を魔人に塞がれたまま、  
アーチャーは激しく首を振ろうとするが、ペニスで喉まで固定されている状態ではそれも不可能。  
「だから必死で身体を鍛えたゼニ。今のワシと弟子のレベルはお嬢ちゃんの10倍以上はあるゼニよ」  
「ぅむんぅ〜〜〜〜!!!!」  
(そんなに差があるのに、わざわざ何をするつもりなの? 無敵パネルで……っ──)  
「ん゛!!!!!」  
 答えは、両足の間から痛みとなってやってきた。  
 何の前戯もなく、生殖器官として使われることもない、退化した膣口が抉られる。  
大地に杭を打ち込むように、しかも、裂けることも許されず、処女膜すら破られないまま、  
柔軟なゴムのように伸びて、おそらく魔人の腕ほどもあるゼニスキーの肉棒を受け入れてしまう。  
 
膣をかき分け、子宮口をノックもせずに遠慮なく、力いっぱいこじ開ける。  
「んっっっっっぐ!?」  
 ごりりっ、ぎゅぶ、という異音と共に、腹の中で別の、硬くて熱い生物が暴れ回る。  
尻と頭の上ではふたりの巨漢が、おぅ、おほぅ、と、声にならない声を上げている。  
(どうして……こんなことするの……?)  
 少女は苦痛と疑問で涙をこぼした。  
 ぴちゃ、ぱしゃ、と、股間から垂れ落ちた液体が氷の上をつつうと流れる。  
 それはほとんどが子宮の中に溜まっていたもので、襞から分泌された粘液はわずかしかない。  
 ろくに濡れていない膣を、すさまじい摩擦でごりごりと削るようにゼニスキーは動く。  
「フオッ、オホォッ」  
 もはや完全に獣に戻ってしまった成金悪魔が、腹の中をずるずると蹂躙する。あまりの痛みに、  
身体が麻痺し始める。そしてついに、内側から熱くにじみ出る感覚。  
(……あ……あぁ……)  
 何となく理解してしまうアーチャー。  
 無敵パネルの上で流れるのだから、これは血ではありえない。  
 これは、相手が動きやすくするために、自分が気持ちよくなるために、身体同士をこすりあわせる  
手助けをするために沁み出てくる液体。  
 アーチャーの退化した『女』が、無理矢理にひきずり出されている。  
すさまじすぎる苦痛を、快楽に変換することで和らげるために。  
「むぐっ……」  
 初めて、泣きたくなった。未曾有の屈辱感が、怒濤のようにアーチャーを襲う。  
「んぁぁぁん……!」  
 魔人のペニスを喉で固定したまま、少女から嗚咽が洩れた。  
 
(ああ、もう、だめなんだ)  
 何がだめなのかまでは分からなかったが、アーチャーはそう思った。身体がだんだん  
熱くなって、魔氷の寒さすら気にならなくなって来たのだ。背筋がぞくぞくと高まっていき、  
自分の肉体はこのまま熱くなって沸騰して、醜い魔物の暴力に降伏するのだと感じる。  
「んっ、ん☆」  
 そして、それを……『それでもいいや』と思ってしまう。  
 ぎちぎちと前後し、体内から腹のかたちを変えているのが外から見て分かるほどに巨大な  
ゼニスキーのペニス。それを、心は拒否しているのに、身体の反応だけで、しかも子供を産む  
という行為をとうに捨てたアーチャーの身で、なのに身体は体内から熱い液を出して、  
ゼニスキーが気持ちよくなるための手助けをしてしまっている。  
「ああっ、ふぁ!」  
 そして、そのことが、自分にとっても気持ちよくなって来ているのだ。  
(やだ……やだぁ……やだよぉ……!)  
 アーチャーが生まれて初めて感じた屈辱だった。  
(で……んかぁ……!!)  
 なのに、それとは裏腹に、身体は昂ぶっていくばかり。  
「んおーっ、おーっ、おぉーっ?」  
 口の中でますます硬さと大きさを増す、魔人のペニスと、  
 腹の中で乱暴な動きを早めていく、ゼニスキーのペニスが、  
 同時に、深々と、全力で、身体の一番深いところでぶつけ合おうとするように押し込まれ、  
「ん゛!! ん゛ん゛お゛ぉぉおおお゛ぉ゛!!??」  
 びゅどっ。  
 熱い塊のような、ゼリー状の白い粘液をどくどくと射ち放ったのだった。  
 
 それは、胃袋から溢れ出し、子宮を押し広げ、ふたつの穴から外へこぼれ出る。  
 ぬどろぉっ……  
 唇から、陰唇から、ひねり出されるように、熱く白い塊がぼたぼたと氷原に落ち、湯気を立てる。  
「おあぁ……!」  
 液体自体が鼓動しているような、熱い感覚に、アーチャーの発達を忘れた性までもが  
反応して、きゅうきゅうと膣が収縮し、涙が溢れた。  
「んむぅおうっ!!」  
 感じたことのないすごい波がおなかの奥から全身に走り、痺れるような昂ぶりに、  
とうとうアーチャーは屈した。そして、次の瞬間には、意識を快楽に委ねていた。  
 
