「…」
「わぁ〜ラハールさんこのステルスマント似合うんじゃないですか?」
「あぁんもう殿下のなんか後でいいわよ。
この毛皮のコートどうかしら?ネ?似合う?似合う?」
「えぇ〜エトナさん趣味悪いですよ〜、それよりこっちのナインテールの方が…あぁ!?ゆゅユ.勇者のベルト!ほすぅぃい〜!!」
最近エトナとフロンの買い物によく付いていく。二人には「ムダ使いしそうだから俺も付いていく!」なんて言っているけど嘘なんだ。本当はあそこに行く口実がほしいだけ。
店から見える議会の受付嬢、プレネール。
なんだか気になって仕方が無い。話かけてみたいけど、近づくだけ心臓が跳ね上がり、眼が合うだけで燃え尽きてしまうんじゃないかと思うほど顔がほてって、そそくさと逃げてしまう。
なんだろうこの気分は、魔法でもかけられたのだろうか?
あぁ…あの蒼い髪を触ってみたい。手を繋いでみたい。声を聞きたい。でも触れてしまうとすべて壊れてしまいそうで、無くなってしまいそうで、失う様な気がして、どれ一つとして実行には移せない。
怪我をするのも敵を殺すのも恐くないのに。何物にも恐れない強い魔王を目指しているのに。それだのに、あんな弱そうな家来に苦しめられている。
はぁ…饅頭に苦しめられた父上の事、笑ってられないや。
「殿下ぁ〜聞いてますぅ?」
「うん…」
「?うん?」
「ぃ.いや、うむゴホンな なんだ?」
「もう少し時間がかかるからまってて下さいっていったんですよ。大丈夫ですか?ボーっとしてましたよ?」
「ああ大丈夫だ、ゆっくり選んでくれ」
「そうですか。じゃあ私は武器選んできま〜す。」
…ビックリした。
思わず素で返事をしてしまった。魔王の威厳を保つのも大変だなぁ。