「フゥッ……フゥッ……」  
「あはっ、はあっ、はっ」  
 気がつくと声はゼニスキーと、自分のものだけになっている。  
 何度イカされただろう、いつの間にか魔人は彼女の喉から去っていた。  
 半開きの口からだらだらと白濁したスライムをこぼれさせながら、  
アーチャーはゼニスキーの快楽を引き出す玩具として、ずっとおもちゃにされていたのだ。  
 ゼニスキーは一度もペニスを抜かないまま、もう十度近く射精した。  
 アーチャーは腹の中がたぷたぷ揺れる感触をおぼえながら、もはや抵抗の気力すら沸かずにいた。  
「んぅ……あ……」  
 混濁した意識を表すように、目は光を失っている。  
 
「さすがに反応が薄くなって来たゼニね。つまらんからそろそろおひらきにするゼニか」  
(ああ、解放してくれるんだ、もうどっちでもいいけど)  
 そう思ったのを知ってか知らずか、醜い豚の怪物は鋭い爪でアーチャーの尻をこね回しながら、  
「仕上げはあれゼニよ」  
と、準備していた弟子を指差した。弟子の魔人が持ち上げていたのは、  
「あれはぁ……」  
(さっき、色の違うパネルに投げて、ネコマタを倒して終わらせようと思ってたジオシンボル)  
「!!」  
「分かったようだゼニ。あれをこのまま緑パネルに投げ込めば、お前の処女膜どころか、  
腹、そして下半身はどうなってしまうか想像がつくゼニ?」  
「──いや、いやいやいやいやあああああああああああああ!!!!」  
 恐怖で光の戻った瞳を上から覗き込み、満足したゼニスキーが醜い笑みを浮かべる。  
「ううーっ、しまるゼニ。やっぱりこうじゃないと物足りないゼニ」  
 苦痛を忘れて、ゼニスキーを受け入れたまま、アーチャーの全身の筋肉も緊張したらしい。  
「やめてやめてやめてぇっ……やめてやめてえ!!」  
 ゼニスキーの目がますます嗜虐的に歪み、  
「んー、懇願する姿にますます興奮するゼニ」  
 ぎっちゅぎっちゅと前後運動してくる。忘れかけていた苦痛が蘇る。そして、  
「でも、だぁーめ」  
 太い指をパチンと鳴らす。  
 魔人が、ジオシンボルを放り投げる。  
 
(──!!)  
 
 少女は悲鳴を上げた。  
 
 ……  
 
「おい、起きんか、おい」  
 激しいようで、やさしい声がする。エトナ師匠……ううん、もっと別の誰か……  
「はっ」  
 ぱち、と目を覚ましたアーチャーは、くるくると左右を見渡した。恐怖のあまり気絶していたのか。  
「えらい目に遭ったようだな、お前。身体中がドロドロだぞ」  
「う……わたし……身体……あれ?」  
 おなかの中は痺れてたぷたぷするし、口の中いっぱいにあの白い液のにおいがたまっている。  
でも、下半身は引き裂かれていない。ヒールで治したような血の跡もない。助かったらしい。  
「ゼニスキーの弟子はアホさも本人と似たようなものだな。奴が斜め投げに失敗したところを、  
ベースパネルから様子を見に出て来たオレさまたちが見つけたのだ。あいつめ……  
貴重な戦力を潰そうとするとは。とりあえず半殺しにしてやった。  
ピカピカになるまでトイレ掃除の罰も与えた。魔王城のトイレは広いし汚いぞ、クックック」  
「えぇっと……」  
 助かったと言っていいのかどうか。一応処女は残ってるから、貞操は守ったといえるのか。  
貞操、という自分の発想に、顔が赤くなる。一体誰に捧げるつもりでいるのか。  
「まぁ、何だ。根を詰めすぎれば、つけこまれるぞ。オレさまの家来になるからには、  
くだらん悪だくみぐらい圧倒的な力ではねのけろ。へくしっ」  
 少年がくしゃみしたところで、いつも肩にかかっている赤いマフラーがないことに気付く。  
 
「あ!」  
 マフラーは、彼女の身体にかかっていた。アーチャーは急にとても恥ずかしくなって、  
「ででででで殿下、これ……」  
「なんだ、体力を使い切って弱ってるようだったから保温する必要があっただけだ。  
愛マニアが言ったんだ、オレさまのアイデアじゃないぞ」  
 そっぽを向いて言い訳する魔王の少年が、急にたまらなく愛しくなり、  
「あは」  
 裸で体育座り状態のアーチャーは顔をマフラーに埋め、その下で満面に笑みを浮かべた。  
(身体の中に『女の子』が残ってて、うれしい……!)  
「なんだ、気持ち悪いぞ貴様。さっさと帰ってべとべとの身体を拭け」  
「えへへへへへぇー?」  
 こうして弓使いの少女は、魔王に恋していることを自覚したのだった。  
 
<おしまい>  
 

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